100秒で分かるアナザーガンダムの黒歴史 作:カブキガンダム
アンサイクロペディアを読むときのような寛容な心でご覧ください。
時は西暦1993年。
Vガンダムの好調とは言えない業績を受けて、サンライズは窮地に立たされていた。
そのため、サンライズ上層部は更なるガンダムの製作を富田ヨシユキ監督へと依頼した。
だが度重なるガンダム制作によって富田監督は疲弊しきっていた。
富田監督以外にガンダムを作らせるべきか?
そんなものが従来のファンに受け入れられるのか?
そもそもそんな人材がどこに居る? 教えてくれガンダムローズ……!
会議は混迷を極めた。
誰もが頭を抱えて、答えを出せずにいた。
そんなサンライズ上層部の隙をついて、富田監督はBPOをも恐れぬ変態達をVガンダムの世界へと解き放った。
いずれも時代が違えば淫獄団地に住んでいてもおかしくない猛者たちである。
本当に疲弊しているのか富田監督……??
だが、富田監督はサンライズを見捨てなかった。
さすがにVガンダムで色々やりすぎたという思いもあり、富田監督はサンライズへと蜘蛛の糸を差し伸べたのだ。
サンライズ上層部には、富田ヨシユキが菩薩に見えたという。
シャイニングガンダムのキャリアが蓮の形をしているのがこの時の名残であることは、あまり知られていない。
「たかが業績不振ひとつ、今山ヤスヒロの力で押し出してやる!!」
「「「「さすが富田ヨシユキだ!」」」」
「!!!!?」(今山の言葉にならない悲鳴)
貧乏クジを引かされた……もとい名誉の拝命に身を震わせた今山ヤスヒロ監督。
そもそも今山監督は実質的に富田監督の弟子のような存在ではあったものの、まさかそんなことになるとは夢にも思っていなかった。
しかしそんな経歴のせいで、今山本人以外の人々はあっさり納得してしまった。
Gガンダム本編で、父親が冷凍刑の眠りについたせいでガムシャラに戦うしかなかったドモン・カッシュの境遇は、この時の今山ヤスヒロの心境をもとにしていると言われている。
「今までのガンダムとは全く違う毛色のものを……そうだ! ガンダムでプロレスをやれ、今山!」
「「「「さすが富田ヨシユキだ!」」」」
「!!!!?」(今山の言葉にならない悲鳴)
顔を真っ青にしている今山をよそに、会議室にいたサンライズ上層部の面々はその場で酒瓶を開けて祝宴を始めた!
酒が全てを解決し、洗い流してくれる、アルハラ文化に対して大らかだった最後の時代である。
なお酒が飲めない人間にとっては地獄のような時代である。いつか時代が変わっても僕は忘れない。(恨み節)
そんなこんなで、数か月後。
ギアナ高地での厳しい監督修行を挟みつつ、今山ヤスヒロは『機動武闘伝Gガンダム』の1話を作り上げた。
アースノイドとコロニー住民の確執を織り込み、従来のガンダムファンを刺激しないように暗めのテイストで仕上げたのだ。
これならイケる、と今山は3徹明けのラリラリした頭で思った。
「今山よ。修行の成果を見せてもらう!」
「はい、師匠!」
と、そこに丁度よく
今山は、出来上がっていたGガンダムの1話を富田へと見せた。
やったか、と今山は心の中で呟いた。
だが、富田の反応は今山の予想を大きく裏切るものだった。
「このバカ弟子がぁっ!!」
「師匠、何を!? ぐああああっ!!?」
あろうことか、富田は今山のハチマキを奪い取ると、氣を込めて鉄のような硬度を持たせながら今山を滅多打ちにしたのだ。
さらに富田は、Gガンダムの1話の完パケテープを粉々に打ち砕いた。
地に倒れ伏した今山へと、富田は怒りの言葉をぶつけた。
「何故! こんな暗い雰囲気の作品を作った!! 答えてみよ、このバカ弟子めぇ!」
「従来のガンダムファンを納得させるには、こうするしかなかったんだ!!」
富田と今山のリアルファイトを傍から見ていたサンライズのスタッフたちは、何も言わずにビニール紐を用意した。
その中でも8人の精鋭スタッフがポール替わりとして直立し、瞬く間にビニール紐によって即席リングが作られたのだ。
サンライズのスタッフたちはビールを片手に、固唾をのんで師弟対決の行く末を見守った。
オッズは9:1で富田が優勢と思われた。
富田の勢いを前に、今山の拳は宙を切るばかりだった。
ギアナ高地での激しい監督修行を経た今山でも、富田に勝てるヴィジョンはまるで湧かなかった。
そんな今山の弱気を読み切ったかのように、富田は布武術にて今山を激しく打ち据えた。
だが、ダメージで朦朧とする今山の意識に、言葉ならぬ声が聞こえた気がした。(いつものNTが閃く音)
まぎれもなく幻聴である。
今山が3徹済みであることを忘れてはいけない。
――だからお前は未熟者だというのだ!
――従来のガンダムをぶち壊すために、お前を後継者に指名したのが分からんか!
「そうかっ! 師匠なんて関係ない! 俺は俺だけのガンダムを作るべきだったんだ!」
「ようやく気付いたか! だからお前はバカモノだというのだ!」
今山は、明鏡止水の境地に達した。
今山の手が真っ赤に燃え、師匠を倒せと轟き叫んだ。
気を利かせたサンライズのスタッフたちが、番組後半のゴッドフィンガー用に用意していたBGMをラジカセで流し始めた。
「爆熱ッ! ゴッドフィンガアアアアアアッ!!!」
「ぐあああああああああああああっ!」
「ヒート・エンドォッ!!」
今山の渾身の貫き手が炸裂し、富田の胸を貫いた。
勝負は……決した。
こうして、往年の巨匠富田ヨシユキは、愛弟子の腕に抱かれて息を引き取ったのであった。
美しい朝日を目の当たりにしながらの死に顔は、胸を貫かれているとは思えないほど安らかであったという。
日本のアニメ界が失ったものはあまりに大きかったが、これを機に富田ヨシユキ以外がガンダムを作れるようになった事件として、このファイトは語り継がれることとなる。
アナザーガンダムの夜明けといえる歴史の転換点だ。
朝日を拝みつつ、号泣しながら今山は、富田とともにガンダムの未来を誓い合ったのであった。
今山ヤスヒコ、脅威の4徹目突入の瞬間である。
「ところで今山監督、納品まであと3日ですけど、どうしましょう?」
「!!!!?」(今山の言葉にならない悲鳴)
粉々になっている完パケテープの残骸を前に、今山は徹夜が更に必要であることを悟った。
それでも間に合いそうになかったので、こっそり
こうして、アナザーガンダムの歴史が幕をあけたのである。