外見至上主義から実力至上主義へ   作:仁611

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No.4

私は、初めて異性を意識し始めている。その男の子はとても不思議な雰囲気を醸し出している人だった…。バスに乗って『東京都高度育成高等学校』へと向かう中、私は読書に耽り周囲などの外的要素を遮断するように座席に座っていた。

 

 

「ねえ貴方…お婆さんに席を譲ろうとは思わないの?」

 

 

こんな言葉が、バスのとある場所から響き渡って来た。私には関係無いと思いながらも鐘のような声は私に意識させてしまい、必要がないけれど情報が入ってきてしまう。同じ学校に向かう男子生徒に席を譲れと言うOLと、それは座席を有する自分が決める事だと言っているけれど、正論であるが心無い言葉なのは事実だ。

 

だけど男子生徒だけに問題がある訳では無いので、彼だけが責められる様な事でも無い、文句を言い続けてるOLは最初から自己の偽善に酔いしれた傲慢な態度で男子生徒に言っていた。彼女の思いはお婆さんを助ける事であろうとも、あの態度では彼以外であっても良い気がしないだろう事は容易に分かる。

 

 

 

そんな中、1人の男子生徒が座席を譲る事を言い出して、お婆さんはとても感謝しているようで、譲った生徒もお礼を素直に受けていた。ここまでは普通に関心が湧くような事では無いし、私はこれでも人を見る目にだけは自信があった。

 

彼はお婆さんを助ける為に行動を起こしたのでは無く、あの状況が不愉快だったのかは分からないが原因を取り除いた。その結果お婆さんが座席に座れる事になり、感謝を述べられていたようだがお婆さんは本当に辛かったのか、心から感謝しているようだったので彼はそんな言葉にだけ素直に受け入れていた。

 

彼は本質を見ていたのかも知れない。茶番劇の様なOLと金髪男子生徒のやり取りでは無く、お婆さんは席に座れなくても仕方ないと分かっていたが、足が辛かったのは事実だった為に心のこもったお礼を述べていたので、誠意を持って「どういたしまして」と言っていた。

 

それに気づいたのはバスの中では無く、自分のクラスが分かって教室に向かって行く廊下でだった。

 

男子生徒がお婆さんのに座席を譲ってお礼を貰った後、学校前のバス停に着いた時に再度お婆さんにお礼をされた時、彼が発した「良い1日を」と言った言葉は、欺瞞の無い本心から思っている言葉で、表情には嘘の色を一切感じず、お婆さんの足首に視線を一瞬移した事でそれに気づいたが、お婆さんは義足を履いた足で立っていたらしく、恐らくそれに気付いているのは彼1人だけだろうけど、お婆さんを心から思い発した言葉だったのだ。

 

 

 

 

人は往々にして利己的で独善的な考えを持ち易い、私が小学生の頃に兄さんの妹だと分かると擦り寄って来た子達や、男子に告白されて断っただけなのに私を悪者にした女子…。

 

そんな状況で私を心配してる風に装う男子達、それを見て私が男子に媚を売る『クズ女』と言う女子…。その上兄さんの妹だと分かってからは掌を簡単に返した一部の人達。

 

だからこそ興味を持ったのだけれど、そんな興味が彼に対して好意に変わったのは、彼との自己紹介の時で『嫌がる相手に自身の考えを押し付けるだけ何て、ただのエゴイストだと思ってるだけだ』と言う言葉を本心で言って来た瞳を忘れられなくなった。

 

普通は自分が自己紹介して、相手がそれに対して返礼として自己紹介しなければ、それは自身に対する敵対行動だと受け取る。彼の見た目も正直興味を引く部分は無いとは言えないけど、彼の大人優しい心に私は初めて男性に興味を持った。

 

 

 

堀北鈴音 side out

 

 

 

 

 

私は無愛想で不器用な人間だと思う。今迄友達になった人達にも、リアルツンデレと言われるくらいには素直じゃ無い。両親が共働きで一人っ子だった私は、普段から両親が不在の家で1人の時間を過ごす事が多く、無意識に孤独や虚無感に襲われていたのかも知れない…。

 

中学まではお金に困っている訳では無いが、万引きを繰り返し日常の虚しさを一時的に感じるスリルで埋めていた。高校生になってからは変わりたいと思い、クラスで親しい人間を作ろうと努力した。

 

 

 

『無愛想』

 

 

 

これは簡単にどうにかなるものでは無い、Aクラス比較的に真面目な雰囲気が強く、無愛想ではあるがハブられたりはしないけど、だからと言って相手から話し掛けてはくれず、受け身でいたら私は直ぐにボッチになるからこそ頑張った。

 

けども、感覚的には友達の友達の様な接し方で話され、私は初日から結構落ち込んでた。翌朝は日課となっているジョギングに出ていたのだが、ここに来て初めて下心無しで話し掛けられた。

 

 

『おはよう』

 

 

きっと、寂しがり屋な私は人に飢えてたのかも知れない。男子達は基本下心を持って話し掛けて来るけど、鳳眞愁と言う彼は、挨拶だけするとかなりのハイペースで私を追い越して行った。

 

正直顔はタイプじゃなかった…。

 

基本イケメンと呼ばれる部類の男子は苦手で、自身に対して周囲は勝手に寄って来たり、好意を寄せて来るのが当たり前だと無意識で思っているのが分かってしまう。だけど彼は、今時の小学生すら持ち得ない完全なる善意だけで話し掛けて来た。

 

彼は他のイケメン男子と違い、本物の善人を体現した様な雰囲気が醸し出されており、かと言って悪人に喰い物にされる弱い人間にも思えない不思議な人だった…。

 

 

 

 

 

気を使わない彼に惹かれるのは、然程掛からなかった…。

 

 

 

私が好きなココアを、飲みたいと思ったら買って来てくれていたり、周囲の人に対しても最善を尽くそうとする姿を、何度も目に入れていた。そんな彼だが、曲がった事が嫌いなのかは分からないがDクラスの3馬鹿と言われる彼等には厳しかった。

 

そんな姿から、彼は人に対してある一定の基準値があるのか、偽善者では無い事も好感が持てた。そんな彼だからこそ問題があった…。

 

イケメン・内面イケメン・運動神経抜群・気遣い人・優しい

 

彼がモテ過ぎるお陰か、私は直ぐに自分の感情が好意だと悟る事になってしまって、未だ初恋すらした事が無い不器用女な自分を、これほど呪ったことはないだろう。

 

 

 

神室真澄 side out

 

 

 

 

 

 

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