友愛、ではなく。《了》   作:\コメット/

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少しグロいです、あと立香っぽくないかも。


夏のように熱い記憶を。

 

温かいのは好きだ。

 

陽気は心地良いし、ご飯も美味しい。

なにより、人肌の温もりというものを最近知って、もっと好きになった。

 

寒いのは嫌いだ。

 

十六年間ティンタジェルで過ごした、肩身の狭い記憶が蘇るから。

特に、馬小屋で寝かせられていたことを思い出してしまい、辛くなる。

 

「・・・」

 

午前7時。明かりの灯っていない、暗い自室にて。

寝巻きから着替えている際中、毎日私はその光景と向き合っていた。

 

「なんで、こういうのも引き継いじゃうかな・・・」

 

青いマントを羽織り、スカートも整えて、あとはタイツを履くだけ、というところまで来て、私は手を止めていた。

左足の、指を見る。

親指、人差し指、中指ときてーーー本来、薬指と小指があるべき箇所には、何もない。

グッパッグッパッと握って緩めてを繰り返してみても、3本の指の感覚しか感じられない。

 

サーヴァントは基本、生涯の全盛期の姿で召喚される。

 

私の場合は、聖剣の騎士の概念を持ったアルトリア・アヴァロンとして召喚され、今は巡礼の旅で立香達と共に歩んだ春の記憶をベースに肉体が構築されている。

ティンタジェルを出てからの姿、ティンタジェルで十六年過ごし、立香達と旅をした姿。

当時の私を、ブレの一つも無く再現している。

 

「だからって、ここまでやらなくてもいいでしょうに」

 

幼い頃の、冬の馬小屋。

両手を温めるために吐いた息まで凍るほどの冷気に包まれながら、私は一人藁の上にいた。

常時解放してある窓、板と板の隙間から、吹雪が入り込んでくる。

外で風の音がするたびに、私は身を縮めて冷たい風をやり過ごそうとする。

でも、その行動は無為に等しい。

寒さを和らげる長袖も無ければ、身を覆う布団も無い。

肌がむき出し、季節感0のシャツとスカートのみ。

気づけばつま先の感覚まで無くなって、意識も遠くなる始末。

 

そんな中、ふと気付いたのだ。

 

昼間に水が溜まり、今は氷の張った床の上に何かがへばりついている。

恐る恐る確認してみると、それは凍傷によって文字通り『取れた』左足の薬指と小指だった。

きっと床を踏んづけた時に、バリッと持っていかれたのだろう。

痛みを感じない程に凍傷の症状が重かったのは、むしろ幸いだったのかもしれない。

 

「あれから、慣れるのに苦労したなぁ」

 

今でこそ普通に歩けてはいるが、指の損失を認識してからは、歩くことも立つことすらも勝手が違ってしまっていた。

そのことを他の妖精に笑われたくなくて、誤魔化すために言い訳を考えて・・・結局バレて、揶揄われたりもしたっけ。

 

「まぁ、済んだことです。過去は過去、いつまでも引き摺っていられません」

 

何より、今は冬の記憶を塗りつぶすほどに充実した熱々な時間を満喫中である。

 

「ふふふ、今日は立香と何をしようかなぁ。宝物庫の周回が終わって昼食べたら時間空くだろうし、色々話ができたらいいけど・・・」

 

と、他愛無いこれからの予定を思案している時だった。

部屋のインターフォンが、来客の存在を知らせてくる。

 

「はぁい」

 

急いでタイツを腰まで上げ、靴も履いてからドアへ駆け寄る。

自動で横にスライドされ、外にいた人物が明らかになった。

 

「立香でしたか、おはようございます。わざわざ迎えに来てくれたんですね」

 

独言ていれば。

来客は、私の恋人。藤丸立香。

いつも朝は食堂で待ち合わせをしているので、部屋まで呼びに来たのは少し驚いた。

 

「・・・アルトリア」

 

「はい。丁度支度ができましたので、食堂に向かいましょうか」

 

「・・・」

 

「・・・?」

 

私の名前をポツリと呟くと、黙ってしまう立香。

そういえば、顔が普段より険しい?寝起きが原因かな。でも彼は朝は強い方だし・・・。

 

「どうしたんですか?」

 

何か悩み事でも?と首を傾げながら尋ねてみる。

すると、彼は私へ力なくもたれかかるように、抱きついてきた。

突然のハグで気が動転し、顔が熱くなる。

 

「り、りりりりりつかっ!?」

 

「・・・」

 

ワタワタ焦る私に、彼は何故か反応を見せずにそのまま私を抱きしめる。

早る鼓動が胸を通して伝わってしまうことに羞恥を覚えたが、同時に違和感が。

いつもとは比べ物にならないほどに、立香の鼓動が強く脈立っている。

間髪入れず、全力で休むことなく心臓が血を循環させているのが分かった。

 

「・・・立香?」

 

気休めにしかならないだろうけど、私は彼の背中を優しく撫でる。

理由はわからないが、彼は何かに酷く怯えているように見えた。

 

「とりあえず、部屋に入りませんか?貴方が落ち着くまで待ちますよ。なんなら、膝をお貸ししましょうか?」

 

「・・・うん」

 

冗談で言ったつもりだったのだけど、まさかの膝枕を承諾頂いた。

余程追い詰められてるのだろう、私は恥ずかしさを抑えつつ、まるでおばけに怖がる子供のように震える立香を抱きしめながらベッドに向かい、タイツに包まれた太ももに彼の頭を乗せた。

少し髪がチクチクしてむず痒いけど、立香とくっついている状態なのは悪い気がしない。

 

「話したかったらでいいです。嫌なら言わなくても構いません。人間、誰しも弱みの一つや二つあるものですから」

 

私は元妖精で、今はサーヴァントで、弱味は一桁じゃ効かないですけど、と心の中で思っておく。

背中を摩るのを再開すると、部屋の前にいた時よりもだいぶ鼓動はゆっくりになっていた。

 

「・・・夢を、見たんだ」

 

「怖かったんですか?」

 

「・・・うん。でも、それ以上に・・・自分が許せなかった」

 

暗くてよく見ないと気づかなかったけど、彼の何度も擦ったのか赤くなっており、ここに来るまでずっと泣いていたことがわかった。

 

「キミの、過去を見たんだ」

 

潤んだ瞳から一筋、涙が私の足に伝った。

 

 

 

******************

 

 

 

耳を壊すかの如き風の音。

ごうごう、ごうごうと、一面真っ暗な風景の中に、オレはいた。

いや、本当に存在しているのだろうか。

手元を確認しても、何も見えない。見えるのは漆黒のみだ。

ふと、轟音のように吹き荒ぶ風の中で、一定の振子のリズムで鳴り響く・・・鐘の音が聞こえてきた。

風の音も、広がる闇の光景もオレは苦手だったけど。

 

その鐘の音は、即素直に不快に感じた。

 

 

 

「この娘はきっと、予言の子よ!」

 

視点は、誰からも認知されない第三者から。

陸に打ち上げられた、宝の積まれた小舟に乗る生まれて間もない赤ん坊。

 

(あれは、アルトリアか・・・?)

 

妖精と思わしき彼らは、その子を見て口々に自分勝手なことを宣う。

16歳になるまで育てる、女王にバレたらマズイ。

赤ん坊の心配ではなく、今後の利益になるかならないか。それだけを語り合い、結局は救世主になるまで面倒を見ることになった。

 

「けど、この子は楽園の妖精なんでしょう?きっと私達を馬鹿にするに違いないわ!」

 

「こんな時、人間はどうしているのだっけ」

 

「家畜として育てよう!相応しい馬小屋を作って、逆らえないように!」

 

言葉を失った。

同時に一瞬で頭に血が上って、戯言を抜かす妖精に、嬉々としてその提案を受け入れた村の住人達に対して、明確な怒りを持った。

柄にもなく殴りかかろうとして、場面が飛ぶ。

元より体が無いので、意味はなかっただろうけど。

 

「許してくれ、アルトリア。これもおまえのためなんだ」

 

そう言って、育て親に抜擢された妖精はまだ6歳になったばかりの彼女に厳しく躾をする。

寝る暇なんて与えない。

オレの目の前で繰り広げられるのは、現代社会での虐待と変わらなかった。

それも、多分、そこに愛情なんてものはない。

私利私欲のために、アルトリアを利用するつもりでいるのだ。

 

(・・・ッ!)

 

彼女が理不尽を受けているのに、オレは何もできない。

なぜなら、そこにオレはいないのだから。

 

「ごめんなさい。魔力が低くてごめんなさい。もっと上手くやります。頑張ります」

 

無理矢理に、ぎこちなく笑うアルトリアを、見ていることしかできない自分自身が、恨めしい。

再び、場面が変わる。

 

「寒いなぁ」

 

あてがわれた、立て付けの悪い馬小屋。

毛布も何もなく、あるのは寝床代わりの藁のみ。

その上に膝を抱えて座るアルトリアの左足には、薬指と小指が無かった。

すぐ近くの氷の張った床に、ポツンと残されていた。

千切れた自分の指を見る彼女の目は、酷く無機質で、見ていられない。

 

「足の指揃ってなくても、予言の子って務まるのかな」

 

誰に言うのでもなく、疑問を浮かべて彼女は眠る。

寝息を立て始めると、場面が切り替わる。

また、闇だ。

ごうごう、ごうごうと鳴り響く風の音。

 

「きっついなぁ・・・」

 

(もしかして、アルトリアは)

 

毎日、寝るたびに、この闇の中にいたのか。

村の住人に蔑まれ、酷使され、せっかく一人になれてもこれでは気休めに眠ることすら許されない。

16年間、望まないことを、強制されてきたのか。

それなのに、彼女は、アルトリアは・・・笑っていられたのか。

 

(ーーー)

 

鐘の音が聞こえる。

オレに向けてではなく、日々打ちのめされる少女に対して。

早く巡礼に行けと、急かすように。

一定のリズムで、その音色は鳴り続ける。

 

(ーーーあ)

 

場面が切り替わる。

そこは、一度しか訪れることのなかったキャメロットの玉座の間。

玉座の後ろにあるテラスに、成長した・・・オレ達と共に旅をしたアルトリアの姿があった。

彼女の視線の先には、白い塊。

1万4000年の呪いを募りに募らせた、神獣ケルヌンノスがいる。

 

「っ・・・つあ・・・!」

 

聖なる光が迸る。

12門の聖槍が、目前の厄災を葬らんと唸りを上げる。

余波ですら、テラスへと這い上がってくる呪いの手を近づかせないほどの力を発揮していた。

だが、ロンゴミニアドはモルガンが扱うことを前提に作られた魔術。更に、城を丸ごと霊装として使用するには魔術回路が足りない。

溢れる魔力が火花となって、アルトリアの関節から、血管から吹き出す。

オーバーヒートを起こした機械のように、火の粉が舞って激痛が身体中を駆け巡っている。

やめてくれ、そう叫んでも彼女には聞こえない。

これは、過去の追走なのだから。

 

「あ、あ・・・づぅ・・・っ!!」

 

流れる魔力に耐えかねて、アルトリアの右の眼球が破裂する。

節々からも血が流れ出て、白い礼服が、テラスが赤く染まっていく。

呼吸をするのも億劫なようで、足元もおぼつかない。オレには、彼女が今身に受けている痛みがどれ程のものなのかわからない。

ただ、傍観していることしかできない自分が、この上なく許せなかった。

 

「・・・霊脈閉塞型兵装(ロンゴミニアド)、装填。円卓聖槍(ラウンドランス)、12基並列抜錨」

 

聖槍が、神秘を持って空中に顕現する。

 

「対厄災大儀式、開門・・・!救世の槍よ、罪を流す最果て(オークニー)の雨となれ!!」

 

射出。

十二の砲が火を噴き、キャメロットの前に聳える神獣の腹へ、万華鏡を思わせる輝きを放ち炸裂した。

その一撃は、十分な威力を誇るものであった。

1万4000年の呪いを祓い切るに足る、力だと確信していた。

だが思い出す。

上でオレ達がケルヌンノスを足止めしている際、槍は二度放たれた。

ーーーそう、

 

「ご、あぁ・・・!」

 

これでは、命に届き得ない。

血が流出と逆流を繰り返して、吐血をするアルトリア。

杖を支えに、なんとかその場に踏みとどまっているが、既に限界を迎えている筈だ。

満身創痍。見るからに、再度ロンゴミニアドを放つ余力が残されているとは思えない。

 

(アルトリア・・・!)

 

効いてはいる、だが足りない。

聖槍をもってしても、ケルヌンノスの分厚い外皮を焦がすので精一杯。

 

「・・・違う!私が、使いこなせてないだけだ・・・!」

 

血を滴らせながら、アルトリアは尚も前を向く。

まるで、オレの心中を見透かし、否定したかのようだ。

 

「何が、もう少しだけいたいだ・・・!その少しは、もう充分に貰ってる・・・!」

 

機能していない右の眼と、今にもはち切れそうな赤い左の眼。

双眸が閉じられ、今一度彼女に光が集い始める。

貰った『少し』

それは、村正が命を賭して作った時間のことを、限られた余命のことを言っているのだろう。

 

「それに・・・!」

 

ゆっくりと瞼が開けられ、彼女は空を見た。

黄昏ではなく、呪いにより染まった赤い空を。

いや、違う。

空じゃない。

呪いの周囲を旋回しているストーム・ボーダー、その上でマシュや召喚したサーヴァントと共に戦う・・・オレを見ている。

 

「立香・・・!」

 

この距離だ。実際にオレの姿が見えたわけじゃない。

けれど、それを機にアルトリアの表情は見違えるほど落ち着いていく。

左目は役割を担っておらず、全身は過剰な魔力循環に耐えかねて血が滲んでいるにも関わらず。

凛とした、真っ直ぐな右目は呪いの塊に向けられていた。

 

「理由、見つかんなかった。理想の自分には、なれなかったよ」

 

残っていた右目が、弾ける。

だが動じない。

今更五感の一つが失われたところで、今の彼女は揺るがない。

 

「でもね、ひとつだけ。たしかにわかったことがあるんだ」

 

玉座を中継していた回路が、彼女の心臓へと移し替えられる。

 

「ーーーそれをもう、伝える機会は残ってないけど」

 

呪いの手が、稲妻の速度で壁を駆け上がってくる。

しかし、それよりもアルトリアの動作の方が早い。

 

「貴方の期待に、信頼に、応えて見せる。私の全てを、ここでぶつける!理想はなくとも、誰かがそうあれと願った理想に、救世主に、なってみせるーーー!」

 

聖槍の輝きから、聖剣の輝きへ塗り替わる。

 

「聖剣、抜刀ーーー!」

 

 

 

 

「祭神よ、我らが罪を、許し給え!!」

 

 

 

 

******************

 

 

 

立香の視点で見た私の過去を話し終えると、彼は泣き出してしまった。

泣き顔は、珍しい。いつも泣くのは私なので、少し新鮮だ。

 

「契約したサーヴァントの前世を見るのは、これまでもあったんだ」

 

聖杯戦争下でもよくある事象で、マスターとサーヴァントの主従関係をより強固にするための重要なイベント。

反対に関係が劣化することもあるらしい。知られたくない過去を、他人に見られるのだから。

 

「英雄は悲劇の末に英霊になる、だから見せられる夢の内容は、その人の過去に応じてキツくなる。エミヤやアナスタシアは、特に胸が締め付けられた」

 

けど、キミのは彼ら以上だと、立香は言う。

 

「生まれた頃から、あんな・・・粗雑な扱いを受けて、心休まる時なんて一度もなくて。キミが酷い目に遭うたびに思うんだ。どうして、あの場にオレがいなかったのかって」

 

「それは」

 

「エゴだってことはわかってる。でも思わずにはいられないんだ・・・最後、キミがロンゴミニアドを使って身体がボロボロになっているのを見たら、なんでオレはキミを一人で行かせたのか。なんで、他の方法を見つけられなかったのか。そう思ってしまうんだ」

 

『やめよう。ふざけてる、こんな話』

 

選定の場において、彼が私に向けて放った言葉を覚えている。

 

「あの時、もっと必死に止めておけばよかった」

 

「・・・立香」

 

ごめん、ごめんと、欲しくもない謝罪が彼の口から溢れた。

・・・まったく、もう。

この人は本当に。

 

「いいですか、立香。ああなることは、私が生まれた時から既に決まっていたんです。村正のお陰で少し延命できましたけど、ストーム・ボーダーで言った通り遅かれ早かれ私は消える運命でした。・・・選定の場でこの身を捧げなければ、3つの厄災だってどうにもならなかった。それをわかっていない貴方じゃない筈です」

 

「・・・うん」

 

「たしかに、私にとっての幼少期は冬のように冷たく、苦しいものでした。ですが、貴方達と出会って、旅をして、ここに召喚されて。今では春のような心地良さを、感じています」

 

だから気にしないで。

そう言っても、彼は首を縦に振らない。

それもそうか、あんな刺激の強い夢を見たら、いくら彼でもそう簡単には忘れられない。

 

「でしたら、分からず屋の立香にお願いがあります」

 

「わ、分からず屋?」

 

「ふふっ」

 

困惑する彼を見て微笑みながら、彼の黒い髪を梳く。

私の金髪とは違って、髪質は固い。でも、サラサラで触っているこちらが気持良いと思えてしまう。

 

「私は貴方へ、なんの悪感情も抱いていません。どうして助けてくれなかったのか、なんて思ったことは一度も無いです。でも、貴方が許せないのは自分自身なんですよね?」

 

「・・・身勝手ながら」

 

「でしたら、私がのぼせるほどに熱い温もりをください」

 

充分に、貰っている。

現状は満足たり得ている。

けれど、私だけが充実していて彼が闇を引き摺ることは許さない。

 

「春を上回る夏の記憶を、夏が過ぎても尚治らない秋の記憶を、凍てつくような冬の記憶を溶かすくらいの情熱を、私にください」

 

自分を責める代わりに、私を愛して。

また一歩、彼との距離が縮まる。関係が深まる。

 

「簡潔に言えば、その・・・もっとイチャイチャしましょうってことで」

 

我ながららしくない単語を使って、恥ずかしい。

照れずに言えただろうか。

・・・いや、今吹き出した。笑われた。

 

「立香ぁ・・・?」

 

「くっ・・・ご、ごめん!けど、く、ふふふ」

 

額を指で突くと、我慢していた笑いが手で抑える口から微かに漏れ出る。

なんだ、せっかくそれっぽいことを言って立香を励まそうと思っていたのに。

これでは言い損だ。

 

「むすっとします。拗ねます。捻くれます」

 

「ごめんごめん。・・・敵わないな」

 

「なんですか?」

 

「なんでもない!」

 

「ひゃっ」

 

起き上がると、私をお姫様抱っこしながらクルクル回り出す立香。

ご機嫌取りとかではないにしろ、ボソッとこぼした言葉を誤魔化すかのようで少し卑怯に感じる。

こんなことで丸め込まれる私も私なのだが。

 

「・・・うん。ここでぐずるのは、ブリテン異聞帯攻略に関わった全ての人へ失礼だよね」

 

「ええ」

 

「あれが最善手だった。みんなが自分にできることを精一杯やった。そうやって、前に進まないとね」

 

屈託ない笑顔の立香の目元はまだ、泣き腫れで赤いけれど。

いつもの調子に持ち直したようで、私は心底安堵する。

 

「さぁ、それじゃあ食堂に行こう。あんまり遅れるとエミヤに怒られる」

 

「ですね。・・・あ、あれ?立香、このまま行くんですか?」

 

「そうだけど」

 

「ええっとそれは流石に恥ずかしいというか、いつものように手を繋いで行きたいというか・・・」

 

言い淀む私を見て、彼は見るからに悪い笑みを貼り付け、

 

「藤丸立香、アルトリアをのぼせさせるために頑張ります!」

 

「なぁ・・・っ!?」

 

先程のやりとりから言葉を捩って私を揶揄い、部屋を出るのだった。

 

その後、他のサーヴァント達から生暖かい視線を向けられたのは言うまでもないでしょう。

村正とオベロンからは、爆笑をいただくのでした。

 

 

 

 




キャストリアとの絆が深まった!!(海底二万マイルほど
立香のメンタルは鋼だけど、そういえば他人の過去を辿って、明確な散り際を見せられたことは本編でなかったなと思って、書きました。あったら土下座します。

イナイレの更新止まってるのは、キャストリアの話が色々思い付いてしまうからなので仕方ないです。
その前は何してたか、ですって?・・・ウマ娘面白いですよね。

皆さん、ネモくん引けましたか?私は引けませんでした。くやしい。
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