外見至上主義から実力至上主義へ   作:仁611

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No.2

翌朝

 

この身体が鈍る事があるか分からないけど、憑依してから毎日ジョギング10キロを日課にしている。細かい設定を知らないが、凄く意外な生徒とジョギング中に遭遇して、思わず「おはよう」と声を掛けてから追い抜いて行く。

 

 

神室真澄…。

 

 

坂柳有栖によって万引きをする姿を撮影されてしまい、彼女は従者の様に扱われる運命にある。現時点でどうなっているかは分からないけれど、極力接触すべきで無い生徒だ。

 

見た目は学年でも上位に位置する美人系の美少女で、見た目や雰囲気が好きなキャラだから思わず挨拶をしてしまった。折り返し地点を過ぎたので、先程の道のりを寮に向かって引き返していたら、寮の前でまさかではあるが話し掛けられた。

 

 

「ねえ……何で私に挨拶したの?」

 

「…特に理由は無いが」

 

「そっ……連絡先、教えて」

 

「……」

 

「いっいいでしょ!……興味を持たせたのはあんたでしょ」

 

「まあ、構わない。一応名乗っておくが『鳳眞 愁』だ」

 

「私は神室真澄」ピロン

 

「そろそろ部屋に戻る。学校の前にシャワー浴びるからな」

 

「何時に行くの……」

 

「多分30分後だな」

 

「……分かった」

 

 

本当は問いたかった『何が分かったのだ』と…。

 

 

 

 

 

 

シャワーを浴びて、シリアルを口に運びながら坂柳に注目される可能性を考察していた。現在のまま神室と接点を多く持つと、100%目を付けられるだろうし、俺が強者かどうか関係なくちょっかいを掛けて来るだろうな。

 

最近ハマっているのは、この肉体ならではのお洒落をする事だが、元の容姿に比べると面白いほど色々出来る。左サイドのこめかみ部分を三つ編みしていき、それを左サイドと一緒に後頭部に流してピンで留めているが、今は自身の肉体ではあるがオシャレだよな。

 

制服のお洒落はカフスボタンを使ったり、取り付けてあるボタンを違うのに交換するなどかなり細かい芸が必要だ。ポイントに余裕がある俺は昨晩かなりアレンジをしたけれど、校則まで確認しているから問題ないだろう。

 

準備が全て整ったので、鞄を手に取り玄関を開いてロビーへと降りて行く。予想していたけれど、そこには神室が携帯端末をいじりながら誰かを待っていた。無視する訳にもいかず、再度挨拶をして誰待ちかを確認しておく。

 

 

「改めておはよう。誰か待ってるのか?」

 

「……鳳眞」

 

「俺?」

 

「…一緒に行く」

 

 

会話が保たないぞ…。彼女は喋る方では無いけれど、ここまで会話が苦手なキャラだっただろうか、正直出会ってまだ1時間程しか経っていない為、会話の糸口が分からないでいる。

 

 

「神室は、クラスメイトに仲良くなった奴いるのか?」

 

「仲良くなったとは言えない。けど、会話する相手ぐらいにはなったと思う」

 

「そうか。クラスの雰囲気とかはどんな感じなんだ?俺の方は10万prに浮かれ過ぎて正直不安だな」

 

「私のクラスは割と落ち着いてる。あんな怪しいものを、怪しまないDクラスがおかしい」

 

「そうだよな…まあ正直、どんな結果でも俺は構わないけどな」

 

 

そうして学校へと向かったが、視線が刺さる刺さる。神室にも嫉妬の眼差しが向いてる事は分かってるし、そんな状況を気にする様な子には見えないから放置した。

 

彼女も俺に少しだけ慣れたのか、何個か質問が来た。ハーフなのか?彼女が居そうなのに何でこの学校なのか?運動神経は良さそうだけど勉強はどうか?などだが、素直にそれらに答えて行った。

 

 

 

 

 

結局彼女は、Dクラスの扉前まで一緒に付いてきて、諜報活動でもしてるのかと思ったが、俺が扉を開ける前に自分のクラスへと向かって行った。

 

教室に入って席に座ると、意外にも堀北の方から話し掛けてきた。彼女の話は、俺が堀北が思うよりプレイボーイだった事を指した言葉だったが、何故か不機嫌そうに俺を責めてくる。

 

 

「何で俺は、堀北に責められてる?」

 

「貴方はファウヌスみたいな人ね…」

 

「ローマ神話の…夢魔」

 

「博識なのね」

 

「俺が堀北を怒らせる事をしたなら謝るが、俺が何か失礼なことでもしたか?」

 

「…ごめんなさい。鳳眞君が責められる謂れは無いわ」

 

「気にするな…堀北が何を思ったかは分からないが、人の感情ほどままならないものは無い。特に成熟しきっていない感情を抑制するのは難しいからな」

 

 

俺も若い頃は、自身の不細工さを両親のせいにして当たっていた事もあるしな……。中身を見ない周囲の人間に憤りを感じたりも何度もしてきたからこそ、堀北の様に多少感情を制御出来ない事をいちいちムカついたりはしないな。

 

 

「…そ、そうね」

 

 

歯切れが悪いな今日の堀北は、俺のイメージではズバッと何でもストレートに言ってくる感じなのだがな。まあ会話を普通にしてくれてる分には一向に構わない。

 

それにしても、まだ二日目だけど周囲には複数のグループが出来上がっている様だな。平田グループ・篠原グループ・櫛田グループ・池グループなどが目立っているが、2人組とかはちょこちょこまばらに存在する。

 

既に緩みを感じるグループも多くいる様で、授業のレクリエーション以外はゲームをしたり、漫画を読んだりと騒がしくしている。外村など8万程するパソコンを買ったなどと言っているが、来月からどうするつもりなんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度昼食を自分の机で食べていると、校内放送が昼食中の生徒達の耳に届けられた。内容は部活紹介を放課後行うと言う事で、周囲も部活について話し始めていた。

 

そんな中で、今日は再びミステリーな出来事が起きている。堀北が俺に話し掛けて来ているので、教室では変な空気が漂う。

 

 

「ねえ、鳳眞君…放課後一緒に説明会に行かないかしら?」

 

「…ああ、俺も興味はあるから構わない」

 

「…そ、そう。助かるわ」

 

 

……堀北鈴音が変だ。

 

 

 

 

 

 

 

全ての授業が終わり、現在は更に変な状況が形成されている。堀北と一緒に講堂へ向かっていると、神室と出会って堀北や俺に了承するでも無く、一緒のペースで隣を歩いてる。

 

神室はチラチラ俺を見てくるし、堀北はそんな摩訶不思議な状況を責める様にジトッとした眼差しを送ってくる。

 

 

「ところで、堀北は何か興味がある部でもあるのか?」

 

「…生徒会に少し、興味があるわ」

 

「そうか、生徒会か…神室はあるのか?」

 

「…美術部」

 

「へぇ〜運動神経良さそうだから運動系だと思ってたが、絵を描くのが好きなのか?」

 

「……一応ね」

 

 

 

俺が『いい加減にしろ!』と叫びたくなるのは仕方ない。彼女達は余り自分から話題を振ってくる子では無いけれど、自分から誘って来たり一緒に向かっているのだから、多少は努力をして欲しい。

 

無難な会話を数度繰り返し無事に講堂へ辿り着くと、既に学年の7割はここにいるだろう人数が集まっていて、小グループや中グループで話している様だが、俺達へと女子達は目線を向けて来た。

 

確かに、俺をメインで知っているのはDクラス以外では神室かチェス部ぐらいだが、登校時には何人かはすれ違ってるし、入学式でもあっている筈なのに、俺と言う存在は何処までも浮くらしい。

 

部活説明会は原作通り進んで行き、多くの部活が存在する事を改めて知るが、クラスポイントの付与がある事前提で殆どの部活は大会などに出ているのだろうけど、どうしてもクラスポイントの稼ぎ方が分からない部活が存在する。その部活は『美少女同好会』と呼ばれる意味不明な部活だ…。

 

部活として美少女率や傾向調査をしてると言っていたが、そんなものに価値があるのだろうか?巷で発行される美少女が掲載される雑誌発行でもしてるなら良いが、その場合相手に許可を取らないと掲載出来ない事が容易に分かる。

 

まあ、俺が入る事も部室に行く事も無いだろうからスルーしよう。そんな感じでどうでもいい事を考えてると、遂に堀北会長の演説が始まった。沈黙を利用した生徒の私語を抑止する方法は、小学校の校長とかがよく使う『何分掛かりました』と言う台詞が思い浮かぶが、堀北会長のそれはひしひしと強迫観念が増していく。

 

全てが終わって横を見ると、堀北は原作通り硬直して思考停止しているように見える。仕方ないから頭をポンポンと優しく叩き、彼女の意識を取り戻させる事にした。

 

 

「なあ堀北……周りを見てみろ。皆んな講堂から出て行って、最後のひとりになるとこだぞ」

 

「そ、そうね……」

 

「……」

 

 

神室は美術部への入部届けを受け取り、戻って来たタイミングが悪かったのか、頭をポンポンする姿を見られてしまい、堀北は赤面しているだけだが神室は不機嫌だ。

 

その結果3人で夕食を摂ることになり、濃い味付けは無しになって和食を食べに行った。終始微妙な雰囲気の中、俺の必死な言葉のキャッチボールで切り抜けたが、この二人には今後コミュニケーションを向上させる必要性を感じていた。

 

この時は、二人が仲良くお喋りしている光景など思い浮かぶ事など無かったけれど、俺達は何だかんだ言いながら関係を維持し続け、将来的にあんな事になるなど予想していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だかんだと日は巡り、2週間が過ぎた頃のとある朝の教室で、普段はギリギリで登校するキモメン二人の山内・池ペアは、教室に女子が半数以上居ると言うのに、今日はプールがあると言う事でスク水姿の女子を妄想して、おっぱいが大きい子ランキングで賭けを始めると言った、品性が1ミリも無い会話を大声でしていた。

 

女子からすれば、窓から手足を縛って飛び降りて欲しいほど嫌悪しているだろう。男子視点で見れば『ナニが一番小さいのは誰』とか『未だにナニが脱帽してないのは誰』と同じ内容だ。余りに不愉快極まり無い行いに、無意識に殺気を出していた様で教室内が静寂で満たされてしまった。

 

 

「「……」」

 

 

山内と池は黙ってしまい、俺も何もなかったかの様に自分の席へと着いてから読書を始めた。ああ言った内容は男子も女子もこっそり話してるグループは意外に多いけど、あそこまでTPOを弁えない輩はいくら元ブサメンでも駄目なのは分かる。

 

結局だが、外村が俺にビビって不参加を表明した事が皮切りに、多くの男子が女子の不快感に気付いて鎮火した。

 

実際に体育の授業でプールへ行くと、先ほど鎮火したゲスい感じの内容が数名再発し、女子達が着替えを終わらせてプール脇に来ると、歓喜の声を上げてあり得ない事を言っている。

 

 

「長谷部は何処だ!?俺のおっぱいは?」

 

「何で居ないんだよ!あの巨乳が」

 

「いや。まだ櫛田ちゃんが残ってる!あの子のおっぱいは俺が揉むからな!」

 

「ふざけんな!櫛田ちゃんの胸は俺のだ!?」

 

 

 

多くの女子生徒は軽蔑した視線を送り、近寄ることすらせずに身体を隠す様に立っている。余りにも酷い内容に呆れ、俺は警告を発する事にした。

 

 

「おい!山内に池…お前達がやってる事は条例違反だぞ…セクハラか強制わいせつ未遂になるからな。相手をトラウマや鬱に追い込んだら刑罰は重くなるのを分かってるのか?」

 

「「はぁ!?」」

 

「じょ冗談に決まってんだろ!?」

 

「相手が冗談だと捉えなかった場合で、トラウマや鬱の原因がお前達だと立証された場合はかなり重い刑罰を受けるぞ」

 

 

 

櫛田が山内達に話し掛けた事で変な雰囲気は無くなり、池は気まずそうにしているが、山内は俺を睨んで来ている。これもまた彼があんな行動に出るなど思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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