外見至上主義から実力至上主義へ   作:仁611

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No.1

俺はコンプレックスの塊だ。

 

学力・運動・財力はかなり自信があったが、見た目が不細工で誰からも認められる事は無かった。大学だってハーバード大を出て弁護士として経験を積み、検察事務官と裁判官として数年は経験を積んだ。

 

だけど、実際には経験値があるだけで功績の多くを同僚のイケメンに奪われてしまい。最終的に判事を辞めて郊外で弁護士をする事になったのだが、イケメンは過去に犯した罪を俺の責任にして俺は法曹界から追放処分を受けた。

 

 

見た目が気持ち悪いからと言うだけで、証拠など不十分な程度での処罰だったが、俺には信じてくれる者は一人も居なかった。余りの無力さに、俺はヤケ酒を浴びる様に呑んだ翌朝だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

知らない天井……。

 

 

 

 

 

俺が目覚めたのは知らないマンションの一室で、普段感じる気怠い感じの肉体では無く、感じた事の無いほど爽快な目覚めを迎えた。立ち上がって直ぐに違和感を覚え、部屋の間取りに覚えが無いが洗面所を目指した。

 

そこに映っていたは、スマートな体型の細マッチョで無駄を感じない肉体と、銀色の髪が光を反射すると神々しさすら感じ、目鼻立ちはシャープで色気を発している上に綺麗なアクアブルーの瞳…。

 

全てが作り物の様な容姿をしていた俺は、昨夜のヤケ酒で頭がおかしくなったのでは無いかと、状況を整理する事にした。

 

 

 

 

家捜しを1時間程行ったが、ハイブランドの洋服や靴達と金額がおかしな通帳やこの身体の持ち主の日記。マンションは2LDKとかなり広い家ではあるが、俺以外誰も住んでいない様だった。

 

リビングには『東京都高度育成高等学校』と書かれた入学案内とパンフレットが置かれ、日記を見ながら聞いたことがある学校名に混乱しながらも読み進める。

 

 

 

 

 

 

彼の名前は『鳳眞 愁』(ホウマ シュウ)

 

 

現在15歳だが身長は182㎝もあり、血液型はA型で誕生日は6月11日の双子座……。

 

身長や年齢以外のプロフィールは同一だ。元の俺も名前は同じで血液型や誕生日も同じだが、見た目や生活環境が全然違う。両親は他界しているようで、祖母がいるが要介護者らしく病院のVIPルームで介護を受けながら生活を送ってるみたいだ。

 

財産に関しては、弁護士が成人するまで実家や遺産を保管しているようで、俺の手元にあるのは両親が存命中に為替で稼いだお金の様だ。実家は老舗旅館を12程持つ江戸時代から続く家系で、身体の母親はロシア人でハーフらしい。

 

生まれすらチートだが、明らかに都合よく準備され過ぎている環境とよう実世界と同じ学校名…。俺は異世界転生でもしたのだろうかと疑っている。

 

アメリカから日本へと帰ってきたと日記に書かれているが、元住所が俺の住んでた場所になっているし、アメリカでは6月に卒業してるはずだから、半年程日本に住んで何かしらしていた事になるが、そんな形跡が一切無いのも不自然だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は神様の接触がないまま、それからの1ヶ月半はこの身体とのズレを修正して過ごした。未だに慣れない女性の熱い眼差しを感じながらも、高度育成高等学校へ向かうバスに揺られている。

 

首には、この身体の両親がはめていたらしいエンゲージリングをぶら下げながら、窓の外を眺めていた。

 

 

「ねえ貴方…お婆さんに席を譲ろうとは思わないの?」

 

 

俺が感慨深い思いをしていたら、鐘の様に響き渡る声が数席挟んだ場所から聴こえて来た。声を発していたのは30代のOLで、相手は俺と同じ制服を着たガタイの良い金髪男子だった。

 

要約すると、優先席はお年寄りに席を譲るのが当たり前と言うOL、それに対して男は座る者の自由で義務では無いと言う。男の発言は間違ってはいないが、凄い神経してるよな…。

 

 

「お婆さん、俺が譲りますよ」

 

 

俺はこれ以上気分を害されるのを嫌だと思い、自身が座る座席をお婆さんに譲る事にした。折角新しい日常の始まりに、朝から不快な思いを刷り込まれるなど迷惑でしか無い。

 

 

「あっありがとうね。お兄ちゃんや」

 

 

お婆さんはこれでもかと感謝をしてきたので、素直にお年寄りの感謝を受け取ったが、先ほどまで大声を出していたOLさんは居たたまれなくなったのか、肩身が狭そうな表情をしていた。

 

金髪男子は何故か俺にウインクをして来たので、目礼を返して関わらない様にしておいた。バス停を数箇所程過ぎると、学校前に辿り着いた様なので降りようとすると、お婆さんが再度お礼を伝えて来たから『良い一日を』と言って返しておいた。

 

こう言った発言もイケメンだから許される行為で、前の俺がやったらバス内は阿鼻叫喚していただろうな。同じ善行でも見方が大きく変わって来るし、下手をすると不細工の善行は迷惑になる場合すら存在するのが世の中なのだから、世の中は不公平の積み重ねだな…。

 

 

 

 

 

 

教室へ向かう中、やっぱりあれは高円寺だったのだと最近では考え無い様にしてた思考が帰ってくる。Dクラス配属は海外からの受験生だからなのか?良く分からない何かの力によるものだろうか…。

 

ストーリーが、俺の知る通りだとは限らないから多くの予習や訓練をして来たが、この身体は化け物と呼ぶに相応しい程の肉体だ。動画で見た多くの体術は、見たままを必ず行える上に元々頭はずば抜けていたけど、更に良くなった事でチェスの10の120乗を暗記する事が出来た事には驚いたし、将棋の10の220乗も一応覚えられた事には恐怖を覚えた。

 

教室に入って教壇に置かれた座席表を見ると、ある事に動揺をしてしまうがポーカーフェイスは崩さない。既に多くの生徒が座席に座っている為、座席表と再度見比べていた。

 

 

 

 

綾小路清隆がいない……。

 

 

 

 

 

堀北・高円寺・櫛田・平田・軽井沢・須藤・山内・池・佐倉・小野寺・佐藤・松下・沖谷・井の頭・王・幸村・三宅・長谷部・篠原・外村・前園・市橋・本堂……。

 

知っている他の生徒は居るのに、綾小路清隆がここには居ない。

 

 

俺と言う存在が綾小路清隆の代わりなのか?正直彼は心が壊れているからこそ、あの立ち位置でいられたのだ…。奴の代わりなど嫌で仕方がないが、今悩んだ所で答えなど一生分からないかも知れない。

 

一先ず座席は綾小路の場所だが、隣人は当然の様に堀北鈴音であるのだから、コンパスで刺されないか心配です。

 

 

「何かしら?」

 

「…一応隣だから、名乗っておくかを悩んでた。その様子だと、必要ないと言うだろうけど名乗っておく『鳳眞 愁』だ。君は名乗らなくても構わないが、俺が君と言って話し掛けるのは見逃してくれ」

 

「…堀北鈴音。二度と君と言って話し掛けないで頂戴」

 

「ありがとう。この先ずっと君と言うのも気が引けていたし、堀北が望まないなら必要最低限話し掛けない」

 

「…変わってるのね」

 

「嫌がる相手に自身の考えを押し付けるだけ何て、ただのエゴイストだと思ってるだけだ」

 

「……」

 

 

 

俺は堀北に異常にマークされない程度で話を終え、未翻訳の海外書籍を取り出して読み始める。堀北鈴音の視線を少しの間感じていたが、途中で俺を見るのを辞めて彼女も読書を始めた。

 

ある程度時間が過ぎると、実物の茶柱佐江が教室へと入って来た。手には携帯端末が収められた小箱を携えて、部屋に置かれた入学案内と同じ資料を全員に端末と一緒に配っていた。

 

挨拶に始まり学校の大まかな説明がなされるが、記憶にあるよう実と同じ内容を話していると思う。

 

 

・全寮制で、女子エリアは22時以降は男子の立ち入り禁止。

 

・本校は在学中許可なく学校敷地外へ出る事が出来ず、外部との連絡は原則禁止となる。

 

・寮費や光熱費は無料だが、使い過ぎに注意。

※家電・調理具・食器・タオルは初期支給品あり

 

・本校敷地内では電子マネーでの決済となる。

 

・高校生に見合わない交際は認めない。

 

・虐めや恐喝は、発覚次第厳罰に処す。

 

 

 

これ以外にもSシステムに触れる部分で、記載は無いが最重要な内容を説明していた。クラスメイトは、知る内容通り歓声を上げたりして危機感を持っている者が少ない様子だった。

 

 

・3年間進級時のクラス替えは無い

 

・毎月1日にポイント支給

 

・1pr=1円の価値

 

・入学時点での評価で10万pr

 

・敷地内では、ポイントで買えないモノは無い

 

・ポイントは譲渡が可能

 

・本校は実力で生徒を図る

 

・ポイントの使用は個人の自由

 

 

 

 

一見すると楽園の様に聞こえるかも知れない、そんなまやかしなど現実には転がっていない。あちらにいた頃などは、騙し合いや足の引っ張り合いなど普通にあったし、殺人や恐喝と言った暴力系も日常茶飯事だった。

 

例えここが日本でも、見えない影には後ろ暗い出来事が日夜起きているだろう。売春・恐喝・詐欺・強姦・痴漢・窃盗・暴行・殺人・ストーカーなど、あげたらキリが無いほどの暗闇が存在する。

 

俺も出来たら綾小路を見習って目立たない様にしよう。彼は人間を理解してないから目立ったのだろうから、俺ならきっと大丈夫だ。

 

 

 

 

「式までは自由だが、1時間後には講堂に集合するように」

 

 

 

 

その言葉を残し、茶柱先生は前側の扉から出て行った。すると爽やかイケメンの平田が立ち上がり、俺が知る展開へと発展した。アメリカでは、集団圧力は立派な言葉の暴力として訴訟に発展する事案だ、彼は良い人の仮面を被った猟奇的教祖と変わらない。何よりも『仲良し教』にどっぷり浸かった彼すら、自身が間違っている事に気付いてなどいない。

 

 

「皆んな聞いてくれるかな?これから3年間僕達はクラスメイトとしてやって行く、だからこそ少しでも早く仲良くなれたらと思う。そこでだけど、自己紹介をし会わないかい?」

 

「私も賛成」

 

「「「「私も(俺も)」」」」

 

 

そこからは順番に自己紹介が行われ、途中で須藤がキレて数人が同じ様に出て行くが、俺は出ると目立つ容姿をしている為に参加を余儀なくされた。

 

俺の前は三宅だが、超絶無難な自己紹介をしていたせいで、変な自己紹介は余計に目立つ為に、少しフランクな程度で留める事にしておいた。

 

 

「では、次の君にお願い出来るかな?」

 

「ああ。俺は『鳳眞 愁』(ホウマ シュウ)…見ての通りロシア人の母を持つハーフだが、半年前までアメリカ在住だった事もあって日本の慣習や流行が分からない。勉強や運動はどちらも得意だから、イベント事では助けられると思うから、これから宜しく」

 

「ありがとう。こちらこそ是非向こうの事が聞けると嬉しいよ」

 

 

 

その後は、個人的な質問をしに多くの女子が平田か俺に集中してきていた。特に目をキラキラさせていたのは『王 美雨』こと、みーちゃんだったのだが…同じ多国籍を持つ者同士と言う接点で親近感を覚えたとかでかなり話し掛けられた。

 

アメリカで弁護士をするには、数ヶ国語を話せないと多国籍企業が多く存在するので必須スキルだ。中国語・英語・ロシア語・スペイン語・フランス語・ドイツ語は話せるが、この肉体ならもっと増やせるだろうと期待している。

 

中国語が話せる事も相まって、みーちゃんには異常な程に懐かれてしまったが、妹がいたらこんな感じだろうと諦めた。ただスキルが多くてイケメンな俺を妬み、山内・池・本堂は俺を睨み付けている。

 

無事に多くの子と連絡先交換が終わり、男子がなぜか平田と高円寺の連絡先だけと言う惨状だった。高円寺はバスの事で一度だけ俺に力を貸してくれるという事で、一応連絡先をくれた感じだが……。

 

他の男子は嫉妬と遠慮のどっちかで、女子に群がられている俺を苦笑いしながら三宅が離れた場所で見ていた。沖谷は女子の圧力に負けて近寄れず、連絡先の件数は佐倉と堀北以外の女子と男子2名だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入学式が終わると、金銭的に悲惨な日々を送りたく無い俺は、本日も上級生は部活を楽しんでいるだろうと、チェス部へと向かう事にしたのだ。茶柱先生にはバレるだろうが、前もって先生には手を打つつもりでいる……。

 

チェス部に到着すると話し声が聞こえるので、今日もチェス部は部活している事が分かった。ノックをしてから返事を待ち、返事に合わせて入室するが部室は静寂が支配している。

 

 

「「「「めっちゃイケメン!」」」」

 

「出た!面食いズ」

 

「うっうるさい!イケメンは別腹って言うでしょ」

 

「いや…言わん」

 

「そろそろ、彼も困ってるよ」

 

「オホンッ!新入生で合ってるかな?入部希望?」

 

「いえ…賭けをしに来ました」

 

「「「「は?」」」」

 

「マジかよ。初日で来るとか凄すぎだろ」

 

「え〜と、君はAクラスの子かな?」

 

「Dクラスですよ。恐らく俺は帰国子女の為、日本での実績が無いせいでD配属なのでは無いですか?」

 

「「「「……」」」」

 

「ダークホースだな」

 

「上位クラスの意味を知ってるとか凄すぎ!おっとっと、本題を忘れてたね。良いよ〜いくらから始める?」

 

「全額の10万prでお願いします」

 

「……負けても知らないぞ〜!それなら敬意を払って私が2倍で相手してあげるよ」

 

「ありがとう御座います」ニコ

 

「「「「笑顔が凶器だ」」」」

 

 

 

若干テンションがおかしな部だったが、以外にもフレンドリーな部活で良かったと思う。副部長から対戦が始まり、14名いる部員の内8名だけが今日は部活に来ていたらしく、8名全員が掛け金を20万prに設定してくれて、全勝した事で160万prを獲る事が出来た。

 

そろそろ昼だと言う事から、チェス部の部員と一緒に昼食を食べに出掛ける事となり、どうして賭けが出来ると思ったのかを聞かれた。一応理由は考えていて『監視カメラには不自然に配置していない場所が存在する事から、グレーゾーンな内容は治外法権に近いこの学校なら問題無いのかと試しに来ました』と伝えたり、チェス部に入って大会に出ないかなど色々言われた。

 

まだ検討する段階だが、この学校では忙しくなりそうだから入部すると断言は出来ない事を伝えた。そんな俺でも優しく接してくれて、穴場のお店やオススメのお店を教えてくれたりと、性別関係無く先輩方は優しかった。

 

 

 

 

 

先輩方と別れてからは、買った日用品などを寮に置いてから学校へと逆戻りした。職員室の前に立ちノックを4回してから中に入ると、先生方はのんびりムードだったのが嘘のように緊迫感が支配し、俺の動向を探るように見てきた。

 

茶柱先生の元へと行くと、場所を考える事なく茶柱先生にとある要求をした。

 

 

 

契約書を自室で書いて来ていたので茶柱先生に手渡し、俺の如何なる情報も生徒に開示しない事を記入していた。茶柱先生は受け取って直ぐに笑い出し、隣に座る星之宮先生も覗き込んで笑い出した。

 

 

「……25万だ」

 

「要求されるという事は、了承したと言う事ですね」

 

「ああ。払えるならこれを許可する」

 

「振込先は?」

 

「………これだ」

 

 

ピロン♪

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

「完了したので、写しを取って原本貰えますか?」

 

「分かった……これで問題無いな?」

 

「ええ、生徒会って個人の情報が見れたりしますか?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

 

契約書には、開示に携わった者の人数分と開示された人数分が開示側の債務となり、仮に茶柱先生が俺の情報を勝手にクラスに広めた場合は、俺を除く39名分の債権を茶柱先生一人が負う事になる。因みに記載した金額だが、個人情報な為に債権1で100万prと記載されているので、39名なら3900万prになる。

 

生徒会長がこれに該当した場合、学校側が開示者になる為教員数分と会長分が俺に払われる。それらも『学校システムによって(甲)の情報が開示された場合、教員全てが開示者に該当する』そう記載している上で、氏名・年齢・生年月日・血液型は該当しないと記載しているのだが、会長に開示された情報がそんなものであるはずが無い。

 

 

「では、確認に行きましょうか?」

 

「……あ、ああ」

 

 

結果だが、会長は俺の情報を見ている最中だった。その理由はチェス部の先輩によってもたらされた生徒が気になっていたからだ。その結果は、4クラス×3学年+保健医2名・理事長・副理事・各教科教員13名と会長分が加算される事になり、開示された生徒が口外した場合も初期開示者が払う事が書かれている為に、即刻情報規制と会長への口止め契約がなされたり、入学初日で最高額のポイントを受け取る生徒となった。

 

 

 

総額3000万pr

 

 

 

これすら情報開示が出来ない為、教員と会長のみが知る『東京都高度育成高等学校伝説』となったのだ。他の教師も俺が危険だと公開したいけれど、それが出来ない為に茶柱先生を恨んでいるかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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