「隼人、始解できる?」
春日戦を終えた隼人にツナが尋ねる。
「余裕っすよ十代目!
見ててください!
爆ぜろ、紅豹!」
気合を入れる隼人だが、斬魄刀の形は全く変わらない。
「な⁈
どうした瓜!お疲れなのか?」
テンパりすぎてボックスアニマルの名前を呼び出す隼人。
そんな隼人を見てため息をつくツナ。
「隼人、もう限界だよ。
霊圧が空になってるの気づいてないでしょ?
卍解してあんだけ暴れたらそりゃ空になるでしょ。
次の相手は世界なのにそんなんじゃ無理だよ。
俺に任せて休んでて。」
そういって隼人の棄権の申請を出しにいってそのまま試合場に向かうツナ。
目の前に立つのは共に卍解の修行をした赤髪の死神。
「よぉツナ。
あの日一勇に止められた稽古の決着つけようぜ。」
見た目は世界の方が僅かに若いが、世界にとって一勇は甥にあたる。
そしてツナもこの時を何度も想定していた。
「世界、ごめんだけど負けられない。
俺の友達が頑張ってくれたのに、俺が情けないところなんか見せられないよ!」
そして試合の開始の音が告げられる。
その瞬間に始解した2人の刀と拳がぶつかり合う。
辺りを霊圧の熱が覆い、貼り直した結界を無視するように観客たちにも熱気が伝わる。
ツナの拳に流れ込んでくる、世界がこれまで積んだ修行の成果。
同時に世界の刀にも同様に流れ込んでくるツナの成果。
一時とはいえ、共に修行した身だからこそわかる互いの力量。
「やっぱりな!
春日さんじゃツナには勝てねえ!
刀を交えて改めてわかるぜ、おまえの力が!
覇炎流・紅蓮流星斬!」
唾競り合った状態から飛び退き、空中から真紅の流星となり斬撃を浴びせる世界。
ツナも紙一重で飛び上がり避ける。
『速い…!
前までは俺のアドバンテージだった速さの差がそこまで出ない!』
ツナは戦慄する。
だがこんなことで諦めていられない。
「攻めの型一式
炎獅子!」
ガントレットに変形させ特大の火球を高速回転させて世界に放つ。
バーニングアクセル、白蘭すら退けたツナの大技の一つ。
虚をつかれた世界に避ける余裕はなかった。
しかし世界は落ち着いていた。
『わかるぜツナ!
お前の修行の成果が!
霊圧も比べ物にならねえし、この攻撃も避けれねえ。
だけど!』
「変わったのはお前だけじゃないぜ、ツナ!
卍・解!」
世界が特大の炎に包まれる。
そして次の瞬間にはバーニングアクセルが両断された。
両断されたことで起こる爆発が視界を奪う。
爆炎が晴れた時、空中にいた世界は炎の鎧を纏っていた。
死覇装は鮮やかな赤へと変わり、肩、胸部、膝を覆う鎧から獄炎が噴き上がる。
手には灼熱を纏った大太刀。
「卍解、豪剡斬華(ごうえんざんか)。
ツナ、これが俺の卍解だ。
さぁ、俺も本気を出すからお前の本気も見せてくれ!」
炎の斬撃をツナがいなし、防ぐ。
高速のやりとりが続く中でツナは世界の卍解の脅威度を改めて即座に倒すべきと判断した。
そして世界が大ぶりの構えを見せた時、ツナが拳を振り抜く。
炎獅子のまま振り抜いた拳には、バーニングアクセルを放つために貯めていた炎が蓄積してある。
振り抜いた拳が世界を襲うその瞬間、世界の姿が掻き消えた。
「なっ⁈」
次の瞬間、背後から世界が現れて斬られ地面に激突する。
「覇炎流、鏡波・陽炎。
炎と動きの緩急で姿をくらます技だ。
そしてこれが、
覇炎流、鏡波・蜃気楼。」
その場で世界の姿が溶け出す。
高熱の炎で辺りがぼやけ出す。
世界が複数人に分裂したように見える。
『いくぜ、月牙炎衝!』
分散した世界が放つ炎の斬撃がツナを襲う。
かろうじて避けるが2発ほどくらいよろける。
蜃気楼を生み出すほどの高熱と、食らったダメージのデカさがツナの意識を奪いつつあった。
フラフラしながらもなんとか立ち上がるツナ。
しかし世界は追い打ちをかける。
「ツナ、もう限界かよ!
加減なんかする気はないぜ。
覇炎流、断罪・灼炎流星!」
世界が大太刀を天に掲げると、特大の炎の流星がツナを目掛けて落下してくる。
避けようと範囲外へ飛ぼうとするツナは辺りが炎に包まれていたことに気づく。
違う、これはただの炎じゃない!
「気付いたかツナ。
奈落炎牙、修行中にも見せたことがあるよな。
卍解状態の威力は跳ね上がり、ここまででかい技になっちまった。
俺は炎の鎧で通り抜けられるから炎牙の外で待ってる。
流星と炎牙をツナが何とか出来たらまた会おうぜ。」
そして世界は牙の外へ抜け出した。
朦朧とする意識の中、遂に始解も解ける。
斬魄刀を杖に何とか倒れないように耐えるツナ。
徐々に閉じ、その牙をツナに突き立てようとする炎牙。
逃げるためには空中に飛ぶしかないが、上空からは巨大な流星が迫る。
もうダメだ…
諦めかけたその時杖にしていた獅炎丸が震える。
その振動で意識が鮮明になるツナ。
そうだ、俺にはまだ相棒がいる!
世界は会場の端で炎牙と流星がぶつかろうとする様を見ていた。
しかし世界はこれでツナが終わるとは思っていなかった。
こんなもんじゃないだろ、ツナ!
そして世界の予想は現実のものとなる。
会場を押しつぶそうとしていた流星と地上から生えていた炎の顎が一瞬にして消えた。
その光景に審判や観客はおろか隼人と武すら口が開かなかった。
ただ1人、世界を除いては。
「…ようやくかツナ!
待ってたぜこの時を!」
渦中の中心、そこにはいつも通りのツナが立っていた。
前髪が目を覆い表情はわからない。
始解が解けたことで額に灯していた炎も消えていた。
それでもなお、この戦いを見ている人たちにはツナの敗北を感じている者は1人もいなかった。
そして裾が風ではためき、硬質な蒼いグローブが露わになる。
「世界はやっぱりすごいよ。
でも、何度でも言うけど負けられないよ。
俺の仲間に、誇りに賭けても!
卍解、凍獅子死炎丸(いてじししえんまる)!」