胡蝶家の長女 作:厨二柱
第8話
当初1人で鬼殺隊に入隊するつもりだった
母のそれはそれは強い希望により、私だけではなく胡蝶一家は鬼殺隊の庇護下に入ることになった。
そこが母の妥協点であり、私に屋敷が贈られた理由の1つだった。
向かう先は現在は鬼殺隊が所有している、元花柱の邸宅。
目隠しなど透き通る世界で簡単に透過してしまうため、余計な
「到着しました。」
「ありがとう。」
1時間経ったか経ってないかほどで、私達は隠の方々の背から降りた。
同じ場所を回ったり、大回りした後に引き返したりしていなければもっと早く着いたのだが。
「こんな長い時間人を背負ったまま走り続けるなんて、よほど訓練されてるのね。」
「いやあ、はは。鬼殺隊ではこの程度初歩の初歩ですよ。」
目隠しを取る。広がっていた瞳孔が光を吸収し、一瞬視界が真っ白になった。
目を細めて徐々に慣らしていくと、目の前に大きな屋敷が鎮座しているのが見えてきた。
お館様にいただいた屋敷は、それはそれは広く大きく立派なものだった。
これが私の、いや。
「見て見て!広いよ!」
3歳になったしのぶが
父は怪我で杖をつかないと歩けなくなり、仕事をクビになった。
稼ぎ頭を失った私たち。内職の仕事をしていた母1人ではやっていけない。
そんな状況もあって、私を手に入れたい産屋敷の提案は
これは関係ない話だが、莫大な資産を持つ産屋敷家当主が運営する鬼殺隊は、命を賭ける仕事ということもあり大変に高級取りだったりする。全く関係ないが。
「おいで、しのぶ。新しい家を探検しよう。」
「うん!」
このままでは迷惑をかけてしまいそうなしのぶを、隠の背中からひっぺがして地面に下ろす。
父の補助は母に任せ、カナエも誘って先に屋敷の中を見て回ることにした。
たくさんベッドが並んでいる部屋。何十人分の食事を作るのか、という程の大きな台所。
何部屋もある座敷の個室。屋敷に隣接した、機能回復訓練をやってそうな大きな道場。
なんとなくそうじゃないかとは思っていたが、私達にあてがわれた住居は蝶屋敷だった。
最終的に決め手になったのは、大きな桜の木。おそらくはこの木が「必勝」なのだろう。
「こんな立派なお屋敷に住まわせてもらって、本当に良いのかしら……」
「そうだな……」
こんなに大きい上に、初代花柱の持ち家だったという由緒のある屋敷をこんな得体の知れない家族に渡して良かったのだろうか。
「お館様の意向です。あのお方の采配には間違いがありません。存分にご厚意に甘えてください。」
「隠の方ですか。」
産屋敷教は末端の隠までに浸透しているのか。ご苦労なことだ。
「御家にあった荷物はできるだけ運び込んでいます。申し訳ありませんが、家具などはこちらに備え付けられているものをお使いください。」
「ありがとうございます。」
「それでは私どもはこれで。
「ええ、わかっています。水柱の方にもお礼を伝えておいてください。」
「いえいえ、仕事のうちですから。それと、昼間の方は私が定期的にお伺いしますので、何かありましたらご遠慮なく私の方までお申し付けください。」
これからこの隠が私たち専属としてつくようだ。
他の隠と判別できるように、一応透き通る世界を使って骨格や臓器の構造を覗いておこう。
……ふむ。この女なかなか強いぞ。今の鬼殺隊の、0.5柱くらいはあるな。
新しい居間で食事を摂って、部屋に戻った私は荷物の中から
産屋敷で隠に教わり何度か練習したように、流木のような見た目の香木に火をつける。
なんでも、これは稀血を隠すための匂いを消すお香であり、それを毎日焚くことになるのだとか。
お香には、やはりと言うかなんというか。藤の花の香りがついていた。
「いい香り……」
「今のうちに楽しんでおけ。これから飽きるほど嗅ぐことになるからな。」
「それはそうかもしれないけれど。身も蓋も無いわ。お姉ちゃん。」
布団の上からお香を眺めるカナエ。
食事中に話し合い、両親としのぶが1部屋。私とカナエで1部屋を使うことになった。
客間を除いても個室が残り5、6室余ってしまうが。
この部屋に、アオイやきよすみなほの三人娘たちが入って来るのだろうか。
彼女たちが鬼殺隊なんかに関わらず、幸せに暮らしていくならそれに越したことはないが。