友愛、ではなく。《了》   作:\コメット/

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前回との温度差ァ!


夏の記憶をキミと①

 

 

「ふんふんふふーん♪」

 

私は今、大層ご機嫌だ。

廊下で一人鼻歌を歌うくらいにはご機嫌だ。

道中すれ違ったオベロンに『なんだコイツ』といった目で無言で顔を顰められても許すくらいにはご機嫌だ。

理由はそう、突如発生した微小特異点にある。

なんでも、発生源が夏真っ盛りの日本、且つ海が近い場所なのだとか。

 

「日本か〜、楽しみだな〜」

 

立香の故郷!

詳細な場所は沖縄という、出身地からは離れたところらしいけど、彼の育った国の土を踏めるのならば別に関係ない。

 

「しかも、海!マシュさんが言うには、ブリテン異聞帯と違って水が青いんだとか・・・」

 

黄昏色に染まった海なら、何度も見た。けれど、汎人類史の空の色と同じく澄んだ青色が、そのまま水面に写っているらしい。

心が躍る、自然と足取りが軽やかになる。

昂った気持ちを抑えずに、私はとある一室の扉を勢いよく開けた。

 

「村正ー!水着作ってくださーい!」

 

「断る」

 

「即答!?」

 

畳の敷かれた純和室にて、胡座をかいてお茶を啜る村正は、私のお願いをノータイムで断った。

 

「なんでですか、せっかくの海なんですよ!?他のサーヴァントの方々に遅れをとるわけにはいかないんです!」

 

「阿保ゥ、小さくても特異点の修正だろうが。半人前が一丁前に浮き足立ってるんじゃねェよ」

 

「で、でも!もうみんな水着に着替えちゃってます!私だけが無いんです水着!」

 

「だけが、な訳ねェだろ。嘘をつくな嘘を。兎に角、(オレ)は願い下げだ」

 

「うぅ・・・っ、だって、だってぇ・・・」

 

私が隣にいない間、もし他の人に取られたらと思うと、不安で仕方ない。

互いに想いを誓い合った仲で、立香本人が気の多い青年では無いことは重々承知している。でも、やっぱり怖いものは怖いのだ。

 

「どうしても、ですか?」

 

「ああ」

 

「・・・他、当たってきます」

 

考えてみれば、本来刀鍛冶の村正に水着の作成を頼むこと自体が失礼だった。

その点については私の落ち度。

ここは引いて、誰か別の人に頼むしかない。

トボトボと、そっぽを向いて胡座のままな村正に背中を見せ、私は部屋の出口へ・・・、

 

「・・・だああああっっ!!クソ!」

 

突如、頭を掻きむしりながら村正が立ち上がった。

 

「な、なんですか村正。いきなり奇声を上げて。年ですか、持病ですか」

 

「酷い言いようだなオイ!?・・・儂は作ってやれねぇが、作ってくれる奴の心当たりぐらいはある」

 

「ほ、ホントですか!?」

 

それならそうと最初から言えばいいのに、もう。そういうところだぞ村正ぁ。

 

「・・・んな顔されたら、断るにも断れねェだろうが」

 

「何か言いました?」

 

「なんでもねぇ。善は急げ、そいつのところに行くぞ。一緒に頼んでやる」

 

そうして、足早に部屋を後にしようとする村正を、私は小走りで追いかけるのだった。

 

 

 

******************

 

 

 

「うん、いいよ!」

 

頼んだところ、村正とは反対に了承の即答を貰った。

快く引き受けてくれた彼女の名前は、ハベトロット。

私より少し前に召喚された、ブリテンでもお世話になった糸紡ぎの妖精。

もっとも、異聞帯での記憶は無いのだそうで。

村正も無いそうだけど、それにしては構ってくれるのは聞かない方がいいのだろうか。

 

「同類というか、職人仲間である村正からの頼みなら断れないんだわ〜」

 

「助かる。このちんちくり・・・訂正、この世間知らずに、一丁前のヤツを頼む」

 

「村正ァ!濁せてないぞ村正ァ!」

 

ちんちくりんと言いかけたぞ、この人。

たしかにその、他の女性サーヴァントの人たちと比べたら寂しい身体をしてるけども・・・。

世間知らずは否定できない。

 

「にしても本当にいいのか?水着なんて専門外だろ」

 

「ふふん、そこはハベにゃんの腕の見せ所さ。アルトリアはもうマスターとそういう関係なんだろう?なら、花嫁衣装を作るのと然程変わりはないさ!」

 

任せといて!と自身の胸をドンと叩くハベトロット。

なんとも頼もしい限りだ。

 

「ありがとう、ハベトロット。よろしくお願いします」

 

「お安い御用っ。僕はいつだって、古今東西、ありとあらゆるお嫁さんの味方なのだから!あ、でも僕ってば扱うのが花嫁衣装ばかりだから、完成した水着はそういう施工に寄っちゃうかも。それでもいいかな?」

 

「問題ありません。むしろ、それを望んでますっ」

 

青く煌めくさざなみが寄せてくる浜辺で、夏衣装の立香とウエディング風水着に身を包んだ私が並んで歩く・・・いいじゃないか。

 

「にへへ・・・」

 

「どうしたんだい、彼女」

 

「気にすんな。遅れた年相応の妄想だよ」

 

村正が失礼なことをほざいているけど気にしない。

 

「試しにお嫁さん力チェックしとこーっと。なになに〜・・・料理カンスト?家事系も全般できるのすごいね・・・」

 

「あはは、修行の賜物だよ」

 

伊達に紅閻魔先生の八熱大地獄をクリアしていない。

料理はさることながら、掃除洗濯ご近所付き合い、付き添う者として必要なスキルを半年間みっちり叩き込まれた。

 

「バゲ子にだって遅れは取りません、むふん」

 

「バーゲストのこと?彼女も相当なお嫁さん力してるんだわ。他諸々の数値合計でいえばアルトリアより上かも」

 

「え“っ」

 

「個人的な最推しはマシュだけどね。良いお嫁さんになるよ彼女は。キミにも言えることだよ、アルトリア」

 

「ほ、ホントに!?」

 

「うん、これだけ純粋な愛情を抱いてるんだもの。きっと幸せになれるさ!恋のキューピッドであるこの僕が保証するよ!」

 

正直、バゲ子に数値で負けたのはくっそーだけど、ハベトロットからのお墨付きはもらえたので良しとしよう。

 

「まだまだお子さんってこった。まぁあの二人と比べられるのは流石に同情するけどな」

 

「おい、目線が胸にいってるぞ村正」

 

冷やかすようにニヤニヤと笑う彼を見て、反射的に胸元を手で覆い隠す。

デリカシーが足りていない。

そんなことでは女性に避けられ・・・てなかった。すっごい美人な人たちに片っ端から話しかけられていましたねそういえば。

 

「今まで手を出してこなかったジャンル、使わなかった素材、職人魂に火がつくね。布面積が広い訳じゃ無いから、すぐにできるよ。安心して、仕事は確実さ!」

 

「わかりましたっ」

 

「お話中失礼します、マシュ・キリエライトです。皆さん、こちらに先輩はいらっしゃいますか?」

 

噂をすればなのだろうか。

ビキニタイプの、カラフルな水着を着たマシュさんがやってきた。

彼女も彼女で、今回のレイシフトを楽しみにしているのだろう。既に準備万端だ。

・・・ところで、なんで歩くたびにそんな揺れるの?

胸・・・むね・・・ムネ・・・。

 

「おうマシュ。すまねェが儂は知らねェな」

 

「僕も。力になれなくてごめんね」

 

「そうですか・・・。微小特異点が発生したことを、恐らく先輩はまだ存じていないと思うのです。なので、お伝えしたいとこうして探し回っているのですが、中々見つからなくて・・・」

 

「広いもんね、ここ。召喚されてしばらく経つけど、まだ迷っちゃうんだわ」

 

「こう部屋が多いとキリが無いしな。ま、最初(ハナ)っから居場所を知ってそうな奴には心当たりがある」

 

「本当ですか?どちらに・・・」

 

「コイツ。おいアルトリア、正気に戻れ」

 

「うあぅあぅ」

 

頭を乱雑に回されたことで、我に帰る。

揺れる豊満な双丘に意識を引っ張られていた。

危うく、水着で霊器を変更する前にアヴェンジャーになるところでした。

 

「アルトリアさん、先輩の所在はわかりますか?」

 

「え、えぇっと確か・・・」

 

朝の食堂で彼と交わした会話を思い出しながら、私は立香が現在どこにいるのかをマシュさんに伝えるのだった。

 

 

 

******************

 

 

 

机のスタンドライト、液晶タブレットの灯りが、向かい合う者達の顔を照らす。

暗い部屋の中、一切の無言。

誰も言葉を発しない、呼吸はしているはずなのに、息遣いの音すらも聞こえない、極度の集中下。

ただ、タッチペンが画面をなぞる音のみ。

 

「「「・・・」」」

 

黙々と、ただ己に課された業務を熟す彼らではあったが、それももう限界。

 

「・・・ダメ、間に合わない」

 

作業に没頭する三人のうちの一人が、遂に弱音を解禁した。

 

ドルセント(印刷所)も待ってくれない」

 

冷や汗が頬を伝い、未だ描きかけのページの映った画面にポタリと落ちた。

 

 

 

「新刊が落ちる・・・!」

 

 

 

この世の終わりを前にしているかの如く、サーヴァント・・・刑部姫は絶望を背負い込んで頭を抱えた。

 

「んなこと言わなくてもわかってんのよ!どーすんの、あと4ページ!」

 

泣きたいのはこちらだという風に声を荒げるのは、ジャンヌ・オルタ。

白い肌が更に、体調が悪い方向で白くなっており、目元にはくっきりと隈ができていた。

 

「刻限まで半日切ってるの知ってるでしょ!?だったらちゃっちゃと手を動かす!せっかく手伝いに来たマスターちゃんの誠意に応えなさい!」

 

サーヴァント間で同人作品交流をする、年に一度の祭典、サーヴァント・サマー・フェスティバル。通称サバフェス。

刑部姫、清姫が立てた『Princess×2』というサークルは、今回出稿する新刊が落ちる落ちないの瀬戸際にいた。

今までのサボりが仇となり、制作を始めたのは先月。

 

「良かったわね、私の新刊が描き終わった後で!でなきゃ貴女・・・」

 

「ぎゃー!それ以上言わないで!ごめんなさいごめんなさい!」

 

相方である清姫は異常な過密スケジュールでダウン。

空いた穴に余裕を持って脱稿したジャンヌ・オルタと、自分のサーヴァントのためならと立香が名乗りを上げたのだ。

 

「ちょっ、ここのページコマ割りしか終わってないじゃない!手伝う以前の問題よ!?」

 

「・・・」

 

そこの担当清姫だったんだよね、と返答する気力も、刑部姫にはない。

ペンを動かす腕も痙攣を起こし、ミスが重なって消しゴムを選択する回数が増える。

その時だった。

かつてない天啓が、刑部姫に舞い降りたのである。

 

 

 

「そうだ、スマブラしよう!」

 

 

 

言い出した彼女の目は、死んだ魚のようだった。

 

「こんなに無理を続けてたら描けるものも描けない!ちょっとだけ休憩を挟もう1時間くら」

 

焼却天理・鏖殺竜(フェルカーモルト・フォイアドラッヘ)!!!」

 

「ぎにゃああああ!!??」

 

一閃。

黒炎を纏った三つ首の竜が顕現、連打を加えたのちに峰打ちの斬撃を叩き込んだ。

ブスブスと焼け焦げ、床に倒れ伏した刑部姫を見て、ジャンヌ・オルタはため息を吐いた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・状況を考えなさいってのたく・・・!」

 

タイムリミットは刻一刻と近づいている。

ヘルプである彼女も、いい加減ストレスが募っていた。

なので、粛正に宝具解放したのは仕方のないことだろう。

 

「マスターちゃんも何か言って・・・マスターちゃん?」

 

そういえば先ほどから自分と刑部姫しか喋っていなかったことを思い出す。

しかも、変に静か過ぎる。というか気配が無い。

それもそのはず、彼が作業に勤しんでいた机には・・・、

 

『特異点修復で海行ってくる。めんご』

 

と書かれた液タブがポツンと残っているだけなのだから。

 

「・・・」

 

再び静寂が訪れた部屋の中で、ジャンヌ・オルタはただ立ち尽くすのだった。

 

 

 




キャストリアには夏の記憶が無い→同時期実装のカイニスの水着がきた→来年はキャストリアの水着で決まり→必死になってユーザーはガチャを引く→闘争と化す→アーマード・コアの新作が出る(出ない

恐ろしいほどに自然な流れ・・・私でなくちゃ見逃しちゃうね()

もしも水着キャストリアが実装したら、クラスは何になるのかな・・・他妖精に対する憎悪でアヴェンジャー化は勘弁。あ、でもしっとりしたキャストリアは良い(((殴

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