彼女(メリュ子)は百合ヶ丘のリリィ。   作:Celtmyth

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 お久しぶりです。エイプリルフール以来の投稿です。
 4月の活動報告を見てくださった方、お待たせしました。そうじゃない方、一度目を通してください。
 とは言え生活周りや仕事の折り合いから今後も投稿頻度が牛歩のようになる事、申し訳ございません。それでも読んでくださる方々には感謝いたします。


第02話『妹の戦い方。姉の秘密』

 

 

 

「着いたー! がんばるぞぉー!!」

 

 

 

 長い移動から目的地に到着して元気に声上げた。百合ヶ丘は校舎以外には海と森しかないから建物がいっぱいある場所はワクワクする。本当はお姉ちゃんと一緒に来たかったけど気軽に遠出は出来ないから我慢する。でもやっぱり一緒に来たいなぁ。

 

「静かになさい結梨さんっ」

「お?」

 

 後ろから楓の声、多分注意してる。振り返ると一緒に来た一柳隊の皆。お姉ちゃん以外に雨嘉と神琳がいないけど私を入れて8人は多分大人数だと思う。

 でもまずは怒ってる楓に向き合った。

 

「なんで?」

「それはここが公共の場だからですわ」

「公共……。ああ、色んな人がいる場所。確か騒ぐと迷惑になるんだった。―――ごめんなさい楓」

「はい、許します。ですがいつも言っている事ですがやってから謝罪することを繰り返しては資質、つまり結梨さん自身が信用されなくなります。百合ヶ丘では注意で留まりますがこのような場所では結梨さんを知らない方々ばかりですからね」

「えっと……」

「ようはメリュのような挨拶が出来て静かに出来るようになりなさって事よ」

 

 お姉ちゃんのように、お姉ちゃんのような挨拶の仕方。むむ……。

 

「―――騒がしてごめんね。私でよければ何かお詫びをさせてほしい」

「待ちなさい。メリュ、いやメリュ以外に誰から教わったの?」

「よくわかったね。亜羅椰だよ。いつも樟や壱に話しかけてたし、それにお姉ちゃんにも言ってた事を使ってみた」

「―――楓さん、近い内に遠藤さんに言う事が出来たのだけれど、一緒に来るかしら?」

「お供します」

「?」

 

 二人とも、HUGEを探すときのような顔をしてる。えっ、出動するの?

 

「あ、あの~。差し出がましいでしょうが、そろそろイベント準備の方へ……」

「そ、そうですよお姉様。今日のグリーンフェスには叶星様たちグラン・エプレの皆さんが来られますから」

「……そうね、今はイベントの成功を目指しましょう」

「その妙な間はなんじゃ?」

「こほん。楓さん、あなたの事だから配置と役割は決めているのでしょう?」

「ええ、グラン・エプレの皆さんも事前に確認した能力の元、決めております。まず――」

 

 

  ウゥ~~~~~~~~~~

 

 

 楓が話を始めようとしたらサイレン、HUGEが出た知らせが聞こえた。本当に出たんだ。夢結と楓、どうやってHUGEが出るってわかったんだろう?

 

「HUGE!」

「まったく、こんな日に出てこなくてもよろしいですのに」

「―――百合ヶ丘から出動命令が出たわ。ただ広くばらけているみたいから人数は分けたほうがいいわ」

「承知しました。では夢結様と梨璃さん、次に梅様とミリアムさん、最後に私と二水さん、そして結梨さんの三つにしましょう」

「ヨシ! じゃあさっさと片づけるゾ!」

 

 私も頑張る!

 

 

 

 

 

「結梨さん、今回は私と一緒に戦って貰いますわよ」

「? なんで?」

「実戦経験も積み上げた頃ですし、そろそろレギオンの一員としての一歩、連携を学んでもらいます」

「えっ、楓さん。まさか実戦を訓練代わりにするんですか?」

「……私も訓練施設で出来たならそうしましたわ」

「えっ? まさか結梨ちゃん、まだ加減が出来てないんですか?」

「加減? 出来てるよ?」

「ええ、そうですわね。地面を抉る一太刀がHUGEを両断する程度までにはですが」

 

 私と結梨さん、二水さんの三人で担当場所へ向かう最中で今回の戦闘の目標をお伝えしましたが、結梨さんの規格外さに少し頭が痛くなりますわ。

移動しながら視線は結梨さんのCHARM、改造されたグングニル・タイプヴィトニル。オーディンの槍グングニルとそのオーディンを飲み込んだフェンリルの名前が付けられたのは矛盾を想うか皮肉と言うべきなのでしょうか。ですが敵対した二つの名を合わせただけあってこのCHARMは強力な力を持ち、そして結梨さんはそれを手に取るだけの強大なマギを持っていらっしゃる。視線はCHARMから手の入れ墨、メリュさん曰く令呪と言うマギとマギを繋いだ証。ここにマギのパスが繋がってメリュさんの有り余るマギを結梨さんが使えるようになったことで以前のようなマギ切れを起こす事はなくなりました。

 さて、これがどう言う事と言いますかと

 

 

 リリィとして未熟な結梨さん+大喰らいのCHARM+メリュさんからのマギ供給

 

 =ラージ級HUGEに匹敵しますわ(※被害も甚大ですわ)

 

 

「二水―、HUGEはどこー?」

「あっ、はい。少し待っててください」

(二水さん。結梨さんより私に教えてくださいませ。そうしないと間違いなく飛び出しますから)

(しょ、承知しました)

 

 ほんと、行動力がある子です事。こっそり二水さんに釘を刺しつつもCHARMを起動して警戒を強める。

 すでにボーダーラインを超えていつHUGEが出てきてもおかしくない状況。二水さんの『鷹の目』は広範囲の索敵が出来るとは言え、あくまで上空から見下ろすスキル。物陰や地中にいては見つからない可能性もありますわ。

 

(……っ。楓さん、見つかりました。スモール級6体とミドル級1体です)

(承知しました)「結梨さん、目標が見つかりましたので私の後ろからついてきて下さい。そしてHUGEが見えた際はすぐに突撃せず止まってください」

「? すぐにやっつけちゃダメ?」

「本来、リリィの戦闘はリリィ同士の協力・連携を前提に戦います。簡単に言えばみんなが怪我をしないようにHUGEを倒しましょう、と言う感じですわ」

「なるほど! わかった。じゃあ突っ込んでいい?」

「………

 

 

 

  私の言う通りに突撃しなさい!!!」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「結梨はね、恐らくレギオンどころかペアで連携するのも壊滅的に苦手だと思うんだ」

 

 黒い指先で天野天葉(あたし)が用意した花を一輪一輪、丁寧に剪定していたメリュはそう言った。ただ唐突に呟いた訳じゃない。尋ねた相手がいたからだ。

 

「ふぅん、やっぱりそうなのね」

「ああ、この前の稽古を見学していた時に気づいた? でもあの時は連携の練習をしていた筈だけど」

「結梨の動きが窮屈そうだったから気づいたのよ。それにその後、貴女があの子とデュエルしたでしょ? あっちの方が本番だって言われたほうが納得するものだったわ」

 

 尋ねたのは亜羅椰。ここはアールヴヘイムの控室。彼女がいるのは当たり前であるから寧ろメリュの方がここでは異質だ。彼女から頼まれたことは量が多かったからね。

 

「実を言えば百由から話は聞いてるし、他の誰かに話さないなら教える事は出来るわ」

「ここには私以外にもいるけど?」

「うーん。ここいる子たちなら口は軽くなさそうだからいいわよ」

「じゃあ教えて頂戴」

 

 催促する亜羅椰。確かにここには私以外には樟美に壱、依奈 の5人。確かにうっかり漏らしそうな子たちじゃないか。

 

「結梨はみんなの頑張りで人間として証明されて一人のリリィであるけど、過去は変わらない。つまりG.E.H.E.N.A.による人造リリィであることも変わっていない。そもそもグランギニョル社の総帥は少女たちが戦場に立つことをよく思わず、その代わりとしての兵士と言う形で計画は進んだ。なら求められるのは戦闘力。生まれながらの超人の兵士。みんなも心当たりはあるでしょう?」

 

 言われると確かにそうと思える話だった。無尽蔵のマギと竜に変身する、殲滅力が尋常じゃないメリュと、複数のレアスキルを発動させ、他のリリィの動きを完全にトレースする結梨。戦いにおいては頼もしいことだけど、出自を顧みるならあまり喜ぶべきじゃないね。一番は当の二人が気にしてない事なんだけどね。

 

「百由曰く、私たちはプロトタイプ。まずは形となる雛型を求められた。G.E.H.E.N.A.が身柄を求めてきたのはそれが一番の理由なの」

「なるほど。そしてそれからは更なる発展形を生み出すために試行錯誤する予定、って事だったのかしら」

「でしょうね。何をするか、そこは()()()言わないでおきましょう。聞いていい話じゃないからね」

 

 そりゃそうだろうね。今でも強化(ブーステッド)リリィなんて子もいるしね。もしあのままメリュと結梨がそのまま連れていかれていたら……。うん、想像したくないね。

 

「ここで結梨の連携が苦手って話をまとめるわね。どんなに強くても結梨のように心が幼いあの子は他人を気にするほどの配慮が培ってないの。まさに好奇心に赴くままに動く手間のかかる子供の……。ごめん、アールヴヘイムにもそんな子がいたわね」

「あっ、うん。気を遣って貰わなくていいのよ、うん」

 

 メリュは結梨の事を言っていたんだろうけど、うちにもそんな子がいるから途中で申し訳なさそうに謝った。壱が真っ先に返事したけど、この子もこの子でちょっと申し訳なさそうだ。

 

「とにかく、そんな子に作戦とか連携はまず合わない。ただし勘違いして欲しくないのだけれど、これは結梨が我が儘なんかじゃなくて幼い頃に身に着ける協調性が育ってないの。親が手を引いて並んで歩くことを、膝を擦り剝いて痛い事への恐怖を知らない。二人、三人で砂のお城を作ったり、クラスのみんなでお遊戯会を披露した思い出もない。あの子はまだ小さな女の子なのよ」

 

 小さい女の子と言われ、なるほどと思った。私は結梨の事を無邪気な子だと思っていたけどそれは正しくない。無垢な子なんだ。文字通り生まれたばかりのまだ世界を知らない小さな女の子だったんだ。

 

「じゃあなんで貴女はあの子にハイレベルなデュエルをやってるの?」

「リリィとして戦う以上、加えて生い立ちもあるから弱いままじゃ何処かで()()()()()()()。そうなると、()()()()()()()()()()

 

 その一言を呟いたのと同時に、花を剪定する音がやけに耳に響いた。そして静寂。まるで空気が凍ったように今この場から音が消えていた。逆にメリュは、当の本人は選定した花が切り過ぎたと思ったのか他の花で長さを比べていた。

 

「……ゾクゾクするぅ」

 

 まぁ1人、こんな空気がいいって言う子がいる訳だけど。

 

「これは、ダメかな。これはちょうど良い小ささの瓶に入れて飾っておこう」

「その長さじゃコップ位の深さがないとダメじゃない?」

「そう? うーん、小さなペットボトルでいいかしら? 少し安っぽく見えるかもしれないけど」

「いいんじゃない。――ところでなんで花の剪定をしてるの? 包み紙があるから花束にするんでしょうけど、その割には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのも気になるわよ」

「大したものじゃないわ。贈り物の花束よ。――――あら、()()()()だったわね」

 

 ああ、そうなんだ。その数が、そうなんだね。メリュは選定した花を、千差万別の色と形をしたユリの花を尻尾で(いつの間に?)器用に束ね、それを用意していた包み紙で覆って一つの花束(ブーケ)を作り上げた。うん、初めてって言ってたけど十分な出来だよ。

 

「ごめん天葉。まだ片付けが残ってるけど、これはすぐにでも届けてあげたいの。ちゃんと片付けに戻ってくるから」

「いや、それは私がやっておくよ」

「え? でも」

「いいのよ。だから急がず、()()()()()()過ごしてきなさい」

「……ありがとう。なら私は今度、アールヴヘイムが私の力が必要とするなら手を貸すわ。代行にもそう伝えておく」

「それは頼もしいね」

「ええ。それじゃあ行ってくるわ」

「行ってらっしゃい」

 

 ユリの花束を大事そうに抱えてメリュは控室から退室していった。その横顔に笑顔の色で混じりけはない。でも私にはその裏地に悲しみには気づけた。

 

「さぁて、片付けをしないとね」

「あ、手伝います」

「ありがとう樟美」

 

 私が立ち上がるとついて来るように樟美が一緒に片づけを手伝ってくれる。剪定で切り落とした茎を視れば切った方向もバラバラだった。ここも個性を出そうとして健気にやっていたのね。

 

「ところでメリュは誰に送る花束を作ってたのですか? それもわざわざ結梨や一柳隊がいない間に」

「あっ、確かに。メリュちゃんなら結梨ちゃんに渡しそうですし」

「そう言えば色違いとは言えすべてがユリの花。包む数も決まっていたみたいでしたし。送る物としては少し物足りないというか、質素と言うか……」

「うーん、そうだねぇ。でもさっきまで話していたなら誰に送るのか教えてもいいのかな」

「えっ、どういうことですか?」

 

 私の答え方に壱が疑問を持つのはわかる。だってさっきの話はメリュと結梨の出生に関わる話だった。その話に続くのがメリュの作っていた花束だと私は言った。

 

「あの花束はね―――」

 

 

 

 

 

 

 

 メリュと結梨の、姉妹への贈り物なの。

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………

 

 

 

………………

 

 

………

 

 

 かつて由比ヶ浜ネストが鎮座していた場所は絵に描いたような海原が広がっている。そこに私は、海面を静かに歩いている。ここまでは流石に飛んでは来たけど跡地まで近づいたところで着陸……いえ海面だからここは着水の表現が正しいのかしら?

 

「っと」

 

 波が立ったのでマギを放出し、跳んで上手く避ける。リリィはマギを使う事でハイジャンプや水面走行が可能。でも今の私のように歩行するにはマギを沈まない程度に放出し続けなければならないし、HUGRがいないこの場ではその消費量も多い。私の心臓がマギを生成する竜の炉だからこそ出来る芸当だ。

 

「……うん、この辺りね」

 

 そうしてたどり着いた場所は海原の一角。元よりこの広い大海に目印なんて物はない。百由から聞いた話で凡その場所を割り出し、持ち前の勘でここまでたどり着いた。

 ここが由比ヶ浜ネストが鎮座していた場所で、

 

 

 

 生まれることがなかった私と結梨の姉妹たちと言える子たちが沈んだ場所。

 

 

 

「……これは私の感傷、そしてこの一回だけの手向け」

 

 G.E.H.E.N.A.が実験の為にここへ送ったのは私と結梨だけじゃない。多くの同胞が、姉妹とも言える人造リリィの素体がいた。でも彼女たちは生まれる事すらなかった。私と結梨が生まれられたのは本当に奇跡だったのでしょう。百由からG.E.H.E.N.A.の船に乗っていた素体の数を聞いた時、それをただの数と見ることが出来なかった。

 用意したユリの花は私と結梨の二人を外した分。色の数から始めに、茎の長さや残した葉っぱの数、剪定の切り方すら個別に分けた。1輪1輪が別の花と、一人一人が生まれたかもしれない姉妹(リリィ)たちにも個性があったと願って。

 

「―――ん?」

 

 花束を包んだ用紙は水溶性。沈めれば溶けて束ねたユリの花は散る。それが一人一人に届くようにと願って、沈めようとして気づく。海底に光が灯るのを。

 気になった私は花束が濡れないよう慎重にしゃがみ、空いている片手を海面に当てる。その手からマギを放出し、海流による揺れを相殺していく。海面の、海中の歪みがなくなっていくにつれて海底に沈む残骸が見えてくる。その中に輝く、小さな光。

 

「……嘘、ダインスレイフ」

 

 由比ヶ浜ネスト討伐の鍵になったダインスレイフが海の底で、そのマギクリスタルを輝かせていた。使用者どころか、持ち主すらいないはずのCHARMが。

 何故、と()()。でも()()()までなかった。理由はいらない。私がここに来たのは姉妹たちの手向けの為。ただ、『ここへ』。そう言われている気がした。

 海面から手を離し、でも海流の揺れは足からの放出で相殺し続ける。そして移動し、マギクリスタルが輝くダインスレイフの真上に立つ。

 

 

 

「魂がいつ体に宿るかなんて知らない。でも私は生まれる前から意識があった。だから、もしかしたら貴女たちもちゃんと魂があったかもしれない」

 

 

 

「だから私は貴女たちを死者として悼む。でも私がここに来るのは今回だけ。これからは未来を、結梨やみんなと前を進む。でも貴女たちの事は私が覚え続ける。私が生き続ける限り、そしてそれは永遠とも言える時間。それが貴女たちの存在の証明として受け取ってほしい」

 

 

 

「―――はじめまして、私たちの姉妹たち。そして、いってきます」

 

 

 

 ユリの花束を海面に降ろし、そして沈んでいく。海水が染み込んだ包み紙は私の予想通り溶けて形を崩し、纏まっていたユリの束は散っていく。そこまで見届けて海流を操作していた分の放出を止める。自然になっていく海中は徐々に歪んでいき、透明だった中が見えなくなる。

 

「帰ろうか。天葉はああ言ってくれたけど片付けもあるし、結梨たちを結梨たちが出迎えるまでに終わらせないとね」

 

 翼を出し、マギを放出させて飛ぶ。その去り際に振り返る。

 

 

 

 わずかに一度、マギクリスタルの輝きが見えた気がした。

 

 

 

 




 結梨ちゃん突撃キャラ定着中。ついでに学力は優等生レベルまで上昇中。楓もしっかり連携を教え込むかあえてこのスタイルで作戦を組むようにするか、本気でどっちかにしようと検討中。

 メリュにとってアールヴヘイムは結梨や一柳隊に秘密にしたい事など、身内に心配かけたくない事への相談相手。それとダインスレイフの事は誰にも言わずにおきました。

 そして次回からヘルヴォル、グラン・エプレと顔合わせる事となりますが、執筆する時間が減ってきているので更新は遅れると思います。申し訳ございません。

BOUQUET編終わり後について(今後は溜めて投稿するので間隔は長くなります。

  • ラスバレ編に突入
  • FGOクロス多めのストーリー
  • こっちは休んで停滞している他の作品をする
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