Dark Souls Cinder Lilies 作:ビタン肉団子
「またか……」
その男は何もかもが億劫だった。
そのクセに何がどうして億劫なのかすらも覚えていない。
ただ分かるのは、万物に対する強烈な既視感
行けるところは全て行き、やれることは全てした。
善人ぶった行動をした気もするし、目に付く奴全てを破滅させたような気もする。
己は火を継いだのか、それとも闇を統べたのか
きっと自分はこんなことを幾度も繰り返し続けてきただろうという確信はあるのに記憶はない。
それでも彼は繰り返す。
「…………?」
見慣れたきった世界
そんな停滞の地獄の中、彼の目の端に妙なものが映った。
「白サインか……? だが奇妙な……」
彼は見つける。地面に描かれた奇妙な紋様
奇妙な白サイン
大きな星を囲むように四隅に描かれた小さな星
その未知なる紋様に男は近付く。
気が付くと男は別のところにいた。
堅牢な石作りの一室
彼の経験から湿った墓所を思わせるその場所に幾人かの人間が彼を囲んでいた。
気が付けば別の場所にいる事態に然したる疑問も覚えない彼ではあるが、敵も味方も分からぬ奴らに囲まれているという状況に警戒する。
召喚主と闇霊が手を組んで袋叩きにする歪んだ娯楽もあそこではないことではない
当然彼は壁を背にして剣を抜き、油断なく構えて問いかける。
「ここはどこだ? 誰が俺を呼んだ?」
人数は5人、彼の動きに反応した甲冑姿の騎士が3、聖職者らしき奴が2
「私があなたを不死の契約のために呼びました」
自分の前に一歩出るその若い女
その女に対する彼の第一印象は「とにかく白い」だった。
頭まで包むローブもそうならその奥に押し込まれた肌も、極めつけはそこから流れる髪すら汚れのない白一色
「古の戦士よ、私の名は……」
女の言葉もそぞろに、男はぶしつけにあたりを見回す。
目の前の女、その後ろの騎士、辺りの場所
壁に刻まれし解読不能な文字、どこぞとも見覚えのない奇妙な茸、自身の収集物にはない意匠の鎧、あるいは法衣
「クックック……」
「……? どうしました?」
「フハハハハ」
「……え?」
「ハーッハッハッハ!!」
未知だ!
未知がある!!
彼は兜の中で破顔させた。
「……ッ! 巫女様! お下がりを!」
存在する道具を我が物としたい! 秘匿された秘密を暴きたい! この世界の強者と競いたい!
彼の不死人としての欲求が高まり、興奮が抑えられない
騎士たちが男を警戒するように剣に手をかける。
彼にそんな気はないとしても傍から見たら不気味極まりない男は当然の待遇を受ける。
「ハハ……、ん? やはり敵か? まぁいい」
この戦いが本意だろうと不本意だろうと、男には関係ない、剣の切っ先をこの場で一番偉そうな奴に向けてみた。
「貴様ッ! キルティス様に刃を向けるなど!!」
その反応は顕著で、控えていた騎士の怒気が爆発し同じようにこちらに剣を向ける。
敵対するなら敵対するなりのたのしみ方があることを男は知っていた
「……あなたが呼んだ魂はどうやらとんだはねっ返りだったみたい、これじゃ契約は難しいでしょうね、でも気落ちしないで、魂が合わなければそんなものよ」
聖職者の片割れ、おそらくもう一方より高位の者が彼を見て好き勝手に話をしだす。
「……どうしたの? 早く送り返してあげなさい」
「……すいませんキルティス様、この魂、変です。送り返せない……、できないんです」
場に緊張が走る。
聖職者をさらに遠ざけるよう騎士たちが壁のように立ちふさがった。
そんな状況でもお構いなしに男は騎士たちを眺めた。
騎士達の装いは甲冑姿に黒衣で統一されている。
3体全ての動きに無駄がない、だがあえて言うなら一人腕利きがいることを男は感じた。
光を照らさぬ鈍銀色の甲冑に光を吸い込む黒いコートを身に着け、構えられた武骨ながらに堅牢なロングソード
「いい……!」
その装いは見事に彼の琴線に触れた。
男の邪な考えを察知されたのか、黒衣の騎士達はその距離を縮めていく
しかし男はその警戒を無視し、挑発するように盾も構えずに急接近する。
近付かれた黒衣の騎士の一人は迷わずこれに剣を鋭く振り下ろした。
「……やはり敵か」
攻撃してきたら敵、なんなら攻撃できずとも
不死人のみにしか伝わらぬ崩壊した倫理観から、彼の意識が戦闘用のそれと切り替わる。
正に振り下ろされた剣が迫る直前、男はその装いを一瞬で変える。
空いた左手には一瞬で4つの突起が特徴的な小さな円盾を構えられておりその攻撃を弾く
その軽いふりからは信じられぬほど、重く、鈍い音が石室に響き渡る。
「なッ!?」
攻撃を弾かれた黒衣の騎士は呆然と男を見た。
たかが弾かれただけでここまで無防備を晒していることにひどく狼狽したその目を男は無感情に見つめ返すと、とどめを刺そうと握られた直剣を瞬時に切り替えた。
扱いやすそうな直剣から、人の扱いうる限界を目指したような冗談みたいな重厚な特大剣
それを相手の腸を食い破るために横なぎで振りかぶる。
「下がれッ!!」
止めの一撃のその瞬間、黒衣の騎士の中の一人が飛び出す。
男が一番厄介な相手になりそうだと感じたその男が合間を割くように剣を振り下ろしてきたのだ。
男は目の前の敵に、まるで執着も残さないように軽く一歩後ろに下がると、標的を切り替えた。
戦場に訪れる一瞬の膠着。
「……巫女の方々をお連れしろ、ここは私が食い止める」
「まて、3人でやるぞ」
「だめだ。コイツ相手には最悪があり得る……、巫女だけは確実に逃がす」
「そこまでの相手か?」
「あぁ」
男は目の前にいる騎士たちの動きを静観する。
内心では初撃のパリィを決めれなかった時点で多対一の負け筋に陥いりかけていることに不死人は気づいていたので人数が減る分には構わなかった。
「じゃあ俺も残ろう」
どうやら先ほど殺し損ねた騎士が巫女を逃がすようで、目の前には二人が残るような話になったとみると剣を構え、どのように相手を崩すか男は思考する。
ニ対一で結局は不利なまま、そして最初の好機を逃したせいで、相手は数の有利を過信するような油断が一切ない
攻めあぐねた男と騎士の両者の闘気は時間と共に膨れ上がってゆく
「巫女様! いけませぬ」
「古き戦士よ! 聞きなさい!」
その時、そんな空気を破るかのように聖職者の女が騎士の制止を振り切って男の前に出る。
男は明らかに隙を見せた男に切りかかることもできたが、とりあえずは何もせずに注意は戦闘に向けたまま、軽く女を横目で見る。
「エル! 前に出るな! この男の魂は既に穢れで狂ってる!」
「大丈夫です。私に話させてください」
男は剣をそのまま白い聖職者に向けると黒衣の騎士は
「たのむ下がってくれ」
「フェリン、……お願い、私に少しだけやらせて」
白い聖職者が黒衣の騎士を軽く横に押し、こちらを強く見つめる。
「私の名前は巫女エルドレッド! 私を認めないとしても、私には力が必要なんです! 私と契約を交わし共に戦ってください!」
目の前の女は力強くこちらに宣言する。
一瞬の静寂、緊張の糸が張り詰める中でその均衡を破るのは男の一声だ。
「なんだ貴様ら出待ちではなかったのか、いいぞ、何と戦えばいい?」
あまりに拍子抜けしてしまうほど、容易に男は剣を収めた。
Q.つまりどういうことだよ?
A.周回カンスト廃人キャラでDLC突入