13番隊の敷地内に降り立った虚、それは二対の角を生やし死覇装を纏っていた。
そして仮面の隙間から見える腰まで届くほどのオレンジの長髪。
その白い手に握られているのは一本の黒刀。
細身ではあるがどこか存在感を感じさせるその刀は卍の形をした鍔をしていた。
ここに立ち会ってしまった朽木ルキアはその刀、斬魄刀の銘を知っていた。
その後ろで斬魄刀を構えていた獄寺隼人と山本武も知っていた。
知っているが故に刀を構えてはいられなかった。
ルキアの口から、その名が明かされる。
「…馬鹿な!
それは、天鎖斬月ではないか⁈」
そう、その名は天鎖斬月。
英雄と呼ばれた十三番隊副隊長、黒崎一護の斬魄刀の卍解の名前だった。
幾多の危機をその刃で振り払ってきた斬魄刀が今目の前にいる人型虚が携えている。
問題はそこではない、その霊圧は虚なものがノイズのように混じってはいるが3人のよく知る霊圧だった。
「まさか、お前なのか?
答えろ…
一護!」
ルキアの副官にして長年の相棒、数多の戦いをともに潜り抜けてきた唯一無二の戦友、黒崎一護の霊圧だった。
『織姫に聞いてはいたが、まさかこれが例の完全虚化というやつか?
しかし、一護の虚は奴の中に眠っていた滅却師の力と結びついていたが故にユーハバッハに奪われたと聞いていたが…?」
考えるルキアの背後に舞い降りる影、それは総隊長京楽春水だった。
「はぁ、嫌な予感ってのは当たるもんだねぇ。
ルキアちゃん、残念なお知らせだ。
アレは一護君で間違いないよ、零番隊の和尚からさっき連絡が来たんだ。
ユーハバッハから取り戻した力が暴走したみたいで和尚の離殿はボロボロみたいだよ」
京楽の話をまとめるとこういうことだ。
・ 現霊王ユーハバッハは零番隊にて安置されている。
・ その中で新たな戦いに向けてユーハバッハに奪われた一護の滅却師としての力を取り戻すため和尚が研究、抽出し球体状にして一護に吸収させた。
・ しかし、ユーハバッハに取り込まれた他の滅却師たちの力と融合していた際に、虚の力が生き残るため強化されて当初想定されていたより遥かに強い力で一護が吸収したために加減ができずに暴走中
ということらしい。
「彼が虚化を取り戻した影響なのか、平子隊長達にも影響が出始めててね。
強すぎる力に呼応してるようなんだ。
他の隊長格も滅却師との戦いの時に卍解を虚化させてるから、影響がないと判断できるまでは戦わされないんだ。
現状この場で戦えるのは君たちしかいないのさ、ごめんね。
そんでルキアちゃんの卍解も今の一護君とは相性が悪い。
援軍が来るまで獄寺くんと山本くん、耐えちゃくれないかい?」
そこまで言われて、目の前の脅威が勝てない相手と分かってなお撤退するほど二人の守護者は腐ってはいない。
「分かりました!
いくぞ、山本!」
「あぁ、久々のコンビプレーだな!
やるぜ、獄寺!」
『卍解』
二人の守護者が卍解を携え、圧倒的な暴力の化身へ向き直る。
「先ずはどうする獄寺?」
「俺が矢を打って、副隊長の動きを止める。
お前は時雨之化をぶつけて動きを止めろ。
虚閃打たれる前に大技で決めるぞ。」
「おう!
ツナが斬魄刀使えない以上は俺らでやるしかねえ!」
そして作戦始動、風を読む獄寺隼人の前ではあらゆる矢が変幻自在に曲がり標的を捉える。
卍解状態の赤炎の矢は一撃がかそれぞれにクレーターを穿つほどの威力を誇り一護の足場を削っていく。
その状況でも微動だにしない一護。
好機と捉えた山本武の時雨蒼燕流総集奥義が放たれる。
「総集奥義・時雨之化!」
雨の炎と酷似した力を纏う斬魄刀・蒼燕の霊圧は鎮静の力を余すことなく一護の全身へと発揮した。
刀を構えようとする一護の腕がぎこちなくゆっくりと構えられる。
今しかねえ!
隼人は全霊圧をその弓に込める。
武も自らの最大の威力を誇る大技の構えに入った。
「果てろ!
嵐の厄災!」
「時雨蒼燕流特式10の型・燕特攻!」
一護が防げないように放ったロケットボムが先着して四方から遅い、ついに二人の大技が炸裂した。
修行で力を伸ばしたとは言え、全力の一撃に二人の力は消耗され始解へと戻っていた。
だが、一護の自我を飲み込んだ虚の力はすでに二人の想像の域など超えていた。
「んな、アホな!
俺ら二人の攻撃で片腕すら落とせてねえだと⁈」
脇腹から出血はある程度で未だ健在の一護。
そして両角の中央に真紅の光が溢れ出す。
虚閃、しかも特大だ。
とても始解で防げるものではない。
その時だった。
「卍解、白霞罸」
例圧の塊ごと一護が凍りついた。
底冷えするような冷気を感じ振り返ると、そこには純白に染まるルキアがいた。
「獄寺、山本、こちらまで下がれ!
私の卍解で凍らせたが長くは持たん、今のうちに立て直すぞ。」
そういうと卍解を解くルキア。
以前に一護から「ちなみにルキアの卍解は冷気そのものになる感じなんだが、反面ずっとその状態の維持が難しい」との話は聞いていた。
これが全死神の中で最も美しい卍解と呼ばれる力。
感慨に耽る暇はなく、即座にルキアの元まで下がる二人。
そして数秒が過ぎると氷が割れ、再び一護が動き出す。
その際に左腕が氷の塊となり落ちたが即座に再生する。
「…かつて一護が今と同じ完全虚化になった時、その場で目撃していたあやつの妻の話では角を折れば元に戻ったらしい。
今回もそれに賭けるしかないか…」
「いや、大丈夫だよ。
どうやら援軍が間に合ったみたいだ。」
京楽の言葉と共に炎の斬撃と霊圧の斬撃が一護を襲う。
「遅くなりました、総隊長!
一勇連れてきました!」
降り立ったのは一護の親戚の志波世界、そして一護の息子一勇だった。
「京楽さん、約束通り親父を止めにきました。
まさか、こんな約束が本当になるとは思ってませんでしたけどね。」
「ごめんね、一護くんも万が一の話で言ったんだと思ってたけどね。
君に親殺しを背負わせたくなかったんだけど。」
「安心してください、母からも聞いていますが角をおればもどるらしいので、さくっとやってきます。
世界くん、いつでも蒼炎になれるように卍解しといてね。」
そして一勇が斬魄刀を手に駆け出し、一護と鍔迫り合う。
「…何やってんの父ちゃん?
早く起きなよ、母ちゃんカンカンだよ?」
その問いかけへの返答は、距離をとっての虚閃で返された。
しかし
「月牙天衝!」
斬魄刀・満月から放たれた月牙がそれを切り裂く。
隼人達では介入できない戦いに、ただ悔しさに拳を握るしかない。
だが、あくまで拮抗で決定打には結びつかない。
次第に一護の霊力に押され出す。
戦闘開始後六回目の月牙を放って一護を吹き飛ばした一勇がた 呼吸を整えつつため息を吐く。
「はぁ、しんどっ!
京楽さん、最悪この辺壊れるけど許してね。
このままじゃジリ貧だからね、爺ちゃんみたいに炎熱系だったら凍らせれるのに…」
そして一護に突きつけるように満月を構える一勇、あたりから月の光のような淡い霊圧が溢れ出す。
「うわぁ、こりゃまずいぞ。
みんな離れるよ!」
京楽の慌てように何かを感じとり状況が確認できる空中へ避難するルキアと獄寺アンド山本コンビ。
そして力ある言葉を放つ。
「卍解・天眼満月」
直後吹き荒れる霊圧の奔流、それを切り裂き現れた一勇。
右手には天鎖斬月のような黒い太刀、左手には肉厚の黒い刀。
そしてその両目は金色に輝いていた。
それ見ていた世界がゆっくり語りだす。
「一勇の斬魄刀、満月の能力は水流系と炎熱系を併せ持っていて相手の力に対する反射なんだ。
だから、俺とツナの修行の時は炎のぶつかり合いを凍らせて止めたんだ。
卍解を見るのは初めてだから何が起こるかわかんないから、この戦いは見るだけじゃなくて自分の身を守るようにした方がいい。」