IS<化物は教室の隅っこで>   作:書人

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過去に戻ります。


四話 抜けている人達

 

まあ、なんていうことでしょう!?

 

「受験番号3011 吉田 要だな」

 

「……はい」

 

私の相手が織斑千冬さんだとか!?

 

アリーナの中央に立っていたのは、ISの世界最強だった。

 

……小さい頃から見ているからか、未だにさん付けに違和感がある。いや、最近も時々は見てたんだけども。そういえば彼女が日本に戻って来た時、久しぶりにその姿を見て、あの可愛かった子が立派な大人になったなーって、勝手ながら感慨深く思ってしまったけども。

 

『学園に入ったら先生って呼ばないとね?』

 

うん。いや、それよりも廃スペックを誇る公式チートその1を前に、初めて乗るISで手抜きして、なおかつそれをバレずに合格しろとかどんな無理ゲー!?普通の先生来ると思ってたのに!?

 

「これより実技試験を開始する。ISを起動させろ」

 

「よろしくね」

 

私は小さくそう言って、目の前の打鉄の装甲を撫でた。

 

心に教えてもらったのだ。コアネットワークは自分達(こころ)の通信システムに似ていることと、ISには人の意思のようなものが在る事を。束さんに見つかるまでは、良くチャット会話みたいなこともしていた。心は妹が出来た様だと喜んでいたけど。今の私には、ISの言葉を知れないけども話しかけてみた。

 

 

『緊張するね……本気で行く?』

 

私も緊張するよ。ばれて落ちる位なら、多少目立つ覚悟で本気で行く。よろしくね、心。

 

『ISのとの接続を確認……完了。試合開始と同時にフィッティングするからサポートは少し遅れるかも。いい?』

 

うん。そこらへんは心に任せるからよろしくね。くれぐれも他の人にはバレない様にだけ注意して。

 

『了解』

 

実を言うと私が実際にISに乗るのはこれが初めてだったりする。そして心がISに接続するのは、操作をするのは心だから。私自身のIS適正はかなり低く、逆に心は理論値に達するほど適正値を高く出来る。一応、シュミレーションとして心の作った思考内仮想空間でISに乗ってみたんだけど、一回目は体の動作にISの方が付いて来れなくて、盛大にこけた。あれで実体だったら、足の骨に(ひび)が入る位の衝撃だったから《絶対防御》が発動していたとか。……ぶっつけ本番しなくて本気で良かった。

 

何か選択画面が出てきた。……搭乗許可?

 

「すみません」

 

「どうした」

 

「搭乗許可の選択画面出てきたんですがOKで良いんですか?」

 

「あぁ、構わない」

 

私はOKボタンを押した。その時、誰も気が付かなかった。他の受験者と違い、英語で書かれた長い注意事項の一番下に《登場者の登録を許可するものとする。》と言う一文を追加されていた事に。

 

―搭乗者登録完了『No. lost name Mother』

 

ISの中で秘密裏に行われたその処理工程を、誰も知る事は無かった。

 

 

ISの搭乗を終え、一定の間合いで私と千冬さんは対峙していた。

 

「始めるぞ」

 

千冬さんはそう言って剣を構える。

 

「はい」

 

出されている剣をそのまま腰に据え付け、構えた。

 

「……?」

 

「習った流派の形式なので、お構い無く」

 

習った流派と言うのは嘘。神様に付けてもらった戦闘能力を基礎に、転生者達の戦闘スタイルを色々混ぜた我流。私の戦闘スタイルは、最初に武器は基本出さない。ISでの兵装の呼び出しを瞬時に出来ないから、今回はあらかじめ出した剣を鞘に入れっぱなしにして、腰に付けている。本気で行くなら最初はコレでいい。

 

「ほう……良い勝負を期待している」

 

言い終わるのと同時に開始の合図が鳴った。いきなり加速した打鉄が私の懐に入り、正確に心臓へ突きを放って来た。

 

けど、遅い。

 

私はISと生身で戦って来た。バカな位ステータスを上げられた、転生者達のISに比べればこんなのはなんて事無い。未だに攻撃は心の補助を受けまくっているけど、動体視力と思考速度は鍛えて、自分のものを使っている。今はISのそれより早い。

 

「なっ!!?」

 

私も今はISに乗っているので怪我の心配も無いし。私は突きをギリギリで避けると、そのまま手を掴んで半分背負い投げた。

 

「あっ、しまった」

 

飛んでいく千冬さんを私の間抜けな声が追いかける。いつもだと、このタイミングで心がハッキングを仕掛けて、ISが動かなくなるから同じ様に対応してしまった。

 

ってか、アレだとSE(シールドエネルギー)減らないんじゃ……。しかもさっきの回避、ギリギリすぎて防御が反応して削られてる。そして案の定、千冬さんはすぐに立て直して此方へと襲いかかって来た。そのままつば迫り合いになる。

 

「……ふざけているのか?」

 

「いいえ?先生だって私が追撃をかけていたら終わってましたよね?」

 

「……実戦を舐めてるのか?」

 

空気が一段と重くなる。

 

すみません。追撃掛けなかったのわざとじゃないです!どうせ出来なかったけど、減点怖くて言ってみただけです!

 

千冬さんが力を抜いて離れようとしたから、追撃を掛けたけどさすがに避けられて間を取られた。そして、構えが変わった。

 

「それだけの大口を叩いて、すぐにやられてくれるなよ!」

 

『フィッティング完了!全力でサポートするね!』

 

了解!今度はこっちも出る!

 

心のしていたフィッティングは、イメージ上で考えた私のしたい動きをいくつも出して、可能なものを心にイメージで返してもらい、ISの可動範囲を私が認識する作業になる。それまで心が動かす事が出来ないので、『自力』でISを動かしていたからきつかった。

 

適正が無いからかめちゃくちゃISの反応が遅い。指示とIS動きにかなり間が空くから、体の動きは全部ISに任せないといけないし。そうしないと体を指示通りに動かしてもISが動いていないから、怪我をすることになる。馬鹿な位に思考速度が速く、並列思考が出来るから出来る芸当だった。正直遠距離攻撃で面で攻められたらもっと時間がかかったと思う。

 

体とISが同時に動くのを確認して、私は一気に加速した。

 

「!」

 

うん。いい感じ。ISは継続的な速さがある。けどやっぱり、瞬発的な速さなら生身のほうが速いな。

 

本当の細かい所は、自分の力で動かす。

 

横一線をしゃがんで避け頭の真上にきた刀を、下から抜いた刀で斜めに切り上げる。顎を狙って来た蹴りを左に避け千冬さんを押し倒す。喉元1cmで刀を止めた。ここまでの作業をいつも通り、ほぼ無意識に行っていた。

 

「……まいった」

 

試合終了のブザーが鳴った。

 

…………

………

…あ。

 

『おめでとー……?』

 

勝っちゃった。よりによって世界最強に。

 

『どうしたの?』

 

いや、コレで日陰生活多分終わっちゃったなって……。

 

『え?……あ』

 

ISを解除して、待機状態になった小さな腕輪を千冬さんに渡す。この時、表情を動かさず、内心動揺していた私も千冬さんも、何処かで見ていただろう教師陣も誰一人として気がつかなかった。

 

 

ここに来た時、ISは展開状態で鎮座していたことに。本来コレに待機状態など無いことに。

 

 

 

 

IS学園に合格したはいいけど。……合格通知と一緒に奇妙な手紙が届いた。

 

●月●日

お話が在りますので予定を空けて置いてください。

9:00に迎えが来ます。

 

・追記

なおこの事は極秘とし、情報が漏れた場合は国際機密法に従って……

 

何だ、この物騒な追加文は。

 

 

 

 

で、当日私の迎えに来たのは無事?先生となった織斑先生こと千冬さんだった。

 

「おはようございます、織斑先生」

 

「……近いな」

 

彼女はぼそりと小さく呟いた。

 

「あぁ、先生の家ですか?あっちですよね」

 

「知っているのか?」

 

「ここら辺じゃ有名ですよ?それに私が小学校の頃は、織斑先生を何度か街中で見かけていましたし。まぁ、直接話した事は無いので、私の事を知らなかったのも無理は在りませんよ」

 

今の私の家はIS学園に近く、織斑家からもそれなりに近い。あの事件の後、神様の計らいでこの家に住んでいる老夫婦に拾ってもらったが、2人とも二年前に老衰で亡くなった。

私は寂しかったが、仲のいい夫婦だったのだ。一人残されるより、2人で幸せそうにいけた方が良かったに決まっているからいい。今は両親と、それに加えて老夫婦が残した遺産で、実質一人暮らしをしている。

 

「……で、一体何の用なんですか?」

 

「一緒にIS学園に来て貰う」

 

え?

 

「後、少し早いが今日から寮に入ってもらう事になるかもしれん。保護者の許可はすでに取ってある。事前に教え無かったのはすまない。今から30分で入寮の準備をしろ」

 

ちなみに私の現在の保護者は担当医である倉持さんと言う人だ。

 

 

黒塗りの車に乗り(所謂こういう場面の定番であるリムジンでは無かった。町中で停めるには、目立ちすぎるためだろう)、IS学園に付いた先で私を待っていたのは、スーツを着たお偉いさんらしき人や、白衣を羽織ったいかにも研究者な人たちが居た。

 

そして私の目の前には、差し出された一機の待機状態の打鉄。

 

「……あれ?」

 

何となく知っている気がする気配に首をかしげる。

 

『この子、試験の時のIS』

 

あぁ、なるほど。

 

「どうした」

 

「この子……試験の時のISですか?」

 

「分かるのか?」

 

「勘ですが、何となく」

 

「……このISを起動してみろ」

 

ごく簡単な指示に首を傾げながらISに近寄る。

 

「久しぶり、何だか良く分からないけどまたよろしくね?」

 

小さく声をかける。今度は聞こえていたのだろう。私の後ろに居る織斑先生から訝しむ視線が投げ掛けられていた。

 

『繋ぐね』

 

で、ISを起動させた。で、普通に起動した。すると周りがどよめく。

 

え?

 

「やはりか……」

 

「えっと……どういうことですか?」

 

「実技試験の時。君がそのISを使った後から、そのISは誰にも反応しなくなった」

 

「え?」

 

『え?』

 

「何をしてもエラー画面が表示される《登録されている搭乗者ではありません》とな」

 

「けど登録を抹消すれば……」

 

「出来たら君が呼ばれる事は無かっただろうな。異常事態だが、君はこのISの専用機持ちになって貰う」

 

「え?……えぇぇぇぇえええええええ!?」

 

『それじゃあさ、ずっと一緒に居れるって事?』

 

心は嬉しそうだった。

 

唯一の救いはすでに一夏君がISを起動させていたことで、私自身に研究の手が伸びそうに無かったこと。あと、この『打鉄参式』を自由に改造する許可をもらえた事。

 

細かい身体検査を、幼い頃の事件による火傷痕がひどいため、信頼している人物にしか見せたく無い。と言ったらあっさりと引いてもらえたのには助かった。私の担当医の倉持さんから、詳細のカルテを貰う事でなんとか避ける事が出来たのだ。

 

ついでに傷口を隠せる、特注のISスーツを作ってもらえる事になり、制服も男子の制服の型を流用して、私用に作ってもらえる様になった事は行幸だった。

 

 

いらぬ手続きが減ったのは嬉しいけど……。当たり前の様に事件(あの)の事知ってたね。

 

『危険因子は遠ざけないとまずいし、一通り生徒は全員調べられてると思うよ?』

 

それもそっか。

 

結局そのまま私は入寮する事となった。怪我の事も考慮して、部屋は一人にしてくれると言っていたけど……。それって、原作の方は大丈夫なんだろうか?と思ったけど、本当に一人部屋だった。もともとこういう時の事を考慮した一人部屋が、二つ用意されていたらしい。

 

学校が本格的に始まるまで、かなり快適な生活を送っていた。

 




最初少しふざけました。

ちなみにこの展開だと、主人公が実技100点なのは明らかにおかしいのですが……。
一応理由は考えました。理由の回想があるかは不明です。

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