Dark Souls Cinder Lilies   作:ビタン肉団子

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第3話

「うー……、なんで? どうして? これじゃあ認められないかもしれない……、どうすれば……」

 

 

 

 頭を抱えながら歩くエルドレッドの後ろに甲冑姿の男が二人、ついていく。

 

 

「……すまない、彼女も気が立っている時期でな、悪気はないんだ。それでも契約してくれて助かったよ」

 

「気にしてない」

 

 先ほどの会話の後、エルドレッドと不死人はお互いの情報を話し合った。

 

 と言うよりは取り乱したエルドレッドの言葉をフェリンが注釈をつけながら不死人に伝えたのだが、その結果、エルドレッドはとうとう机に突っ伏してしまい、それを見かねたフェリンが今日の所は時間を置くべきと切り出し、今に至る。

 

 

「しかし不死の契約か、そんなものがあるとはな」

 

「それも覚えてないのか……、いや、騎士殿のいつか見た見事な武具、きっと貴殿ははるか遠く昔からきていただいた名のある戦士ではないだろうか」

 

「どうだろうな、俺は自分のことなどほぼ何も覚えてない、騎士殿なんて呼ばれてもこの騎士姿も昔から着ていただけで、俺が騎士である保証にもならない」

 

「貴殿はここではないどこかから来たといわれた。ここの外では主に使える戦士を騎士と呼ぶそうだ、なら騎士殿は騎士殿でいいじゃないか、過去はどうあれ今は同じ主に仕えることになる者同士なのだから」

 

 

 不死の契約とは古き民の古代呪術の秘儀である。

 

 それは巫女の一族によってその身を魂魄の存在とされ、巫女の一族が途絶えるまで受け継がれ、不死として永らえる。

 

 

「フェリンも不死人なのか?」

 

「いや、まだだ」

 

 

 こちらの世界とは違う不死であり、訂正しようとも思ったのだが、実際に自身は似たような不死で、記憶は擦り切れ、今に形を遺さぬ古い時代も別世界も似たような物だろうと不死人は考える。

 

 これ以上混乱されても面倒なので、自分のことを過去に巫女と契約した摩耗した魂と思われている誤解をそのままにした。

 

 

 こうして不死人はキョロキョロと歩きながらこの場所、広大な地下に広がる古の民の生活を見ながら歩く

 

 墳墓のごとき様相だが、たかれた魔術の火、発光する不思議な茸など彼の世界から比べればまだ明るい方だと断言していい。

 

 

「おかしいです。私程度の才能じゃ本来契約した魂はこの身からそれほど離れられないはず……、そもそもなんなんですかこの魂、強いんですか? 弱いんですか? 全然見えないし分かんないし、操れないし……」

 

 こうして一人でブツブツと呟くエルドレッドを先頭に歩いている先の目的地は不死人の住処

 

 本来ならば契約した戦士は魂の身となり、巫女の近くに控えるそうなのだが、もちろん不死人にそんなことは出来はしないので大人しくついていく。

 

 

 あと少しだという道の道程、しかし、その途中で声をかけて来るものがいた。

 

 

「おいエルドレッド、お前、召喚を失敗したんだってな!」

 

 エルドレッドと同じ白装束で彼女と違い勝気な目を持つ女性がそこにいた。

 

 

「せっかく呼んだ戦士を扱いきれないうえ、その戦士も歯の欠けた櫛みたいに記憶が無い不完全な魂だそうだなぁ?」

 

「ぐッ……、リコリース」

 

 リコリースと呼ばれた聖職者は不死人を無視して、エルドレッドの方だけを見て獰猛な笑みを浮かべながら話す

 

「その程度の魂すら御しきれない巫女なんてお笑い草だなエルドレッド!」

 

 

 不死人は小声でエルドレッドに話しかける。

 

「不完全な魂とは誰だ? 他に呼んだ奴がいるのか?」

 

「……あなたのことです。魂と記憶は深く結びついています。それが欠けてるということは完全な状態と比べて魂としての総量が目減りしてるということなんですからね」

 

 不死人は記憶を失い、それが続けば心まで失い亡者になり果てるようなものだと理解した。

 

「なるほど、であの娘はなんだ?」

 

「リコリースは私と年は近いのですが、私より階級の高い巫女で……」

 

「おいエルドレッド! リコリースじゃねぇ、切り裂く巫女リコリース様だろうが!」

 

 その名乗りに不死人は興味深く相手を観察する。

 

 切り裂くの二つ名の通り、その腰には一対の曲刀がさしてあり、それが飾りでなく使いこまれたものであると察した。

 

 

「ほぉ切り裂くときたか、なかなか良い二つ名を持っているじゃないか」

 

「へへ、だろ? つーかお前は……あぁ、お前が呼ばれた戦士か、へぇ、噂は当てになんねーな、悪くねぇ、ようやくアイツが戦士を呼んだんだ。どうだ腕試しでも」

 

 不死人の世界でも飛びぬけた者には名前の頭に二つ名がついたものである。

 

 あちらの世界の常識がこちらに通じるかは分からないが、不死人は恐らくそれなりにやるのだろうと感じ、腹の中に仄かに熱が滾るのを感じた。

 

 

 相手の挑発に不死人はすぐにでも武器を構えようとするがそれはフェリンの一言で釘を刺される。

 

「騎士殿、これは我が主とリコリース殿のことであれば」

 

「向こうが良いと言ってるのだ別に戦っても……」

 

「巫女同士の私闘は禁じられてます。こちらから手を出さなければ何もありません」

 

「……理解した」

 

 そう言われては不死人は何もできない、彼にも 主人(ホスト)の意向を尊重する程度の理性は残っていた。

 

「二つ名と言えば、エルドレッドには何かないのか?」

 

「…………力ある巫女はそれに合った英傑の巫女の称号と名前を継ぐんです。……私は」

 

 何ともなしに不死人が聞いた言葉にエルドレッドは唇をかみしめる。

 

「へッ、……やる気もねぇソイツが二つ名をもらえる訳がねぇだろ、そうさオレはリコリース様の名を継いだ巫女! そんじょそこらの巫女とは格がちげぇんだよ」

 

「……行きましょう二人とも、自慢話に付き合う必要もないです」

 

 先を急ごうと俯いて歩き出すエルドレッドにリコリースは立ちふさがった。

 

 

「……待てよ、俺の話は終わってねぇぜ、おいエルドレッド、こんなに言われて黙ってるなんてだっせぇぜオマエ」

 

 明らかな挑発をするリコリース

 

 だが、エルドレッドはそれに一切目を合わせずに一人で通り過ぎた。

 

 残され困惑した不死人と何も話さないフェリンはエルドレッドを追いかけ、リコリースの脇を通り過ぎようとするが、突然リコリースはフェリンに話しかける。

 

 

「……そうかよ、おい! フェリン! やっぱりそいつは腰抜けだ! フェリン! オレと契約を結べ!」

 

 

 その声にエルドレッドの肩がビクリと震える。

 

 その背中を見つめるリコリースはにやりと笑った

 

 

「この先オマエほどの男を遊ばせておく余裕があるわけがねぇんだぞ! どうせ他の奴と不死の契約をする羽目になる! だったら俺のモノになった方が良いよなぁフェリン!」

 

 

 我慢できずにエルドレッドは勢い良く振り返り、リコリースを睨むと距離を詰めてその胸倉を掴んだ

 

 

「なんだぁ? オレは何かおかしなことを言ったか?」

 

 

 エルドレッドの手にかける力は増し、目はさらに吊り上がる。

 

 

「エルドレッド、オマエが周りを納得させるほどの名を揚げなけりゃ結局はフェリンは別の奴と契約を結ぶだけさ」 

 

「フェリンは私の戦士です!!」

 

「いつまでお前のワガママを長老たちが許すと思う? 呼び出したそいつがフェリンの代わりか? 当代一の戦士と言われたフェリンの代わりになれると本当に思ってるのか?」

 

「そっ、それは……」

 

「分かれよ、お前の力は強者を従えて初めて光る。その気がないならフェリンは俺によこせ」

 

「リコリース! あなた!」

 

 答えに詰まったエルドレッドがとうとう感情を爆発させ片手を振り上げた。

 

 その動きは淀みなく、まるで他に邪魔されない必定(致命)の一撃のようである。

 

 

 嬉々とした顔でそれを見るリコリース、彼女はあえてそれを受けるようで何の抵抗もしない

 

 体を瞬間揺らすフェリン。

 

 しかしその動き出しの誰より早く動いたものがいた。

 

 

「フンッ」

 

 

 いつの間にか握りこんだメイスを全力で振り切った男

 

 

「ちょ!?」

 

「騎士殿!?」

 

「何を固まっている! 畳みかけろ! フェリン、エルドレッド! 早くこの女を殴れ!」

 

 

 

 誰よりも速く、それはエルドレッドの平手よりも早く飛び出した男はその右手の鈍器を見目麗しいと言える造詣の女に全くの遠慮なくぶち込んでいた。

 

 

「なにやってるんですかぁッ!?」

 

「いまこちらから手を出そうとしていたではないか、ならばもう私闘だろう?」

 

「はぁ!? そんなわけないです!! そんな道理が通るわけ……」

 

 

 

 

「くくく、ハハハ、あーはっはッはッー」

 

 

 

 その時、殴られ吹き飛んだはずのリコリースが幽鬼のように立ち上がる。

 

 その顔は何かに守られたように無傷であった。

 

 

「いいぜッ! 乗った! ケンカを売ったのはこっちだが買ったのはオマエらだ! これで逃がさねぇぞエルドレッドォ!!」

 

 

 彼女の言葉の通り、この通路からの逃げ場を潰す。

 

 道の前後を挟むように、幾人もの戦士たちが一斉に現れた。

 

 長躯、矮躯、巨躯、重装、軽装、統一感がないことが統一感とでもいえそうな騎士達

 

 しかし彼らのその姿は誰もがバラバラでありながらたった一つを同じくしていた。

 

 剣、槍、斧、盾、篭手、その手に持つ得物のどれもが一対の装い

 

 双刃の騎士達であった。

 

 

「ほら見ろ、そんな道理が通ったではないか」

 

 

 こちらから手を出さなければ何もしてはいけないのなら、もしこちらが手を出したならば何をしてもいい

 

 そんな都合のいい曲解を本気で信じている狂人をエルドレッドは憎々し気に睨んだ。

 

 

 

 

 

 

 




敵ボスに対する致命の一撃のタイミングで致命モーションを入れずに複数で殴った方が与ダメが高いことをホストに教える優しい白霊さんの図
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