BLEACH Xoversoul   作:カチドキホッパー

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37話

 ジョニー・ハードロックを新技瞬鬨・日輪炎豪と極限太陽・流星閃光で倒した笹川了平。

 結界が解除されあらわになった、セッテぺッカートの根城らしき城へ一行は砂浜を歩いて進んでいた。

 歩きながら一護が了平に向けて話しかける。

 

「しかし笹川、凄かったなお前の拳。

 まさか瞬鬨まで習得しているとは思っても見なかったが…

 お前と沢田は2番隊で修行だったよな?」

 

 それを聞いて強気な笑みを浮かべる了平と、苦笑いを浮かべるツナ。

 あはは、と笑いながらツナが口を開く。

 

「ですね、お兄さんと俺は2番隊で砕蜂隊長と夜一先生に鍛えてもらったんですが…」

 

 言葉をなんとなく濁すツナ。

 言い淀む理由などない、本来ならば。

 大人になった了平が意図を汲んで言葉を続ける。

 

「うむ、極限に死にかけたぞ。

 沢田が言い淀むのも無理はない、俺も過去多くの先駆者から修行をつけてもらったが、あれは過去一番と言ってもいいほどであったな。

 殺す気で、というか殺すから死にたくなければ習得しろと、最初の一週間は流石の俺でも血尿が出た。」

 

 豪快に笑いながらいう了平だが周りはドン引き、夜一達の性格を知る一護は遠い目をしながら過去の修行や闘いを思い出していた。

 そうしているとツナがやっとトラウマが克服できたようで話を引き継ぐ。

 

「ただお二人とも、俺たちに鬼道の心得がないって一週間たって気付かれたようで…

 そのあとは単純に四肢に鬼道を纏わせるところから始まって、慣れた頃から瞬鬨を発動したお二人にボコられて、しばらくして俺たちもようやく発動はできるようになったんです。

 お兄さんは独自の理論で自分なりの形に、俺は基礎程度で纏えはするんですけど卍解や到達点との同時発動は未完成の状態です。」

 

 そもそも瞬鬨自体使える死神がほぼいない状態であるため、習得自体賞賛されるべきことなのだがツナの自己肯定感の低さや了平の凄まじい成長からどうしても弱気になってしまう。

 それを思い一護が助け舟を出す。

 

「沢田、自分を卑下すんのはお前の悪い癖だぞ。

 そもそも俺なんか瞬鬨使えねし、何よりお前はアレの修行がメインだろ。

 自分で設定した修行目標自体は達成してんだから自信持っていいと思うぜ?」

 

 一護の言葉にちょっと嬉しそうなツナ。

 そこに隼人が声をかけてくる。

 

「副隊長の言うとおりですよ十代目!

 それに、これまでも戦闘中に新しい力とか技を完成されてきたじゃないっすか。

 今回もピンチになってもなんとかなりますって。」

 

 隼人に釣られて武も声をかけてくる。

 

「そうだぜツナ。

 お前はいつだって俺の中では注目株なんだからな。

 また俺たちの度肝を抜いてくれよ、ボス‼︎。」

 

 昔からこの友人達の根拠のない自信に幾度となく救われてきた。

 ならばこの信頼に応えなければ死んでも死に切れねぇ、とツナは気持ちを新たにした。

 そうして進んでいると城の入口らしきものが、砂嵐の隙間から見えてきた。

 

「お、あれ入口じゃねえか?」

 

 声を上げながら世界が入り口まで走り出す。

 全員が入り口まで辿り着くと、ようやくその外観があらわになる。

 城は3階建てだが、奥行きが尋常ではないほど広く感じる外見。

 だがこれは

 

「おいおい、こいつは…」

 

 武と隼人がツナを見る。

 ツナも、ファミリーの守護者達もそれを感じ取っていた。

 醜悪に改装されているが、

 

「わかっているよ、これは見た目はボンゴレファミリー本部だ。」

 

 ツナ達の、いやボンゴレというマフィア界最大の組織の本部であった城と同じだったのだ。

 しかしところどころ壊されていたり、死神達の死体らしきものがぶら下げられていたりと、ツナ達への見せしめとしては十分に醜悪だった。

 

『つまり、これは奴らが俺たち十代目ファミリーに直接喧嘩を売っているってことだな。」

 

 ツナは敵の意図を察した。

 ならばこそ、自分たちファミリーが戦うべきだとあの時言ったリボーンの慧眼には舌を巻いた。

 

「待ってろよ、骸、炎真。」

 

 ツナが巨大な扉に手をかけ開くと、中にはモノトーンで統一されたシンプルな一本道が待っていた。

 シンプルゆえに、逆に不気味さを醸し出すその様子に気後れする気持ちをグッと飲み込み一歩を踏み出す一向。

 しかしその瞬間、

 

「うっ、なんだこの気持ち悪さ?」

 

 ツナは踏み出した瞬間強烈な気持ち悪さに襲われる。

 他のファミリーには影響はないようだ、クロームを除いて。

 クロームは手を口に当て膝を床につける姿に、ようやく他の一行も異常に気付き始める。

 雲雀はその様子に目を細める。

 

「綱吉とクロームがそうなるってことは、もうここは敵のテリトリーみたいだね。

 しかも術師がいるタイプの。」

 

 その言葉にハッとするツナ達。

 

 現状確認されている術師といえば…

 

「まさか、いきなりあいつがいるのか?」

 

 かつてのもう一人の霧の守護者がこの道の先にいる可能性がある。

 その実力を知るがゆえに、初戦から気は抜けない。

 しばらく歩いていると、目立つ巨大な扉が見えてきた。

 扉にはいやらしく笑う顔が書いてある。

 ツナは他の一向と顔を見合わせ、恐る恐る扉を開く。

 中は、黄金に煌めく宮殿のような豪華な様相を呈していた。

 一面平らであるが、その奥にひな壇のような高い台があり、その上の豪華な椅子に足を組んでいる奴が座っていた。

 

「ようこそ、強欲の間へ。

 改めまして自己紹介を、強欲の大罪を司どる者・六道骸です。

 おやおや、見知らぬ顔もある中で知った顔が複数あるのは嬉しい限りですねぇ。」

 

 そう言いながら霊圧で威嚇してくる骸に、ツナと一護はアイコンタクトを行い、事前に話し合っていた行動を実行に移すことにした。

 

『副隊長、骸は世界でトップクラスの幻術の術師です。

 あいつの能力は前世の記憶、六道輪廻に由来するものなので俺たち幻術に慣れているファミリーでも苦戦は必死です。

 であれば、俺と副隊長の先制攻撃であいつに術を使う暇を与えず畳み掛けましょう。』

 

 ツナからの提案に基づき、一護は月牙天衝、ツナが始解からのイクスカノンで先制攻撃を飛ばす。

 その瞬間から違和感に襲われる二人。

 

 なんだ、この違和感…?

 

 突如力が抜けて地面に倒れ込む二人を、一向が囲いながら警戒を強める。

 

「どうしたんすか十代目⁇」

 

 急に倒れたツナに隼人が声をかける。

 

 わからない、急に力が…

 

「あぁ、説明を忘れていましたが。」

 

 先程まで骸がいた場所の真逆、つまりツナ達の背後から骸の声が聞こえる。

 最初に足を踏み入れた時から感じた違和感は、幻術の発動が原因か‼︎

 

「この館のすべての部屋にはとある術式が施されていましてね、君たちが倒れ込んだのはそれが原因です。

 術式の内容は至ってシンプル、1対多数を禁止するというものでしてね。

 君たちは術式のペナルティとして一定時間霊圧を没収されたんですよ。

 まぁ僕らに敗北した場合霊圧だけではなく、その魂まで吸収されますのであしからず。

 さぁ、誰が僕と戦ってくれるのでしょうね?

 もちろん、誰にも負ける気はしませんが。」

 

 タイマン勝負以外を認めない術式、少なくとも現状一護とツナはこの戦いに参加できなくなってしまった。

 ならば誰が…?

 そう考えていた時に斬魄刀を抜いて骸に切り掛かる者がいた。

 

「クローム⁉︎」

 

 そうクローム髑髏が骸に切り掛かっていた。

 その刀を受け止めながら面白そうに骸は目を細める。

 

「ほぅ?

 雲雀恭弥ではなく君がくるのですね。」

 

 そう呟いた瞬間、遮魂膜のような薄い霊子の壁が二人を包み込み拡張され足跡のバトルフィールドが出来上がった。

 隼人が刀を構える。

 

「待て、クローム。

 一旦下がれ、この膜は俺が‼︎」

 

 その刀を恭弥が手を添えて抑える。

 

「やめなよ隼人。

 いつ回復するかわからないペナルティを、君も受けたいのかい?」

 

 恭弥の冷静な対応に驚きつつも刀を収める隼人。

 

「雲雀、お前はいいのか?

 生前あんなに骸と戦いたがっていたのに。」

 

 隼人の言葉に確かにと頷くファミリー達、しかしその様子に一つため息をおとしながら恭弥は言葉を続ける。

 

「先日戦った時にも感じたんだけど、今の彼は噛み殺そうという気がわかなくてね。

 それに、この二ヶ月クロームを鍛えてきたからね。

 彼女がどれだけあの骸に通じるのか、そっちの方が興味深いってだけさ。」

 

 確かに、なぜか修行メニューは恭弥との修行だった。

 そう考えていると、恭弥が顎をしゃくる。

 

「君たちも見ていなよ。

 彼女、下手したら今の君たちよりも強いよ。」

 

 雲雀にここまで言わせるのか。

 そして一向は視線を戦場へ向ける。

 

 戦いはすでに始まっていた。

 斬魄刀で斬りかかるクロームとそれをかわす骸。

 時に瞬歩により接近し、または距離を取り、と術師らしい相手を翻弄する戦い方に骸もしばらく様子見といった様子だ。

 拮抗している状況かと思えば、クロームは詠唱破棄による鬼道を放つ。

 クロームの放つ蒼火墜に意表をつかれて直撃する骸、しかし着弾の煙の中からクロームに向けて火柱が上がる。

 

 これは、骸の地獄道による幻覚。

 

 一向も見覚えのある術に、やはり骸なのだと感じさせられる。

 しかし骸の反撃は終わらず、刀をクロームの方に向けると、巨大な虚閃を複数箇所からはなつ。

 

「凪ぃ‼︎」

 

 その様子に思わずツナは本名を叫ぶ。

 全弾直撃、クロームの敗北が決まった。

 

「クフフフ、僕に挑んでくるからと期待したのですがね。

 彼女もあと50年もすればいい術師になったと思いますが。」

 

 しかし遮魂膜はまだ解けていない。

 骸が首を傾げていると晴れていく土煙のむこうがあらわになる。

 そこには誰もいない。

 

「どこを見ているの?こっち。」

 

 声の方をふりむく骸だが、そこにも誰もいなかった。

 

『バカな、僕が翻弄されているだと?』

 

 骸が務めて冷静を装っていると、上から羽が降ってきた。

 上空を見上げると白いフクロウがこちらを見下ろしていたのだ。

 

「舞い踊れ『夢骸梟(むくろう)』」

 

 そう声が聞こえ見ると真正面にお馴染みの三叉の槍を持つクロームがいた。

 その様子を見てようやく納得する骸。

 

「クフフフ、なるほど。

 ようやく得心が行きましたよ。

 どのタイミングかはわかりませんが、君の始解により僕は認識を逸らされていた。

 だから、攻撃が当たらなかったのですね。

 それにその槍、もしや君は僕にゆかりのある人物なのかもしれませんねぇ、どうですか僕の元に来ませんか?」

 

 その骸の言葉に全員が驚く。

 クローム髑髏、それは六道骸のアナグラムであり、骸自身がもう一人の自分と位置付けている存在。

 そして、骸自身がその実力を認めている数少ない術師の一人だ。

 それを知らないかのような口調には驚きを禁じ得ないが、当のクロームは至って冷静であった。

 

「嫌、それにあなたは警戒すべき。

 幻覚を幻覚で返される、それは近くのコントロール権を相手に奪われていることに他ならないのだから。」

 

 そういってクロームは3回槍で床を叩く。

 次の瞬間、骸は火柱に焼かれる。

 あまりにもリアル、その火柱は幻覚であるにも関わらず熱を感じさせた。

 

「私の斬魄刀の能力は霧属性の構築、そして炎熱系と水流系を兼ね備えることで幻覚を有幻覚に切り替えることもできる。」

 

 ってことはこの火柱本物か?

 

 そう思っていると骸が全身を焦がしながら突破してきて刀で切り掛かってくる。

 

「見事ですね、しかし僕には修羅道で得た格闘スキルがあることもお忘れなく。」

 

 右目の仮面を闇色のオーラで覆いながら刀を振りかぶる骸だが、突如吐血し、そのまま吹き飛ばされた。

 骸の腹には穴が開いており、何かに貫かれた跡があったのだ。

 

「知ってる。

 でも私の格闘戦の師匠はもっと強い。」

 

 そういうクロームの左手には雲雀の仕込みトンファーが握られていたのだ。

 そして有幻覚の水流を発生させ、そこに能力で発生させた電撃を浴びせ、トドメとばかりにその水流を凍らせて氷柱を作り上げた。

 それを見ながら恭弥だけがのんびりと今起きたことを解説していた。

 

「彼女、近接戦を鍛えたいからって僕に修行を見てもらいにくるっていかれてるよね。

 でもその甲斐あってか、あの骸では格闘戦は負けないと思うよ。

 それに即座に手元に有幻覚でトンファーを作り出すなんてね」

 

 これが事実なら、クロームの戦闘力は飛躍的に上がりすぎていることになる。

 そう思っていると、氷柱にヒビがはいり、骸が這い出てくる。

 しかしその姿は満身創痍と言ったところだ。

 

「笑えない、ジョークですね。

 僕がやられるなんて。」

 

 そう言い落ちていた刀をひろうと、右目の仮面に当てる骸。

 

「君は僕を怒らせました。

 ここからが僕の本気です、堕ちろ『輪廻烏』」

 

 膜の中が暴風で溢れそうになる。

 そして暴風がおさまった時に、そこにはマジシャンのような出立ちに巨大な赤い六の瞳を両翼の黒い翼に宿した骸がいた。

 

「この姿を見て無事に帰れると思わないでください。

 第一のスキル・地獄道。」

 

 そういうと無数の火柱が梟とクロームの左手を焼く。

 

「ぐぅっ‼︎」

 

 どうやら焼かれたのは幻覚ではなく、本体のようだ。

 

「その程度では終わりませんよ、第三のスキル・畜生道」

 

 巨大な毒性の生物達がクロームに襲いかかる。

 クロームの悲鳴と、焼けこげた左手が見えるばかりで、蹂躙されていること以外はわからない。

 

「そして第五のスキル・人間道」

 

 全身に闇色のスキルを纏った骸が動物達ごと手刀で切り刻み、火柱で焼き上げる。

 それを見ているファミリー達は斬魄刀に手をかける。

 

「クローム、待ってろ‼︎」

 

 全員がペナルティ覚悟で斬りかかろうとした時、全員の足元に何かが打ち込まれる。 

 打ち込まれた方向を見ると、明らかに不機嫌な恭弥が始解しトンファーを振り抜いていた。

 どうやら能力のバリネズミの破片を高速で打ち込んだようだ。

 

「君達、さすがの僕でも怒るよ。

 今は彼女の戦いだよ、彼女が選んだ自分の戦いだ。

 横槍を入れるのは彼女に対する侮辱だ、黙って見ていられないのなら、僕がここで噛み殺す。」

 

 恭弥の殺気と言い分が納得するしかないものだったために刀を収める。

 しかしこのままではクロームが…

 

「クフフ、いい感じに焼けこげましたかね?

 僕のスキルを全てぶつけ、最後は天道のスキルにより僕の操り人形というおもちゃに変える。

 これが僕の六道輪廻です。

 まぁ、彼女の魂を食べるというのも乙なものですね。」

 

 そう言いつつクロームがいた場所を見ながら笑う骸だが次の瞬間戦慄する。

 

「バカな、体がないだと⁉︎

 確かに引き裂く手応えはあったはず…

 あの体で逃げたというのか⁉︎」

 

 自身の理解を超える現状を受け止めきれない骸、その時背後からコツコツと足音が聞こえた。

 

「こっち。

 やっぱりあなたは私の知っている骸様じゃない。

 今のあなたでは私には勝てないわ、坊や」

 

 その言葉に骸の怒りは臨界点へと達した。

 

「ほざくな生娘‼︎

 グラン・レイ・セロ‼︎」

 

 翼についている二つの目からエスパーダのみが使える強力な虚閃が放たれる。

 流石に意表をついた。

 そう思った骸は着弾の煙が上がる中、引き裂こうとその煙に身を躍らせる。

 しかし

 

「なぜだ、なぜいない⁉︎」

 

 また背後からクロームの声が聞こえる。

 

「最初に言ったはず。

 幻覚を幻覚で返されるということは、知覚のコントロール権を奪われること。

 あなたはもう私に勝てない。」

 

 そしてクロームは火傷を負わされている左手と無事な右手で槍を握り締め、槍の柄を地面につけると霊圧を溢れださせる。

 それは純度の高い霧の炎と同じだった。

 

「卍解、夢無想霧姫(むそうきりひめ)」

 

 

 

 

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