胡蝶家の長女   作:厨二柱

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胡蝶家編
第1話


 

 

 

気がつくと、妙な空間にいた。

変にふわふわしていて現実味がない。

夢の中のような感覚がする。

 

「ようやく目覚めたか。」

 

そんな中、突如目の前に人影が現れた。

人影はぼんやりとしていて、顔がはっきりとしない。

そこだけピンポイントで目が悪くなったかのようだ。

 

「お前は死んだのだ。覚えていないか?」

 

不審に思いながら、最後の記憶を思い出す。

そういえば、歩道を歩いていたオレに車が突っ込んできて。

えっと。あれからどうなったんだっけ……

 

「どうやら思い出したようだな。若くして死んだお前に良い話を持ってきてやった。」

「あなたはまさか神とでも言うつもりですか。」

「ほほ。最近の子は話が早くて助かるわ。」

 

初めて会った人が、妙なことを言っている。

でも何故か、嘘を言っているようにもこれが夢のようにも感じなかった。

まあこれが本当に夢だったとしても自分では気付けないだろうが。

 

「お前は死んだ。それでも、まだ生きたいと思うなら、生き返らせてやらんこともない。」

「それは、ありがとうございます。」

 

死んだと思ったら生き返れるらしい。

死んだ実感がまだないからか、感じた嬉しさは中途半端だが。

 

「だが、元の世界には無理だ。生き返るとしても、別の世界でのことだ。」

 

まあ、このまま死ぬよりは何倍もマシだ。

有り難く話を受けることにした。その言葉を聞くまでは。

 

「よろしい。それでは、お前の世界は鬼滅の刃に決まった。」

「ダメじゃん!死ぬじゃん!100%死じゃん!どうすんのよ!」

 

無理だった。死亡フラグだらけな世界だった。

ネットもない。現代っ子のオレには無理な世界だ。

 

「安心しろ。特典を3つ与えよう。好きに考えろ。」

「じゃあ継国縁壱の能力が欲しい!」

「うーむ。継国か……それほどの能力なら、三つの特典全て分の価値がある。」

 

足元見られたな……まあでも、継国縁壱の力があれば無惨にだって負けないはずだ。

死なないのなら、他の特典なんて無くても何とかなる。

 

「わかりました。……ですが、お願いしたいことがあります。」

「叶えるとは限らん。だが言ってみろ。」

 

胡蝶姉妹を助けたい。

それには……生まれる時期を胡蝶カナエと同期に……いや、同じ育手に師を仰げるように……いやいや……

 

「胡蝶カナエだけじゃない。オレは、胡蝶家の両親も救いたい。胡蝶家の子供にしてください。」

「ふむ。」

 

考え込む素振りを見せる。

これは能力ではないし、このくらいなら何と無く大丈夫なんじゃないかと思う。

 

「デメリットをつけよう。まず、特典を少し変え、継国縁壱の生まれ変わりとしよう。初めから縁壱の能力全てを使うことはできないが、徐々に能力が開花し、いずれは縁壱にも劣らぬ剣士となるだろう。」

「それでは困ります。胡蝶家の両親を守ることが出来ません。」

「安心しろ。縁壱は7つで剣術の指南役を圧倒したという。普通に暮らしているだけでも、その程度の実力は備わっている。鍛錬すれば、その歳でも鬼を狩る事が出来るだろう。無論、特殊な刃が無ければ殺し切ることはできないだろうがな。」

「……」

 

やはり鍛錬か。あまり苦しい事はしたくないんだが。

大切な人を守るためなら……

 

「そして、鬼に狙われやすい稀血にもなってもらう。それを含めてなお助けたいと言うのならば……」

「助けます。」

 

痛いのは嫌だけれど。一度死んだ命で推しの幸せが守れるなら、喜んで差し出そう。

 

「良い。それではお前に、継国縁壱の才と記憶の遺伝、そして胡蝶の家系に生まれる特典を与える。その対価として、鬼の求める稀血となる。それも多くの鬼を惹きつける、極上のな。」

 

待ってなにそれそこまでとは聞いてない。

 

 

 

 

 

 

 

1894年。明治27年。

胡蝶家に待望の第一子、胡蝶壱縁(こちょういちえ)が誕生した。

胡蝶家の長女となる赤子だった。そう、長女。長女なのだ。

 

まあ確かに、男に産んでくれとは頼んでいなかったが。

そこは何と無く察して然るべきではないだろうか。

そもそも、継国縁壱の生まれ変わりなんだから男だと思うだろう。

 

「この子は壱縁(いちえ)。ひとつひとつの縁を大切に。そう願ってつけました。」

 

名前も妙に物々しい。オレには無惨が見たら不快極まりないであろう名前がつけられた。

果たしてこの名に恥じないような剣士になれるのだろうか。

 

鈍く反射する鏡の中で見た自分の額には、大きな痣が発現していた。

炎を纏う日輪の輪のような痣が、左上の額の上に出来ている。

縁壱はこの痣で忌子と呼ばれたが、胡蝶家にはそのように考えるものはいなかった。

ただ、嫁入り前の娘が傷物と思われないかとは心配されたが。

その後母はそのように言った父に平手を食らわせ、「痣も愛嬌」と全てを愛してくれた。

あばたもえくぼの親戚ですかと言いたくなった。

 

「壱縁、ご飯の時間ですよ。」

 

わかったから乳房を擦り付けるのはやめてくれ。

 

 

 

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