気まぐれ更新なのであしからず。
第零話
『――ら――た――――――い―――――――、ある――の――子じょ――ささ――――』
遠く、隔たりの向こうから聞こえた声に目が覚めた。いや、違う。体が震えた感触で目が覚めた。でも体は動かない。
……いや、
『―――済み――、―――と――船――――ヒュージネ―――――わせる』
覚めて時間がたったか、さっきより声を感じやすくなっていた。でも目覚めたキッカケになった声の持ち主はそれ以降は何も発することなく、その後の足音が遠ざかるに合わせてよく響くのを感じる。もう少し残っていればその声が何を言っていたのかよく感じただろう。
『……人造リリィ、か』
でもまだ誰かが残っていた。時間が経って感覚が研ぎ澄まされた今ならその声を一字一句感じられる。
『人は、どれだけ命を弄ぶ事になるだろうか? 摂理の外、そしてヒュージから産まれてくるこの子らすら命があるだろうに』
その声はどこか哀しいものだった。どこか後悔の念を感じさせた。その想いに対して自分は何の反応も返してあげられないけど、この人の言葉はどうしてか、忘れないようにしようと思った。
『名前を付けよう。この行いの罪を忘れないように、名前を1つ』
名前、と聞いて意識をより強くした。きっと向こうは私がその声を感じている事など知るよしもないだろう。
ただもし、声を出す事が出来たならその名前を使おうと考えた。
『……思えば昔、夜光に照らせた湖の色に似ているな。リリィ、湖……、デュ・ラック。だがヒュージ由来だからもう少し……』
思ったより真剣に考えてくれた。考えるだけ愛着、愛情が深くなり抱えようとしている罪も重くなるだろうに。それもこんな体もない、そして多数の存在に。
『……よし、ヴィヴィ。湖の乙女ヴィヴィアン、そして同じフランスの竜乙女メリュジーヌに影響しているヴィーヴル。この2つを掛けてヴィヴィ。私はそう呼ぼう』
その名前、遠慮なく受け取ります。
それからしばらく何か変な物を混ぜられたり、痛いような痺れるような感触を与えられた。それを繰り返す内、なんとなく自分が自分だと把握出来てきた気がした。まだ体はないけど、『自分はこんな形』と予想が出来る。速く高く、そして熱く。それが自分、それが私。
周りには私と同じモノがいるけど、私のように意識がある子はいない気がした。それが寂しくて、私に何かをしている人に意識を向けていた。私たちにミコと呼ぶ人がいるから寂しさは和らいだ。
そのしばらくがなくなって、どこかに移動させられている。持ち上げられてはブルブル揺れて、そしてどこかに下ろされる。一緒の部屋にいた子達も、そして初めての子達も一緒だった。そして、私のように意識が目覚めた子もいない。それは寂しいし、そしてこれまでミコと呼んでくれた人も。
『―――さようなら』
そう言われて以来、もういない。ここに移動して以来、誰1人もいなくなった。本格的に寂しくなった。
これから先はどうなるかわからない。目覚めた頃にいた人が何か言ってたけど声は感じ損ねたし、それ以降はあの人も口にしなかった。どこに行って、何をするのか知らない。どっちにしても体がない以上はこのまま身を任せるしかなかった。
そして大きな揺れが起こり、深いどこかへ沈んでいった。
深く沈んでいたのが、いつの間にか移動していた。そして多かった子達がほとんどいなくなっていた。でもすぐそば、くっつくようにまだ隣に私と同じような子がいる。感覚を済ませれば一定の間隔で動くモノを感じる。音もザザァ……、ザザァ……と鳴っている。多分これはさざ波……。
あれ、なんで私はそんなことを知っているの? 思えばなんで客観的に自分を見ているし、言葉もよく知っている。まるで別の誰かが今の私になったような……。
『昨日ってーっ、戦闘ありましたっけーっ?』
自分と言う存在に没頭しようとした所で声を感じ取った。初めての声だった。あの時の後悔や悲しみの声ではなく、温かみのある声だった。
どこにいるか研ぎ澄ませるとまだ何人かいる。9人だ。しかもどこか覚えのある、変わった気配も感じる。同じじゃないけど似た物を昨日感じた。私が沈んだときだ。あの時のと似ていて違うけど、すごく近いと言える違い。
その内の1人がこっちに近づいてくる。と言っても私に何か出来るわけでもないし、隣の子も一緒だ。何も出来ないまま、その1人がすぐ目の前までやって来た。
『? ……はわっ! はわわ……』
目の前に来たと思ったらすぐちょっと離れた。何やってるんだろう? その次はカタカタと音を感じる。今度は何だろうと想いながら、
ビリッ、と。何かが体中を駆け巡り、し、考が、ク、リアにな、った。
風の冷たさを感じて触覚が、
潮の香りを感じて嗅覚が、
砂の苦さを感じて味覚が、
話し声を感じて聴覚が、
日の光を感じて視覚が、
体すらなかった私に確かな肉と骨が形成されていく。その重さが動きを鈍くさせるけど、それでも動かす。ぼやける視界が鮮明になっていくとそこには自分の両手。まだ白く、小さな手だった。
傍らで話し声と、私の傍にいた子の気配があったが真っ先にその手で自分の顔を触る。ぺたぺたと、まだ曖昧な感触を確かめて、私は、産まれたんだと実感――
「っくしゅ」
「ぶえくしょんっ!」
……今さらだけど、海風で体が冷えるわ。
第一回プロフィール
・ヴィヴィ(仮名)
実のところ主人公は転生者。ただし記憶の引継ぎに失敗しているようで自分の人生がどんなモノだったか忘れている。しかしその代わりに能力を本能で理解し、理性の下で完全な制御が可能となっている。
前世は
FGOの知識は知人の子供がやっていると聞いて、話のネタとして囓った程度。アプリゲームするより気持ちよく寝て美味い食事をして温泉でゆったりする娯楽を好む人物だった。
具体的な動機
その一:前々からサーヴァントを出した作品をやってみたかった。
その二:アサルトリリィは結構なお気に入り。
その三:メリュ子を見て『合うんじゃない?』とピンと来た。
その四:二番煎じがなんとなく嫌だった。
その五:百合ヶ丘の制服、似合うんじゃね?
以上。
BOUQUET編終わり後について(今後は溜めて投稿するので間隔は長くなります。
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ラスバレ編に突入
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FGOクロス多めのストーリー
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こっちは休んで停滞している他の作品をする