「敗れたか…
まあ良い、志波!
貴様の出番など回ってこぬから準備なぞ不要だ。
この私1人でやはり十分だということを知らしめてくれる。
しかし、山本武か…
あやつは我が部下に欲しいな」
そう言って春日は試合場へと向かっていく。
その背中を見ながら世界は
「いや、無理だろうな。
あの人が弱いんじゃないけど、きっと俺とツナが大将同士で決着をつけることになるだろうな。
出番までは見学だなぁ。」
武は次の対戦相手を目の前に卍解を解かず構えていた。
自分の手の内を見せてしまっている今、卍解なしに席官に勝てる保証はない。
しかし、卍解を使っての初の実戦と緊張により思った以上にきつい状態だった。
「山本武、先の試合見事だった。
しかし、貴様は私には勝てん。
私の武久丸(むくまる)には今の貴様では刃が立つまいよ。」
「言ってくれるっすね…
でも俺も、負けるわけにはいかねーんでね。」
そして試合開始の合図がなると同時に春日が始解する
「瞬け『武久丸』」
斬魄刀に眩いばかりの光が集まり、気づいた時には身の丈ほどの片刃のの大剣を構えていた。
「見ろ、これが私が英雄黒崎一護を追い求め手にした力だ。
いざ、参る!」
春日は大剣を持っていることを感じさせない速度で攻め、武が防戦一方になるという展開が流れていた。
時雨蒼燕流を繰り出そうとするが
『やべえ、見た目以上に一撃が重すぎる…
衝撃の瞬間になんかしてんのか⁈』
ならばと刃がぶつかる瞬間相手より早く渾身の力で刀をぶつける武。
すると衝撃で春日のうごきがとまり、瞬歩ですぐ距離を取る。
「貴様、何をした。
今までの流派とは違う技か?」
「そいつはアタッコディスクアーロっつってな。
渾身の力で相手の刀に叩きつけて衝撃で痺れされるって技だ。
俺の斬魄刀の鎮静の力も込めてな。
そんであんたの斬魄刀の能力、わかったぜ!
ほんの一瞬動きを加速させんだよな。
だから、速さの分威力が上がって予想以上のダメージになるんだろ」
武の予測に春日は
「ふっ、この僅かなやり取りでそこまで気づくか。
山本武!
我が元に来い、私は貴様が気に入った!
そして此度の任務を完遂させ、春日小隊の名を響かせようではないか。」
武の推測を事実と認め、あまつさえ勧誘する春日。
しかし
「お言葉はありがたいんっすけどね。
俺が仕える男はもう決まってんすよ。
そいつは誰よりも優しくて、戦いが心の底から嫌いだけど、仲間が傷つくと自分のことなんか放り出して来ちまうような奴っすよ。
そしていつだって祈るように拳を振るう、そんなツナだからこそ、俺はあいつのダチで雨の守護者になったんだ!」
「そうか、残念だ。
貴様に卍解を見せてもらったのだ。
私も卍解して貴様を屠るのが礼儀というものだな。
卍解、極翔武久丸(きょくしょうむくまる)」
斬魄刀の鍔の部分に巨大な金の翼が生え、それに呼応するかのように甲冑のような金色の鎧が形成される。
そして肩当てが変形し、巨大な虹の翼を広げると
「虹滅翼刀・怒来武(コメット・ドライブ)」
気がつけば春日が武の眼前に巨大なオーラを纏った刀を振り上げていた。
普段の武であったならば、まだ対応できたであろう。
かろうじて座り込んで一撃は避けたものの二撃目を構える春日。
卍解を使った初の戦闘で連戦により武は反撃する余力すらなかった。
武の疲労はピークに達し頭の中でやられると思い、目を閉じた。
しかし、約束された衝撃は武には届かなかった。
「聞こえるか1番隊、13番隊は大将が先鋒の山本の棄権をそちらに申請した。
よって、中堅の俺がこのまま試合を引き継ぐ。」
そこには盾を広げ春日の斬撃を受け止める隼人が立っていた。
「獄、寺…」
負けたの怒られっかな…なんて心配する武を尻目にどんどん隼人が近づいてくる。
そして手を振り上げ、
武に差し出していた。
「立てるか山本?」
その手を握りながら起き上がる武。
「わりぃ、獄寺。
負けちまった。」
謝る武、しかし
「はっ、何言ってやがる。
1人倒して、なおかつ目上の席官に十代目の守護者として啖呵きったんだ。
目上に対する礼儀とかをきちっとするてめーがだぞ?
よくやった、山本。
後は、右腕の俺に任せろ。」
そう言って慌てて降りてきたツナに武を託し、春日に向き直る隼人。
そして試合のゴングがなる。
「はっ、チンピラ風情に我が刀を止められるとは少々加減をしすぎたか。
山本武は見所があり、なおかつ切り甲斐があったから卍解したはものの沢田綱吉が棄権させた故、あまり楽しめなんだ。
しかし疲労で限界とはあっけない幕切れだったな、私はあの男を少々買い被りすぎていたようだな。
あの程度のやつ、やはり私の部下にはいらぬよ。」
そう言って高笑いする春日。
会場にも嫌な空気が流れる。
審判の1番隊士が注意しようとした時
「そうだな、あいつはいっつもスケジュール通り行動しねえ。
休めと言っても野球と剣の鍛錬で余計に疲労を溜め込むわ、休みの十代目を誘って野球するわ、ファミリー対抗野球大会を開くわ、こっちでも13番隊の野球チームを作ろうとか言い出す筋金入りの野球バカだ。」
だけどよ、と続ける隼人。
「誰よりも努力して、普段切らねえような啖呵もファミリーのために切っちまう仲間思いな、俺のダチなんだよ!
てめーの下に着くほど、アイツは安い男じゃねーんだ!
取り消せよ、あいつへの侮辱をよ!」
そう言って地面が割れるほどの赤い霊圧を迸らせる隼人。
「ならばチンピラよ
私には勝てぬだろうから、そうだな…
膝をつかせて見せろ。
そうすれば土下座でも何でもしてやるわ、はっはっはっは!
しかしハンデをやるつもりもないから、卍解は解除しない。
貴様程度にできるかな?
出来るといいなぁー?」
そう言って煽る春日。
しかし隼人は
「はじめっからそのつもりだ、地べたと親友にさせてやるぜ。
卍解ものそのままにしとけ。
俺の、いや、俺たちの前でダチを馬鹿にしたことを後悔させてやるよ。
卍解
爆嵐紅蓮豹(ばくらんぐれんひょう)!」