彼女(メリュ子)は百合ヶ丘のリリィ。   作:Celtmyth

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年度半期と季節の変わり目が一緒だったので体調は崩れるしナイーブになる日々でした。


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「――――ぷはっ」

 

 息が苦しくなってまた顔を出す。真っ暗なお空と真っ黒な水の中はどこまでも広くて、()()()()()()はまだ遠い。ずっと泳いでるけど近くなった気がしない。

 

「むすー、おっぷ」

 

 むくれて、沈みそうになったから慌てて浮く。じっとしててもしょうがないから、また青い光に向かって泳ぎ始める。

 

「―――――。……ぷはっ」

 

 でもずっと泳いでても近づいた気がしないから多分、泳ぐだけじゃダメなんだと思う。

 

 

 そもそも、ここって夢の中だしね。

 

 

 夢の中はすっごく広いらしい。でも遠い近いはないらしい。行きたいと思えばすぐに到着するけど、行けないと思うといつまでも到着しない。

 私はずっとたどり着きたいのにいつまでも到着しない。眞悠理に聞いたときは心のどこかで近づきたくないって思ってるかもしれないって言ってたけど、そんなことはない。私はずっとあそこに行きたいって思ってる。でも近づけない。ホントにどうして?

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ぃて、ゆ――ん」

「んー」

 

 頑張って泳いでたら声が聞こえて、真っ黒な水の中じゃなくなった。今は白いお布団に包まれて、腕の中には硬いナニか。

 

「結梨ちゃん、もう起きる時間よ」

「んん―――………???

 

 耳に入る声が良く聞こえるようになって、それが眞悠理の声だってわかった。腕の中の()を大事に抱きしめながら起き上がる。

 

「おはよ~」

「うん、おはよう。それで今日は何の本と一緒に寝たの?」

「う~ん。え~っと……、『サバ料理100選』?」

「なんでその本なの?」

「サバって泳ぐのが速いって」

「ああ、なるほど。でも料理本は違うんじゃない?」

「でもサバだけの本はこれだけだったよ」

「まぁ確かに魚一匹の本なんてそうないわね。―――それで、夢の中の光にはたどり着いた?」

「ううん、まだ」

 

 眞悠理に夢の事を聞かれたから、正直に答えた。毎朝聞かれて、いつも同じ答えを言う。最初は気にすることないって言ってたのも、ずっと見ているとこうして聞いてくれる。

 

「まだたどり着かないのね」

「うん。泳ぎの本も、船の本も持って寝てみたけど全然ダメだった」

「だからって魚の、しかも料理の本は迷走してるわよ……」

「めいそう?」

「ああ、うん。結梨ちゃんにはまだ難しい言葉だったわね。今度教えてあげるわ」

「わかった」

 

 眞悠理は言葉と文字を教えてくれる。それで新しい本を教えてくれる。メリュも読める文字が増えるたびに本も増えていったって聞いた。

 でも今の私はあの夢の光にたどり着くことが一番だった。

 

「ねぇ、頑張って着かなかったら他に何が出来るかな?」

「え? うーん、そうだねぇ……。回り道か、()()()()()()()()()()()かな?」

 

 そっか。じゃあどんな本を抱いて寝ようかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「同じ夢を見続けてる?」

 

 眞悠理が一人で来たと思ったら結梨ちゃんの事での相談だった。

 

「ああ、そうなんだ。暗い空と黒い海、その先に青い光だけの世界を見てるらしい」

「青い光ねぇ……」

 

 青い光には正直、心当たりがある。

 青い炎、青い光。竜の姿をしたメリュ子ちゃん、伝え聞いた、漆黒の竜の体躯に走るブルーライン。陽の下にあっても輝いていたらしい、その青い光。

 

「百由。結梨ちゃんがそんな夢を見るのはメリュの事を探しているからと思うか?」

「どうだろうね~。流石の私も夢については記憶の整理だとか無意識の願望ってくらいしか認識してないわ。一応、リリィのメンタルに影響があるかもしれないって程度で調べたけど、やっぱり現実での行動の影響が強いって結論だったわ」

「なるほど。でも結梨ちゃん、見た目より精神が幼いから『死』を具体的に認識してる感じはなかった。メリュがいないのも『リリィとして戦ったから今はいない』って言ってたから余計にね」

「そっちは微妙ね。でも確かに結梨ちゃんは一柳隊が発見した日からの経験しかないでしょう。学習能力は目を見張るものはあるけど精神は確かに幼い。『死』を認識できてないのは仕方がないわね」

「……だったら隠さず伝えたほうがいいのか?」

「やめた方がいいわよ」

 

 眞悠理にさっき言った事とは矛盾するけど、結梨ちゃんはあれで聡い子だからね。メリュ子ちゃんに会えない事には感付いているでしょう。その上で夢の事に熱心になってる。

 

「その理由は?」

「まず前提として、結梨ちゃんってこの前の戦いでフェイズトランセンデンスと縮地を同時に使ってたでしょ? 本来レアスキルはリリィ一人につき一種類。下位互換のサブスキルもレアスキルの70%まで。でもスキラー数値に大きな変化はないの。間違いなく結梨ちゃんはその『常識』から外れた未知の力を持ってる可能性が高いわ」

「夢もそれに関係が?」

「可能性よ可能性。ファンタズマやこの世の理みたいな予知とは言わないけど、近い物でしょうね。だから精神的に刺激を与えて影響がないとは言えないのよ」

「ならしばらく様子見した方がいいな?」

「そうして頂戴。それに結梨ちゃんの保護も明日で解けるし、その後から私の方で調べてみるわ」

 

 保護して今日明日で検査をするのは問題出るからって見送られているからねぇ。健康診断や免疫検査とかも改めてしないといけないんだけど。

 

「明日、か。ねぇ百由、梨璃ちゃんの方は大丈夫なのか?」

「ん~、うん。正直に言うわ。聞いた限りまだ立ち直れてないから大丈夫じゃない、としか言えないわ」

「そう。そんな状態で結梨ちゃんに会わせるのは難しいな」

「そうね。―――だったら貴女も参加してみる? クローバー探し」

「?」

 

 

 

 

 

………………………

………………

………

 

 

 

 

 

「みんな、久しぶり!」

 

 百合ヶ丘のリリィのほぼ全員が海岸に集まって、その中には結梨の姿があった。挨拶をしたと思ったら真っ先に楓さんに抱き着いていった。梨璃やメリュに続いて面倒を見ていたからね。ちょっと寂しいけど。ただ

 

「まず最初にお礼を言わせて。結梨の面倒を見てくれてありがとう眞悠理。でも結梨も今日から戻ってくる予定だけど、少し早くないかしら?」

「時間はちゃんと理事長代理に話を通したから問題ないし、結梨ちゃんも良い子にいてくれたからな。それに予定通りだったらこの集まりには参加できないだろう?」

「確かに予定では梨璃の謹慎解除の後に結梨との合流だったわね」

 

 それにここまでのリリィが集まっているなら学院の方は閑散としているでしょう。そんな場所に結梨を待たせる、いや誰もいない学院をあちこち走り回ってはしゃぐかもしれないわね。

 

「とは言え私は生徒会長の仕事があるから髪飾り探しには手伝えないのは残念だよ」

「いえ十分よ。貴女たちと理事長代理が結梨のために手続きをしてくれているのは聞いているわ」

「……そう言ってくれるのに、私はその礼を言われる立場にないと思ってる。なにせ私は結梨とメリュを追い立てた立場だ。感謝は逆に辛いよ」

「それは、えっと……」

 

 ここはごめんなさいと謝る所なのかしら? でも気を使わせたようで眞悠理を困らせないかしら? なんて返せばいいの……っ!

 

「受け取って貰えばいいと思うゾ。どうするかは眞悠理が決めることだしな」

「梅? それもそうだな。夢結、お前の感謝は受け取ろう。お前にはこれから結梨の世話もあるからな」

「えっと、これはどう返せばいいのかしら?」

「まかせろ! でいいと思うゾ」

「ああ、任せるだな。じゃあ私はもう行く。どうか髪飾りを見つけて梨璃に渡してやってくれ」

「ええ、それはもちろん。見つけてみせるわ」

 

 梅の手助けで眞悠理は私の感謝を受け取って貰え、私も髪飾り探しを応援してもらった。祈るみたいに期待する言葉じゃなくて確実に見つける事を前提にした言葉にプレッシャーがあった。

 でも絶対に見つけてみせる。だからそんなプレッシャーはものともしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――まさか、あんなオチになるなんて思わなかってけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()をつけてみんなと結梨ちゃんの所に向かってる。

 たくさんのリリィが私のために探すのを頑張ってくれて、でも実は髪飾りは真っ黒に焼けてそれを楓さんが手作りで誤魔化そうとして。そんな温かさに触れてしばらく泣いた後、結梨ちゃんを別の場所、百由様のラボに待たせるそう。でもあんな事があった場所に結梨ちゃんがいたらと思うと恥ずかしいやら、困っちゃうやら……。

 

「梨璃。すぐ会いたい気持ちはわかるけど、目元がまだ目立つわ。もう少し時間をかけても」

「いいえ、大丈夫ですお姉さま。結梨ちゃんが元気でいたのは聞きましたが、やっぱりすぐ会いたいんです」

「そう。でも眞悠理から聞いた話だと、あの子は『メリュが死んだ』事は『メリュはいなくなった』事と認識している可能性があるそうよ。あの子は幼子のように無垢だから」

 

 そう、だよね。今だから結梨ちゃんの明るさが記憶喪失からくるものじゃなくて生まれたばかりの無知さからだってわかる。でも、そうなるとメリュちゃんがあれだけ大人びていたのは……。

 っと、浮かび上がったその姿に泣きそうなるのを耐えて頭の中から振り払う。忘れたいわけじゃないけど、また泣いた顔で結梨ちゃんに会う訳にはいかない。

 

「……よしっ」

「? どうしたの梨璃」

「いえ、ちょっと気合を入れてましたっ」

「ああ、また泣きそうになったのか。梨璃は泣き虫さんだナ」

「そっ、そんなことありませんっ!」

「おぬしら、そろそろ着くから静かにせんか。百由様が気にするとは思わんが、結梨の方から飛んでくるかもしれんぞ」

「うっ、うんっ!」

 

 扉が見えるところだで来てるけどまだ心の整理が出来てないから慌てて落ち着かせる。

 これからいないメリュちゃんに代わって私と、一柳隊で引っ張っていかなきゃいけないんだからっ。

 

「着いたね」

「ええ。では梨璃さん。貴女が一番にお開け下さい」

「はいっ」

 

 もう、と言うと今更だけど神琳さんから扉に誘導される。まだドキドキするけど、私はこれからもリリィとして戦い、多くの人を守っていくんだ。そう誓い、扉を開けた。

 

 

 

 

「―――あっ、梨璃!」

 

 

 

 

 開けて、結梨ちゃんと目があうと駆けて抱き着いてきた。変わらず元気な結梨ちゃんに安堵し、同時にメリュちゃんの事を想い、守っていこうと心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Operational Condition(稼働状態)……Sleep mode(休眠)

 

 Memory Salvage(記憶復旧)……100%

 

 Body Reconstruction(機体再構成)……23%

 

 Magi Charge(魔力充電)……64%

 

 Mage Charge Speed(魔力回復速度)……0.132% in 1 hour

 

 

 

 

 

 ―――記憶修復の完了を確認。メインよりセカンドへ起動の要請。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――やぁ、また話すことになったね。百合の園に生まれた私のデットコピー。私と同じように愛のために墜ちた、私の後継機に相応しい一輪の薔薇。

 

 

 ―――まだ君の翼は、終わってないわよ。

 

 

 

 

 




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   Ep.08

 最後辺りの薔薇の言い回し、色付きで花言葉を連想させようと思いましたが複雑だったので止めました。ちなみに使おうと思ったのがメリュ子のカラーである青か黒。

 青いバラ=「夢かなう」「奇跡」「神の祝福」「不可能」
 黒いバラ=「貴方はあくまで私のもの」「決して滅びることのない愛、永遠の愛」

 FGOメリュ子のキャラに合う反面、この場面にはちょっと……。で断念。



 この後はアニメ版の残りを一気に書き上げるのでしばらく期間が空きます事をここでご報告します。

BOUQUET編終わり後について(今後は溜めて投稿するので間隔は長くなります。

  • ラスバレ編に突入
  • FGOクロス多めのストーリー
  • こっちは休んで停滞している他の作品をする
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