セイバーアート・オンライン   作:ニントという人

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どうも、作者です。
珍しく月の中旬に投稿。実は明日からテスト週間に入ったりする()
とりあえず、テスト前最後の投稿どうぞ。


黒き野営地、唯一の拠点。

黒エルフの女騎士、キズメルと遭遇して数分。

俺たち5人はキズメルの案内の元、黒エルフの野営地に向かっていた。

キリトや俺を始めとした、元ベータテスターの経験値が無意味になろうとしている───俺は元からこのクエストは未経験だが─状況であっても、キズメルの同行が有益であったと認識できることは、少なくとも一つはあった。

ダークエルフの野営地に行くには、古道から外れ、森の中を突っ切る必要がある。そういう訳だから、古道を歩くよりもモンスターとのエンカウント率は上昇する。更に、この森特有の霧に巻かれ、現在地を見失う恐れもある。

そんな状態の中、キズメルさんはエリートクラスのスペックを遺憾なく発揮した。周囲から迫るmobは、片手に握るサーベルの一太刀で斬り伏せ、いかなる力か、道に一度も迷わずに、歩みを止めること無く森を掻き分け進んだ。ここはさすがエルフと言ったところだろう。

そんな訳で、森エルフの野営地に着いた時、あの戦場を発って15分ほどしか経っていなかった。

「けっこうあっさり着いちゃったわね。」

同じような思考だったらしいアスナがそう言うと、それに反応したキズメルが

「野営地全体に《森沈みのまじない》が掛けてあるゆえ、お前たちだけではこうも容易く見つけられなかったぞ。」

と言った。そう考えれば、どちらにせよキズメルのおかげで早くたどり着けたのだろう。

少し自慢げに言ったキズメルに対して、今度はアスナが反応した。

「へえ、おまじないって魔法のこと?でもこの世界に魔法は無いんじゃないの?」

………こいつ言いやがった。NPCに言ってはいけないセリフ第一位を言いやがった。(誇張表現です。)

このSAOという世界では、ファンタジーRPGとしては必須とも言える要素である魔法は存在しない。だがその訳は、端的に言ってしまえば制作コンセプト上の都合だ。自分の体のようにアバターを動かせるというフルダイブシステムの最大の目玉を最大限活かすため、体を動かさずに発動できる魔法は廃され、自らの体で発動するソードスキルのみが実装された。

だから、この世界に魔法が存在しない訳を真の意味でこの世界の住人たるキズメルには理解できないのではないか…………

「あのなアスナ、それは……」

俺と同じベータテスターで、その辺の事情にも精通しているキリトが口を開いたが、それよりも一瞬早く、

「………我らのまじないは、到底魔法とは呼べないものだ。」

キズメルが、そう静かに語りだした。

「いわば、古の偉大なる魔法の残り香……大地から切り離されたその時より、我らリュースラの民は魔法の力を失った……」

…………その言葉は、俺とキリト、要はベータテスター組に途轍もない衝撃をもたらした。

……大地から切り離されたから、魔法の力を失った。

魔法の力を失う、というところにも好奇心が湧いてくるが、それよりも気になるのは前半部分だ。

大地から切り離されるということは、もしやこのアインクラッドの起源にも関わってくるのではないか。

今考えれば、俺はこのSAOというゲームの舞台設定というものに関して全くと言っていいほど知らない。オンラインオフライン関わらず、ゲームシステムに並んで重要な要素である舞台設定というものは、このゲームでは意図的か否か、今まで雑誌だろうとネット記事だろうと語られてこなかった。解っているのは、舞台が百層のフィールドを重ねられてできた浮遊城が舞台、ということだけ。

だが、先程のキズメルの言葉から考えるに、このアインクラッドは、俺たちがログイン前に知った情報より、更に深い設定……いや、歴史があるのではないだろうか。

一体なぜ、黒エルフ───キズメルの言葉を借りればリュースラの民───たちはかつての世界から切り離され、この大空の孤島で生きることになったのか。そもそもアインクラッドは、誰が何のために作ったのか…………

俺はそんな思考の中でも、足を止めることは決してなかった。

 

◆◆◆◆

 

濃霧の中を切り分けながら進んでいくと、ある箇所で急激に霧が晴れた。

気がつけば森の端まで歩いていたらしく、遠くには巨大な山肌が続く。

その一箇所には切り取られたかのように谷間があり、その左右には柱が立つ。

上に目を向ければ、黒地に角笛と曲刀が染め抜かれた、特徴的な旗が風に煽られている。

柱のそばには、キズメルよりも重武装のダークエルフ兵が二人そびえ立っていた。彼らは大振りの薙刀を堂々と装備し、プレイヤーとは比べられない威圧感を示す。

そんな状況でも、キズメルさんは表情を一つも乱すこと無く歩いていく。

スタスタと歩く中で、リントが俺に小声で語りかけた。

「あの、ラルトさん。まさかとは思いますけど、この野営地で戦闘する………なんて無いんですよね?」

「あー……多分無い…と言いたいけど、俺やったことないしなぁ……キリト、そんなことはないよな…?」

「ああ、そのはずだ。こっちから彼らに斬りかかったりしなければ…の話だけど。…いや、その場合もクエスト中断と追放ぐらいで済むんだったかな……」

「後で試したりしないでよ…」

アスナはキリトを軽く睨んだが、それ以上何も言うこと無く歩き出した。もちろん、俺やリントも同様に。

兵たちは、俺たちをかるく睨みこそしたものの、何も言うこと無く俺たちを通してくれた。もっとも、それは俺達の前に立つキズメルのおかげかもしれないが。

柱を通り過ぎたすぐは、視界は岩に挟まれた寂しいものだったが、少し歩くと視界が広がり、円形の広い世界が見えた。

そこには大小様々な天幕が張られ、質素ながらも幻想的な景色を醸し出している。しかもそこにダークエルフが歩き回るのだから、ここが日本のどこかに置かれたサーバーの中ではなく、本当の異世界に迷い込んだのではないかと思ってしまうほどだ。

「へぇ……ベータの時の野営地より、だいぶでかいなあ……」

キリトがそう呟くと、リントが食いついた。

「ベータとは場所が違ってるんですか?」

「ああ。でも、こういうイベント系のマップはたいていインスタンスマップだから、サイズとかが違うのはおかしな事じゃないんだけどさ。」

「なるほど、たしかに違和感はないですね。」

リントは、キリトの説明で納得したようだが、その隣のアスナ嬢は意味がまるで不明だったらしく、

「いんす……たんす……?」

と、頭に疑問符を浮かべていた。

「ええと、クエストを進めているパーティーごとに、一時的に生成される空間……って説明すればいいかな。俺たちは今から、ここにいるダークエルフの司令官と話すわけだけど、そこに他のプレイヤーが入ってきたら都合悪いからさ。まあ、一層でアニールブレードを獲得できるクエ(森の秘薬)みたいに、プレイヤーがクエストを進めてる間はそのスポットが閉鎖されるだけのクエストもあるけどな。」

キリトのもはや定番となった解説で、アスナはあらかた理解し終えたのか、

「ん…んん……つまり、私達は通常の三層のマップからは消えて、このマップに隔離された状態…ってわけ?」

と言った。よく一回の説明で解ったなあ、と俺が感心する中、同じような感想らしいキリトが言った。

「そういうこと。」

次の瞬間、このパーティー唯一の女性(だった)細剣使いは胡散臭い目線をキリトに向けながら言った。

「……いつでも出られるんでしょうね?」

 

…たぶん、出られると思うよ。

 

 

……色々とあったが、一応クエストの第一段階を突破した俺たちは、キズメルの案内でダーク・エルフ隊の司令官と面談を行った。

司令官は、キズメルの生還と鍵の奪還を大いに喜び、協力した俺たちはだいぶ多めなクエスト報酬とアイテムをくれた。しかも、アイテムは複数の選択肢の中から一つを選べる仕様だ。

選択肢には、武器や防具、アクセサリなどがあったものの、この中には俺とリントの聖剣はもちろん、キリトとアスナの愛剣を超えるほどの武器はなかったし、防具も高性能なのは金属製が主だったのもあって、皮装備主体の俺たちにはいまいち合わず、最終的にステータスブースト効果のあるアクセサリを選んだ。ちなみに、俺とキリトがSTR(筋力)アップ効果の指輪、アスナがAGI(素早さ)アップのイヤリング、リントはAGI上昇のブレスレットを選択した。

最後に司令官から、このクエストの第二章を受注…というか受領し、司令官の天幕を後にした。

野営地の中央に戻ると、もう夕焼けが草地を茜色に染めていた。時刻ももう午後5時近く、そろそろ活動を終える頃だ。

キズメルも、NPCにと思えぬ実に自然な動作で伸びをすると、俺たちに向き直り言った。

「人族の剣士たちよ、改めてそなたらの助力に礼を言おう。次の作戦もよろしく頼むぞ。」

「あ、ああ、こちらこそ。」

キリトが対人……対NPC慣れしていない声で返すと、キズメルはなにかに気付いたかのように言った。

「そういえば、まだ名前を聞いていなかったな。何というのだ?」

あら、コレは想定外。まさかNPCが、プレイヤーの名前を聞いてくる日が来るとは。

キリトは少々動揺しながらも口を開いた。

「ええと……俺の名前はキリト。」

「ふむ、人族の名前は少々難しいな…キリト、でいいか?」

キズメルの発音は、少々イントネーションが違ったので、キリトがもう一度口を開く。

「キリト」

「キリト」

「そう、完璧」

どうやら、今の会話が名前の発音調整のシークエンスだったらしい。NPCのチューニング、といったところか。

同じ動作を俺、アスナ、リントの三回繰り返すと、キズメルは再び話しだした。

「キリト、ラルト、アスナ、そしてリント。私のことはキズメルと呼んでくれ。……それでは、作戦に出発する時刻はそなたらに任せよう。一度人族の街まで帰りたければまじないで送り届けるが、この野営地で休んでも構わん。」

なるほど、クエスト中はここを実質的に拠点として扱えるわけか、と心のなかで頷く。

休んでも構わんということは、きっとここで寝るときもおそらくタダだろうし、コレは正直お金が自由に使えるとは言い難い身としてはありがたい……

キリトと並んで、少々仮面ライダーとしてはふさわしくない思考であろうことを確実に呼んだだろうアスナが、代表して答えた。

「それじゃ、お言葉に甘えて天幕をお借りします。お気遣いありがとう。」

「いや、例には及ばない。なぜならば……」

キズメルがここまで発言したところで、キリトの表情に影がよぎった。その影に引きずられるかのように、キリトの顔が少しずつ曇っていく。

………コレも後から聞いた話だが、ベータのときにプレイヤーに与えれる天幕は、最初のイベント戦闘で死亡したエルフ……つまり今のキズメルの天幕だったらしい。だが今の世界では、キズメルは森エルフと相打ちになること無く、こうしていまも生きている。つまり…

「予備がないゆえ、私の天幕で寝てもらうしか無いからな。5人では少々手狭だが我慢してくれ。」

「いえ、ありがたく使わせていただき………五人?」

アスナがとんでもない事態に気づいたのか、途中で会話が停止した。

俺はその語尾を受け取り、一応会話を終了させておく。

「ありがとう、では遠慮なく使わせてもらいます。」

「うむ、私はこの野営地内にいるので、用があればいつでも呼び止めてくれ。それでは失礼。」

そう言い残したキズメルは一礼すると、マントを翻して立ち去っていった。

……それから数秒、表情を何パターンにも変更したアスナは、俺たちに向き直ると言った。

「……さっきの取り消して、主街区でおまじないで転送してもらうのは可能?」

この問いに、唯一答えられる存在……我らがパーティーリーダーキリト氏は言った。

「えっと………もう無理…。」




やっぱり切りが良いところだと中途半端に終っちゃうんだよなぁ…
まあいいや、とりあえず予告どうぞ。

次回、セイバーアート・オンライン。
「…国境侵犯したらどうなるんです?」
「お風呂、あるんですか?」
「…構わんさ、私一人には広すぎる」

第16節 剣士の休息、血濡れた過去。

オリジナルのブック組み合わせを出そうと思ってます。基本は赤いブックとの組み合わせです。

  • ヘンゼルナッツとグレーテル
  • 猿飛忍者伝
  • 昆虫大百科
  • 天空のペガサス
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  • 玄武神話
  • 昆虫大百科
  • オーシャンヒストリー
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