Dark Souls Cinder Lilies 作:ビタン肉団子
古の民とは
この大陸の果ての場所、北に近く峻厳な山々に囲まれた自然の要塞にその民族は住んでいた。
彼らは滅びた古代文明の系譜に連なる者達であり、かつては古代文明の残した呪術を扱い、この大陸全てを収めるほどに繁栄したことすらあった。
しかしそれもすでに過去の話
かつて呪術の祖イザリスは、己が生んだ炎に焼かれ滅びたように、彼らも呪術によって凋落し、今となってはこの果ての地で慎ましく暮らしている。
そして彼らは過去の行いを恥じ、古代呪術を扱わぬものは地上に残り、扱えるものは地下深くから溢れる穢れを弔うためそこに移り住んだ。
地上に住む古の民は達は彼らを敬い、巫女の一族と呼んでいる。
穢れをその身に宿し、それを使役する彼女たちはこの地における軍備、巫女として占術による政などにも関わることで王のいないこの地を実質的に治め、穏やかに暮らしていた。
そんな古の民の生活が脅かされ始めたのは3年前、この大陸外から現れた船団だ。
彼らは自身を商人と名乗り、この大陸にやって来た。
遠い別の大陸より南の海に現れ、異国の珍品や貴品を献上し貿易の交渉をしてきたので南の国の王はこれを許可する。
そこを治める南の国は新たな港を作らせ彼らと交易を行った。
彼らの持ってくるものは見たこともないほど便利であったり、洗練された品々であり、南の国を富ませた。
多くの富を生んだ港はしだいにその数と、規模を増やし、異国民たちの町ともいえる場所が出来あがる。
そこからくる商人たちはすさまじい速度で南の国を侵食した。
貿易で得た外貨、あるいは輸入品で土地を買いあさり、入植を行う、それは南の国だけでなく、その富の独占を羨んだ隣国にも同時に行われた。
国々の王たちはこれを危ぶみ、開拓者たちの取り締まりを行ったが、その瞬間入植者たちはこの大陸に牙を剥く。
重要地点の襲撃に要所の確保、開拓民たちの動きは早かった。
周りと示し合わせたように取り締まりを理由に各地で同時開戦、南の国をすぐに飲み込むと直ちに隣国への侵略を始める。
ここまで来れば彼らが初めから貿易を目的にここに来たものではないと誰もが気づく。
彼らはこちらの文明を図り、侵略の算段を立てていたということを知った時にはもう後の祭りだ。
今、開拓民と名乗る異国からの侵略者はこの大陸の半分を飲み込んでいる。
残された大陸の国々は自身より先進的な軍備と戦略を持つ敵の前に何とか抵抗しているが、負けるのも時間の問題だ。
それはこの古の民たちが住むこの地でも同じである。
古の民たちの中でも圧倒的な強さを持つ彼女達……、巫女達が、かつて大陸を平らげた牙を再び研ぐ時が来たのだ。
「これが私たちの取り巻く現状です。侵略者たちはいずれこの地さえ飲み込むでしょう」
突然の邂逅から四半刻後、地下とは思えぬほど明るく、人の住まう活気のある洞穴、その横穴に拵えた一室で、異端たる騎士に巫女エルドレッドは語った。
「我々巫女はこの地を守る義務がある。過去の戦士の魂を集め、力をつけなくてはいけないのです……、巫女の力量とはその身に宿せる魂の数、顕現できる人数と範囲、どれだけその魂の力を引き出し強めることが……」
「……」
しかし、ここで目の前の巫女にとって残念な情報を伝えよう。
身振り手振りが合わさった彼女の熱のこもった説明、この不死人は話の半分も聞けてない
上記で言うなら『古の民とは……』あたりですでに聞き流し始め、異国の者との戦争の下りで少し興味がわいたが、すぐにこの地の歴史の話になると次第に神妙な雰囲気で話を聞くだけの置物となっていた。
彼は未知に焦がれてはいたがそれは己の興味がある分野だけという、なんとも自分勝手なものなのだが得てして不死人とはそういうものである。
彼の中では“つまりその侵略者を倒すために自分が呼ばれたのだろう”程度の理解であった。
「エルドレッド、いきなり多く語れば、彼も疲れただろう……、ここで騎士殿にも気になったことがないか聞いてみたらどうだ?」
部屋に同室していた腕の立つ騎士は不死人の様子を見てそういった。
中には不死人、騎士、巫女の3人だけだが外は先ほどとは比にならない程の兵が詰めている。
「なぁ騎士殿……、いや、この呼び方では変か、私も名乗らせてもらおう、私の名はフェリン、そこにいる巫女エルドレッドの戦士だ。貴殿の名は?」
その一言にエルドレッドは名も聞いていなかったことに気づいたのかはっとして少し恥ずかし気な表情を浮かべるが、フェリンはあえてそれを見ず、不死人はそもそも気にも留めていない。
「……俺も名乗り返したいのだが生憎名は忘れてしまってな、オイでもオマエでも好きに呼んでくれ」
「なに、記憶が曖昧なのは呼び出された魂ならそんなものだ。思い出した時にでも教えてくれ」
おそらく思い出すことはないと不死人は思うがあえては言わない、今の彼の興味は自分が質問できる番であることだ。
「俺との契約とやらを再度確認したい」
これは何より大切であった。
口の臭い蛇のような適当な説明は非常によろしくない、はっきりと目の前の女が自分に何を望むのか不死人は確認したかった。
「契約……? あぁ、不死契約の条件を上乗せしたいという話ですか? 古の戦士は己を使役するための試練を課すことがあるとはよく聞きます、いいでしょう私の本気を……」
「いや、その不死契約とはいったいなんだ」
「……はい? まさかそれも覚えていないと?」
「いや、元々知らないだけだろう」
覚えてないのではなく知らないのだ。
もしや不死人に刻まれたダークリングのことを指しているのかとも思いもしたが、あれは契約と言うにはあまりにも押し売りがすぎる。
「その……、貴方は不死契約を結んだからここにいるんですよね?」
「俺はお前の白サインに呼ばれてこの世界にきたんだと思うが」
エルドレッドは思考を停止させたように一瞬固まると、困惑しながらこちらに質問を続ける。
「あなたは不死ですよね……?」
「あぁ俺は不死人だ」
「じゃあ、古の巫女達の誰かと契約して不死になったんですよね?」
「巫女……、火防女のことか……? だが不死になったことは彼女とは関係がないな」
「はい? じゃあどうやって不死になったんですか」
「呪われたから?」
「あ、あなたは私のご先祖様に仕えていた……ですよね?」
「心当たりはないが、……もしやお前の先祖に
「……いるわけないです」
「だろうな、俺も奴に仕えた覚えはない」
この意味不明な問答を続けるたびにエルドレッドの顔は次第に引きつっていき、最後は泣きそうな声で言葉を絞り出した。
「じゃあ、貴方はどこの誰なんですか」
「むぅ…、それは俺も知らんのだ……」
その一言でエルドレッドは絶句し、場に静寂が訪れた。
ワクワクでプリンを買ったら底が茶色に腐った茶わん蒸しだったよ