友愛、ではなく。《了》   作:\コメット/

6 / 12
2部6章と、最初に書いた3話分が重過ぎたので、キャストリアがヒロイン力上げる且つコミカルな話書きたいなぁと思って・・・。
結果、どうしてこうなった。

姫奈月華さん、誤字報告感謝です!


手料理を貴方へ③

 

「あ“ー・・・あ”ー・・・」

 

現実で1時間、ヘルズキッチン入門レクリエーションジャングルで1ヶ月が経過。

エミヤ、オベロン、紅閻魔の前には、変わり果てたアルトリアの姿があった。

容姿は再臨前の衣装に戻っており、目元には濃い隈がくっきりと。

目の焦点も定まっておらず、普段の彼女からは想像もつかないゾンビのような呻き声が漏れ出ている。

想いビトである彼のために限界を何度も超え、奮闘した結果がこれだ。

 

「おーい、大丈夫かいアルトリアー」

 

流石のオベロンも、看過できない彼女の現状を見て形だけでも心配の声をかける。

ペチペチと片方を軽く叩いてみても、それらしい反応は返ってこない。相も変わらず、少女らしからぬ声を上げるばかりだ。

 

「前半二週間の防戦から一転、後半は自ら全ての敵を掃討する勢いで動いていたんだ。無理もあるまい」

 

「あの形態で、二週間ぶっ通しで戦い続けてればこうもなる、か」

 

聖剣の騎士の具現化、アルトリア・アヴァロン。

マルミアドワーズを始めとした各種聖剣を用いて敵をバッサバッサと薙ぎ倒していく姿は、正に鬼神の如く。

無尽蔵にも思えたエネミーの大群は、期日まで彼女によって文字通り蹂躙された。

 

「初見で、且つ単独でクリアするとは。やはり筋が良いでち」

 

紅閻魔は、既にアルトリアを弟子入りさせる気満々だ。

これからが楽しみでちよ、と期待の眼差しを向けている。

 

「・・・んぁ、ここは・・・?」

 

ふと、朦朧としていた彼女の意識が覚醒。

よろけながらも、状態を起こして辺りを見回し始めた。

 

「あれ、カルデア・・・私、いつの間に戻って・・・」

 

「おめでとう。無事合格だそうだ、アルトリア」

 

頭上に?を浮かべるアルトリアの手を取り、ゆっくりと立ち上がらせるエミヤ。

 

「おっとと、ありがとうございます・・・そっか。私、やったんだ・・・!」

 

今になって、自分がやり遂げたことを実感している。

ぴょんぴょん無邪気に跳ねる少女は、エミヤの知る騎士王とはまるで重ならない。

しかし、その笑みは紛れもなくアルトリア・ペンドラゴンと似た、いや同質のものであった。

 

「おまえさんの覚悟、しかと目に焼きつけたでちよ。アルトリア」

 

「先生・・・はいっ、ありがとうございます!」

 

「これで、ようやく次のステップに進めるでちね」

 

「はい・・・ん?」

 

雲行きが怪しくなるのを察知したのか、元気よく返事した彼女は即違和感に首を傾げる。

 

「え、あの、先生。私試練クリアしましたよね?」

 

「そうでちね。ちょっとしたウォーミングアップ、入門のための準備運動のようなものでち」

 

「え」

 

「だいぶ体は暖まったようでちね。おまえさんを見て、あちきも気合が入ってきたでちよ」

 

「えっと」

 

「ここまで高揚したのはマシュ以来でち・・・あちきの指導は厳しいでちよ。心してついてくるでち。いざ!八熱大地獄花嫁修行コース、その一つ目でち!」

 

「え、えぇいやあのまって!?待ってください先生!そこまで本格的にやるとは聞いてな力つよっ!?聞いてください先生!せめて、せめて立香に会わせてください先生!かれこれ1ヶ月会ってないんですせんせえええっっ!!」

 

首根っこを掴まれ、紅閻魔に引き摺られていくアルトリア。

泣きじゃくりながらジタバタと手足を動かすも、女将の耳には届かない。

なぜなら、既にどのようにアルトリアを育成すべきか脳内でプランを一心に練っているのだから。

悲鳴のような懇願は聞き入れてもらえず、その様子をエミヤは憐れむように、オベロンは爆笑しながら見届けるのだった。

 

 

 

******************

 

 

 

「時間はヘルアイランドにいた時と同じく、経過はゆっくりでち。心置きなく修練に励むがいいでちよ」

 

「了解!」

 

修行は閻魔亭にて、みっちりと行われた。

最初はぐずって逃げ出そうとも考えていたアルトリアだったが、紅閻魔が本当に親身になって指導をしてくれるのと、やはり立香へご馳走するなら更に腕に磨きをかけなければという使命感に駆られ、最後までやり遂げることを決意。

 

「料理人が作る料理はいつも同じと思ったら大間違い!毎度毎度に違ったストーリーがあり、別物の作品なのでち!かと言っていつも違うことをすれば良い、ということでもないのでち!反復練習は欠かさず、毎日!死ぬ気でやるでちよ!」

 

日に日に上達していく包丁捌き。

増える要求とノルマ。

受け継がれる膨大な食に関しての知識。

アルトリアにとって、修行の日々は無論大変ではあったが苦ではなかった。

地が努力家&真面目だったこと、ブリテンではある期間を除き独りで特訓をしていたのもあって、他人に教えられるのが新鮮だったこともあるが、1番の理由は実にシンプル。

即ち、好きなヒトのために頑張る、そんな乙女心が働いていたのだ。

 

「慣れてきたのであれば、動きをスムーズに!急ぐと早くは似てるようで違うでちよ!」

 

基礎を身につけたなら、今度はそれを洗練させることに費やす。

上手くを早く、これも教えの一つだ。

仕事疲れで帰ってきた彼に、最高で最速のおもてなしを提供するための。

 

「手順が乱れたでち!一寸のミスは命取り、失敗したら死ぬ思いでやるでちよ!」

 

「ひぇ・・・!」

 

「返事は!?」

 

「りょうかぁい!」

 

レオニダス王にも迫るスパルタ。

こと料理に関しては一切の手抜きを許さない女将、紅閻魔である。

 

 

 

そして、アルトリアが修行を始めて現実で6時間、閻魔亭で半年もの時間が過ぎた。

 

 

 

結果、

 

「ーーーもう教えることは何もないでち。半年の期間でよくぞ、第八までの地獄を完遂してみせたでちね」

 

玉藻の前ですら途中で投げ出すほどの試練を、アルトリアは見事乗り越えてみせたのだった。

紅閻魔の指導力、アルトリアの努力、二つが絶妙に噛み合ったからこそ、ここまで早期に体得できたのだ。

 

「全ては先生のお陰です。お世話になりました」

 

ペコリと丁寧にお辞儀をするアルトリア。

少女らしさは抜けていないが、風格が増している。

 

「おまえさんはまごうことなき、あちきの一番弟子でち。そして、あちきの技術を全て会得した・・・免許皆伝でちよ」

 

「勿体ないお言葉です」

 

「謙遜は良すでち。さぁ、カルデアに戻るでちよ。存分に腕を振るうでち」

 

「はい!」

 

 

 

「カルデアの新料理長として!」

 

「了解!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ん??」」

 

今になって、二人は目指す方向がズレていることに気づいたのであった。

 

 

 

******************

 

 

 

立香のためにと始めた料理技術の向上。

それが、まさかの閻魔亭の女将である紅閻魔先生から太鼓判を押されるほどに上達してしまった。

どうしてこうなった、と思わずにはいられない。

簡単なものを提供できれば良かったのだが、行き着いたのは料理人としての極地である。

 

(まぁ、結果オーライとしておきましょう)

 

何にせよ、壊滅的だった腕前はカルデア内でもトップクラスに。

料理に対する考えも改められ、尚のこと立香へ対する想いも強まった。

終わりよければ全て良し・・・うん、良しだ良し。誰が何と言おうと良しだ。

 

(それはそうと、もう半年以上立香に会っていません)

 

修行の合間に顔だけでも、と考えていたのだが、修行内容がハード過ぎて、閻魔亭で与えられた自室から疲れて抜け出せずにいたのだ。

途中から慣れてきて、会いにいくだけの体力は保てるようになりはした。

それでも、ここまでくれば最後までやり遂げ、一気に成長した自分の姿を見せられればと意地で会わなかったのである。

 

(時刻はお昼時。そろそろ来るはずです)

 

現在、私がいるのは食堂。

既に多くのサーヴァントの方々が、ご飯にありついている。

その中に彼の姿はない・・・が、丁度、入り口のドアが開き、待ち侘びていた立香が入ってくる。

反射で勝手に体が動き、愛しのヒトへ向けて駆け出した。

 

「立香!」

 

「うおぅ!?」

 

彼にとっては数時間前でも、私にとっては7ヶ月ぶりの再会だ。

昂る気持ちを抑えきれず、つい抱きついてしまった。

ギューッと背中に回していた腕に力を強めると、彼も私に応えるように右手で頭を、左手で背中を撫でてくれた。

 

「どうしたの?」

 

久しぶりに感じた温もりと、久しぶりに見た彼の眼、久しぶりに聞いた彼の声。

閻魔亭での疲れなど、この三つで全て吹き飛んでしまった。

 

「ふふ、今日はですね、立香に手料理をご馳走したくって!」

 

「え、アルトリアが!?・・・そっかぁ」

 

恋人の料理を食べれることに喜んでいる・・・のではなく、また厄災が生まれるのか・・・と哀愁が漂わせていた。

いや、まぁ、きっとチョコ対決でのことを引き摺ってるのでしょうけども。仕方ないのですけども。

 

「あ、安心してください。この日のために、猛特訓してきたのですから」

 

「ほんとに?」

 

「ほんとです」

 

信じられないのか再度尋ねてくる。

それで少し不機嫌になって、私は頬を膨らませた。

 

「むーっ」

 

「ごめんごめん。じゃあ、お願いしようかな」

 

「・・・!はいっ、お任せください!」

 

 

 

 

 

 

「なんで?」

 

いつの間にか、厨房にて腕を振おうとする私の周りに、人集りができていた。

 

「食堂の入り口であれだけお熱いやり取りしてたら、そりゃみんな気になるでしょ。ーーーえっ、マジで美味いなこのメロンパフェ」

 

私が一手間で作ったメロンパフェの味に驚きながら、オベロンは言った。

 

「たしかに、ちょっとはしゃいでしまったのは自覚していますが」

 

「ちょっと?」

 

「・・・にしても、集まり過ぎでしょう」

 

見たところ、カルデア内の全サーヴァントとスタッフがいるのではなかろうか。

カウンター席で私の料理を待つマスターの周囲には、男性サーヴァントの殆どが彼を茶化している。

反対に女性サーヴァントはというと。

 

「「「「・・・」」」」

 

(視線がキツい・・・!)

 

特に、私と同様にマスターへ好意を寄せている方々の目が怖い。

 

「安珍様がお認めになった方・・・」

 

「アイツが正式に付き合ってる相手・・・」

 

「見せてもらおうじゃない・・・」

 

殺気が隠せてない。

あれはそう、狩人のそれだ。草食獣を狩る肉食獣の眼だ。

 

「ふぇ・・・」

 

折角修行でついた自信はどこへやら。

気づけば私は、ただ立っていることしか出来なかった。

 

 

 

******************

 

 

 

一緒にいる時、オレは彼女の表情を見ていた。

笑った顔、拗ねた顔、照れた顔、驚いた顔。

色々あるけど、喜怒哀楽がハッキリしているアルトリアの、日本の四季のように彩られた表情がオレは好きだった。

 

「アレは久しぶりに見たな・・・」

 

そんな中、今厨房に立っている彼女が見せているのは、緊張で紅潮し、目を泳がせている顔だ。ブリテン異聞帯ではよくああしていたなと、オレは心中苦笑いをしながら思い出した。

 

「あーあ、完全にあがってるよ」

 

隣にきたのはオベロン。

メロンパフェを頬張りながら、オレと一個席を開けて腰掛けた。

 

「鐘鳴らしてからいくらかマシになったんだろうけど、これだけ英霊に囲まれれば仕方ないか」

 

「ははは、たしかに」

 

ここにいる人全て、歴史に名を刻んだ万夫不当の英雄達。

無意識でも、自然とプレッシャーは発せられているだろう。

オレは慣れた方だけど、まだここに来て日が浅いアルトリアにとっては・・・。

 

「あうぅ・・・」

 

涙を溜め、オロオロもじもじし始める少女を見て、自分は何かしてやれないかと考える。

手伝いに介入、はダメだろうな。

アルトリアが言い出してくれたことなんだから、任せてみたい。

かと言ってこのまま放置というのも可哀想だ。

 

「よし」

 

「何するつもり?」

 

「応援だよ」

 

スッと軽く息を吸う。

厨房で一人、怯えている彼女に向けて。これからオレのために頑張ってくれる、彼女に向けて。

オレは、思い切り叫んだ。

 

「頑張れ、アルトリア!!」

 

声が届いて、少女がこちらを見る。

すると、目を見開いて硬直したのち、柔らかい笑みを浮かべて・・・、

 

「はい、立香!」

 

凛とした声音を取り戻して、包丁を握るのだった。

 

 

 

******************

 

 

 

「完成です!」

 

調理時間は、20分程度。

作ったものは・・・カロリーの高いものが好き、という立香の意見もあって、王道のハンバーグ。

 

「「「「ーーー」」」」

 

付け合わせの野菜とメインが乗るプレート。

完成に至るまで、他のサーヴァント達はアルトリアの技術に目を奪われていた。

包丁捌きは勿論、手際の良さは紅閻魔に師事を得ていたのもあってとてもスムーズに。

調理に費やした時間が、それを示していた。

何より、休まずに手を動かす彼女の表情が、とても満ち足りたもので。

さまざまな工程、コンロの熱気により汗が滴るのだが、それが彼女の美しさを際立てる。

教えを説いていたエミヤと紅閻魔は、成長した彼女の姿を見てドヤ顔を決め込むほどに。

『あの子、私(あちき)が育てたので』とでも言いたげだ。

 

「どうぞ、立香」

 

コトリと、プレートがマスターの前に置かれる。

芳しい香りが彼の鼻を突いて、早く食べろと急かしてくる。

けれど、先ずは言うべきことがあるだろうと食指をなんとか抑えて、立香は当たり前を伝えるべくアルトリアを見た。

 

「美味しそうだね」

 

「味は保証します、先生のお墨付きですから」

 

「二人から聞いたよ。大変だったみたいだね」

 

「ええ。けど、楽しかったです。望まれたことを望まれたように・・・ではなく、自分の意思で、こうして作ることができたので」

 

「そっか。ーーーありがと、アルトリア」

 

「いえいえ」

 

「いただきます」

 

「どうぞ、召し上がってくださいっ」

 

そこにいたのは、ただの付き合いたてのカップル。

けれどハンバーグは熟練の味で、立香はあまりの美味しさに笑顔で、且つ無言で食べ進め、アルトリアはそんな彼を愛おしく見守るのだった。

 

 

 

 

 




我がカルデア在住のキャストリアの料理レベルは53万です()
初期:紅閻魔≧エミヤ>>>>>>>>>>>>>>>>>>キャストリア
現在:紅閻魔≧キャストリア≧エミヤ

異論反論色々あるとは思いますが、自分はキャストリアがちゃんと女の子してるところ書きたいなぁと思ってましたので。
恋ごとに対して頑張る女の子って、やっぱ可愛いし美しい。

前3話分の蛇足として、受け取ってください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。