胡蝶家の長女   作:厨二柱

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第6話

 

 

 

壱縁(いちえ)。入っておいで。」

「はい、お館様(やかたさま)。」

 

何故か柱合会議(ちゅうごうかいぎ)に呼ばれてしまった私。

お館様は未だ(ワタシ)と同じくらいの年齢で、それでも立派に鬼殺隊を束ねていた。

この頃はまだ目が見えていたようで、下がっていた私は彼にアイコンタクトを受けた。

 

「この子は隊士志望の胡蝶壱縁という。間もなく育手(そだて)に紹介するつもりの子だよ。」

 

紹介された私は、お館様と柱の方々に対して深々とお辞儀をした。

7人。それが集まった柱の人数だった。柱の人数に2人も欠けている。

柱の中に、私の知っている人間はいない。悲鳴嶼行冥(ひめじまぎょうめい)もまだ柱にはなっていないようだ。

つまり、この全員が、何年かのうちに命を落とすか引退するのだろう。

というか、確かこの頃の柱には煉獄槇寿郎がいるはずだが。会議無視してるのかな。

 

「彼女は先日、稀血を狙われ鬼に襲われた。しかし何の変哲もない包丁1本で鬼を切り刻み、隊士が来るまで回復を阻害し続け、家族を守った。それも、私達が秘匿している呼吸法を使って、だ。」

 

柱達がざわめき立つ。

 

「お館様。それは、彼女が自ら呼吸を生み出したということですか。」

「それは違うよ。彼女は、夢で特殊な呼吸をして刀を振るう剣士を見たと言っている。呼吸は、その真似をしただけだと。」

 

私は肯定の代わりに、更に深く頭を下げた。

 

「初めて刀を打つ刀鍛冶の中には、既に刀を作ったという記憶を持っていた者がいる。受け継がれていくのは、姿形だけではない。つまり、記憶の遺伝だよ。」

「それが彼女にあると?」

「そうだね。」

「お館様。その話だけでは、緊急柱合会議で招集してまで我々を呼んだ事に納得しかねる。お館様がそこまで重要な情報だと考える話をお聞かせ願いたい。」

「……私は、彼女が持つその記憶が()()()()()()()()()()()のものだと考えている。」

「始まりの呼吸の剣士たち……」

「皆も知っているね。始まりの呼吸の剣士たちは、唯一鬼舞辻無惨を追い詰めた者達。もし壱縁がその記憶を持っているのなら、それはこの上ない情報だ。」

 

何故分かったんだろう。それに関しては話していないはずだが……

無意識に呼吸を日の呼吸、とでも言っていたな。

特に隠さなければならないことでもないので良いのだが。

 

「それでは、その女は始まりの呼吸の剣士の子孫だと?」

「調べては見たけれど、彼女の家系に鬼殺隊に入隊した者の名前は見つからなかった。何百年の前の話だから、記録が間違っていてもおかしくないけれどね。」

「おい、お前。そこの所、自分でどう思ってるんだ。」

「……おそらく、お館様の言う通りです。」

 

流石にこれには柱の面々も息を呑んだ。

鬼舞辻無惨を死の間際まで追い詰めた頃の情報が手に入るかも知れないのだ。

本当は情報どころかその最期まで知っているが。

 

「どうしてそう思った!鬼舞辻無惨を見たのか!?」

「始まりの呼吸はどんなものだった!」

「鬼の能力などを知っているか!?」

 

お館様が人差し指を立て、口元に持っていくだけで柱達の喧騒は収まる。

その歳からやってたのか。

 

「心当たりはあるかな?」

 

少し迷う。

鬼舞辻無惨のことをこの時点で話して良いのか。話すならどこまで話すのか。

とりあえず、姿だけは見たことがあることにしよう。

それ以上知っていると、情報を洗いざらい吐かされそうで面倒だ。

 

「鬼舞辻とは?」

「鬼の始祖であり、鬼を増やせるたった1人の人物。打倒すべき我等が仇敵だよ。」

「……わかりません、名前などは。ですが、1人。お館様のお顔と似ている鬼がいました。その鬼を見た瞬間、私は自らが打ち倒すべき敵だと天啓を受けました。鬼舞辻何某かは存じませんが、鬼の首魁に心当たりがあるとするならばその男ただ1人です。」

「……鬼舞辻無惨は、私の家系の人間だ。1000年以上も前の話だけどね。」

「それでは……!」

「これでわかったね、彼女の重要性が。緊急柱合会議をしてまで彼女をここへ招待した理由が。我々は、この鬼舞辻への細い細い糸を手放すわけにはいかない。異論はないかな。」

 

返事の代わりに、身を乗り出していた柱が跪いた。まさに統率された軍隊だ。

 

「失礼ですが、お館様。私は、この者を隊士にするのは反対です。囲い込んで、守りに徹するべきだと愚考します。」

 

口を挟んだのは、最初に声を上げていた柱。

 

「私にはこの女がそれほどの力を秘めているとは思えません。強者について周る覇気がないのです。彼女の覇気は薄く、儚い。植物のような女です。」

「と言っているが。どうかな、壱縁。君には柱になる自身はあるかな?」

「……無礼を承知で言わせて頂きます。今の時点でも、この場で1番強いのは、おそらく私だと思います。」

「なんだと……!」

 

顔を上げて宣言すると、柱にめちゃくちゃ睨まれた。

 

「壱縁。柱達には、君にも劣らない抜きん出た才能がある。血を吐くような鍛錬を重ね、死線をくぐり、十二鬼月という鬼舞辻直属の()()()()を倒している。壱縁も、敬意を払わなければいけないよ。」

「わかっています。」

 

だから無礼を承知で、と言ったのだ。

私は今、日の呼吸とその型を完全に使いこなしている。

確かに実践経験では劣るが、呼吸の適性も使い方も私以上に上手い人間は縁壱くらいな者だと直感が言っている。

それでももしかすると、お館様に歴代でも初代に次いで最強と言わしめた炭治郎の世代の柱と比べられたら、困るかも知れないが。

勿論、勘違いだと言われては言い返せないのだが、縁壱(よりいち)の才能がその程度とは思えない。

 

「確かに彼女は大切な存在だ。でもね。彼女の意思を無視して閉じ込める事はできない。それに、壱縁は少しやんちゃなところがあるようだ。自由を奪って不興を買いたくはない。」

「申し開きもありません。」

 

悲鳴嶼行冥め……さては私が強引に最終選別に行こうとしたことを言ったな。

 

「差し出がましいことを言いました。」

「構わないよ。言いたいことはわかる。その上、彼女は強い稀血の持ち主だということが分かっている。彼女を襲った鬼は、血の匂いを遠くから感じてやってきたと言っていた。そうだね。壱縁。」

「はい。」

「柱への素質、記憶の遺伝、そして鬼を呼び込む、強力な稀血の持ち主。彼女は、どうしても鬼に殺させるわけには行かない存在だ。彼女には元花柱が所有していた屋敷に住んで貰う。」

 

元々住居を提供して頂ける事だけは聞いていたのだが、まさかそんな大仰なものを貰えるとは。

うちもなかなか立派な家だったが、この立派な産屋敷屋敷(ややこしい)と比べてしまうと犬小屋のようなものだ。

この屋敷とまでは言わなくとも、柱が住んでいた屋敷となるとかなりの大きさではないだろうか。

 

「壱縁は、近いうちに間違いなく柱に至るだろう。気にかけてあげて欲しい。話は以上だ。壱縁すまなかったね。下がっていいよ。」

 

私はもう一度頭を下げた。

 

 

 

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