なので開始はダイブするところからです。
ふざけんじゃねぇよお前オイ!誰が手ェ抜いていいっつったオラァ!
「いつでもどうぞ」
無線での呼びかけに応じながらアスカは自分のプラグスーツの感触を再度確かめていた。むむ、やっぱり動きづらいぞ。ここまでの事を簡潔に整理すると、浅間山内部に使徒の蛹を見つけた為人類史上初の攻勢に打って出るべくその蛹を回収するのが目的だ。
でもこうなるとは思ってなかったな。耐熱性に全振りしたこのD型装備とプラグスーツは…なんていうかまんまるなのだ。すごくまんまる。でも立候補してしまった以上仕方ない。加持さんに見られないのが幸いだな。
「発進」
ミサトの指令により冷却剤を含んだ耐熱ケーブルに吊るされた弐号機が段々と灼熱の海に落とされていく。うひゃー、見た目だけでも十分熱いぞ。本当に大丈夫なんだろうか、大気圏にも耐えられる素材らしいが不安になって来る。そうだ、ここは一発景気付けついでにアレをやろう。
「みてみてカミーユ!」
「?」
「ジャイアントストロングエントリー!」
「…真面目にやってくれ」
そう言うと同時にエントリープラグ内の視界がオレンジ色に染まっていく。ちぇっ、つまんないの。…あれ?ストライドだっけ。まぁいいか。
中に入ると、温度はあまり感じない筈だが視覚的に熱いと脳が錯覚するのか少し生暖かいな。
「何も見えないわね」
ひとまずは溶けずに済んだのを確認したところでCTカメラに切り替えてみるものの、あまり変化は感じられない。若干手持ちのケージが見えやすくなったぐらいだ。透明度120でこれだとすると、見つけるのも一苦労かも知れないぞ。
『1000、1020、安全深度オーバー』
『アスカ、何か見える?』
「視界は絶不調。レーダーにも反応は無いわよ」
ブリーフィングだと大体ここら辺だった筈だけれど…どっかに流されたのか?もっと深くまで潜るのは御免なのになぁ。そう思いつつ深度メーターを睨んでいると背後から嫌な音がした。
なんだ今の。ピキッて言ったぞ、ピキッて。
『第二冷却パイプに亀裂発生』
流石にそのぐらいは起きるか。でも少し驚いちゃうぞ。
『アスカ、どう?』
「まだ持ちそう。早く帰ってシャワーでも浴びたいわ」
『近くにいい温泉があるわ。終わったら行きましょう』
お、楽しみだ。温泉とかパンフレットとかでしか見た事ないからな。どんなところか想像していると、それを中断させる様にまた嫌な音がした。今度は何処だ?
『エヴァ弐号機、ビームサーベル喪失』
マズイな、保険用のサーベルが持っていかれたらしい。だがここで止めるわけにはいかない。
『深度1850。目標修正地点です』
「…いた」
見つけたぞ。よりによってこんな奥に居るだなんて。マグマの中だからだろうか、それとも蛹だからだろうか。見た目は使徒らしさはあまり無い。というか黒い楕円形の形をしているな。
手持ちのケージのスイッチを押すと左右へと枠が伸び切った。いよいよ捕獲だ。
『お互いに対流しているからチャンスは一度しか無いわ』
「分かってる。任せて」
そんぐらいお茶の子さいさいよ。プールに流される様な感覚を味わいながら使徒に近づくと、さっき伸ばした枠から出たバリアが使徒を覆い尽くした。丁度長方形の形になる。
これでおしまい、後はケージを持ったまま待つだけだ。
「使徒の捕獲完了。これより浮上します」
無線越しに安堵の声が聞こえてきたぞ。やっぱりあっちも相当気をつかってくれていたらしい。ちょっと嬉しくなるな。
ん?カミーユからの無線だ。
『アスカ、大丈夫か?』
『大丈夫よ、案ずるより産むが易しってね。やっぱ楽勝じゃん」
『それなら良かった』
いつも通り不機嫌そうな声色だが、声を掛けてくれるだけあの凶暴犬にも優しさがあるのだろうか。…いや無さそうだな。この前もプリン勝手に食べた癖に逆ギレしてきたし。
…嘘でしょ?嘘嘘嘘嘘!勝手にケージが動いてる!
「何よこれぇー‼︎」
『マズイわ、羽化を始めたのよ』
そんなの聞いてないわよ!悍ましい呻き声と共に先程までの楕円形がみるみる姿を変えていく。所々新しく生えた触手がケージのバリヤを突き破ってきた。
『捕獲中止。ケージを破棄!』
ミサトに従って緊急用の赤スイッチを押すと、手元から爆発したケージは羽化を始めた使徒を乗せて落下していった。
『作戦変更、目標は使徒の殲滅。弐号機は即座に戦闘準備!』
「待ってました!」
意気揚々と宣言するものの、言った後で気づいた。サーベルは遥か地下深く。素手で戦えるかと言うと、捕獲用の簡易アームに換装してあるので使い物にはならない。
重りであるバラストを外して機動性を上げようとするものの、今しがた突っ込んで来る使徒を避けるのにもスレスレだ。というか掠ったぞ。
相手は予想以上の速さだが今の所はこれで時間を稼ぐしか無い。
視界は悪い、やたらと暑い、スーツは汗でべっちょりとして気持ちが悪い。最悪だな。
次の攻撃に備えるべく姿勢を整えていると、嬉しい知らせが入って来た。
『アスカ、今のうちに初号機が貴方の所にサーベルを投げるわ。受け取って』
「了解」
頼むぞカミーユ。アンタの投擲技術次第で私の命に関わるんだから。
『使徒、急接近中!』
遅い!もっと早く投げられないの⁉︎目の前から来る突進に身を守ろうとするものの、あっという間にガードは崩される。
「来た!」
やっと来たサーベルに手を伸ばして掴み取り、胸に飛び込んできた使徒に突き立てるものの、火花を散らすだけでまるで歯が立たない。
「こんちきしょおぉぉお‼︎」
何度突き刺しても駄目だびくともしない。しかも口を開けて噛み砕こうとしてきたぞ。マグマに耐えてるんだからそりゃ効かないだろうが、どうすればいいって言うんだ。
何か無いのか?この際何でもいい!使えそうなモノは…。…そういえばこの前読んだ本で銃が熱膨張で撃てなかったと書かれていたが…、熱膨張?そうか熱膨張だ!ふと思い出したぞ。
手頃な冷却パイプを千切り、使徒の口へと突っ込む。
「三番の冷却パイプの圧力を最大にして!」
消防のホースの様にぶち撒けられたそれは使徒の体内へと入っていき、その硬質化した外皮はお湯が注がれたカップが氷水につけられた様にビキビキと割れていく。
その外皮の境を狙ってサーベルを突き刺すと…ビンゴ!
後は格段に柔らかくなった体をバラバラに切り刻んでやると、使徒はその体を朽ちらせ藻屑へと化していった。
だがこっちも終わりそうだ。何てったってさっきの使徒の攻撃で残りの冷却パイプが千切られ、冷却液は乾いてしまった。
冷却液を失った装甲が次々と凹んでいくのが分かる。
「せっかくやったのに…ここまでなの?」
重量の底に堕ちていき、絶望を覚えた空に手を伸ばすと、動きが止まる。思わず見上げると、紫の巨人が私を見つめていた。私の腕を掴んで。
ああ、無理しちゃって。
装備も無しで、全身火傷レベルの痛みを背負っているだろうに。
その巨人の顔は、あの映像と同じだった。ドイツで私が資料として見た、炎に揺らめきながらも民間人を守ったあの顔と。
そこに私は安堵を覚えながら、深い意識の底へと落ちていった。
─────
風呂上がりでポカポカした気分の中、赤木リツコは売店で買ってきたコーヒー牛乳を嗜んでいた。やはり風呂上がりは格別だな、これからの残業も苦もなくやれそうだ。マヤとカミーユも手伝ってくれるそうだし、話題には事欠かなそうだ。
おっと、着信だ。テーブルの上の端末に手を伸ばして見てみれば、相手はレイだった。
「…もしもし、赤木博士」
「あら、どうしたの?こんな時に」
「…その、温泉はいかがでした?」
「ええ、とっても気持ちよかったわよ。日頃の疲れがごっそり取れたわ」
「…そうですか」
「…」
もしかして
「レイも来たかった?」
「…」
やっぱりそうか。なんとなく分かったぞ。
「次機会があれば一緒に行きましょうか」
「…」
「それじゃ切るわね。おやすみ」
「…おやすみなさい、赤木博士」
端末をテーブルに置き背もたれに背中を預けると、どっと息が出た。レイにも寂しいという感情はあるのだろう。罪悪感が出てくるな。せめてひとりぼっちにさせない様に何かしてあげられれば…。カミーユ君の影響か、前よりレイにも情が湧いてきた気がするな。喜ぶべきなのか否か。
…お、いいアイデアが思い付いたぞ。ふと浮かんだアイデアをメモりつつ、赤木リツコはコーヒー牛乳をグイッと飲み干すのだった。
はい、という訳で温泉のシーンはカットです。申し訳ない。
ちゃうんすよ、面倒くさかったとかじゃないんすよ。
本当なんです!信じてください!
てな訳で次回、アレがちょろっと出て来ます。
エンディング
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バッドエンド
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ビターエンド
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ハッピーエンド