廃れた神社の狐娘   作:ふーてんもどき

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四話・狐の掟

 

 

 僕の願いを叶えるべく、環さんが打ち立てた方策は以下の通りだ。

 

「恋文じゃ! 歌を詠むのじゃ!」

 

 それはかつて僕が惨敗を喫した方法とまるで同じだった。恋慕の情を紙にしたため、相手の目の前で朗読しろというのである。この恐るべき自爆特攻作戦に対して、僕は当然のことながら猛烈に抗議した。

 

「そんなんで上手くいくはずがないでしょう」

「何故そう言い切る」

「恥ずかしい話ですが、僕は昔、それをやって玉砕したことがあります。経験者なんです。あんなものは、人生に汚点を残すだけなんですよ」

「それはお主の恋文が下手だったのじゃ」

 

 思い出すことすら憚られる僕の黒歴史は、環さんに一刀両断された。詳しく知りもしないのに何故か自信たっぷりに断言され、僕は愕然とする。ラブレターを朗読するのが駄目なのだとばかり思っていたが、まさか手紙の内容がいけなかったとは。目から鱗の新境地であった。そんなわけあるか。

 

「恋文が上手ければ女はころっと落ちる」

「落ちません」

「儂を信じろ。筆と紙は持っとるか」

 

 環さんは実に強引だった。僕は言われるがまま、学生鞄を漁ってノートと筆箱を取り出す。表紙に『自習用』と書かれた罫線ノートは最初に漢字の書取りがしてある以外は真っ白だ。僕の怠慢の証である。シャープペンを渡すと「なにこれ!」と環さんは面白がった。

 

「変な筆。いや、筆かこれ。どうやって墨を吸わせるんじゃ」

「上の部分を押すんです。墨ではなく黒鉛で書きます」

 

 ノートに書いてある漢字を見せると、環さんはそれを真似して同じ字を書き始めた。

 

「わっ、細いのう」

「便利でしょ」

「うむ。しかしお主の字は下手くそじゃのう」

「それは言わんでください」

 

 初めて扱うシャープペンの感触が楽しいようで、環さんは落書きし始めた。何か御利益のあるお札のような呪文でも書くのかと思いきや、へのへのもへじや棒人間を描いている。完全に子供の所業であった。

 

「これ面白いのう。スラスラ書けるぞ」

「気に入ったならあげますよ」

「いいのか!?」

「二本持ってますからね。また百均で買えばいいし。そのノートもどうぞ」

「うーん。儂としては嬉しいが」

 

 まるでトランペットを貰った少年のようにきらきらとした目でペンとノートを見つめる環さんだったが、申し訳なさそうに眉根を寄せて聞いてきた。

 

「本当にいいのか? 自習用とか書いてあるけど」

「そこは気にしないでください」

 

 

 

 

 

 

 誠に残念ながら、環さん主催の恋文技術講座がまるで進展しなかったことを謹んで申し上げなければならない。

 

 僕らは落書きに熱中するあまり、当初の目的を完全に忘れていた。鉛筆と紙さえあれば無限に遊べた子供時代を追体験するような魅惑的な時間だった。その内容は○✖️ゲームや迷路作りなど様々である。特にノートの見開き半分ずつをお互いの陣地として、棒人間を戦わせる遊びは白熱した。

 

 争いは苛烈を極め、無法地帯と化した紙面はあっという間に惨憺たる状況となり、その度にページをめくっては血で血を洗う戦争を再開する。

 僕が現代兵器を用意すると環さんは「ずるい!」と言って怒る。逆に雷神だの風神だのを召喚して天変地異を起こされた僕が「ずるい!」と抗議したら、環さんは「問答無用!」と呵呵大笑した。

 

 そんなことをしている内に外が暗くなり始め、僕らは肝心の恋愛相談がまったく進んでいないことに気付いた。

 

「夕焼けじゃあ」

 

 環さんが空を見上げて呆然と呟いた。思考停止しているその顔は、まるで竜宮城から帰ってきた浦島のようである。

 

 強い風が吹いて、広げてあるノートをパラパラとめくる。そこにはもはや白紙のページなど一つもなく、僕と環さんの戦いの記録がぐちゃぐちゃに刻まれている。見返すと当人である僕たちでさえ何が書いてあるのか分からない。二人とも絵心は皆無だった。

 

「しまった。紙が無くなってしまった」

「いいんですよ。ノートくらいまた買えばいいんですから」

 

 僕がそう言うと、環さんはこっちを向いて目をパチクリとさせた。

 

「前から思っておったが、お主の家は相当な金持ちなのか?」

「え、違いますけど。なんでそう思ったんですか」

「毎回珍しい食い物を持ってくるし、筆や紙といった貴重品をほいほい他人にあげていたら、誰でもそう思う気がするが」

 

 一瞬言われた意味が分からなかった。ややあって、環さんが人間とは比べ物にならないほど長い時を生きている狐だということを思い出し、凄まじいジェネレーションギャップを感じた。紙が高価だったのっていつの時代だろう。

 

「環さん、現代ではどっちも安くなってるんですよ」

「そうなのか? いくらなんじゃ」

「これ二つとも百円くらいですね」

「百円!?」

 

 僕が答えた瞬間、環さんは目をむいて驚愕した。今度はなんだ。

 

「どこが安いんじゃ……やっぱり大金持ちではないか……」

 

 百円が大金らしい。からかわれているのかとも思ったが、どう見ても冗談を言っている様子ではない。大真面目に慄いている。

 

「環さんって今の元号知ってます?」

「昭和!」

「令和です」

 

 即答で間違いが返ってきて、僕は納得した。環さんの中の時代は百年近く前で止まっているようだ。聞けば、それくらいからこの神社は廃れ始め、やがて神が拗ねて不在になったという。神威が無くなった神社からは遂に参拝客の足も途絶え、環さんは浮世の事を知る術を失ったのだとか。

 

 しかしよくよく考えてみると、僕は百日間もの間、賽銭を投げていたではないか。賽銭箱には少なくとも五百円は溜まっているはずである。環さんはその辺りの確認はしていなかったのだろうか。

 

 そのことを伝えると、環さんは首を傾げた。

 

「御百度参りで僕が毎日お賽銭を入れていたでしょう」

「うん。あの穴のあいた小銭じゃろ。てっきり五銭とか十銭だと思っておったが」

 

 財布から五円玉を取り出して「これです」と手渡すと、環さんは硬貨の表裏をしげしげと興味深そうに観察した。本当に五円玉を間近で見たことがないらしい。

 

「はあ、細かいのう。こうも緻密に稲穂の絵を掘るとは、時代も進んだものじゃ」

 

 現代の鋳造技術に感心の声を漏らす。小銭やシャープペンでこれだけ反応を示すのだから、百貨店にでも連れて行ったらどんなに面白いことになるだろうと僕は思った。

 

「賽銭箱を開けて確かめたりはしなかったのですか」

「儂にその権利は無いからなあ。許されておらんのじゃ。触ろうとすると、こう、バチッてなる」

 

 電気でも通っているのかと思い賽銭箱を触ってみるが、別にどうってことはない朽ちた木の感触だった。ただの人間と神社の狐とでは勝手が違うのだろうか。

 

「金があっても外へ出られるわけではないし、こうして客が来ない限りは暇で仕方がないわい」

「ああ、まあその尻尾や耳では目立ちますね」

 

 彼女の特徴的な部分を見て納得する。しかし環さんは「いや」と言って何の前触れも無く、ポンっと耳を消してみせた。僕が唖然としている内に、尻尾もみるみる縮んでいき、服の中に消え入ってしまった。

 

 気付いてみればそこには、どこをどう見てもただの人間の少女が立っていた。金髪や和服は変わらないが、彼女のアイデンティティとも言っていい狐要素はその痕跡すら無かった。

 

「人に化けることなど造作もないぞ。耳や尻尾を出したままにしていたのは、そっちの方が楽だからじゃ」

 

 初めて会った日、頭を撫でさせてもらった時以来に環さんが人外である証拠を目の当たりにし、僕は言葉が出ない。

 環さんはそんな僕を尻目にすたすたと歩いて行き、鳥居の前でふと立ち止まった。

 

「出られぬというのは、そのままの意味じゃ。儂がこの神社の敷地から出ることは叶わぬ。そういう決まりなのだ」

 

 環さんが鳥居の外へと手を伸ばす。しかしその手は見えない壁に阻まれるかのように、そっと宙空に添えられるだけだった。撫でる軌跡は滑らかで、一流のパントマイマーもかくやと言うべき真実味を帯びている。

 

 馬鹿なと思い、僕は走り寄って鳥居を越えてみるが、当然そこに壁など無い。何にもぶつかることなく境内から出るだけだ。試しに環さんの手を取る。

 

「ちょっと、失礼します」

「無駄じゃぞ」

 

 外から環さんを引っ張ろうとしたのだが、彼女が言う通り、一定以上鳥居を越えようとすると環さんだけが見えない何かに弾かれて、繋いだ手もするりと解ける。信じられずもう一度試させて欲しいと言ったが、環さんは「やるだけ無駄じゃ」と踵を返して社の方へ戻ってしまった。いつの間にか耳と尻尾も元通り生えている。

 後に続いて、僕も社の縁側に再び腰掛ける。

 

 神社から出られない。あまりに常識からかけ離れた出来事だが、今しがた体験したのは確かに現実のことだった。まだ燻る疑心に蓋をして考えた時、次に僕の頭に浮かんだのは、環さんがここにいる年数だった。

 

 彼女の価値観は最新でも昭和の初期あたり。そこから先の世情に疎いのは、この神社が廃れ、環さんの同僚や仕えるべき神様がいなくなってしまったからだ。ならば、環さんが過ごした孤独の時間は…………。

 

「無用な心配じゃ」

 

 隣に座る環さんは僕の方を見ずにそう言った。

 

「晴人が感傷に浸るようなことでもない。気にするな」

「……心を読みました?」

「まさか。読むまでなく分かるわい」

 

 彼女の表情には喜怒哀楽のどれも浮かんではいない。泰然としたその横顔は、いつになく大人びて見えた。

 

「儂は自分で残ると決めた。だから今もここにいる。それだけの話じゃ」

 

 僕はふと、鳥居の側に向かい合って佇んでいる狐の石像の方を見る。片方は古ぼけてはいるが狐の形をそのまま保っており、もう片方は所々が崩れて見るも無残な状態となっている。

 

「環さんの他にもう一人、この神社に仕えている狐がいたと言っていましたよね」

「ああ。それは儂の姉でな。神と一緒に天界へ帰った」

「じゃあ環さんも、望めば帰れるってことですか」

 

 そう聞くと、環さんは「いいや」と首を振る。

 

「まあ、帰れるが、まだその気はない。意地を張って残った手前、おめおめと引き下がるのも格好が付かんしな。それに…………」

「それに?」

 

 考え込むように言葉を区切った環さんに話を促すと、彼女は僕の方を向いて微笑みを浮かべた。それはまるで母親が我が子を慈しむような、優しい笑い方だった。

 

「お主の願いをまだ聞き届けておらん。このような寂れた神社に百日間も通い続けたんじゃ。以前も言ったと思うが、そんな者の願いを無碍にしては、それこそ儂の面目が立たんからな」

 

 僕は何も言えなかった。彼女の目を真っ直ぐに見れない。環さんがその笑顔の奥底で何を思っているのか見当も付かない僕では、彼女の意志に答えるための言葉を持たなかった。

 

 きっと同情なんてするべきではないのだ。環さんは自分で選んだと言う。僕のような凡百の人間が抱く浅はかな同情は、彼女の誇りに泥を塗るだけなのかもしれない。人には人の価値観があり、それはおいそれと言葉にできるものではないし、ましてや他人が無闇に口を挟むものでもない。そのくらいの常識は若輩の身であろうと持っているつもりである。

 環さんには環さんの事情がある。

 だからきっと、彼女の心に踏み込むべきでは、ないのだろう。

 

「……晴人、どうした?」

 

 黙りこくってしまった僕はを気にしてか、環さんが覗き込んで来る。まん丸な彼女の瞳に見つめられ、僕は曖昧に微笑む。

 

 その時、僕は唐突に閃いた。それは天啓とも言うべき落雷に打たれたような歓喜的な思い付きであり、今しがた心に燻っていた暗澹たる靄を晴らすに十分だった。

 

「ねえ環さん。昔の環さんはもっと強力な霊狐だったんですよね?」

 

 僕がそう聞くと、環さんは「無論である」と威張った。

 神格とは環さんたちの存在意義そのものであり、里全体が信仰に満ちていた頃の環さんたちの存在感は今とは別格だったらしい。行動範囲も広く、神社だけでなくもっと遠くの場所まで好き勝手に出歩けたという。この神社にいた神はそもそも周辺の山も含んだ里全体の豊穣神であり、その従者である環さんもまた相応の立場にあったというわけだ。

 

 里の山々を自由に駆け回っていた日々のことを自慢げに話し始める環さんに、僕は質問を重ねた。

 

「じゃあ、色んな神通力とかも使えたんですかね」

「うむ。そりゃあもう凄かったぞ。全盛期であれば豊穣のみならず、畑違いの縁結びだろうが下駄の鼻緒を結ぶが如くチョチョイのチョイであった」

「それです!」

 

 身を乗り出した僕に環さんが驚いて固まる。彼女が以前にも言っていたことだ。今では力が衰えてしまったと。それならば取り戻せば良い話ではないか。

 

「この神社にまた信仰が集まれば、環さんも力を取り戻せるんじゃないですか」

「むむむっ」

 

 僕の言いたいことが伝わったようで環さんは顎に手を当てて考え込む。今、彼女は脳内で僕と同じ思考プロセスを辿っている筈である。

 

 現状、環さん一人の力では手詰まりだ。神社は廃れたまま、見向きもされることはないだろう。しかしそこに外部者である僕の協力があればどうか。きっかけさえあれば、事態は一変するに違いない。

 

 神社に信仰が集まれば環さんの力が増す。その力を使って名声を広めれば、さらに神社に人が集う。僕はその信仰インフレーションの恩恵にあずかって理想の恋人を得る。そうして僕たちカップルをモデルケースとして遂に神社の威光は日本全国にあまねく広がり、我も我もと氏子になりたがる人々が続出して環さんは献金の風呂に浸かれるほど儲かるのである。もちろん協力者である僕の懐も潤うだろう。素晴らしいではないか。

 

 やがて顔を上げた環さんの瞳はキラキラと輝いていた。僕たちは見つめ合う。言葉を交わさずとも、それだけで僕たちは互いの意見の一致を悟った。

 

「天才じゃ、天才の所業じゃ!」

「そうでしょうとも。僕は願い事を叶えられる。環さんも神社を再興できる。これこそwin-winの関係というものです」

「うぃんうぃんって何?」

「どちらにも利益があるということですよ。両得です」

「ほほう。うぃんうぃん」

 

 調子に乗った僕たちは立ち上がり「うぃんうぃん!うぃんうぃん!」とお互いを鼓舞するように叫んで拳を振り上げた。その間抜けな咆哮は駅向こうの商店街にまで響いたという。

 

「して、どうやってこの神社に人を呼ぶ」

 

 もっともな環さんの問いに、僕はあっけらかんとして答えた。

 

「それはまだ考えていません」

 

 「阿呆」という罵倒と共に環さんの非力なチョップが脳天めがけて飛んできた。僕にとってご褒美だったのは言うまでもないことだ。

 

 

 

 

 

 

 神社から出ると、茜色の空が目に眩しかった。遠くの方では西陽に照らされた積乱雲がマッターホルンのように聳えている。木々が茂っている神社からではあの景色は見れないな、と感慨深く思った。

 

 神社の周りの土地は田畑が多かった。『多かった』と言うのは、今はかなりの面積が埋め立てられているためだ。おそらくは住宅地になるのだろう。僕の地元は片田舎だが、街へ行くには便利な立地をしている。ここからなら駅も近いし確かに需要はあると思うが、砂利が剥き出しの土地を見ているとなんだか物悲しさを覚える。

 

 そこから離れれば民家が建ち並ぶ旧来の住宅地に入り、僕がいつも通学に利用する駅も見えてくる。駅前には古びた昔ながらのショッピングモールや小さな商店があり、風情のある街並みが今もなお色濃く残っているものだ。

 

 松葉屋という肉屋の前を通ると、揚げ物の良い匂いがした。ここのメンチカツは安い上にやたらと美味い。以前貢物として買って行ったら、環さんにも好評だった。小腹が空いていたのもあってそれを一つ買い、軒先のベンチに座って食べることにする。

 

 肉汁たっぷりのメンチカツをむしゃむしゃ食っていると、少し遠くの路地を歩いている女性が目についた。長い黒髪が遠目からでも美しく、背筋が見栄え良く伸びている。衣服がジャージというのが残念ではあるが美人には変わらない。

 眼福眼福などと思っていた僕だが、よくよく見てみるとどうにもその人に見覚えがある。と言うか見覚えしかない。

 

 小野町だった。ジャージを着て、犬を連れて散歩をしている。

 生活圏が同じなのでたまにこうして街中で見かけることはあるが、犬の散歩をしているのは初めて見た。部活もやりながら毎日犬の世話もしているのだろうか。学校の中でも外でも彼女は品行方正なんだな、と感心する。

 

 そんなことを何と無しに考えていた瞬間だった。

 ふと、小野町と、目が合った。

 

 心臓が跳ね上がる。小野町が横を向き、彼女を見ていた僕と視線がかち合ったのだ。僕たちの距離はかなり離れているというのに。何故、どうして。今からどのようなコミニュケーションをすれば紳士としての面目が立つ。最悪でもストーカーではないと信じてもらわなければ。

 

 一瞬のうちに様々な考えを巡らせていた僕を他所に、小野町は何食わぬ顔でふいと視線を外し、スタスタと歩いて行ってしまった。逃げられたのか。いや、表情からして僕に気づかなかったのだろう。確かに目が合ったと思ったのだが杞憂だったようだ。

 

 小野町の姿は建物の陰に隠れ、すぐに見えなくなる。無駄に焦って損をした、と思いつつ深く息を吸って吐く。

 

 彼女の顔を見て、僕は一つ思い出したことがあった。小野町の勉学の成績についてだ。中学校の頃から何かと秀でている彼女だが国語、特に古典に関しては無類であり他を寄せ付けぬほどの好成績を維持し続けていると聞く。高校に入ってからも国語と言えば小野町であると有名なものだ。

 

 しかしこの度、僕は彼女に勝たねばならぬ。それが環さんと固く誓った神社再興計画の足掛かりとなるからだ。小野町と張り合うのは色々な意味で気が進まないが、男にはやらなければならない時がある。あるらしい。環さんからそう言われた。

 

 すでに街灯の明かりが映えるほど夕闇が濃くなっていた。僕は急ぎ残りのメンチカツを食べ切ると、足早に帰路に着いた。早く帰って勉強しなればならない。

 

 全ては輝かしい青春を手にするために。環さんが縁結びの力を持つために。

 

 その先駆けとして、学問の神と崇められるようになってもらう必要があるのだ。

 

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