彼女(メリュ子)は百合ヶ丘のリリィ。   作:Celtmyth

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 今さらだけど「アサルトリリィにアロンダイトってCHARMは出てないかな?」と調べたところ、「アサルトリリィ 電撃新潟奪還戦」で登場していましたが、更に調べると作品によってキャラクターの使用CHARMが違うようでしたので気にしないようにしました。お陰で設定で悩むことがなくなりました。


第壱話

 

 気付けば泥の中にいた。視界は暗く、肌も冷たく滑らかな感触、匂いも少し生臭かった。でも泥の中だとわかるのに呼吸はしっかり出来る。でも何も見えないし感触は悪い。

 すぐにでもここから出たくて上に向かって泳ぐ。あまり進まないのは泥が妨害しているのか、どれだけ深い場所にいたかわからないせいか上までが遠く感じる。呼吸が出来るから息苦しさはないけどまだ浮上できない不安が募る。せめて光があれば、と思う。

 

 

 ―――なら速く進めばいい事じゃない?―――

 

 

 声が聞こえ、いや頭の中で私と違う声が響いた。思わずその場に留まって辺りを見渡すけど、泥の中で視界なんて皆無。そして気配もない。でも気のせいと斬り捨てるにはハッキリとした声だった。

 気になるが、まずはこの泥の中から出ることを優先し、再び上へ向かって泳ぎ始める。さきの言葉は気になるし、言葉通りに受け取るなら速度を上げる事が出来るみたいだけどその方法を知らない。ならただ泳ぐしかなかった。

 

 

 ―――そうか、()()()を知らないんだね―――

 

 

 また聞こえたと思うと泥が激流と言える程に動き始めた。それに巻き込まれた私は泳ぐにも四苦八苦していた力じゃ抵抗も出来ずそのまま身を任せるしかなかった。そう思って受け入れた。

 その覚悟に反して何かが私を包み、そのまま強い力で上へ運ばれていく。思わず包んでいる中に体を預ける。その感触はまるで鉄の様で――。なんて確かめている内に泥の外へ飛び出し、何故か泥へ落とされる。また沈みそうになりそうなのをなんとか体勢を立て直して顔を出す。

 

 

 泥の外には一機のドラゴンが、私を見下ろしていた。

 

 

「………………?」

 

 ドラゴンを見たと思ったら白い天井を見上げていた。後ろには柔らかい感触と少し窮屈な感触。匂いは無臭だがどこか寂しかった。耳を澄ませるとピッ、ピッ、と規則的に電子音が聞こえるからここは病院……、って。

 

「なんで私、知ってるの?」

 

 私、外の世界なんて知らないはずなのに知識で知っている事実に思わず声が出た。その声は自分の声だけど綺麗な声だと思えた。

 とは言え、ここはどこだろう? 想像した通りの病院なのだろうか? とにかく寝たままじゃ天井しか見れないから体を起こす。少し重い気がするけど動かせないほどじゃない。そうして高くなった視界から今の場所を確認し、隣で静かに眠る少女がいた。

 

「この子は」

 

 知らない顔だけど気配は覚えていた。あの時、一緒に打ち上げられて私とくっつくようにいた子だ。穏やかな顔だ、と最初に思ったのはそんな事だった。

 と、この子ばかり見ていても仕方がない。他に何かないかと見渡してみたけど特徴的な物はない。病室らしい質素な部屋だった。あるとすれば部屋は薄暗い事から夜中と言う事なのだろう。目が覚めた時間が悪かった、なら寝直そう。―――とは考えなかった。考えたのは部屋を出てみよう、だ。

 そうと決まれば心電計を外してベッドから降りる。少々ふらついたけど歩くことは出来そうだ。ペタペタと裸足で扉の方へ向かい、その目の前で止まると寝ている子に気を遣って静かに扉を開けて通る。閉める時も静かに閉めて廊下に出ると右か左、どっちに向かうか少し悩み、元々知らない場所だからどっちに行っても変わらないと思って勘に従うことにした。

 

 

 

 

「うーんやっぱりここがこうなっているからこう言うことだからこうなるから、ああでもそうするとこうなるわけだし……。うーん、そうなるとやっぱり予想通りってことだね。じゃあここはこうして『ビーッ、ビーッ』ん? あれ、心電計の送信が1つ止まってる?」

 

 

 

 

 勘に頼って進んでいくと建物の外に出ていた。外に出るときは窓から出たけど。

 外はグラウンドと森。少し建物から離れて見上げると校舎の様だったからここは学校、グラウンドは校庭なんだろう。でも学校に心電計や、ここに来るまで見かけた設備を見かけた限りただの学校とは思えなかった。

 ただそれ以上に空気が、世界が広い。夜空が広く星々が輝いているからじゃない。上手く言葉に出来ないけど、色んな場所が遠い場所にある気がする。走っても、まっすぐでも目的地は簡単には到着しない感じだった。

 ただ、それでも。

 

「これが世界……」

 

 それが素直な感想だった。自分はここにいる。この世界に生きている、と。

 

「こーんな所にいたのねぇ。見た目よりアクティブなのね、アナタ」

 

 感慨に耽っていたら後ろから声を掛けられ、無意識に振り返った。

 

 

 

 

 

 ―――うわっ、やっぱ綺麗だわこの子。

 

 

 病室からのデータ送信が途切れたから探してこうして見つけた訳だけど、『目を奪われる美しさ』ってこう言うことなのね。

 月と星の輝きに照らされてる白銀の髪。その輝きに負けない程に煌めく金の瞳。ぐろっぴよりも小柄だけどその未成熟さがかえって神秘的な儚さがある。まるで星空に佇む妖精ね。

 っと、見とれて黙ってちゃ何も進まないわよね。

 

「ごきげんよう。だけど目が覚めて動き回るのは感心しないわ。アナタ、それまで寝たきりだったんだから」

「……そうだね。目が覚めて事情を聞ける誰かを探していたけど、逆に迷惑をかけしてしまったね」

 

 え、()()()()()()()? もう一方の子は拙い喋り方で記憶がなかった訳だけど、この子は違う?

 

「そう、まあいいわ。ところで名前はなんて言うの? 私は真島百由。アナタと、アナタの隣にいたこの健康診断をさせて貰ったわ」

「名前……」

 

 ありゃ、バツが悪そうな顔ね。ああでもそんな顔も絵になるなぁ。

 

「……ヴィヴィ。ヴィヴィアンと、ヴィーヴルを2つからヴィヴィと。僕たちはそう名付けられていたよ」

「ヴィヴィ? 僕たち? それって名字、それともチーム名?」

「それはわからない。そう言っていた誰かがいた。それだけなんだ」

「………」

 

 うーん、あの子と違う反応だねぇ。恐らくあの子と同じ境遇なのは間違いないんだろうけど、ここまで個人差があるのはどういう事かしらね?

 

「じゃあヴィヴィちゃんって呼ぶわね。それでアナタ、これまでの事は覚えてる?」

「これまでの事……」

 

 質問すると月を見上げ、たと思ったら目を閉じた。

 

「……産まれる前から意識があった。それだけだね」

 

 ………どゆこと?

 

 

 

 

 

 隠す様な事でもない、と言うより記憶の混濁で妄想を話していると思われるだろうと正直に語った。ただここまで、自分でも驚くほど穏やかでやや男性寄りの口調は無意識に使っていたのは疑問に残ったままだ。

 その後で、

 

『これ以上の夜風は体に障るから中に戻りましょう』

 

 彼女、真島百由に言われた後はついていくように校内へ戻る。その道中でさっきの質問の、詳しい経緯を伝えた。気付けば意識があっても体がないような状態だった事。自分は他の仲間たちと違う場所から移された事。一度、海に沈んだこと。そして、海岸で今の姿になった事。

 

「うっわぁ……」

 

 以上の事、確かな経緯を全て伝えると百由は頭を抱えていた。

 

「百由は僕の事で心当たりがあるのかい?」

「あるちゃあるけど、ここで言うのは勘弁して」

「そうか。じゃあ今は聞かないけど、いつかは教えてもらうからね」

「……ねぇヴィヴィちゃん。その喋り方は無意識?」

「これかい? 無意識と言えば無意識だけど、僕もこう言う口調なんだなって他人事に感じてるよ。そもそも、僕は()()()()()()()()()()()()()()()()()。知らないはずの世界を知っていたり、ね」

「興味深いわね。あと見た目以上に大人なのかもね、アナタ」

「多分、一緒にいた子より上になると思うよ。何だったら姉かもしれないよ?」

「それはそれは、見てる側としては面白そうね」

 

 ここまで話してみると真島百由という少女は好奇心に溢れた子なのだろう。私のこれまでを話し終えた途端、様々な視点の私について聞いてくる。不快、とは思わない。むしろ逆で、他人の目からの私がわかるというものだ。

 そして私も隙は逃さない。

 

「なら見てる側として、今の僕はどんな風に見えてるのかな?」

「直球で聞きに来たわねぇ。そうね、内面はまだ言えないけど真っ先に外見の美しさはビックリだわ。こんな子が存在するのかぁ……、って安心したわ」

「百由もカワイイ女の子じゃないか」

「あははっ。普通だったらお世辞に聞こえちゃうけど、ヴィヴィちゃんにそう言われると照れちゃうわね」

 

 そうなんだ。そう言えばまだ自分の容姿を確認してなかったな。白銀の髪だけでも十分に珍しいと思って、いた、けど……。

 

「ふわぁ……」

「あらオネム? やっぱり体調はまだ万全じゃなかったみたいね」

「気付いてたのかい?」

「寝続けていたら体力も落ちてるでしょう? でも起きて外まで出歩けたならすぐに日常生活できるようになるわ。眠たいなら運んであげるからここは甘えなさい」

 

 甘える。正直恥ずかしいけど、糸が切れたように足取りが覚束なくなり、瞼もスゴく重い。自分の足で戻るのは難しそうだ。

 

「じゃあそうするよ。後はよろしく」

「ええ、おやすみなさい」

 

 委ねてしまえば抵抗は難しく、百由に体を預けて意識を落とした。

 

 

 

 

 

 私に体を預けてくれた小さな子は、その小ささ以上に軽かった。痩せすぎてる訳じゃないから、恐らく根本的に体組織が違うって事なんでしょうね。なら間違いなく、この子は遺伝子から弄られているわね。生物科からの分析、急がせた方がいいわね。

 

「ただ……」

 

 疑問は残る。梨璃ちゃんから聞いた繭みたいな物。それにCHARMを向けてマギが流れていった後、この子達が出現した。これが休眠状態、もしくは蛹の様な状態だったなら通常、意識はないはず。でもこの子は意識があり、外界を知覚していた。しかもある程度の知識を持って。いくら()()()()でもそこまでの技術があるとは思えないから偶然……、いや偶然の産物なんて言葉じゃ片づけられない。そう、まるで……。

 

「……今は止めましょうこんなオカルトみたいな考え方。それ以上にこの子はきっと重い宿命を背負っているでしょうし」

 

 これでまた徹夜の日々かぁ。いったい何が出てくるのかしらね。

 

 

 

 




・ヴィヴィ(仮)ちゃん

 夢で自身のモデルと出会う。目覚めての行動力や口調は自身の姿に引っ張られている影響。ヴィヴィという名は個人としてではなく、名字やグループ名と認識中。

・百由さま

 梨璃ちゃんを差し置いてのファーストコンタクト。個人的にダ・ヴィンチちゃんポジな人。ヴィヴィの美しさに見とれ、自意識の確立さに驚き、経緯を聞いて頭が痛くなる。しかし見捨てることはしない。ちょっとその体(学者・研究者視点)に興味がある。

BOUQUET編終わり後について(今後は溜めて投稿するので間隔は長くなります。

  • ラスバレ編に突入
  • FGOクロス多めのストーリー
  • こっちは休んで停滞している他の作品をする
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