彼女(メリュ子)は百合ヶ丘のリリィ。   作:Celtmyth

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 二番煎じが嫌で投稿したから次話投稿の速度は遅め。


第弐話

 今回は夢に出てきたドラゴンに会う事なく、しっかり睡眠を取って目覚めた。そして目覚ましは騒がしかった。

 

「おはよう! 百由様から昨晩目覚めたって聞いてね、名前はヴィヴィちゃんって言うんだよね。それで覚えている事は? あっ、おなか空いてない? 何か持ってこようか?」

 

 不快に思わない明るさ。この女の子には覚えがある。体が出来た時、一番傍にいた女の子だ。

 ただ元気なのはいいけど、今の私は少々寝ぼけていた。ほぼ無意識に、この女の子の手を取った。

 

「え?」

「おはよう、可愛らしいお嬢さん。そして改めてお礼を言わせてくれ。―――僕たちを見付けてありがとう」

「はっ、わ……っ!?」

 

 あとで聞いた話、挨拶とお礼をしただけなのに腰砕けた状態になったらしい。

 

 

 

 

 

「いや~、あははっ。様子を見に来たら梨璃ちゃんが顔を真っ赤にして座り込んでいるなんて、朝から笑ったわぁ」

「すみません……」

「百由。僕が悪いんだからあまり彼女をからかわないでくれよ」

「はいはい。それで、制服の着心地はどうかしら?」

「問題ないよ」

 

 受け取った制服に袖を通してみたらサイズは問題ない。と言うか私のサイズがあったことのほうが驚きだよ。

 

「それで、僕は建物を歩き回っていいのかい?」

「ああ、それはまだダメ。しっかり健康診断を受けてその他諸々の許可を貰ってから。それまでこの部屋で大人しくして欲しいの。昨晩みたいに出歩かないようにね」

「え?」

「わかったよ。その代わり、時間を潰せるような物が欲しいかな。今は特に本が読みたいね。僕が生きているこの世界の知識が欲しいから。―――でもまずは、改めてそこの子と挨拶をさせてほしい」

 

 途中で梨璃の声が挟まれたが気にせず百由と会話を続けたが私は梨璃の、その後ろにあるベッドにいる人物に目を向け、他の2人もそれに引っ張られる。

 

「お?」

 

 私たちの視線を受けた少女―――私と一緒に保護された彼女は向けられた視線に首を傾げるだけだった。

 

「彼女の名前は?」

「残念だけど貴方と違って何も覚えてないの? でも確か梨璃ちゃん、恐らく仮だけど名前を呼んでたわよね?」

「えっ、と。それは……」

「でも名前はあるんだね。失礼」

 

 一言伝えて梨璃の横を通り過ぎてベッドの少女の傍へ歩み寄る。

 

「初めまして、僕はヴィヴィ。キミの名前を教えて貰っていいかな?」

「なまえ?」

「そこのお嬢さんになんて呼ばれてるか教えて欲しいんだ」

「お嬢さん……っ」

(この流れるような口説き文句は天然なのかしら?)

 

 優しく言葉を掛けていると後ろから梨璃の声が聞こえたが今は目の前の少女に集中する。あとなんか百由の視線が意味深に感じた。

 

「ゆり」

「ゆりか。ユリの花の様な白さがキミに似合う名前だね」

「そう?」

「ああ、もちろんさ」

((自然に会話してる……))

 

 なんか後ろの2人が同調した、そんな気がした。

 

 

 

 

 

「なんだか今朝から驚いてばっかりだったなぁ」

 

 もう1人の子、ヴィヴィちゃんも目が覚めたって百由様から聞いて早くから行ってみたら王子様みたいな子だったよ……。

 っと、思い出して照れてる場合じゃない。ヴィヴィちゃんの本を探さないと。ゆりちゃんに読ませてる本とは違ってこの世界についての本だけど、そこは百由様オススメのを教えて貰ったからそれを探すだけだけど……。

 

「見付からないなぁ~」

 

 ヴィヴィちゃんが読みたいと言った本がなかなか見付からなかった。タイトルじゃなくて()()()()()()()()()だったからすぐ見付かると思ったけど、意外に見付からない……。ジャンルは百由様のアドバイスで『文学』らしいけど、思ってた以上に細かい……。

 

「う~ん、どれがいいんだろうなぁ」

「何かお困りですね梨璃さんっ」

「はわっ―――」

 

 本棚と睨めっこしてたら横から声を掛けられて思わず驚く、所でここが図書館なのを思い出して両手で口を塞ぐ。そしたら持っていた本が落ちてしまった。

 

「あわわわっ」

「ああ、失礼っ。いつものように声を掛けたのですが、そこまで驚かれるとは思ってもみませんでした」

「楓さん」

 

 そこにいたのは楓さんで、落とした本も一緒に拾ってくれた。

 

「はい、どうぞ。本当に申し訳ございません。そろそろ梨璃ロスが顕著になり始めましたので思わず声を掛けてしまいましたわ」

「梨璃ロス……?」

「なんでもありませんわ。それにしても図書館にいらっしゃるのはともかく、このコーナーにいるのは珍しいですわよね? 何をお探しですの?」

「はい、伝承や神話関係の本を探しているんです」

「?」

 

 ああ、やっぱりこれだけじゃわからないよね。

 

「実はもう1人の子が目を覚まして、その子は自分の名前を知ってたんですけどその由来を改めて知りたいからって」

「そうでしたの。もう1人と言うとちびっ子よりちびっ子の事ですわね。ちなみにお名前は何でしたの?」

「ヴィヴィちゃんです。ただ本人は苗字やグループ名の感じだって。あと由来はヴィヴィアンとヴィーヴルだって言ってました」

「えっ、その名前……」

 

 あれ? 楓さんの反応が……。もしかして。

 

「楓さん。ヴィヴィちゃんの名前の由来に心当たりがあるんですか?」

「ええ、どちらもフランスに伝わるの幻想生物です。ヴィヴィアンはかの有名な『アーサー王伝説』に登場する湖の精霊。ヴィーヴルは半人半竜の乙女です。それでしたら……」

 

 そう言って楓さんが本棚を見上げると迷いのない足取りで棚から3冊の本を抜いて私の前に差し出した。

 

「これらがオススメですわ」

「えっ、ありがとう……じゃなくてさっき迷いなく取ってきましたけど」

「ええ。一応、百合ヶ丘の論文は一通り目を通してまして。その中に生物科の生徒が出したヒュージの形態についての論文の参考文献にこの手の資料が記載されてましたの。百合ヶ丘の生徒の論文であればその参考文献はこの図書館にある可能性が高いですからね」

「そんな所まで覚えてるんですね……」

 

 楓さん記憶力いいなぁ。それから楓さんが薦めてくれた本のタイトルには『幻想生物大全』『アーサー王物語(日本語訳版)』『ヨーロッパの神話・民話』って書いてある。

 

「2冊はそのまま図鑑の様な物ですが、残り1冊はヴィヴィアンについて知るならその本が一番です。とは言えヴィヴィアンはヨーロッパでもよく聞く女性の名前です。幻想生物に限定したのはもう一つのヴィーヴルなんて名前はそれ以外に心当たりがありませんから」

「ううん、十分だよ。ありがとう楓さん。今度お礼させて下さいね」

「っ! でしたら今度、二人っきりの時間を……って梨璃さんっ」

 

 楓さんにお礼と後日のお返しを伝えるとすぐヴィヴィちゃんに持って行く気持ちが逸り、その場を後にした。なんだか楓さんの声が聞こえたけど、お返しを渡すときに聞けばいいか。

 

 

 

 

 

「ヴィヴィちゃんっ、おまた――」

「(しーっ)」

 

 部屋に入って声を出そうとした梨璃を目が合った瞬間に指を口元に当てた。穏やかな寝息を立てるこの子を起こすのは忍びないからね。

 

「ゆりちゃん、寝ちゃったんだ」

「うん。ただ話してたんだけどこの子には楽しかったみたいでね。こうして疲れて眠っちゃった訳さ」

「何を話したの?」

「大した事じゃないさ。ただ外の事とか、美味しい不味い食べ物の話とか。まぁ僕も話す度に『何で僕はこんな事を知ってるんだ?』って疑問続きだったよ」

「そっか。ヴィヴィちゃんも記憶喪失なのかな?」

「それはわからないよ。でも感覚は本の中の知識を持って、外の世界を見たことがない。そんな感じだね」

「わかりやすいね。―――それとヴィヴィちゃん、お願いされた本を見付けて持ってきたよ」

 

 そう言っていくつかの荷物を置いた梨璃は私に3冊の本を渡してくれた。厚みがあるのは『幻想生物大全』『ヨーロッパの神話・民話』。少し飾った表紙は『アーサー王物語』。最初の2冊はらしいと思ったが最後の1冊はどこか懐かしいと感じた。

 

「…ねぇ梨璃。この本はどんな本なの?」

「それ? ヴィヴィちゃんが言ってた名前の由来の人が登場する本だって」

「そう。ありがとう、早速読ませて貰うよ」

「今から? その体勢で大丈夫?」

 

 梨璃が言ってるのは私がベッドに腰を掛けた状態で、眠ったゆりが腰に抱き付いてる事だろう。でも特に辛いとか疲れるとか、そんな問題はないんだけどね。

 

「平気さ。それより梨璃こそ大丈夫なのかい? よくこっちに来てるけど学業も、リリィとしても色々することがあるんじゃないか?」

「あはは……」

 

 誤魔化すように笑うって事は図星だったみたいだね。でもこの子は優しい子だって短い付き合いでも感じ取れる。だから私たちのことを気に掛けてくれる。こうして会いに来てくれるわけだ。

 

「ゆりが起きるまで予習なり復習をすればいいよ。今後の予定の見直しでもいいけどね」

「ヴィヴィちゃん、小さいのに気遣いが上手だよね」

「ありがとう。でもこれは僕が可憐な女の子は優しくしてあげたいだけだから気にしないで」

「……ヴィヴィちゃん、女の子だよね?」

「? もちろんだよ」

 

 何かおかしいことでも言ったのかな?

 

 

 

 

 

 私は改めて行ったヴィヴィちゃんの診断結果を眺めていた。

 

「スキラー値が上昇してる……」

 

 眠っている間に検査はしたけどその時はゆりちゃんと同じ50。リリィとしてギリギリの値だ。リリィの成長と共に上昇することはあるけど、眠っていたヴィヴィちゃんはそんな事は出来ない。目が覚めて、いや目が覚めた事で上昇している。そして叩き出した数値は()()で72。高レベルの数値だ。そして、これだけではすまない結果もある。

 

「検査ミスかとも思って何度か再検査したら、スキラー値の変動が確認された訳だけど」

 

 手に取っている診断結果以外にも、何枚か同じ物が机に広がっている。そしてそれらのスキラー値は全て違い、最低値はリリィとしての適正ギリギリの50。つまり50~72の変動を示して、それはあり得ない結果を示していた。

 

「上がったり下がったりするなんてホントどうかしてる。それが気分で変動してるなんて」

 

 一応、問診で状態を確認していた。最初は緊張で強張っていたけど何度も再検査している内に慣れやら飽きが来て気が楽になってきたと答えてくれた。まるでヴィヴィちゃんの心とスキラー値――マギが呼応しているかのように。

 

「未発見のレアスキルか、それともヴィヴィちゃん自身の特異性か」

 

 前者はともかく、後者は考えたくもない。ただ、彼女の資料なんかも生物科に渡して分析を急がせている。幸いヴィヴィちゃんは動ける状態だから確認できる事が増えている。それでこっちも調べましょう。

 

「……先手を打たれる前になんとかしないとねぇ」

 

 理事長代行から2人の保護を国から提案されたけど、2人がリリィと言う事で学園側が預かる流れになった。ただしそれも一時しのぎにしかならないだろう。それまでに確実な情報と裏付けが必要だ。

 

「間に合って欲しい所だけどねぇ……」

 

 それこそ神のみぞ知る、ってことねぇ。

 

 

 




 真名と保有スキルのフラグが立ちました。
 あと1、2話でアニメ原作7話部分を終わらせたいです。

BOUQUET編終わり後について(今後は溜めて投稿するので間隔は長くなります。

  • ラスバレ編に突入
  • FGOクロス多めのストーリー
  • こっちは休んで停滞している他の作品をする
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