「貴方がカミーユビダン君ね?」   作:クソザコぎつね

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ほぼ原作と同じです。(チルドレン達の出番はほぼ)ないです。



母の亡霊 壱

 

「るるぶの隅っこにあった奴だけど、意外と美味しかったわよねあのラーメン屋」

 

「メニューが変わり種しかなかったのは考え物だけどな」

 

数日前の第十使徒戦後立ち寄った屋台だったが、フカヒレチャーシューやイカ墨ラーメン等中々愉快な味が楽しめた。

ふとレイの方を見やると、その時の味を思い出しているのか少し表情が柔らかくなっている。肉嫌いなレイが楽しめたでだろう事は良かったが、そこでカミーユは一つ質問を投げた。

 

「ところで、レイはいつも何食べてるんだ?」

 

「前はNERVの保存食。たまに……コンビニ」

 

その発言にカミーユとアスカは少し引いた。なんせNERVの保存食というのは味がとてつもなく酷い。今はアスカが料理当番を担っているが、彼女がまだ未熟だった頃料理代わりに出してみたところ、口にした三人共々吐き出す始末だった。

内容は様々な味のペーストが幾つかと、水のみ。もし世界が滅んだとして、これを食べるNERV職員が可哀想でならないと二人は思っていた。

 

「レイ……、保存食の味はどうだった?」

 

カミーユが恐る恐る聞くと、レイは即答した。

 

「おいしくない」

 

「「やっぱりか……」」

 

そうして三人が歩いているとNERV本部内の更衣室へと着いた。今日の予定はハーモニクステストであったが、なんでもリツコが言うにはいつもと少し違うらしい。

 

2人と別れて指定された個別の更衣室に入ると、アスカは奥に一つ扉が設置されているのを見つけた。近づいてみると、それは水密扉と似た形をしている。

 

(まさかここに入れって言うんじゃないでしょうね……)

 

少し顔を顰めながらもアスカはシャワーを浴び、着替え用の下着を履く事にした。いつもはプラグスーツが置いてあるはずだが。

 

『着替えが終わったら、奥にある扉へ入ってちょうだい』

 

部屋に設けられたスピーカーから出た声はリツコのものだった。言われるがまま、少し力みながら水密扉もどきを開けるとそこは真っ白な小部屋が広がっている。

 

『そこで下着を脱いでくれる?』

 

小部屋で下着を脱ぐと、左右から消毒スプレーらしきものが全身に吹きかけられる。あまり良い気分はしない。

恐らく他の更衣室もここと似たような部屋に繋がっているのだろう。小部屋を出ると三人ともそれぞれ別の白い大部屋へと通じた。

 

『後はAIが滅菌処理をしてくれるから、その指示に従ってもらうわ』

 

「えぇ〜⁉︎また消毒?」

 

『そこから先は超クリーンルームですからね、シャワーを浴びてちょっとスプレーをかけただけじゃ足りないのよ』

 

「なんでオートパイロットの実験でこんな事しなきゃいけないのよ」

 

アスカは項垂れるように言った。

 

『技術の世界は日々進歩しているの、新しいデータはすぐにでも必要だわ』

 

それからというものの全身に先ほどのスプレーを10倍近くかけられたり、明らかに台風レベルのエアシャワーを浴びたり、熱風でサウナ状態になった後冷風で寒暖差にやられたり、しまいには消毒プールという名の水責めにあったりと、散々であった。総滅菌処理回数は17回、潔癖症の楽園だ。

 

「……もう二度とやりたくない」

 

アスカはヘトヘトだった。

 

「同感だ」

 

「私も」

 

三人は思った。このシステムを考えた人はきっと余程のドSなのだろうと。身近に1人やりかねない人がいるが、そんな事は後回しだ。

 

『では三人とも、その姿のままエントリープラグに入ってちょうだい』

 

「……何が望み?」

 

もうアスカに言い返す気力は無い。

 

『このテストはプラグスーツの補助無しでどれ程のハーモニクスが可能かが主旨なの。大丈夫、カメラ映像は切ってあるから』

 

(そういう問題じゃ無いわよ……)

 

疲弊した体に羞恥心という名の火が灯った。

 

 

 

『全パイロット所定位置につきました』

 

「テスト開始」

 

『了解』

 

開始の旨を伝えた後、リツコはガラス越しの模擬体3つに目をやる。模擬体には多数のケーブルが繋がれており、胴体と腕部のみしか存在しない。専用の液に浸されたソレは見るものに不気味な印象を与える。

今チルドレン達にはその模擬体の中のエントリープラグへと入ってもらっている。

本来であればちゃんとエヴァを使うべきなのだが、生憎二機は修理中。残る一機は時田シロウ等JA開発部門や戦自研が合併した新技術研究部門へと改修に回されている。

 

『オートパイロット異常無し』

 

『システムを模擬体と接続します』

 

「シミュレーションプラグ、MAGIの制御下に入りました」

 

マヤが報告した通り、モニターにはMAGIの演算処理の過程が早送りの様に流れていく。

 

「おぉ〜早い早い、MAGI様様だわ。初実験の時が嘘みたい」

 

その速度にミサトも称賛の声を上げる。手持ちのマイクを口に近づけ、リツコはパイロットに呼び掛けた。

 

「気分はどう?」

 

『何か違うわ』

 

『慣れない感じがします』

 

『感覚がおかしいのよ。右腕だけはっきりしてて、後はぼやけた感じ』

 

「レイ、右手を動かすイメージを描いてみて」

 

『はい』

 

そう言うと、レイが乗り込んでいる模擬体の右腕が少し動いた。

 

「問題なさそうね。MAGIを通常に戻して」

 

すると、先程までの処理過程から通常の審議状態へとモニターが切り替わる。

 

「ジレンマか……。作った人間の性格が窺えるわね」

 

「何言ってんの、作ったのはあんたでしょ?」

 

「貴方何も知らないのね」

 

リツコは呆れながらに言った。

 

「リツコが私みたく自分の事ベラベラ話さないからでしょ」

 

ミサトが不貞腐れながら呟く。

 

「そうね」

 

ミサトの言い分を肯定した後、先ほどの答えを教える。

 

「基礎理論と本体を作ったのは、母さんよ」

 

そこで区切るかの様に、設置された電話が鳴り響く。マヤがそれを手に取り内容を聞くと、少し困った表情になった。

 

「どうやら侵食の様です。この上のタンパク壁からだそうで」

 

「参ったわね。テストに支障は?」

 

「今の所は」

 

「では続けて。このテストはおいそれと中断する訳にはいかないわ。碇司令もうるさいし」

 

「了解」

 

マヤが受話器を置くと同時に今度はけたたましい音量のアラートが鳴り響いた。耳をつんざくあまりの音量に思わずビクッとする。

 

「どうしたの⁉︎」

 

「シグマユニットAフロアに汚染警報発令!」

 

「第87タンパク壁が劣化、発熱しています!」

 

「第六パイプにも異常発生」

 

「タンパク壁の侵食部分が増殖していきます!……ッ、爆発的スピードです!」

 

瞬きする間に、タンパク壁を表すハニカムがオセロの様に次々と塗り替えられてしまう。

 

「実験中止!第六パイプを緊急閉鎖!」

 

言われるがまま全閉鎖のスイッチを押すとパイプは物理的にシャッターで区切られ、完全に閉鎖する。

 

「60、38、39、閉鎖されました」

 

「6の42に侵食発生!」

 

「ダメです!侵食は壁伝いに発生しています。閉鎖では止められません!」

 

「ポリソーム用意!」

 

侵入者迎撃用遠隔操縦機銃POLYSOMEが壁面から姿を表し、侵食してくるであろう部位へと照準を移す。

 

「侵食部6の58に到達、来ます!」

 

辺りは緊張に包まれ、今か今かと使徒を待ち続ける。だが10秒経っても何の物音もしない。不思議に思ったその矢先、今度はレイが悲鳴をあげた。

 

「レイ⁉︎」

 

レイの模擬体が右手をぎこちなく動かし、壁を叩く。

 

「そんなまさか!」

 

身体中のコードを、まるで拘束から逃れる様に次々と引きちぎる模擬体。それと同時に先程の侵食部位が動きを見せる。

 

「侵食部さらに拡大、模擬体の下垂システムを犯していきます!」

 

身体中を身震いさせながらリツコ達のいる制御室へと次第に腕を伸ばし続ける模擬体。

咄嗟にリツコは手元の緊急用と書かれたガラスを叩き割り、その中に埋め込まれたレバーを目一杯引いた。

 

すると模擬体に仕込まれた爆砕ボルトが起動し、右腕を吹き飛ばした。吹き飛ばされた右腕が制御室のガラスへと勢いをそのままに衝突、室内を大きく揺らす。

 

「レイは⁉︎」

 

ミサトが声を上げる。

 

「プラグを緊急射出!レーザー急いで!」

 

「はい!」

 

マヤへと指示を飛ばすと、即座にエントリープラグのジェットが起動し、実験室上部のシャッターが開く。

 

「三人とも衝撃に備えて!」

 

リツコが手元のマイクで注意を促した後、すぐにプラグはジオフロント内部へと射出された。

プラグスーツ無しのチルドレン達へかかる衝撃は凄まじいだろうが、命を失うよりはマシだ。

 

一方機銃。侵食を再度開始した部分へとレーザーを放つと、特徴的な音と共にそれは遮られ、目標には傷一つつかない。

 

「ATフィールド……?」

 

「分析パターン青……間違いなく使徒よ」

 

リツコが告げると、本部内隅々に警報が発せられる。それは司令室にまで届いた。

冬月が電話を取り、ミサトに誤報では無いか確かめる。

 

「使徒の侵入を許したのか⁉︎」

 

『申し訳ありません』

 

「言い訳はいい」

 

冬月は受話器を片手に指令を出す。

 

「セントラルドグマを物理閉鎖、シグマユニットと隔離しろ!」

 

冬月へと確認の旨を送ると、ミサトは制御室内の職員へと呼びかけた。

 

「ボックスは破棄します!総員退避!」

 

監視用のガラスは次々とひび割れ、今すぐにも実験室内の液体が侵入してきそうだ。

 

「なに突っ立ってんの!早く逃げるわよ!」

 

呆然とした表情で実験室内部に視線を注ぐリツコの手を取り、ミサトはギリギリ制御室から脱出する事に成功したのだった。

 

 

 

 

 

片手に持ったディスクを落とさぬ様に慎重にパイプを渡ると、先程まで鳴っていた警報が鳴り止んだ。

 

「誤報って言っても信じちゃくれないですよ、あの人達は」

 

頭上を見上げてみれば、怪しい影が赤い光を発しながら蠢いているのが確認できる。

 

「あれが使徒か……、どさくさに紛れて逃げられそうだな」

 

パイプを降り、確保しておいた逃げ道へと着地すると、加持リョウジは闇の中へと消えていった。

 

 




遅れてしまい、大変申し訳ありません。サボってたのと、ストーリーを一部考え直してました。
いやほんとすいません。

エンディング

  • バッドエンド
  • ビターエンド
  • ハッピーエンド
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