拙いです。
文法等無茶苦茶かもしれません。
楽しんで頂ける作品になってればなと思います。
『私がここまで話せる男子なんて珍しい』
誰もいない部屋で一人、虚空を見つめていた俺がふと思い出したのは何気ない一言だった。
(あの子……今どうしてるかなぁ……)
たった数ヶ月前、高校に通っていた頃の日々を思い返す。
「はぁい、じゃあ、次はここやりますのでぇ、心の準備しといてくださぁい」
「「「ありがとうございましたー」」」
「ありがとぉございましたぁ」
妙に間の抜けた話し方をする教師と終業の挨拶を交わした直後、急激に騒がしくなる教室内。
一限目から古典という、ヘビーなスタートなこともあってか、いつもよりも周囲が騒がしく感じる。
談笑する女子達や授業中も机に突っ伏している男子、突如として行われるプロレス大会など、休憩時間の使い方は十人十色だ。
だが、俺にはそんなことなどどうでもよかった、ある一点を除けば。
毎日毎時間、授業の終わりを俺は密かに楽しみにしている。
それはなぜか?
好きな人と会話ができる、唯一のチャンスだからだ。
会話というような会話はないがそれはともかく。
誇るように言うことじゃ無いが、俺は学力、容姿、運動能力etcが心許なく、特に対女性コミュ障だ。
もはや腐れ縁と言っても過言ではない親友からは
「お前ってそういうの(恋愛方面)には興味無いもんな」
と勝手に決めつけられる程である。
そして進級して少し。
何故か同クラスの男衆の共通認識に近しくなっている。
女子と会話するとしどろもどろになる俺が悪い、とはいえ心に来るものがある。
そして彼女、工藤玲奈はクラスでもあまり目立たない方だった。
そんな人と俺のようなヘタレが話している場面が想像できるだろうか、いや、ない。無茶にも程がある。
そんな環境などもあってか、席を利用した出待ちのようなことをしている。
(どうしてこうなった……)
隣や前の席の友達と他愛のない会話を繰り広げる中、俺の思考は俺の置かれた状況に対しての疑問に満ちていた。
(あぁ……きっとまた……)
過去を振り返る。
と、言っても1年かそこら程の過去だ。
ーーほろ苦さは1番なのだけれど……
「あ、あの……ごめんね?」
「え、あ……ごっ、ごめん!」
物思いに耽っていると想い人に話しかけられる。
それはそうだ。俺の席はロッカーのすぐ前なので、座り方によってはどかさなければ開けられないのだから。
そして俺は椅子の前脚を浮かべ寄りかかっている。
……印象最悪だろ。
「あの、ほんとごめん!」
そう言いながら自分でも驚く速度で立ち上がる。
「いいよ?大丈夫!すぐ終わるから!」
はにかみながらそう言うと彼女は、準備を終えてそそくさと自分の席へと戻る。
(ウワァ…オワッタワコレ)
自らが望む状況でさえものにできやしない。
それどころか状況を悪化させてしまった。
ーー無能が
そんな自己嫌悪を、俺は繰り返す。
今までもそうしてきた。
きっとこれからもそうするのだろう。
「どうしたもんかなぁ……」
もはや恒例となったひとりごちだ。
無能だろうがヘタレだろうが、これからの人生を独り身だと思うとやはり精神的にくるものがある。
何かを悩むような独り言の理由は明白だろう。
あまりにも接点が無さすぎるのだ。
今日のを何回も繰り返すわけにはいかない。
というか繰り返してはいけない。
ストーカーばりの接点作りにも限界がある。
席替えはとっくの前に終了済み、担任の意向による女子の席の固定化により、数回の好機もまるで無いようなものだ。
「なんかのイベントでもあればなぁ……」
と言っても特に何も浮かばない辺りに性格が滲み出ている。
自分が好きな人と結ばれている未来など見えやしなかった。
「……はぁ……」
特に何もしていないのにその日一大きなため息がもれた。
「いや、そうはならんだろ!」
思わず叫んだ。
回想したがどうあがいても
『私がここまで話せる男子なんて珍しい』
と、言われるほどまで距離を縮められる要素が無かった。
……なんでそんなこと言われたんだっけ。
勉強はできない手前大声では言えないが、記憶力には自信があった。
はずなのだけれど全くと言っていいほど思い出せない。
「うーん……ん?」
視界の端に光るものが見えた。
大仰に言えば俺の相棒だ。
ただのスマートフォンなのだが。
流行りのメッセージアプリに着信が入ったらしい。
(ええと、なになに?)
差出人は某アーケード対戦ゲームにて仲良くなった友人。
要件は
[人生初彼女出来たわ!]
……ゑ?
目を擦り、もう一度画面を見つめる。
[人生初彼女出来たわ!]
(一緒に魔道を極めるって言ったじゃないか……)
遥か遠くを見つめる。
(まぁ、でもおめでたいよな……)
そう思い紡ぎ出した言葉は……
[よかったやんけ、俺の青春は……」
(あれ?)
キーボードを打つ指が止まる。
思い出した。
色々なことがあって忘れていたけれど、確かに思い出した。
彼女との距離が縮まった出来事を。
基本美化されがちな回想の中でさえ、ただのモブ感を拭えなかった俺が経験した、凡庸の恋を。
「……これじゃただの皮肉だな」
自嘲ぎみに呟き、書き換えた文を友人へと送る。
[おめでとう!お陰で大事なことも思い出せたし、ありがとう!]
卑屈な考えをしがちな俺が出した、心よりの賛辞。
心が晴れる、そんな感覚がした。
そして今度こそ思い返す。
楽しかった高校生活を。