黒崎一心 剡月
黒崎一護 斬月
自らの魂の写し身たる斬魄刀に、代々月の文字をいただく黒崎家。
そして現世の当代たる黒崎一勇の斬魄刀もまた月の名を冠する。
満月、満ち欠けの果てに現れる月の名を持つ斬魄刀。
そしてその卍解の名を
天眼満月(てんがんまんげつ)という。
一勇の天眼満月の二刀が宙を舞う。
天女の舞のような連撃に虚化した一護は荒々しい一刀を持って振り払う。
一進一退、されど大技を打たせる隙もなく浴びせられる斬撃に一護は仮面の奥の喉から吼えた。
誰が見ても、これまでにない有効打といえる。
だが、誰の目にも拮抗以上の姿は写らない。
状況の拮抗は明らかで、だが誰もこの戦いに割って入れるものはいなかった。
入ればその瞬間に自らが消し炭になるうことが目に見えていたからだ。
だが拮抗は長くは続かなかった。
その瞳が何を思っているのかはわからない、それほど深く窪んだ仮面の目の部分の暗闇は何も写さないが一勇は一護が限界を迎えたのに気付いた。
ただし、我慢のである。
『があぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎』
正眼の構えの天鎖斬月と両角の3点から黒く重い霊圧が滲み出し、中心点で濃密な球体が出来上がる。
その場にいたすべての死神が咄嗟にその場から離れる。
直感的に触れれば自らが抗えないと感じたからだ。
しかし一勇だけは違った。
「もー、霊圧限界‼︎
いい加減にしろよ父ちゃん、そろそろ怒るぞ。」
恐怖はなく、ただ真っ直ぐに虚となった父を見据える。
そして、二刀が宙で交差した。
「月牙十字衝‼︎」
一勇が斬撃を放つと同時に一護が黒い球体を切り付け特大の虚閃を放つ。
澱んでいるとはいえ、親子の霊圧同士。
ぶつかりあい、そして絡み合う。
閃光で辺りがホワイトアウトする。
視界が戻った後に見えたのは、片角が折れて刀を支えにひざまづく一護の姿だった。
これで全てに片がつく、一勇は仮面が剥がれかけた一護にゆっくり近づく。
そしてゆっくりと一護の仮面を剥がすために手をかけた一勇の右手が力を入れると
その手が宙を舞っていた。
一護の手にした天鎖斬月が切り上げの形で振り抜かれたまま止まっている。
仮面が剥がれて見えるその左目は、ホラー映画のワンシーンに出てくる怨霊のように深く黒く染まっていた。
「ぐっ、まだ戻っていないのかよ⁉︎
セカイ、もう片方の角を頼む。」
その声にセカイが霊圧を迸らせながら飛び出す。
「卍解・蒼剡斬華」
炎の色が深みを帯びた蒼に染まり、刀身に炎が渦巻く。
残った片角にセカイの斬魄刀が食い込む。
ぶつかりあい火花をあげる刀とそれを無機質に見つめる一護。
おいおい、本当にこれ兄貴の霊圧なのかよ。
心の中で毒づきながらも、セカイの中には一護との思い出が流れる。
本当に切れるのか、一護を。
迷いを断ち切るように、セカイの斬魄刀が爆発的な炎をあげて新技を解き放つ。
「兄貴、すまねえ。
月牙・蒼炎衝‼︎」
この技があればツナにも負けなかっただろう。
ダブルイクスバーナーを断ち切れる威力の斬撃がその技には秘められていた。
仮面はかけらを弾き飛ばし、一護を揺らす。
だが、そこまでだ。
一瞬で体勢を戻し、顔ごとセカイに向ける。
斬月がセカイを捉えるも刀で受け止める。
それも一度が限界だ。
受け止めた体が跳ね上がって伸びる。
ゆっくり、スローモーションのように自身の体に一護の斬月が迫る。
その瞬間、蒼穹より一筋の矢が降り注ぎ斬月を弾く。
一護は脅威を感じたのか咄嗟にその場からバックステップで下がる。
地面に突き刺さっていたのは斬魄刀だった。
刀身は鉛の鈍い光に輝きながらも温かなオレンジ色を帯びていた。
そして気づけば誰かがその斬魄刀の柄に手を置いていた。
セカイはその人物が誰か気づいていた。
「よぅ、待たせるじゃんか。
後は頼んだぜ…ツナ」
そこには額に炎を灯したツナがいた。
「すまない。
後は任せろ。」
セカイはそれを聞くと安心したように意識を飛ばした。
それと時を同じくして、全守護者とリボーンがツナの霊圧を感じて駆けつける。
「10代目、お待たせし…
な、その指輪は⁉︎」
「おいおいツナ…
それって霊圧じゃなくて、まさか」
「ボスの…炎…」
「うむ、懐かしいな…
極限に沢田の炎ではないか…」
「確かに、懐かしいですね。
あの時、世界の命運を変えた時と同じ若き日のボンゴレの炎だ。」
「ワォ、綱吉。
君がそうなるのって久々じゃないか、これが終わったら僕ともやろうよ。」
最後にリボーンが人差し指でボルサリーノの縁をクイっとあげてニヒルに笑う。
「遅えんだよ、ダメツナが。
もう一度見せてみろ、お前の死ぬ気を。
死ぬ気の到達点をな。」
リボーンの言葉を聞いた直後に額の炎を激しく燃え上がらせる。
「みんな、遅くなってごめん。
黒崎副隊長、あんたを死ぬ気で止めて見せる。」
遅くなった上に短い文ですがまたちょこちょこやっていきます。