「……?」
カミーユは暗い病室の中、目を覚ました。どのくらい眠っていたのだろうか。辺りに時計がない事を確認すると、深くため息をつく。
何があっただろうか、使徒の攻撃を受けたわけでもない。今日は互換性実験で、零号機に搭乗していた筈だ。
だが嫌な感じだった。
何かが頭に入って来るような。
「目、覚めたのね」
「オハヨウ、オハヨウ」
そう言ってドアから入って来たのはレイとハロだった。盆に乗せられた病院食を手に持っているが、どうやら食事を持って来てくれたらしい。
「ハロ、今は何時だ?」
「19時34分」
「思ったよりだな……」
てっきり深夜かと起きた時思ったが、意外と眠っていたのは短い時間のようだ。
「なんでレイが持って来るんだ。普通は職員の誰かじゃないのか?」
「赤木博士が、私なら何か聞き出せるかもって」
「リツコさんが」
「何か思い出した?」
レイはベッドに備え付けられた簡易式のテーブルへ病院食を置くと、隣の椅子へ腰掛けた。どうやらこのまま聞くつもりらしい。食べながら話すとしよう。
「具体的にはなにも……ただ」
「ただ?」
「何かがいて、……繋がったような、頭を共有しているような感じがした」
「そう」
「何かあったのか?零号機に」
「零号機がカミーユ君を侵蝕した」
その言葉に驚くと、カミーユは手に持っていたスプーンを落としそうになった。零号機が、エヴァがパイロットを侵蝕した。これまでに初号機では無かった事だ。
「大丈夫?」
「あ、ああ……すまない」
どうやらレイはカミーユの手から零れ落ちたスプーンを拾ってくれたようだ。
受け取ろうとカミーユは思わずレイの指に手が触れる。すると脳に電流のようなモノが走り、激しく焼け付く。
「カミーユ君?」
レイが話しかけるも、今はそれどころではない。痛みは無いのだ、ただあるのはとてつもない嫌悪感のみ。
「レイ……?」
脳内に溢れ出すは綾波レイの記憶。文字通りだ、自分のでは無い。自分から見た綾波レイでは無い。
文字通り他人の記憶。
笑顔のレイ、悲しむレイ、怒るレイ、様々なレイがカミーユの頭に流れ込んでいく。
カミーユが知っているのは14歳のレイな筈。だがどうだ、映り込んだのは全て7歳かそこらの姿だ。
「うわぁぁぁぁァァァァァ‼︎」
ーーーーー
「今はそっとしておきましょう。幸い汚染はないと出たから」
「分かりました……」
何処か心配そうレイが研究室から出たのを確認した後、リツコはコーヒーメーカーを起動し、頭を抱えた。
何故零号機のコアがカミーユに接触しようとしたのかは分からない。だが考えられる内で最もあり得るのは、カミーユを人質にしようとした、それだけだ。なんたって零号機がカミーユを侵蝕し、暴走を始めた時。その振り上げた拳は全て自分を狙っていたのだから。
「今更謝っても無駄よね……」
ミサトからも、今回の件で大分怒られてしまった。当たり前だ。家族に近しい存在が自分のせいで危ない目に遭ったのだ。コア……いやブラックボックスと言った方が正しいだろうか。
開発したのは大方ゼーレだろう。老人達が強制的に搭載してきた為、手を加える事も出来ない。
EXAMシステム、それと開発中のダミーシステム。その二つの事を考えながら、リツコはいつにも増して苦いコーヒーで頭を濁した。
「せっかく初号機が帰ってきたのに、申し訳ない事をしたわ……」
ーーーーー
「……」
広いケージの中、すっかり変わり果ててしまった初号機をレイはじっと見つめていた。
確かにさっき思い出したのだ。カミーユに触れた時、自分が初号機の中で見たものを。
「貴方は誰?」
白く染まった巨人は今宵も眠り続ける。
おや?カミーユの様子が……
帰ってきた初号機が活躍するのはもうちょい先になりそうですね。
エンディング
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バッドエンド
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ビターエンド
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ハッピーエンド