学生転生-何がなんでも生き残る-   作:かいおう

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第三話 「出会い」

水神流宗家の道場。

アスラ王国の首都、王都アルスにある水神流の本拠地である。

そこには才能溢れる水神流の門徒がたくさんおり、北方大地にある剣神流の本拠地、『剣の聖地』に匹敵する規模の道場である……。

 

「っていうのがあるんだがクレイド、お前も行ってみないか?」

 

朝食を食べ終わった俺に、ラバンがそう提案してきた。

なぜまたいきなり。

 

「父さんは剣神流を極めて欲しいって言ってませんでしたか?」

「ああ。確かに俺はこの間までそう思ってた。だが、昨日の稽古で分かった。お前が本当に向いているのは水神流だ。息子の才能を潰すわけにはいかんよ」

 

ふむ……。

確かに水神流には興味があったからちょうどいいな。

やりたいと思っていたことをやらせてもらえるのだ。

断る理由はない。

 

「わかりました。では今から──」

「ちょっと待ってね、クレイド」

 

先程まで何も喋らなかったフィアが、会話に割り込んできた。

 

「ねぇ、ラバン。道場に通うって言ってるけど日帰りですよね?まさか、ずっとそこに住み続けるとかじゃないわよね……」

 

あ、確かにそれは気になる。

俺は別にホームシックとかそういうのにはならないと思うけどね。

 

「え、逆に住まないのか?金ならあるから大丈夫だぞ」

「……」

 

夫婦喧嘩の火蓋が切って落とされた。

二人が喧嘩するところは初めて見たかもしれない。

だが、喧嘩とは言ったものの、ラバンは終始押されていた。

フィアを怒らせないように、慎重に言葉を選んでいたラバンだったが、その努力は虚しく、火に油を注ぐ結果となってしまった。

 

ラバンは俺を強い剣士に育てたいのだろうが、フィアはそう思っているわけではないのだろう。

5歳の子供が見知らぬ場所で暮らすのが、心配で心配で仕方がないようだ。

 

前世の常識だったらフィアが100%正しいだろうが、この世界の常識は少し違う。

かわいい子には旅をさせろという考えの人が多いのだろう。

 

結局、一ヶ月のうち二週間は家に帰るのを条件に、俺は道場に行くことになった。

 

そして俺はフィアに木刀と真剣が入っているバッグを持たされ、ラバンに連れられて水神流の道場へと向かった。

ラバンは俺を送ってすぐに帰ってしまった。

 

仕事があるから、すぐに帰らなくては行けなかったらしい。

パパ行かないでぇぇぇと大声で泣きわめいてやろうと思ったが、さすがに恥ずかしかったからやめた。

 

そして俺は今、客間のような場所に通され、ちょっと高そうな椅子に座っている。

これから凄いお方が来るとか来ないとか。

 

しばらく待っているとドアが開き、人が入ってきた。

 

「こんな子供がウチで剣を習うってのかい……」

 

入ってきたのは四十半ばくらいのおばさんだった。

気難しげな表情だが、全体的におっとりとした外見をしている。

とりあえず挨拶くらいしとくか。

 

「初めまして。クレイド・ナルシェントです。これからよろしくお願いします」

「ふむ、あの騎士の子供にしてはちゃんと礼儀がなっているね。あたしはレイダ・リィア」

「え?父さんって騎士なんですか?」

「知らなかったのかい。あいつはアスラ王国騎士団の一員だよ」

 

あ、なるほど。だからウチは金持ちだったのか。

なぜ今まで教えなかったのかは少し気になったが、まあまだ5歳の子供にそんな事を教えたって仕方がないからだろうな。

 

というかレイダ・リィアってことはまさか……この人が水神なのか?

パッと見普通の中年女性だが、確かによく見れば水神としての貫禄があるようなないような……。

まあ、俺はまだ剣の達人でもないから、人を見ただけじゃよくわからん。

多分めちゃめちゃ強いんだろうけど。

 

「さて、まずは、あんたがあたしの剣を教わるにふさわしいかテストをするよ。着いて来な」

 

俺はそう言われ、荷物を持ってレイダに着いて行った。

道場の廊下は学校並の長さで、教室ではないが部屋がたくさんあった。

正直、体育館くらいの大きさしかない建物だと思っていたが、全然規模が違った。

 

水神流すげー。

なんて思ってると、レイダの足が止まった。

どうやら着いたようだ。

 

これが水神流の稽古場か。

 

ここには髪が真っ白な老人から、俺のような小さい子供もいた。

皆、真剣な顔で剣を振るっている。

水神流には真面目で勤勉な人が多いらしい。

 

前世はそこまで真面目でも勤勉でもなかった俺だが、果たしてついていけるだろうか。

 

「イゾルテ!来な!」

「はい!」

 

レイダが呼ぶと、俺と同じくらいの背丈の子供が元気よく返事をして、木刀を持ってやってきた。

青みがかってて流れるような美しい黒髪の女の子で、将来間違いなく美人になるであろう……って何考えてるんだ俺は。

 

「今からこの子の相手をしてやんな。負けるんじゃないよ」

「わかりました。イゾルテ・クルーエルです。よろしくおねがいします」

「クレイド・ナルシェントです。よろしくお願いします」

 

先程まで稽古をやっていた大人たちも、俺に注目しているようだ。

皆、剣を持ったまま、こちらを見ている。

 

俺は荷物を地面に置いて、いつもの木刀を取り出した。そして剣を持った直後に、イゾルテに襲いかかった。エッチな意味じゃないよ。

 

「え!?」

 

イゾルテは驚いた様子だったが、俺はそれを無視し彼女に切りかかった。

イゾルテは反応すらできず、俺に切り伏せられ、道場の床に倒れた。

 

「な、なんと卑怯な!」

「待ての合図くらい聞かんか!」

 

え、ダメだったのか?

ラバンにも剣を持った瞬間がヨーイドンって教わってたから、てっきりどこもそうなのかと……。

 

「す、すいません」

「すいませんで済むか!」

いや済むだろうが。

だが、俺に対する野次は止みそうにない。

 

「お前がウチで剣を学ぶ資格は──」

「うるさいよ」

レイダが一言そう言うと、俺を非難していた声がピタッと止んだ。

やっぱりめちゃめちゃ強いんだこの人。

 

「さっきから聞いてみれば。それでもあんたらは剣士かね?この坊やの行動は間違っていないよ」

 

剣を持って油断しているイゾルテが悪いんだ。

レイダはそう言った。

 

「でもこれじゃあ、あんたの剣の腕前を測る相手がいないね。仕方ない。あたしが相手をしてあげるよ」

 

道場がざわつき始めた。

剣を初めて一ヶ月の俺が、あの三大流派のトップと戦うのだ。

俺の心臓は今までにないくらい、バクバクしていた。

 

「さあ、かかってきな」

 

と言われたものの、俺はその場から動かなかった。

素人の俺から見てもわかる。

 

動いたら死ぬ。

 

本当にそう思った。

やばい、汗が止まらん。

 

「こないのかい?まあ、懸命な判断だ。なら、こちらから行かせてもらうよ」

 

レイダはそう言い、俺との距離を一瞬で詰めた。

俺は咄嗟に剣を振ったが、手にぬるりとした嫌な感覚を感じた。

水神流で受け流されたのだ。

このまま、すぐ追撃されてあっさりとやられると思った。

 

だがレイダはそれをせず、追撃までにちょっと時間があった。

まるで、お前もやってみろと言わんばかりだ。

 

その時、俺はレイダの剣がスローモーションに見えた。

多分これは、スタ〇ド使いの吸血鬼が言っていた訓練されたボクサーは相手のパンチが超スローモーションで見えるとかいうやつだ。

 

(ここだ!)

 

俺は見様見真似で先程のレイダのように、受け流しをした。

傍目から見たら雑で洗練されていないように見えるかもしれないが、これでも昨日のラバン戦よりも綺麗な受け流しだった。

 

「ほう……!」

 

レイダは感心した様子だがその直後、今度は俺が反応できない速度で剣を振るい、木刀は俺の首筋に叩き込まれた。

 

(結局、こうなるのかよ……)

 

目の前が真っ黒になった。

 

 

 

---レイダ・リィア視点---

 

 

 

「中々、やるじゃないか」

 

あたしは床に倒れている、小さな剣士を見てそう呟いた。

第一印象はひ弱そうな子だった。

 

あたしにも5歳の孫娘のイゾルテがいるが、その子よりも細くてまるで女の子のようだった。

こんな子が剣をやるなんて大丈夫なのだろうか。

 

だが、その心配はなかった。

 

あたしがこの子とイゾルテで試合をさせようとして、この子に剣を持たせた瞬間、まだ構えていないイゾルテに襲いかかったのだ。

そしてイゾルテはあっさり昏倒。

 

その様子を見ていた若造どもは批判していたが、この子がやったことは別におかしくはない。

剣士として当然の行動だ。

 

あの悪ガキ騎士も剣聖にしてはまあまあ強かったからね。

ちゃんと指導していたってことだろう。

 

そしてイゾルテの代わりにあたしが直々に相手をした。

この子がこのあたしを相手にどこまで食らいつけるかを測るためだ。

結果はこの子の敗北だが、内容はさほど悪くない。

 

この子はあたしの技をその場で真似して見せたのだ。

お世辞にもそれは洗練されたものとは言えなかったが、5歳の子供で剣を始めて一ヶ月というのを考えると、とんでもない才能の持ち主だ。

将来はこの子とイゾルテで水神の座を争うんだろうね。

 

水神の仕事が忙しいせいであたしはあまり道場に顔を出せないだろうが、この2人なら切磋琢磨し合って、10歳の頃には水神流上級、いや、水聖になっているかもしれない。

 

将来が楽しみだ。

 

 

 

---

 

 

 

イゾルテ・クルーエルはその男が嫌いだった。

試合の始めの合図もなくいきなり襲いかかってきた男、クレイド・ナルシェントを。

 

(ちゃんとしたしょうぶなら、わたしのほうがぜんぜんつよいのに!)

 

イゾルテがそう考えるのは仕方がないことだ。

彼女まだ5歳の女の子。

剣を持ったら油断してはいけないということを完全に理解できていなかったし、それに、目を覚ました後の稽古で、技術に関しては自分のほうが優れていたということを知ったせいで、勝負の結果に納得できていない。

 

だが、イゾルテの大好きなおばあちゃんで師匠のレイダ・リィアは、クレイドを気に入っている様子だ。

イゾルテはレイダおばあちゃんには嫌われたくはない。

だから気に入っているだけなら、別に我慢することができた。

これから自分がもっと強くなって、あんな奴よりも私に興味を持ってもらえばいいだけだ。

 

だが、クレイドはイゾルテの家であるクルーエル家で暮らすことになった。

クルーエル家は道場と隣接している。

だが、道場でも寝泊まりはできる。部屋数だって不足している訳では無い。

それなのにレイダがクルーエル家で暮らすようにユミルに命じたのだ。

 

自分が嫌いな男と、これから同じ家で暮らす。

 

イゾルテの怒りは頂点に達した。

 

 

(……)

 

今日の稽古を終え、イゾルテはクルーエル家に戻ってきた。

クレイドを連れて。

兄にクレイドを紹介した時に、家を案内してやれと言われたので、仕方がなく一緒に行動している。

 

「あ、あのイゾルテさん」

「……」

 

クレイドは必死にイゾルテに話しかけようとしているが、イゾルテは返事も反応もしない。

無言でクレイドの前を歩いている。

 

「ここがあなたの部屋です。では」

 

イゾルテはそれだけ言って去って行った。

 

 

 

---クレイド視点---

 

 

 

……まったく喋らないってガチで嫌われてるじゃん。

1ヶ月の半分はこの家で暮らさなくちゃ行けないのに、同年代の子どもに嫌われるってのはちょっとキツい。

 

頑張って仲良くならなくては……。

 

ま、イゾルテの事は後で何とかするとして、まずは部屋を物色してみようか。

 

この部屋に置いてある家具は、ベッドと机、そして椅子だけだ。

かなり簡易的と言うか、なんか刑務所みたいだな。

まあ部屋自体は少し広めだから、ここで素振りはできるか?

 

とりあえず、今日の所は一旦寝るとするか。

 

 

 

---???にて---

 

 

 

気がついたら、俺は真っ白な空間に立っていた。

夢だということにはすぐに気づけた。

 

(てか……体、元に戻ってるじゃん)

 

俺の体がかわいい5歳児の体型ではなく、生前の高校生のものになっていた。

もしかして、異世界転生がすべて嘘で、ただの夢だったのだろうか。

 

折角、俺あの世界で生きていく決心をしたのに、実は夢だったとかまじかよ。

 

「心配しなくていい。すべて現実だよ」

 

いつの間にか、俺の目の前に変なやつが立っていた。

全体にモザイクがかかっていて、顔を覚えることができない。

見てると少しムカついてくる。

 

「初めましてだね。こんにちは、クレイドくん」

 

なんで俺の名前を知っているんだ。

てか、ここはどこだ?

そもそも、お前は何者だ?

 

「質問が多いねぇ。1つずつ答えていこうか。僕が君の名前を知っているのはずっと見てたからだよ」

 

いや、気持ち悪いな。

俺があんな事やこんな事をする時も見てたって言うのかよ。

 

「あんな事やこんな事は知らないけど、中々面白い人生を送っているようだったからね。気になって見ていたのさ」

 

完全にプライバシーの侵害だが、そこは目を瞑ってやる。

それよりも、ここはどこなんだ?

夢の中じゃないのか?

 

「ここはキミたちの世界とは別の世界、無の世界。そして僕はヒトガミ」

 

某RPGのラスボスみたいな自己紹介だな。

それはともかく、俺に何の用だ?

どうでもいい要件だったら、聞かないぞ。

 

「そんなに喧嘩腰でこないでくれよ。君を助けてあげようとしてるんだよ」

 

助けるだと?ますます信用ならないな。

お前の雰囲気は前世の世界で母さんが騙されかけた、新興宗教のクソババアに似てるんだよ。

 

いや、似てるというかそっくりだ。

こういう輩は、どうせあのババアみたいに最初はいい思いさせて信頼させた後に、裏切るんだよ。

 

「そんな事言わなくてもいいじゃないか。それに、話を聞くのはこの1回だけでいいからさ」

 

聞くわけないだろ。

 

「そうかい。まあ、別にそれでもいいんだが……君、イゾルテと仲良くなりたくないの?」

 

は?あいつが俺に関係あるのかよ。

 

「ありありさ。だって君、イゾルテに嫌われたままなのは嫌だろ?」

 

確かにそうだけど。

でも、そんな事のは自分で何とかすればいいだろ。

 

「いや、君はイゾルテと仲直りしようと色々話しかけるが、逆に火に油を注ぐ結果になってしまう。僕はそうならない様に何とかしてあげようって言ってるんだよ。未来が見える僕からしたら容易いことさ」

 

は?未来が見えるだと?

 

「ああ。僕は自分と他者の未来を見ることができるんだ。君の未来だが、イゾルテに嫌われたまま気まずい気持ちで修行をする事になる。他人の事なんて気にしなくてもやっていける人も多いが、君は割と繊細だからねぇ」

 

一々、癇に障るやつだな。

結局、俺をからかいたかっただけなのか?

 

「おっと、気を悪くしたらごめんよ。別に、繊細なのは決して悪いことじゃないさ。感情が豊かな証拠だよ。それよりどうする?助言、聞いてみるかい?」

 

……じゃあ、今回だけで。

 

「わかったよ。それでは……

 

クレイドよ。よくお聞きなさい。

これからこの二年間、イゾルテとの会話は必要最低限にしなさい。そうすれば、彼女はあなたに心を開いていくでしょう」

 

ヒトガミはそう言い残し、俺の目の前から消えた。




いきなりラスボスきたー!

……ちょっと早すぎる気もしますが、ヒトガミはなるべく早く出したかったので、出しちゃいました。
ここからの展開はそこまで考えていないので、更新は遅めになります!
文章を作るのも物語を構成するのもまだ苦手なので、指摘などがあればじゃんじゃんください!
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