正統派ディクロニウス、マーガレットちゃん   作:ちゅーに菌

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原作知ってたらニヤリと出来て、知らなくてもそれはそれで楽しめるぐらいの内容を目指しております。

後、黒湖さんにはマーガレットちゃんを攻略(二重の意味で)してもらいますので悪しからず。







ディクロニウス

 

 

 

 

 

「分かれ道ね」

 

 マーガレットがポツリと呟いた視線の先には、廊下の突き当たりに二方向への分岐路があり、そこに掛けられた案内板には右に"北館"、左に"小ホール"とある。

 

「じゃあ、グーパーで別れようぜ二手に」

 

 別に律儀に分かれる必要はなく、纏まって適当な方に行けばいいとマーガレットは考えていたが、いの一番に桃山がそう言ったため、そちらの方向性となる。

 

 特にこの場の人間が死んだところで何を感じるわけでもなく、脱出パーティーという名目で集まっていただけと感じていたマーガレットは、意見することもなくそれに従った。

 

 ちなみにほぼ一般人のミユキは黒湖とセットらしい。更に言えばミユキが黒湖に張り付いている。

 

 マーガレットからすれば、そんな怪物レベルの蟒蛇(うわばみ)のような女のどこをそこまで信頼出来るのか謎であったか、まあ彼女を頭数に加えられても面倒なのでこちらも特に何も言うことはなかった。

 

 

 

「よぉーし、行くぞっ! グッパー……!!」

 

 

 

 そして、新しいメンバーが決まった。

 

 まず、北館メンバーが、マーガレットと朽葉と桃山の三名。そして、小ホールメンバーが、黒湖及びミユキとコンラットの三名である。

 

 そんなわけで黒湖らと別れたマーガレットは、とりあえず北館とやらを目指す事となった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「………………」

 

「…………むぅ」

 

「………………」

 

 暫く三人で歩いたが、分岐の直後には罠を仕掛けていないらしく、特に会話のない時間が続く。まあ、マーガレットは他者から話し掛けられなければ答えず、朽葉は余り話さない性格であるため、6人で一番おしゃべりな桃山は静かな空気館に何とも言えない表情をしている。

 

(気のせいかしら……いや、気のせいじゃないわね。何よこの弱そうなの)

 

 マーガレットは北館に近付いてから虫の知らせのようなものを感じていた。

 

 とは言え、確証はなくその感覚も人間の二人には決してわからないモノなため、話せるわけでもないが、余り気持ちの良い感覚ではないらしく、他人が見れば幾らか険しい表情をしていると捉えられるような顔をしている。

 

「なァ、姉ちゃんよ。なんだってそんなに離れて歩いてんだ?」

 

 そんな折、いつの間にか並んで歩く桃山とマーガレットの二人と、その数m後方の位置で着いて来ている朽葉という状態になった事に桃山が疑問を呈する。

 

 マーガレットとしては至極どうでも良いことであり、むしろディクロニウスである事を知り、ベクターの性能を目の当たりにしながら自身の隣に並んでいる桃山の方が彼女には疑問であった。

 

 世間一般で言われているベクターの射程範囲知らないわけではないだろう。そのため、調子外れで阿呆な彼に眉を潜めつつマーガレットは口を開く。

 

「今は有事なのにスナイパーを前衛に並べてどうする気よ? 全員まとめて罠に掛かって何か得があって?」

 

「おー……それもそうか! わりぃわりぃ」

 

「………………」

 

 暗に自身の隣から離れろという意味合いも込めて言ったマーガレットであったが、桃山はそれを知ってか知らずが汲み取らず、自嘲気味な笑みを浮かべて頭を掻きながら関心したような様子になった。

 

 明らかに裏社会に生きていながら、どうしたらこれだけ能天気でお人好しになれるのかと、マーガレットは内心顔を引きつらせる。

 

「まあ、さっきまではマーガレットに任せっきりだったから、今度は罠は俺が全部ぶっ壊してやっからよォ。大船に――」

 

(……よしっ)

 

 マーガレットは自身の頭上に死が迫る感覚を覚えた直後にその場から後方に飛び退く。

 

 つまり隣にいた桃山にのみ被害が及ぶ事になるため、彼を見殺しにした事になる。それどころか、彼女の危機回避能力を知る後方の朽葉から見れば殺しに来たとしか思えないであろうが、彼女にとってはどうでもいい事であった。

 

 それに遅れて桃山の頭上から鉄球が降る。それは明らかに金属製で、100cm程の市販のバランスボールのようにも思えるが、人間に当たれば一撃で無惨で薄い肉塊に早変わりであろう。

 

「どらァ!」

 

(ええ……)

 

 しかし、あろうことか桃山はそれを片手の拳を振り上げて殴り付けることで粉々に破壊した。

 

 黒湖ばかりに注目していたが、どうやらこの男もそれなりに規格外である。

 

「な? 大丈夫だろ? マーガレット」

 

「…………そうね」

 

 どうやら桃山は自身の実力が信頼に足るか証明したいらしい。また、単純に殺され掛けた事に気づいていないか、気にしていない可能性もある。

 

「安心――」

 

 その直後、桃山は左右から自動ドアが閉じるように競り出してきた壁に挟み込まれる。

 

 しかし、案の定というべきか、片腕で鉄球を破壊した男は左右の壁に両手と片足を掛けて、自身を突っ張り棒のようにすることで無理矢理保って見せた。

 

「今度は横からかよ。芸がねぇな」

 

 そう言ってのける桃山はまだまだ余裕そうである。

 

 馬鹿力も極めるとここまでになるのかと、マーガレットは妙な脱力を覚え、この男に感情を多少でも荒立てていた事にやりきれなさを感じ始めた。

 

「おい、ちょっと……ウソだろ……?」

 

 すると突っ張り棒代わりになったままの桃山に向けて、壁の片方からチェーンソーの刃が伸び、徐々に彼の方に向かって来る。

 

(いや、金の使い途おかしいでしょうが……)

 

 鉄球で殺し損ね、そこと同じ位置を挟む壁を身体で壁を止められた事を想定した上で、更にそれを殺すための罠が張られているという余りにも意味のわからない無駄な罠配置にマーガレットは頭を抱える。

 

 そして、遂に桃山の眼前までチェーンソーの刃が迫った。

 

「マジかオイ!? たっ、助――」

 

 その直後、チェーンソーの刃にライフル弾が撃ち込まれて完全に破壊されると共に、両側の壁が突如として粉々に吹き飛ぶ。

 

 解放された桃山の両脇をスナイパーライフルを撃ち終えた朽葉と、ベクターで彼を挟んでいた壁を破壊したマーガレットが通過する。

 

「こ、怖かったぁ……。助かったぜ……ホントありがとう」

 

「………………」

 

「はぁ……」

 

 マーガレットも朽葉も言葉は何も発さず、三人で纏まって北館を進むのであった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「はぁ……そういうわけね」

 

 暫く三人で北館内を進み、見付けた部屋を改めていると、吹き抜けの開けた部屋に入り――その中央に居た人影を見るなり、マーガレットは深い溜め息を吐く。

 

 それは首元に掛かる程度の長さをした赤髪のメイドがおり、衣装こそ正面玄関や会場で見たメイドとほぼ同じであったが、13~14歳程度の外見年齢に見える少女であった。

 

「こんにちは、参加者の皆さま!」

 

 こちらを視認した少女は、スカートの裾を掴んで丁寧にお辞儀をして見せ、元気よくそう声を掛けて来る。

 

 活発で朗らかな印象を受け、歳よりも幾らか若く見える童顔をした少女は余りに可愛らしく、まるで妖精のようにさえ思えるだろう。

 

 奇しくもその感覚は、マーガレットを初めて見たであろう人間が感じる印象と似通っていた。

 

「子供のメイド……? なんたってこんなところに」

 

「…………! カチューシャの下をよく見て」

 

「ん……ありゃ――()!? ディクロニウスか!?」

 

 そして、その少女が頭に付けているホワイトブリムに付いた白いレースで見えにくくはなっているが、確かに白い二本の小さな角がそこにはある。

 

 ディクロニウスにはディクロニウス同士をそれぞれ感知し合える感覚を持つ。どうやら北館に入った時点でマーガレットが感じていたのは彼女がいるという感覚だったらしい。

 

「私、(あかね)! お爺ちゃんにみんな殺すように言われてるの! だから殺しちゃうねぇー!」

 

「品がないわねぇ……」

 

 マーガレットの目には天真爛漫な笑みを浮かべる目の前の茜というディクロニウスが、4本のベクターを展開している姿が見えていた。

 

()()()()が……」

 

 あから様に怪訝な表情に顔を歪めて毒吐くマーガレット。そこには怒りとも嫌悪とも読み取れる何かがあるように思えるだろう。

 

 そして、茜のベクターの長さは約"5m"程であり、一般的なジルペリットよりも明らかに長い。無論、マーガレットが今まで伸ばしていたベクターの長さは3m程度であり、彼女よりも明らかに短かった。

 

「あなたたち、ここは私がやるから別のところに行きなさい」

 

 しかし、こちらの動きを待っているのか、未だに攻撃してこないため、マーガレットはそう二人を促す。

 

「そう……わかったわ」

 

「だがよぉ……」

 

「餅は餅屋よ。ディクロニウス同士が本気で殺り合ったら人間は邪魔なの」

 

「そうか……。わかった。今まで恩に着るぜ! ぜってー、生きて脱出するぞ!」

 

「はいはい、精々自分の心配でもしていなさい」

 

 部屋から去って行く二人を見ずにヒラヒラと手を振るマーガレット。

 

 全く無関心の人間ならば、平気で見殺しにして飯のツマミになるため、このように庇う行動を彼女は決して取らない。そのため、二人に対して多少の愛着が芽生えていたのかも知れないが、基本的に高圧的な彼女が自らの口から語ることはないであろう。

 

「えー……逃がしちゃうのー? つまんなーい」

 

「あなた相手なら私一人で役不足よ」

 

「あははは! 冗談! そんな短いのにー?」

 

 マーガレットが2本だけ展開した3m程度の長さのベクター見た茜は罵るように笑う。

 

 ディクロニウスにとって、ベクターの射程と腕力は個体によって異なる。当然ながら射程が長く腕力の強いディクロニウスほど単純に強力な個体だ。

 

 そして、射程が2mも差が開けば全く相手には届かず、一方的に攻撃されることは目に見えている上、マーガレットは足に2本ベクターを割いているため、そもそも五体満足な様子の茜とは明らかに条件が不利である。

 

「いい? ディクロニウスは単純なベクターの性能だけが全てじゃない事を教えてあげるわ……」

 

 マーガレットは両手を円を描くように突き出して構え、片足を振り上げた姿勢を維持する。

 

 それは明らかに中国映画で見たような拳法の構えであり、異様に綺麗で体幹のブレないそれと、真剣な彼女の風体が合わさり、ただならぬ剣幕を感じさせるだろう。

 

「武術の心得はありまして? 無くて困るものでもないわよ。それを今から教――」

 

「え――?」

 

 しかし、話の途中で何の脈絡もなく、マーガレットが掲げていた片脚が根元からポロリと外れて落下し始めたため、茜はポカンとした表情で呆気に取られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 齢90を超える枯れ木のような老人、悟兵衛は己が仕掛けた最高の罠であるディクロニウス――茜に絶対の自信を持っている。

 

 確かにディクロニウスという種は人間によって滅ぼされたが、それは表向きの話であり、人間の底知れぬ悪意はそれをよしとはしなかった。

 

 世界にベクターウィルスがばら蒔かれ、WHOが出産を禁止した折に、ワクチン開発まで堪え切れずに産まれてしまった個体が最期の世代のディクロニウス――そして、それよりも後に()()()()ディクロニウスが茜である。

 

 つまりオリジナルのベクターウィルスが完全に終息した後に、ベクターウィルスの雛型を入手したアンダーグラウンドの組織が、ウィルスを可能な範囲で復元し、改良や遺伝子操作を行って生まれた人造ディクロニウスの1体であり、生まれながらの生物兵器こそが茜なのだ。

 

 そして、茜は極めて高品質な人造ディクロニウスであり、オリジナルのディクロニウスよりベクターが長く腕力がある上、他者に依存するように設定されているため、運用も極めて安定している。

 

 人造ディクロニウスはアンダーグラウンドでも最高級の兵器であり、非常に高い買い物ではあったが、それだけの価値はあったと言えよう。

 

 そのため、如何に館の罠を破られようとも、年齢から考えてもオリジナルのディクロニウスであろうマーガレットを茜が殺せぬ筈がないと兵衛は確信しており、実際以前に開かれたパーティーではオリジナルのディクロニウスを殺している事も信頼に繋がっている。

 

『養殖モノが……』

 

 そして、茜と対峙しているマーガレットが毒突く様をモニター越しに眺めている兵衛は、彼女の負け惜しみのように思える言葉に気をよくした。

 

「そろそろじゃな紫さん」

 

「ええ、そうですね」

 

 メイドの紫を伴い、手塩に掛けた茜がまた悪人を裁く。それだけで兵衛は感無量であり、茜のベクターが悪人を裂くのを今か今かと眺める。

 

『いい? ディクロニウスは単純なベクターの性能だけが全てじゃない事を教えてあげるわ……』

 

 そんな最中、少し茜と会話をしたマーガレットは、何故か両手を円を描くように突き出して構え、片足を振り上げた姿勢を維持する。

 

「あら……?」

 

 それは中国映画で見たような拳法の構えであり、かなりのレベルの合気道の使い手である紫は武術として多少疑問を覚えるモノであった。

 

『武術の心得はありまして? 無くて困るものでもないわよ。それを今から教――』

 

 しかし、話の途中で何の脈絡もなく、マーガレットが掲げていた片脚が根元からポロリと外れて落下し――スカートが棚引くその影間から一発の轟音が鳴り響く。

 

「ああ……不味いですね」

 

『え――?』

 

 紫が呟いた視線の先には、茜の大腿部に穴が空いた光景があり、またマーガレットの本物と見間違うほど精巧な装飾義足が付いていた空間には、代わりに細い煙を吐く白銀の拳銃が宙に浮いていた。

 

『あ――あぁぁあぁ゛あ!?』

 

 そして、遅れて茜の傷口から血が溢れ出し、彼女の顔が苦悶に歪むと共にそのまま床に倒れ込んだ。

 

 ディクロニウスの弱点として、ベクターは強い痛みを与えられ、感覚を乱されている間は一切展開する事が出来なくなる点であり、茜がなすすべもなく床に倒れたと言うことは、現在の彼女はベクターを失ったに等しいと言うことだ。

 

『はい、残念』

 

 それを見逃すマーガレットではなく、片方だけの義足のまま、十数mの距離をひと跳びで茜の眼前まで移動したように見える彼女は、そのまま茜を床に押さえ付け、自身の傍らに浮く拳銃の銃口を捩じ込むように足の傷口に押し付ける。

 

『あっ゛!? うぅぅぅぅ!?』

 

『義足の中にはあら不思議、トーラス・レイジングブル。口径はもちろん、Model 500(50口径)。銃弾はタングステン合金製500S&W弾。特注の対ディクロニウス用特殊弾よ?』

 

『な、なにそれ……ずる――』

 

「な……馬鹿な……」

 

 余りにも呆気なく茜が倒された事に兵衛は唖然としたまま戸惑い言葉が出ない様子だった。

 

『ええ、こんなカラクリ屋敷に引き籠って、罠で消耗した人間ばかり殺してた温室育ちのお嬢様からしたらズルいかも知れないわねぇ。でも無意識にガードして威力を幾らか抑えれた点だけは褒めてあげる。お陰で綺麗な傷口で弾が抜けてないわ』

 

『うぅ゛!?』

 

 更にマーガレットはベクターで持っていると思われる宙に浮く銃の柄で茜を継続的に殴り付け、それによって細く血が飛び散った。

 

 定期的に痛みを与えてベクターを出せなくしているのであろうが、そのやり方が余りにも冷酷である。

 

『全く……使えない失敗作を掴まされてお爺さんとやらも可哀想ねぇ』

 

『わ、私は……失敗作じゃ――』

 

『あっそ』

 

 マーガレットは何故か茜を部屋の隅まで勢いよく投げ付ける。

 

 壁に当り肺の空気を全て吐き出した茜だったが、拘束が無くなった事で直ぐに立ち上がり、息も絶え絶えな様子で血濡れだが、それでもマーガレットを睨む。

 

『お前なんか絶対に殺して――』

 

 そこまで茜が言葉を吐いたところで、茜の形相はマーガレットを食い入るように見つめたまま、あり得ないモノを目の当たりにしたような表情で固まり、それ以上の言葉は止まる。

 

 しかし、兵衛の目にも紫の目にもマーガレットがただそこにいるようにしか見えず、何かがあるようにも変わったようにも見えなかった。

 

『えっ……なにそれ……。そんな……嘘……』

 

『何もそんなに怖がること無いんじゃないかしら? 同じ仲間でしょう?』

 

『ち、ちがッ!? そんなの知らない! お前はっ……違う!?』

 

『酷い言われようねぇ……。同族の(よしみ)として、冥土の土産に良いもの見せてあげてるだけなのに』

 

 マーガレットは茜から目を離し、入り口付近の自身の片方の義足が落ちている場所に目を向ける。

 

 すると、確かに十数m以上離れているにも関わらず、ふわりと義足が浮き上がり、彼女の足に吸い寄せられて元通りに装着された。

 

 マーガレットが茜に向けて一歩足を踏み締める。それだけで茜は小さな悲鳴を上げ、まるで癇癪を起こした子供のように泣き出す。

 

『ば、化け物……!? ひっ……いやッ!? 来ないで……ッ!?』

 

『――――――はぁ。それよそれ、自分が狼だと思っていた奴が、踏み潰される前の蟻だと自覚した瞬間の表情(かお)……。ああ、堪らないわぁ……』

 

 マーガレットは蕩けるような恍惚とした笑みを浮かべたまま一歩、一歩ゆっくりと茜に近づいて行く。

 

 茜は床に尻餅を突いて倒れ、それでもマーガレットから距離を取ろうと身体を引きずって逃げる。しかし、それも長く続くわけもなく部屋の隅に追い詰められた。

 

『なんなの……なんなのよあんた……』

 

『んー? そうねぇ――』

 

 既に戦意は枯れ果て、ただ怯えるばかりの少女と化した茜は、せめても抵抗とばかりに震える身体を抑え、マーガレットを見上げる。

 

 それに気を良くしたのか、マーガレットは花が咲くような笑みを浮かべると、茜の目の前でしゃがみこみ顔を近付けた。

 

 そして、ゆっくりと諭すようにそっと囁く。

 

 

 

 

 

『なら――マリコって呼んで?』

 

 

 

 

 

 その言葉の直後、二人のディクロニウスのいる部屋内に設置されていたカメラがマイクと共に一斉に途切れる。一切、反応がないため、恐らくは何らかの方法で一斉に破壊されたのであろう。

 

「………………なんだあれは?」

 

 兵衛は人間を善人か悪人かでのみ考えており、それは亜人であるディクロニウスにも適用されると考えていた。

 

 しかし、あのマーガレットというディクロニウスは余りにその概念から掛け離れていると感じ、いつの間にか冷や汗が噴き出していることに気づく。

 

 そして、全てを悪人への断罪に捧げた己だからこそ遂に悪魔までも引き寄せてしまったのではないかと考えるのであった。

 

 

 

 

 

 






マーガレットの花言葉
・私を忘れないで

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