「おいでなすったわね」
あちこちで報告と対処が行われる司令室で、警告の文字が大きく映し出されたモニターをミサトは見つめていた。
カミーユによる第一波が行われてから数分後、使徒は大気圏への再突入を開始、間もなく作戦区域に突入する。
「二次的データが当てにならない以上、現場各自の判断を優先します。貴方達に全て委ねるわ」
落下予測地点をカバーできる範囲に置かれたエヴァ二機へと無線を送る。今回の作戦では使徒がどこに落下するか、コンピューターの計算では追いつかないため、パイロット達の判断が重要になる。
ただでさえ二人だけなのだ。
「では作戦開始」
背部に接続されていたアンビリカルケーブルが高温の水蒸気を噴出しながら地面へと落下する。
「発進」
エヴァ2機はクラウチングスタートの姿勢から、思わず滑りそうになる程脚を早く動かす。大きく踏み込み地面が抉れると、その40mある巨体は前は前へと進み出す。
最早周りの被害などお構い無しだ。川からは派手な水飛沫が飛び、アスファルトを砕く。
零号機は山を軽やかにステップし、頂上を超えると大きく踏み込みジャンプした!あまりの高さに、一瞬コクピット内が無重力になる。地面へ着地すると、田んぼは大きく陥没する。
弐号機は送電線で編まれた柵をハードルの要領で飛び越え、更にはその背部と脚部の大出力スラスターを蒸すと、地面、或いはビルを蹴り始めた。
スラスターの最大出力を維持し、反作用を使う事で更にエヴァの速度は上がる。その速度、見る物が見れば三倍速く錯覚するであろう。その機体ペイントも相まり、まさに赤い彗星。
「目標、ATフィールド変質!予測地点に変更あり!」
「これでも間に合わないの⁉︎」
使徒は大気圏から脱出すると身体を硬化させ、そのATフィールドをより本部落下へと適したものに変えさせる。
「私が何とかする」
アスカの悲痛な叫びに応じたのはレイだった。レイがレバーを握り、更に身体を前のめりに倒す。
もっと速くと望むレイに応える様に零号機はその速度を音速へと近づける。
『…………』
一瞬零号機のバイザーがほんのり赤くなったかと思えば、背部バックパックから更にスラスターが出現し、零号機の速度を飛躍的に高めた。
遂にはそれは音速へと達し、途轍もなく大きな破裂音が辺りに響く。遂には音の壁を突破すると衝撃波が発生する。
零号機が通った道の半径2kmの建築物は軒並み吹き飛ばされ、その速度がどれだけ異常か物語っている。
遂に使徒も肉眼で大きく確認出来た。脚を大きく前に突き出し、零号機は地面へ跡をつけながらブレーキを掛ける。使徒の中心に位置する巨大な目がじっとこちらを見つめている。まるで止めてみろと挑発するようだ。
「ATフィールド全開!」
レイが拒絶を最大限意識し集中すると、それに呼応する様に大地が割れ、風景が赤く染まった。両腕を天に翳してみればそこには直径200mはある巨大なATフィールドが展開される。
「ッ!」
するとATフィールドに使徒が激突し、円を描いた衝撃波が街を襲う。余りの重さに零号機が踏んだ大地は陥没し、腕からもギシギシと嫌な音が聞こえる。恐らく零号機内部の骨がアラートを知らせているのだろう。
その痛みはレイにもフィードバックされ、思わずレイは歯を食いしばる。
「……弐号機、コアを………ッ⁉︎」
「分かってるわよ!」
ようやく着いたアスカが返事を返すと、弐号機はウェポンラックから突き出されたビームサーベルを右手で掴み起動する。
金色の刃が辺りを淡く照らすと、使徒のATフィールドを容易く切り捨て、コアへ向け一突き!
「外したっ⁉︎ちょこまかと!」
当たったかに思えたが、実の所使徒は直前でコアを移動させ回避していた。
クルクルと中心部分を高速で回転するコア。予想外の動きにアスカは戸惑ってしまう。
「はや……く…!」
「ええいままよ!」
直感に任せて左へ切り上げると、運良くコアが引っかかり、コアの半分ほどまでサーベルが届いた。
サーベルが突き刺さるコアは少しひび割れ、火花を散らしている。
「もういっちょおおおぉぉぉおお‼︎」
その姿勢から更に弐号機は左足でコアを右方向へ蹴った!サーベルへと追い打ちを食らったコアは真っ二つに割れ、赤く脈打つ鼓動を停止する。
すると先程まで怪しく蠢いていた使徒の身体が、脱力したかの様にエヴァへと覆い被さり、その生命活動は完全に終了した。
ーーーーー
「碇司令から通信が入っています」
「繋いで」
南極からの通信に、ミサトは内心肝を冷やしていた。なんせ三機共多大なダメージを負ったのだ。お叱りを受けるだろう。
あちこちで損害報告が飛び交う司令室の中、ミサトは姿勢を正した。
「申し訳ありません。私の独断でエヴァ三機及びパイロットに大きな損害を与えてしまいました」
『いや、良くやってくれた。葛城三佐』
「ありがとうございます」
だが通信越しに聞こえる声には怒りなど含まれておらず、いつもと変わらないトーンで司令は言ってきた。信頼しているのか、それともこうなると知っていたのか。相変わらずよく分からない人だ。
『初号機パイロットに繋いでくれるか?』
「分かりました」
実の息子へ何を伝えるのか。気になりながらミサトは回線を繋ぐ。
……だがカミーユからの反応が無い。ゲンドウは不思議に思った。何回か呼びかけても返事が聞こえないのだ。
「カミーユ、いるか?」
「碇……もしや」
「いやそんな筈は」
『大気圏外より飛翔体が接近中!ここに来ます!』
「え」
その報告に首を傾げると、ゲンドウ達の船の近くへその飛翔体が墜落してきた。その衝撃で船は大きく揺れ、悲鳴を上げる。ゲンドウが手すりに捕まり姿勢を立て直すと、窓の外に移ったソレに思わず目を見開く。
「初号機が何故ここに……」
そこに立っていたのは、全身ボロボロの初号機だった。装甲は焼け爛れ、隅々が黒く焦げている。大気圏再突入の際に酷く損傷したのだろうか、その姿はお世辞にも大破では済まないだろう。
「何をしている?」
初号機がゲンドウ達の船の背後へ近寄ると、窓からは見えなくなってしまう。
不可解な行動に戸惑いながら、カミーユとの通信回線を確認するがまだ反応はない。
「お前を殺しに来たのかもしれんぞ、碇」
冬月からの一言でゲンドウは余計焦った。どうしたものか、脱出できないものか。そんな事を考えていると廊下のドアが開いた。
「探しましたよ、父さん」
「か、カミーユ」
「こんな時に、何やってるんです!そんな所で‼︎」
「ま、まっ(ry」
驚愕の表情に染まるゲンドウの顔を二発三発と空手有段者であるカミーユの拳が叩く。次第に顔はアザが増えていき、両目も開けられなくなってしまった。
「碇……」
またもやゲンドウはカミーユに殴り飛ばされ、顔を包帯で覆う事になったのだった。
エンディング
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バッドエンド
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ビターエンド
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ハッピーエンド