ずっと甘えていた。みんなに、そしてメリュちゃんにも。
結梨ちゃんが私に懐いて、メリュちゃんはしっかりしていたから私は結梨ちゃんばかり面倒を見ていた。みんなとも仲良くしていたからメリュちゃんは大丈夫だと思っていた。
結梨ちゃんと同じ境遇だったはずなのに、色んなことを助けてあげなきゃいけなかったはずなのに。寧ろ一緒に結梨ちゃんの世話をしてくれたり、私の事も助けてくれたり。
あの日も結梨ちゃんの助ける為に竜の姿でやってきて、そしてHUGEの攻撃を受けて墜ちた。
一緒にいた結梨ちゃんだけを連れて逃げて、残してきたメリュちゃんの事はずっと後悔して心配していた。なんていうのはきっと嘘だ。心のどこかでメリュちゃんなら大丈夫だって思っていたんだ。そして最後の最期まで、私たちの事を助けてくれた。
あの最期にメリュちゃんがワザと攻撃を受けたのは私たちを守る行動だった。あのHUGEがヒュージネストからマギを吸い出し、それを攻撃に使う。それは膨大な燃料を抱えてる事でもあって、もしHUGEがマギを使わないまま倒されたら周辺一帯、私たちのいる場所まで爆発が届いていたそう。
その後、メリュちゃんの遺体は見つからなかった。あの大きさで鱗の一枚もないのはあの外殻はマギで構成された物かもしれないって百由様は言っていた。だから竜の姿はマギに還元され、残るのはメリュちゃんの体は私たちがよく知っているあの姿。あの爆発でその体が残っていることは絶望的だった。
いつも貰ってばかりで、何も返すことは出来ないまま、
心に多くの事を残してくれたのに、遺品になるものは一つもなくて、
メリュちゃんの笑顔を思い出すたびに、自分の未熟さを嫌というほど追い詰めてくる。
「……何も、してあげられなかった」
ただ後悔だけが、私を責め続けた。
………………………
………………
………
「髪飾り? あの四葉のクローバーですか」
「確かになくなってましたね」
「夢結様はそれを探したいと」
「ええ」
メリュが亡くなってしまって自分の殻に閉じ籠ってしまった梨璃の為、楓さんからの一押しもあって前々から考えていた事をみんなに伝えた。
「まさか失くした髪飾りを見つけ出す話だとは」
「話せと言ったのは楓さんでしょう……!」
だから私だって躊躇ったのよ。でもここで伝えたのだから思う事全てを伝えた。
梨璃が後悔と無力感でその気持ちを心の奥にしまい込み、でも抱え込みすぎていつか自分で自分を呪ってしまいそうな、そんな危ういあの子の姿を。
「まるで誰かさんの事のようですわね」
「……ええ、そうね」
皮肉のような楓さんの一言だったけど、だからこそ梨璃にはそんな未来に至ってほしくはなかった。
「髪飾りを見つければ梨璃さんは立ち直ると?」
「………」
その確証は、ない。梨璃の悲しみは、メリュに何もしてあげられなかった後悔。でもそれは私も同じで、きっと他のみんなも。
あの子はしっかり『しすぎていた』。世話を焼かせる所か結梨の世話を焼いてくれるほどに。梨璃はこの部分を気にしているのでしょうね。自分は何もしてあげられていなかって。
そんな傷を、失くなった髪飾りを見つけただけで治せるなんて、正直に言えば可能性は低い。皆もその不安は感じているみたいで沈黙が空気を重くする。
「……ああもうっ。わかりましたわよ、やりゃあいいでしょ!」
そんな皆の不安を、楓さんの言葉で霧散、いえ吹き飛ばしたと言えるほどに消え去った。でもここで一つ、あえて避けていた事を伝えなきゃいけなかった。
「ありがとう楓さん、みんな。そしてごめんなさい。本当なら
曖昧にした言葉を、みんなは察して口を噤んだ。
「それは、仕方がない事ですよ。梨璃さんの謹慎解除の日と
さすがに続けて楓さんが言うことなく、神琳さんが変わってその事実を改めて認識された。
「『そのナイトのなまえはランスロット。せいれいにそだてられたさいきょうのナイト』」
「結梨、ここでの絵本は静かに読みなさい」
「ん。はーい」
理事長の室の片隅、目の前のソファーに座る生徒会長の三人から離れて結梨君は持ち込んだ絵本読み耽っている。ただ以前と比べるなら大人しくなってると言えるな。
「申し訳ございません理事長代理」
「問題ないさ。むしろ彼女を任せっきりしている私の方が頭を下げることだよ、内田君」
「いえ、素直に聞いてくれているのでそう手間ではありません。元々、メリュジーヌさんについて来た形で交流がありましたから」
「そうか……」
その名前を聞き、自身の無力さに自責の念を抱いてしまう。
あの日、急いで百合ヶ丘に戻ってみたのは海岸で俯く一柳梨璃君の姿。そこにメリュジーヌ君の姿はなく、そしてそれは髪の一房すら残っていなかった。その後に詳細を尋ね、百合ヶ丘を守るために身を挺した事を知った。
……思考を切り替えよう。悲劇は数多く、一つたりとも忘れてはならないがそれでも前に進まなくてはならないからな。
「これまでの騒動だが、やっと決着がついた。結論から言えば今後、一柳結梨君に手を出すことはない」
「お?」
「結梨さん、呼んだわけじゃないからそのまま絵本を見てていいわよ。あと、また名前を呼ばれてもそのままでいいからね」
「はーい」
……少々、脱線してしまったが続けよう。
「共同に当たっていたグランギニョル社はその研究資料を提出後、自社の管理を放棄、処分したそうだ。そしてG.E.H.E.N.A.は関連データ全ての完全消失により一時凍結にするそうだ」
「グランギニョル社はともかく、G.E.H.E.N.A.は諦めてないのですか?」
「どうやら結果が出ている以上、再現は不可能ではないと考えているようだ。ただその結果を失った彼らにこれ以上、こちらを責める口実をなくした」
「……それは、理事長代理があったという方が?」
「だろうな。ただ彼は
この行方不明はただの隠蔽だ。あの別れ際の覚悟を思い出すなら、彼はもうこの世にはいないだろう。真島君が受け取った資料はHUGE研究においてトップクラスの情報が詰まっていたらしく、逆にそれを失ったG.E.H.E.N.A.がそのまま見逃すとは考えられない。
「そうですか。話を聞いて一度はお会いしたかったです」
「私もそう思う。でもあの覚悟を直接見れば、止められなかったよ」
自分の結末を理解したからこそ真島君に自分の成果を託したのだろう。
「ではこの件はもう終わり、と見てよろしいでしょうか?」
「ああ。外からの干渉はない、と言えん所があるから油断は出来ん。じゃが土台や外堀を作る時間は得られた。一柳結梨君の戸籍を作ろうと思う」
「妨害はないのですか?」
「グランギニョル社が協力すると、向こうから連絡があった。戸籍上は私の養子として引き取る事にする」
「理事長代理がですか?」
「それが彼女を守れる。いや、それが一番の理由ではないな。『彼』の覚悟を見た者としては、少しでも安心して貰いたいんだ」
「……本当にお会いしたかったですね」
……そうだね。本当に惜しい人がいなくなってしまったよ。
69 112 46 48 55
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E P . 0 7
になります。
結梨はメリュと交流があった内田眞悠理が預かって世話をしています。寝泊りも彼女が自室としている旧館寮の屋根裏で。結梨としては『メリュがよく会ってた人。この人のいう事はちゃんと聞く事と、本を読むときは静かに最後まで読むこと』と言いつけられていたから素直に、そして本は(出来る限り)静かに読む。
(追記:眞悠理はアニメでもそうで出ないからどんな話し方をするのかよくわかってない
BOUQUET編終わり後について(今後は溜めて投稿するので間隔は長くなります。
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ラスバレ編に突入
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FGOクロス多めのストーリー
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こっちは休んで停滞している他の作品をする