IS-Junk Collection-【再起動】   作:素品

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お久しぶりです皆さま。今回の話を見る前に、いくつか注意事項をば

・にわかSF知識によるセシリア魔改造
・ぼくのかんがえたぶるーてぃあーず
・ぐだぐだ展開
・酒の飲み過ぎ 以上です

もうアレです、悪ふざけが過ぎてキシリア様にバキューンバキューンされる勢い

ということで、女の子に変態武器を持たせると興奮する作者です回


第三十八幕 陽と陰と命の使い方

 

ISを装着するというのは、濡れた服を着込むような感覚に近い。

 

重く冷たい金属のドレスは展開するとすぐに肌に吸い付く。この感触を濡れた服と例えるのだが、搭乗者との同調は一瞬、実際は不快感を感じる間もなく、鉄と電子部品の塊は血が通ったように動き出す。

 

そんないつもの感想を自身のIS、【甲龍(シェンロン)】を纏いながら鈴音は、こちらに歩み寄る友人を見た。

 

「それで、ソレが例の技術屋たちが寄越した装備なの、セシリア?」

 

アリーナにて非搭乗者用の出入口から歩いてくる金髪の少女、セシリアがいた。

 

いつもと同じ調った足取りに、彼女のイメージカラーと言ってもいい蒼いISスーツに身を包んでいるのだが、どうもいつもの様相と違っている。

 

「"ISスーツ"が新装備なんて変わってるわね」

 

そう言われたセシリアは、苦虫を噛み潰したような顔で今自分を包んでいるソレに目を移すと、首から下を包み込む群青があった。

 

通常、ISスーツとはレオタードに膝上まであるサポーターを履いたようなデザインだ。だが、現在のセシリアが着ているのは露出の一切ない、レーシングスーツのような姿である。

 

しかも、後頭部には蟀谷(こめかみ)までを包むヘッドギア、そこから延びるコードは背骨に沿うように設着された蛇腹状の外骨格に繋がっており、体の随所にはプロテクターのようなものも取り付けられている、およそ既製品とは似ても似つかぬ物々しいデザインだった。

 

「調査と実益を兼ねたものらしいです。それにスーツだけでなく、IS本体にも装備の追加はありますわ」

 

「ふーん。でも、妙にエロい、というかエロカッコいいわね。サイボーグ忍者・・・・・・いや、マブラヴ?」

 

「・・・・・・貴女も彼らと同じようなことを言うのですね」

 

どちらかと言えば感性が男寄りの鈴音にとってセシリアのISスーツは、何処か興味の惹くものがあるのだろう。かつて彼女が嗜んだ作品の影響もあるかもしれない。

 

そんな鈴音と対照的に、セシリアはテンションがだだ下がりである。

 

ビーム兵器ならばいいのだろうと一周回って喧嘩腰な馬鹿げた企画書を送り付け、いざ査察に行けば模造刀を振り回す奴に施設内で駄菓子屋を開いてる者、そして全員がジャパンロボの大ファンであるとかもうなんなのコイツらと枕を濡らす夜を幾度過ごしたことか。

 

そんな頭がナニカされている彼らのことを考えるだけで腹の虫が暴れだし、午後のお茶で胃薬が茶菓子代わりとなってしまう昨今。

 

そして、積み重ねるように現れた"例の彼女"のこともある。

 

「・・・・・・はぁ」

 

セシリア・オルコット、16歳。

 

まだまだ若い彼女だが、その背中は妙に煤けて見えるのだった。

 

「なーに湿気た顔してんのよセシリア。そんなんじゃあ、男だって寄ってこないわよ?」

 

「無駄に仕事を増やす奇人集団とひねくれド畜生が寄ってこなくなるなら―――」

 

不意に、セシリアは続けるべき言葉を遮り、鈴音へ向けていた視線を右側へとずらしていく。鈴音も感じ取ったのか同様に自身の左側にいるであろう者へと全身を翻した。

 

二人が感じた漆黒の感情。

 

それを表面化させたような黒い機体に乗り込み、片目の少女の視線が二人を捕らえて食らいついてきた。

 

「ラウラ、だっけ? ドイツの代表候補の」

 

「ええ、そう・・・・・・ですけど」

 

思わず顔をしかめた。

 

夜の闇に映えるような白い肌と銀の髪は荒れ、紅い瞳に走る充血と疲労を訴えるかのような黒い隈が色濃く浮かんでいる。なのに眼光だけはギラギラと油に浸かったような光を放っているのだ。

 

憐れみの言葉は出しはしない、それでも今のラウラの様はあまりにも悲惨過ぎた。

 

「何か用? 正直言うけど、IS乗らずに部屋で寝てた方がいいんじゃない、あんた?」

 

「うるさい、騒ぐな劣等」

 

鈴音がぶっきらぼうながらにラウラの体調を気遣うような節の言葉を投げ掛けるが、彼女のあまりにも冷えきった返しに開いた口が閉じぬまま瞠目する。

 

そんな鈴音の横でセシリアは、冷静にこちらへの道のりを縮めていくラウラを見据えた。

 

今のラウラは、おそらく正気ではない。

 

一目で判るその不健康な出で立ちから、睡眠どころかまともな食事すら摂っていないことが窺えた。

 

何があったか。軍人でもある彼女が自身の体調を自ら切り崩す

 

もとより気が長い方ではない鈴音が苛立ちを隠しきれなくなってきた時、IS【シュヴァルツェア・レーゲン】の右肩が動き出した。

 

「・・・・・・きえろ」

 

「はぁっ? あんた

 

顕れた巨大な砲身《レールカノン》から、一迅の閃光が迸った。

 

轟音が後を追うように、電磁加速によって亜音速にすら到達する88mmの弾丸は、眩い光となって鈴音の目と聴覚を通りすぎていく。

 

彼女は見た。

 

その弾丸が何処を通り、何を通過点として消していったかを。

 

「あんた・・・・・・、何してッ」

 

 

 

 

「―――いくらなんでも、唐突すぎるのではありませんか?」

 

 

 

 

煮え滾る熱血が鈴の理性を焼き切る寸前、その形のいい耳は確かに彼女の声を聞いた。

 

気品と高貴、厳かでありながら嫋やかな声。

 

二人が見上げる先、セシリアは"新たな翼"を広げたのだ。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

第三世代型IS【青い涙(ブルー・ティアーズ)

 

自律型思考誘導兵器の試験型機体として作られたこの機体は、第三世代型でありながら、性能そのものは第二世代より少し高い程度だ。

 

実験機、試作品でしかないこのISは、後の後継機たちの為の劣勢遺伝子でしかない。

 

つまりは引き立て役、彼女は元より期待などされていない、隅に捨て置かれるただの調度品(アンティーク)でしかなかった。

 

だが、この世が『世界』という轍に嵌まる鉄輪でしかなくとも、そこに生きる者たちの在り方までをも縛ることは出来ない。

 

時には、弾かれたまま空を疾走(はし)り、一面の青を切り裂く一発の弾丸にすら成り上がる。

 

搭乗者(クラダー)、セシリア・オルコット。これよりIS【ブルー・ティアーズ】試作兵装、NO.11、12の実地テストを開始、記録を始めます」

 

音声認識によって始動するプログラムが動きだすと、眼前に浮かび上がる仮想ディスプレイが忙しなく移り変わり、新たな装備の使用許可を表示する。

 

それを横目に確認すると、追従するかのように背中の一対の"蒼い翼"が慣らすように身震いし、大きく広がった。

 

「アレが、追加の装備? 武器じゃない?」

 

下から見上げるだけの鈴音の疑問の先には、セシリアの背後に配置された二基の猛禽類の羽を思わせる非固定浮遊部位(アンロックユニット)が浮いていた。

 

本来、セシリアのISにはBITを拘留しておくためのコネクタが有るのだが、それに代わり換装されたのがこのスラスターだ。機体そのもの機動力の向上と、BITのコネクタを兼ねた装備である。

 

「お前・・・・・・ら、―――まだ」

 

再び動き出したレールカノンの砲口がセシリアを捉え、砲弾を撃ち出す姿勢に入る。

 

充填されるエネルギーを感知した自身の機体の警告音に、セシリアも回避行動に移るため背部のスラスターに意識を向けると―――同時に機体が加速を始めた。

 

「―――グッ、あっんの技術屋(オタク)ども・・・・・・!」

 

セシリアが地を踏み外したように空中へ転げ落ちた。

 

新設のスラスターの性能は、過剰な程に優秀だった。瞬間的加速度、出力も一夏の持つ【白式】にすら追い縋るほどであり、新たな翼は吼え荒ぶ狂狼のごとき唸りをあげながらセシリアを前へと突き飛ばしていく。

 

問題が有ったのは、機体とのバランスが未だに未調整であることと、彼女が着込んでいるISスーツに連動する後頭部の"補助電脳"によってセシリアの思考・動作が過分にISへとトレースされていることだ。

 

搭乗者の生体調査用に使用される機器を流用した彼女の着用するスーツは、搭乗者の筋肉の動きを感知し増幅、より効率的に運用させる為の演算機をもってISの反応速度を脊髄反射並みに底上げさせている。

 

そのあまりの反応速度に、自国の技術屋たちへの悪態もおざなりにし、状態の安定化と最適化のためのプログラムを走らせる。

 

だが、遅い。

 

彼女に非があるわけではない。これは、ただひたすらに間が悪いとしか言えない不遇な巡り合わせであったのだ。

 

セシリアが悪いわけではない。

 

ただ()()にとって、なにもかもが"悪かった"だけだった。

 

「これが、そうなのですか?」

 

開きかけた瞳孔、それでも確かに此方を睨み観ていることを感じさせながら、底に魅せるのは憎悪や悪意とは別種の赤黒い色。

 

不意に首筋を駆け上がる汚泥を被ったような寒気が、眼下にある少女の変化をつぶさにセシリアへ見せつけた。

 

「お前のような者のために、教官は此処にいるのか? こんな、こんなものの為に、こんな、ことの為にかッッ!?」

 

迸る絶叫は、正しく正気ではない。ISに搭載された優秀な集音機が、セシリアの頭蓋へ"それ"を響かせ、喉が裂け散る寸前に黒い砲弾のごとくラウラが射ち上がる。

 

血走った瘴気、白濁する傍情、焼き果てた羨望。

 

やり場を失っていた、鬱屈とし腹の底へと堆積し続けた"あらゆるもの"が矛先を定めて噴き出した。

 

「・・・・・・クソッ」

 

ギジリと鳴る奥歯から、セシリアらしくない汚ならしい悪態を漏らしながら、彼女の背後から《BIT》が浮かび上がりラウラ目掛けて飛び掛かった。

 

大柄な機体にPIC(慣性制御システム)の恩恵に腰部のバーニアによって宙を翔ぶ【シュヴァルツェア・レーゲン】は、見た目に反し鈍重さを感じぬ機動力を持つが、その速度にも限界がある。

 

対してセシリアの《BIT》は補助電脳の影響力によりその動きは以前よりも遥かに機敏かつ鋭敏だ。

しかし正気でなかろうと相手は軍人、士官クラスのIS乗り。

 

思い通りに"動き過ぎる"四騎の動きに、脳漿が沸き立つ寒気を抑えながらに向けられる銃口など意に介さず、殲滅対象(セシリア)へ邁進する。

 

「・・・・・・・いやな、ものですわね」

 

 

 

―――まるで昔に捨てた鏡を見ているようだ

 

 

 

そんなラウラを、消え去りそうな藍の光に濡れて細められた青眼で見詰めながら、セシリアはそう呟いた。

 

どうしても、()()()のだ。

 

求めた先から心を伝って流れ落ちる、欲して止まずに泣き叫び吹き消されてしまった、その感情の名を知らずに拳を握って哭くこともできない彼女に重ね、写し見てしまう。

 

愚かで幼い、そんなかつての―――

 

 

「捕らえたぞッ!!」

 

 

掠れてザラついた声が、感傷の淵にあったセシリアの引きずり出し、同時に形よく括れた腰に毒々しく光る二本の紐、《ワイヤーブレード》が巻き付き勢いよく巻き上げらていく。

 

急速に縮まり詰められる二人の距離。

 

近づく交差点に首を狩り取る為のプラズマの手刀(リストブレード)を据え置き、ラウラは厭に突き進む。

 

もはや疑いようもない"詰み"の構図、彼女にとっての必勝と歪んだ蹂躙劇を始める前口上。

 

噛み合う破壊衝動と理性を打ち潰すような狂喜が、開いた口内から溢れる唾液と共に彼女の思考をより狭く、薄ボヤけた影の裏側へと沈めていく。

 

その先に何があるのかも知らずに。

 

その先が、どんなモノかも分からずに。

 

 

「ヒドい話ですわ」

 

 

二機がかち合う瞬間、ラウラの眼前で()()()()()()

 

「な、なにッ!?」

 

唐突な現状の変化に脳へ流れる血液にガンガンと鼓膜を叩かれ、覚醒する意識が最初に捉えたのは、自分へ向けられる()()()()()()()()()だった。

 

「歯を食いしばってください」

 

呆けるラウラの腹に、二基の間を滑りながら右足を据え付け、"打ち出す"。

 

「ぎぃ・・・・・・はァ!?!!」

 

腹部の一点から弾けた衝撃に吹き飛ばされ、引き伸ばされるワイヤーブレードが否応なく開かされた距離を物語る。

 

発動した絶対防御によるシールドエネルギーの減衰量から、先の一撃がどれだけ馬鹿げたものか推測できる。

 

そして見つけた。

 

青い装甲、踵の裏、ヒールのように伸びる鈍い銀で光る二本の杭。

 

「脚に、パイルバンカーだと・・・・・・!?」

 

「正確には()()()()()()()()()急制動用接地鉄杭(バカどもの狂気の沙汰)ですわ」

 

ISになんてものを、そう呟きながら二本の杭を仕舞い、これが必要になるような装備を造ろうとしている優秀不良人材どもの仕置きを考えてすぐに諦める。どうせ開発費を引いても大して響きやしない。

 

だが、と改めて自身の両脇に浮遊するニ翼に視線を這わせ、"機動"させる。

 

「成る程、こう使うのですね」

 

()()

 

思う通りに、想い描くように、自らの頭の中で敷いた(みち)を動き回る。

 

セシリアを基点に思考通りに動き、その命を忠実に遂行する機双旋翼(ウォーマシン)

 

 

試作12号(プロトナンバー)  半自立型可変式推進機翼(リモート・フレキシブル・スラスター)《メリュジーヌ》。

 

 

本体を中心に円運動するBITの形式的な7機目と8機目である。

 

遠距離一辺倒な【ブルー・ティアーズ】の機動力向上だけでなく、既存の非固定浮遊部位の常識に囚われない自在に可動するためより三次的な動きが可能であり、とっさのときは牽制用の"爆芯"に使うこともできる、ある意味でも優秀といえるこのISならではの装備だ。

 

「く、くだらぬ、小細工をォ!!」

 

吼える。

 

虚を突かれ畏縮した矮躯を激情で焚き付けるために。

 

疲労と空腹、磨り切れる体力に痺れ始めた全身を振り上げた。

 

後退はない。

 

敗走などない。

 

たとえ眼が焼けようと、腕が千切れようと、微塵にその身を散らそうと止まるわけにはいかない。

 

そう思えば思うほどに、深く軋みあげる胸の痛みに気づけぬままに。

 

激情の中でレールカノンが吐き出す閃光がセシリアを穿つ一瞬を、彼女は瞬時加速によって掻い潜る。

 

腹に巻き付く鎖で振られるままに下方へ加速、さながら振り子に乗るように上から下へ抜けのび、続けざまに鎖を()()、そして銃口を向け、―――撃った。

 

「ちぃっ! 次から、継ぎによくもっ!?」

 

向けられた二つの暗い穴。

 

天地逆転された姿勢で真っ直ぐに伸びる腕に納まる、二丁の青い鉄筒。

 

そして甲高い耳障りな異音を奏でなおも青く輝く、武骨と精緻さの矛盾を掛け合わせた曲線的刃(エッジブルー)

 

 

試作11号(プロトナンバー)  試験的対装甲用(アンチアーマー)TCVB(熱伝振動ブレード)搭載型光学拳銃(エネルギーピストル)《ナックラヴィー》。

 

 

近接戦(ドッグファイト)においての脆弱性を穴埋めするための銃剣(ブレードガン)。その構造上、ブレードの熱と振動により銃身そのものが歪む致命的な危険性を孕んだ欠陥品だ。

 

それでもその取り扱い易さ、あらゆる局面で使い回せる汎用性の高さは、充分に完成品といえる作品である。

 

「小細工と、言いましたね。この【ブルー・ティアーズ】を」

 

もはやセシリアは、まともな飛行を放棄した。PICのみでの移動すら儘ならないのが常態化しているこの現状で、まともな時の経験など役に立つ訳もない。

 

ならば、ヘタな試行錯誤など切り捨てるべきだ。

 

ときには頭の悪い、通り一辺倒なヤリ方も必要になる。

 

「事実だろう! 上っ面を張り合わせた、数合わせの三流機が!!」

 

飛び荒ぶ砲弾、役目を果たして地へ転がり落ちる薬莢の空洞音が響く度に、セシリアは更に速く翔ぶ。

 

動く的に銃弾が当たらないのは自明の理。

 

姿勢を変えずに様々な方向に進路を変え続けることのできるメリュジーヌを我武者羅に噴かし回し、ラウラへ向けた銃口は絶え間なく放たれる光弾で彼女を攻め立てた。

 

「・・・・・・まぁ、たしかに【ブルー・ティアーズ】は次世代への踏み台です。衰亡する家を体よく使った広告塔、それが"わたくしたち"です」

 

悲壮、悲哀、卑屈。彼女らしくない後ろ向きな言葉と、影に隠れる青い瞳。

 

()()と、空を仰ぎ見る。

 

いつ以来になるのだろうか、こうして自身より高い場所に心を向けるのは。

 

己よりも深く広がる紺碧の空。

 

かつては、この『青』が大嫌いだった。

 

青とは悲しみの色だ。憂い、絶望、敗北の失敗者が被る冠の色。

 

現実を弁えずに無様なまま抱えあげた夢とよく似た色は、膝を着き頭を垂れた者たちの遥か頭上で、まったく同じ様で夢想したままの姿でその身を横たえている。

 

ゆえに、再び見上げたときに思い知る。

 

この(あお)が、どれだけ広く自由なのか。

 

 

 

 

 

 

「それでも今は、この『(ブルー・ティアーズ)』がわたくしの『矜持(プライド)』です」

 

 

 

 

 

爛と燃え上がる焔が、青い瞳の奥、心臓の底から天へ立ち上るような熱で"轟"と音を立ててセシリアの背を熱く押し飛ばす。

 

想うのはかつての自分。

 

振り向けばいつもそこにいる。泣き晴らして座り込む、小さなあの頃から今は少しでも前へ歩けているだろうか。

 

自戒と自嘲の繰り返しは終わらない。

 

生きるためにISに乗なり、当主と国の代表候補としての務めを果たしながら、一癖二癖もあるような人物に囲まれ振り回されてながらもいつからかは笑い合い、今はドイツの少女に向けて斬りかかっている。

 

まったく、碌なもんじゃない。

 

そう口の端で笑い飛ばしながら、握り込む銃把(グリップ)からブレードを起動、絶対距離(キルゾーン)の先にいる少女へ振りかぶり―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬 鹿 々 し い」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ、これは・・・!?」

 

ラウラへ向けて走らせた剣穿が、到達する寸前で()()()()

 

止められたというものでなく、"100"有ったものを"0"に一瞬で差し換えられたかのような虚無感。

 

気付けば全身を虫針で留められた標本のごとく、セシリアは中空へと縫い付けられた。

 

「―――気が遠くなりそうだ。貴様は、無駄なものが多すぎる」

 

爛れて潰れた人間のような声が、セシリアの首の産毛を逆立てた。

 

重なる視線。

 

覗き込み、覗き見られるひび割れて赤く膿む眼光がセシリアの奥を刺し貫く。

 

矜持(プライド)、プライドだと。半端な成り上がりの英国人(ライミー)が、謳うなよ」

 

新たに射出されたワイヤーブレードがセシリアの首に絡み、気道を僅かに狭める程度に締め上げる。

 

肺が酸素を求めて動くも吸入されるものの量は細く、それ故に意識を途絶えさせることも出来ない苦しさが続く。

 

「友愛、信頼、お前たちはデコボコだ。だから、あの方の元にいながらその程度だ、その程度で居られる、そのまま終わっていける」

 

黒い趾がセシリアの頭を鷲掴み爪を立てる。

 

捻りあげ、その細い首から先を手折(たお)るように持ち上げていく。

 

そして再び重なる二つの視線。

 

握り潰さんとする指の狭間から垣間見るサファイアの先で、見下ろし見下げて賎しめる霞んだルベライトが声を発した。

 

「ただ()()だけが在ればいい。その為の兵士ですらいられないなら、ここで朽ち果てろ」

 

ISのパワーアシストをフルに使った握力が人の頭を掴めば、どうなるかなど分からないわけがない。

 

今もガリガリと削られていくエネルギーのが、その現状を脅迫的に刻み付けていく。同時に、彼女が如何に本気であるかも。

 

だというのに―――

 

「―――それが、貴女ですか」

 

歪まず、怯まぬ静かな声。

 

身動ぎすらできぬ中、明確な害意と悪意に取り憑かれた黒金に包まれながらも、その声は深層水のように澄み渡っていた。

 

「ちっ、減らず口を叩けるだけの容易が貴様にあるとでも・・・?」

 

「減らず口というより、独り言のようなものですわ。それと、()()()()()()()()()

 

明らかな含みの混ざったセシリアの台詞に、ラウラがその真意に気づくよりも速く、【赤銅】が小さな背を伐り裂いた。

 

「がっ、あ?!」

 

走る衝撃に、目を白黒させるラウラに、同時に不可視の網が破け拘束されていたセシリアが放り出される。

 

「・・・これ、あたしが出てきて良かったの?」

 

【シュバルツェア・レーゲン】の右腕を掴み、日本の柔道でいう"巴投げ"の要領で後方へ投げ飛ばし、入れ換わりに首のワイヤーを解きながら新たに駆けつけた者もとに飛び込む。

 

「むしろ、遅いくらいですわ鈴さん。もう少しで頭が火を通したトマトより酷いことに成るところでした」

 

「うげっ、グロいこと言わないでよ」

 

両手に下げる大振りの青龍刀『双天牙月』、赤銅色のIS【甲龍】を纏った、凰 鈴音がセシリアの冗句に呆れ半分嫌悪感半分の顔で舌を出した。

 

ISコアのネットワークを利用した秘匿通信(プライベートチャンネル)によって静観をセシリアによって強いられていた鈴音だったが、ここに来て響いた救難信号に、少なからずの"使われている感"に眉を寄せながら動きだし今に至る。

 

「それで、結局どういうわけなのよ。あたしたちは何に巻き込まれたわけ?」

 

「簡潔には八つ当たり、自己顕示欲といったところでしょうが」

 

「どう見てもそれだけなわけないでしょ、"あれ"。見てるこっちが泣きそうになるわよ!?」

 

それだけを言い切ると、鈴音はラウラへと飛びかかる。

 

既に体勢を整え憤怒の熱に顔を歪めるラウラは、そんな彼女をワイヤーブレードをもって迎え討つ。

 

ぶつかり合う【漆黒】と【赤銅】の二色。

 

宙空を這い荒ぶ鎖を鈴音の衝撃砲が撃ち払い、岩盤のごとき威容を放つ青龍刀の斬激を潜り手刀の光が赤い装甲へ新たな意匠を施す。

 

エネルギーも残り少なく、慣れぬ動きに熱をもった血液を冷ます必要もあったセシリアは、鈴音に任せて戦線から一時退避する。

 

激しく絡み合う二機から離れ、違和感の残る喉で軽く咳き込みながら、セシリアは使い慣れたライフルを呼び出し、そのスコープからラウラを"サイト"の中から逃がさぬよう細かに照準を動かす。

 

先の戦闘でラウラの使用した"動きを止める特殊兵器"。それはおそらく、自身のBITと同様に多大な集中力を費やすものだと当たりを付けたセシリアは、ライフルで狙いを付け続けることで注意力を分散させ兵器の使用を妨害する、謂わば"嫌がらせ"に徹することにしたようだ。

 

「"泣きそう"。ええ、貴女がそう言うなら間違いないのでしょう、鈴さん」

 

キツく吊り上げた翡翠の瞳で独楽のように大曲刀を振り回す少女を見やる。

 

きっと彼女は考えるより早く、その心で感じたのだろう。

 

人を思い、友を愛す。凰 鈴音という少女は、善くも悪くも"心"で動くことができる人間だ。敵意を向ける相手にさえ、何の苦もなく共鳴することができる感受性の高さは、"人の痛みに寄り添う"ことのできる彼女にとっての何よりもの美徳に違いない。

 

だからこそ、彼女が()()()()()()()()()、きっとそうなのだ。

 

ラウラ・ボーデヴィッヒの本質にはあるのは―――

 

 

 

 

「何をしているラウラ!?」

 

 

 

 

頭を横殴りされるような突き抜ける第三者の声に、演習場の三人の動きが一斉に止まる。

セシリアのセンサーが拾い上げたサブディスプレイに映されたのは、息を切らし黒いスーツを着こなす女性、織斑 千冬だった。

 

「トーナメント前の自主練習、のようなもの織斑先生。少々、熱が入りすぎてはいますが」

 

そんな千冬にセシリアがスピーカーを使って答えるが、彼女の視線がセシリアに向くことはない。

 

その目線を辿って行くと、やはりと言うべきか、行き着いたのは自分たちに凶行を行った少女ただ一人。

 

日本刀か狼のような、人によって畏怖を覚えるだろう彼女の鋭い目付き。

 

だがそれも、今このときだけは鳴りを潜め、”いつか"自身に見せたような濃い影の中にあるような色をしている。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

数瞬、ラウラはそんな千冬の姿を睨み返していたが、直ぐに踵を返し場外へと抜けていった。

 

何かを振り切るように、逃げ去るラウラの姿は、先までの獰猛さも凶気もただの虚勢だったかのように小さく、風に吹き消されそうなほど脆く見えた。

 

「鈴さん、とりあえず織斑先生の方へ」

 

「ん、あっち(ラウラ)はどうする?」

 

「わたくしの方で。とりあえず、それとなく、ですが。一応、クラス代表ですので」

 

「・・・・・・そう。困ったら言ってよ?」

 

額に汗を浮かべた鈴音に千冬へのフォローを頼み、セシリアは飛び去っていったもう一方へ意識を向ける。

 

「ゲーテ曰く ―――才能は孤独のうちに育ち、人格は社会の荒波の中で最適化される、でしたか」

 

かつての恩師と、その生徒。

 

一度は離ればなれになった二人が、今こうして再び同じ学舎の下にいるというのに、その距離はかつてよりも大きく開き、渓谷となって壁を築いている。

 

行き違い、すれ違い。

 

それとも、もっと根本的な何かか。

 

「もし本当にそうなら、世界はどれだけ残酷なのでしょうか」

 

手摺に身を乗せ、消えた少女の背中をなおも見詰めて悲壮に濡らす千冬に声を投げ掛けることもなく、セシリアはただ胸の内で燻る不安に飲み込むように、大きく息を噛みしめた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

―――■■■■■ ■■■―――

 

 

 

 

グラグラと揺れて沸き立つ地面。

 

世界が回り、色は混ざり、薄く白い幕を貼った視界が自分の限界を告げている。

 

アリーナから戻り、転げ落ちながらISを解除したラウラは、覚束無い足取りでコンクリートの床を進んでいく。

 

乱れた頭には砂嵐のようなノイズと裏返りそうになる眼球のおかげで、今にも臓物が口から溢れ出しそうになる。

 

何もかも上手くいかない。

 

ただ苛立ちのみが募っていく。

 

 

 

 

 

―――■■t■n ■■■―――

 

 

 

 

 

吐き気がする。

 

体調管理を怠った皺寄せが、自身の何もかもを苛んでいる。

 

 

 

 

 

―――■■t■n ■■e―――

 

 

 

 

 

脳を串か何かで突かれる、ジグジグと穴が開いていく感触。

 

思考が綻び、理性が溶けて、その下からナニカが覆い被さる、そんな感覚。

 

 

 

 

 

―――T■t■n ■ie―――

 

 

 

 

何かが消える、何かが欠ける、何かが陰る。

 

何かが潰れる、何かが折れる、何かが落ちる。

 

ナニカが離れた、ナニカが呑まれた、ナニカがシンデイク。

 

 

 

 

 

―――Tot■n ■ie―――

 

 

 

 

ナニ訶がキEタ、ナニカがカ桁、ナニカ画架ゲル。

 

ナニk亜がツブれタ、ナ仁かガオレタ、ナニカがオ知多。

 

ナニカハナレタ、ナニカNo.マレタ、ナ仁kA賀ガシン妥。

 

 

ミエナイ先de、誰花gアsok尾ニイru

 

 

 

 

 

―――Tot■n ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボーデヴィッヒ、少しいいか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

反射的に打ち出した拳が空を切り、代わりに顎に小さな痛みが走る。

 

視界の端で見知らぬ髪の長い女がいたが、傾ぐ体に逆らうことなく、意識が底についた。

 




イギリスオリ武器説明会
 
・新作のスーツ
 個人的にはエロ0の対Gスーツが燃える

・脚の杭
 マジンカイザーあたりに必要なブッパしたときに自分が吹き飛ばないようにするやつ。

・シナンジュ的な羽
 ただでさえ周りに比べて固定砲台なのに別パッケージで高機動やるくらいなら初めから動けるようにしろやゴラぁ!?と思ったのは私だけか? 名前の意味は空飛ぶ蛇女、ウィッチャーのセイレーンみたいなやつ

・FFではないブレードガン
 ロマン。替え刃も用意できたらなお良い。名前の意味はラヴクラフト製ケンタウロス。個人的イメージはパンタローネ

数ヶ月の時間をかけたが思うようにいかない。次はもう少し早く出したいッス

ではまた
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