「超えろ『獅炎丸』」
始解したツナは両手にグローブをしていた。
生前と同じ黒地に甲にクリスタルがあしらわれ紋章が刻み込まれていた。
そしてその額にはかつてと同じ炎が灯る。
「ようやく至ったね。
じゃあ、やろうか。」
トンファーを構える恭弥、しかし慌てて武が止めに入る。
「待てって雲雀、ツナも獄寺も始解ができるようになったんだ。
霊術院の規定なら始解ができた段階で即時入隊させなけりゃいけねーだろ⁈」
だが恭弥は止まらなかった。
グローブとトンファーをぶつけ合いながら恭弥はいう。
「何を勘違いしているの?
君たちはまだ入隊させないよ。
それに武、君も綱吉と隼人の始解を見て気がついたんじゃない?
君の始解はまだ完成してないよね。
君の時は京楽さんに始解がバレちゃったから入隊せざるを得なかったけど、今回は君たちが始解を使いこなすまでは行かせないよ。
君のとこの隊長には話をつけてあるから任務だと思ってやりなよ。」
これには流石の武も口をひらけなかった。
武は自分でも感じていたが、自分がなんとか虚と戦えているのは時雨蒼燕流のおかげであり、始解の力を使いこなせていない。
そしてツナたちの始解を見て気付いた。
自分の始解がまだ完成していないことを。
それにかつてのファミリーたちと鍛えられるのは願ってもいないことだった。
「ははっ、サンキューな雲雀。
ツナたちと修行なんてゾクゾクするよな。」
そして修行の日々が始まる。
ツナと獄寺は片方が雲雀とガチンコのスパーリング、もう片方が山本に剣を習いながらお互いに始解への理解を深める。
そんな毎日が一ヶ月ほど続いた。
ツナが死んでから約二ヶ月が過ぎた。
そんな時ふらっと京楽が霊術院に遊びにきた。
「やぁ雲雀くん、久しぶりだねぇ。」
「京楽さん、総隊長が気軽に遊びにきちゃだめでしょ。」
雲雀は呆れるが自分がある程度自由にできるのはこの男のお陰でもあるので、京楽春水には一目置いている。
「雲雀くんとゆっくりお茶したいんだけどさぁ、それよりどう?
綱吉くんと獄寺くんの仕上がりは?」
この狸親父、気付いて放っておいたな。
雲雀は内心苦虫を噛む。
京楽はどうやらツナたちが始解していると気がついてあえて修行させていたらしい。
「そりゃ山本くんを特別任務で霊術院学長が駆り出しているとなると気にもするよねぇ。
彼は君たちの同志だったわけでしょ。
ほら、君仲間って呼ぶと嫌がるから。」
恭弥が嫌がるツボを心得ているあたりさすがだ。
「雲雀くんは卍解もできるし、更木隊長とサシでやりあえる実力もあるけど群れるのがだめだから隊長は無理。
零番隊の打診も縛られたくないからって断ったから霊術院の学長ってポジションしか用意できなかったんだよ?
元隊長としての親心だからねぇ。」
そう、雲雀恭弥は元一番隊の人間だった。
圧倒的実力と圧倒的に孤高を好むこの男をコントロールできるのは京楽しかいなかったのだ。
「感謝してるよ。
京楽さんのおかげで僕は何不自由なくこの世界で生きていけるわけだからね。
それで用件は綱吉たちのことでしょ。
彼らならある程度の任務なら死なない程度には仕上げたよ。
もう入隊させるの?」
「死神は万年人出不足だからね。
それに、彼らが始解できるなら戦力になる。」
「フゥン。
それで彼らはどの隊に入れるの?
隼人は綱吉の忠犬だから、別の隊にするとコントロールができなくなってめんどくさいよ。
それに彼を従えられるのは綱吉だけだからね。」
話を聞いて京楽は驚いた。
「やっぱり君たちの絆はとても強いね。
君がそこまで人のことを話すのなんて見たことがないよ。
安心して彼らは同じ隊に配属させるよ。
山本くんと同じ隊にね。
もうそろそろ副隊長の彼が迎えにくる頃じゃないかな?」
それを聞いて恭弥は笑みを深める。
「わぁお。
彼がくるのかい?
部下を鍛えたんだから、お礼をもらわないとね。」
バトルマニアの血が騒いじゃってるなぁ。これ言っちゃだめな奴だったなぁ。
ごめんね。
心の中で自身の失敗を嘆き、恭弥が思い描いている人物に心の中で詫びる京楽。
ところ変わって修練場。
ツナと隼人と武が刃禅を組んでいた。
斬魄刀との対話により更なる力を求める修行だ。
精神修行のためその場は静まり返っていた。
しかしその静寂を破るものが現れる。
スパァーン‼︎
「山本ぉ‼︎
一ヶ月も帰って来ずに何やってんだテメェは⁈」
「うぉ、副隊長⁈」
武が思わず驚いて呼んだ副隊長と呼ぶ男は逆光のせいで顔が良く見えなかった。
「雲雀が鍛えるとか言ってたけどちゃんと強くなったみたいだな。
それで、そいつらが新しい隊士だな?
沢田綱吉と獄寺隼人、今日からお前らは俺と山本と同じ13番隊だ。
お前らの面倒は俺が見るからな、よろしく頼むぜ。」
「あぁん?
テメェいきなり出てきて10代目になんて口聞いてやがる⁈」
「ちょ、隼人だめだよ。
すみません、俺が沢田綱吉です。
お世話になります。」
副隊長は笑って気にもした様子はない。
「確かに、俺も名乗ってねぇから無作法だったな。
俺は山本の上司でお前らの上司にもなる。
名前は
黒崎一護、13番隊副隊長だ。」
そしてあらわになった男の姿はオレンジ髪の体格のいい男だった。
その背には身の丈ほどの大刀を背負っていた。