勢いで始めたから勢いがない! でも別の作品を引っ張って作業が進んだ。
――湖の乙女。
『アーサー王物語』に登場する、水の妖精とも高貴な魔法使いとされる女性。その名は多く基本的な『ヴィヴィアン』の他に『エレイン』『ニニアン』『ニムエ』等、様々な名前が当てられる。その為、物語では別名であっても同一人物と見なされる事が多い、実像が定まらないキャラクタ-。
アーサー王に聖剣エクスカリバーを授けし精霊。
湖の騎士ランスロットの養母。
相談役にして大魔法使いマーリンの弟子。
大まかなに役割を当てるならこの3つ。しかしアーサー王が治めるブリテン王国滅亡の黒幕という逸話もあり、大魔女モルガンと重なる場面もある。
正邪両面、善し悪しを内包した精霊が私の結論。
――ヴィーヴル
フランスに伝わるドラゴン。フランス版のワイヴァーンとも。女性の上半身に蛇の下半身、蝙蝠の翼と宝石の瞳を持つとされる。雌しかおらず、瞳の灯りを頼りに地底に住んでいると言う。同じフランスのコンテ地方ではジュラ山脈の無人の城を住処とし、彼女らの額にあるダイヤモンドを盗めたら世界一の権力者になれるという、宝を守護するドラゴン伝承の類型もある。
しかし後世では蝙蝠の翼と鷲の足と蛇の尾を持ち、額にガーネットをはめ込んだ美女の精霊とされている。この姿は同じフランスに伝わる
「ねー、びびー」
「ん?」
梨璃から貰った本から名前の由来になったヴィヴィアンとヴィーヴルの事を整理していたらゆりが退屈そうに声を掛けてきた。ちなみに梨璃は学情の方へ行っているため、今は二人っきりだ。
「どうしたんだい? 何か遊びたいのかい?」
「んー、びび」
「うん?」
「りりとびび。似てる」
「そうだね」
正確にはビビじゃなくてヴィヴィなんだけど、訂正して理解して貰うのは難しそうだからあえて同意しておいた。
「それとね」
「それと?」
「びび、りりやもゆと違ってどこか遠くにいる」
思わず笑顔が固まった。この子は私が他人と距離を取っている事を本能的に察していた。
確かにここの人達には良くして貰っていたけど、それでも距離は取っていた。自分が何なのか、
「……ゆりはもっと近くにいて欲しいかい?」
「うん」
「そう……」
真っ直ぐで無垢な眼差しだ。まるで世界を知らない赤ん坊のよう。でもこの例えは的を得ているのかもしれない。アレが何かは知らないけど、真っ当ではないのは確かだから。
「だめ?」
「……ごめん。それには答えられない。恐らくゆりと僕は似ていてどこかが違う。その違いがゆりや梨璃たちに迷惑を掛けてしまうかもしれないから」
ゆりの真っ直ぐな眼差しを拒絶する事が出来ず、今まで胸の内にあった本音を口にしてしまった。失礼だが幼いゆりがこの意図を理解してくれるかわからないが、ここでは誤魔化す事が出来なかった。
正直、ゆり相手に言うのは心苦しかった。例え違うとしても最も近いのは彼女だけだ。それを拒絶するのは特に突き刺さる。
「じゃあ、
だからその提案は度肝を抜かれた。
「え?」
「ゆりが言ってた。百合ヶ丘じゃ大事な人と
「シュッツエンゲルだね」
「?」
とりあえず噛んでいるから指摘したけど首を傾げて、どうも言い間違えてる事に自覚はないようだね。私の名前と一緒か。
「しょうがないか。それで、どうして僕とシュッツエンゲルをしようと思ったんだい?」
「うん、そしたらびびは近くにいてくれるでしょ」
「でも僕が迷惑を掛ける事には変わらないよ。寧ろ目に見える繋がりがより強く結びつけて、いざという時に巻き込んでしまう。だから―――」
「それでも、いい」
「え?」
「一緒に色んな事を乗り越える。それがしゅっちゅえんげるだから、しよう」
きっと自分より世界を知らないだろう少女に、そう言われた。力はない。知恵もない。ただ無垢な心だけで、私を引っ張っていこうとしている。もしかしたら彼女も私が他の誰よりも近い存在だと思ってくれいるのかもしれない。
ここまで言われて、いやこんな事を言われると拒絶する言葉が浮かばない。なら、覚悟を決めよう。
「……ゆりは後悔しない?」
「こうかい? でもびびと一緒なら嬉しい」
「そう。ならシュッツエンゲル、姉妹になりましょう」
「やった! ……あれ? びび、しゃべり方変わった?」
「姉妹になるなら硬い言葉はよくないでしょう? そもそもこっちが素だったからね」
「ふぅん?」
よくわかってないようだけどゆりにとってはシュッツエンゲルをした方が重要だろうし、
あえて説明はしなくていいか。
でも私が姉みたいとは思ってたけど、口約束でも姉妹になるとはね。身内、家族……。そう言えばヴィーヴルは――。
「ゆり、ヴィヴィは梨璃と似ているって言ったよね」
「うん。それがどうしたの?」
「別の名前で呼んで欲しいって言っても大丈夫?」
「いいよ。なんて名前?」
「―――■■■■■■」
………………………
………………
………
私とゆりが保護されてから一週間。ゆりも動けるようになってきた事に私は百由に連れられて彼女の研究室に来ていた。
「今度はこんな所で検査かい?」
「いいえ。今回は試して貰いたい事があるの」
「それは、そこに用意されたCHARMと関係が?」
「ご明察」
台の上に置かれていたら誰だってそう考えると思うんだけどな、とは気を使って言わないでおこう。この形状は、確か『グングニル』。梨璃も使ってるらしいCHARMだ。
「僕にもリリィとして戦って欲しいのかい?」
「いいえ、それは貴女の意志次第だから私から強制しないわ。やって欲しいのはCHARMにマギを込める事よ」
「? つまりCHARMの契約をして欲しいって事でいいのかな」
「それは結果になる話ね。詳細を言えば
「???」
「とりあえずやってみてよ。指輪も一緒に置いてるから、ね?」
ここまで話して、百由は
とりあえず言われた通りやってみよう。置かれたCHARMを前にして、一緒に置かれた指輪を填める。CHARMにマギを込める方法はこの前本で読んだし、その方法を頭に浮かべながら実行する。ついでに集中する為に瞼を落とす。
「………」
填めた指輪を通して、いや指輪を通り道にして胸の奥からCHARMへ何かが流れていく感覚。これがマギ、だと思う。ただ何故だろう? まるで炎の様な熱さがある。
とにかくこのままマギを流し続けて―――。
「スト―――――ップ!!」
「え?」
より集中しかけた所で百由の声が、しかもかなり切羽詰まった様な叫びで途切れた。
―――ピキッ。
その後に、そんな音が聞こえた。何かが割れるような嫌な音で、しかも私の目の前で鳴った。つまり。
「……壊れた?」
外装は問題ないが、コアに当たるクリスタルにヒビが大きく出来ていた。もちろん最初に見たときはこんな物はなかった。恐る恐ると、百由と顔を合わせた。
「……僕のせいかい?」
「うん」
「……これってマギを注ぐ上限は?」
「あるけど、そう簡単にはいかないわねぇ」
「……なるほど。でもまず、壊してごめん」
「まぁ気にしないで」
いつもの高テンションから若干大人しめな返事だから逆に心配なんだけど。そんな考えを悟られたのか、彼女が咳払いをして場の空気を変えた。
「ヴィヴィちゃん。ちなみにCHARMに触れてからどれだけ時間が経ったかわかる?」
「そう長くない筈だけど」
「10分近くは長くないと言える?」
「え?」
人によっては長いかも知れない時間だけど、私の体感から言えばそんなに集中していたのか、と答える。まだ1分ぐらいしか集中していないと思っていたからだ。
「うん、結構な集中力ね。とは言え、10分間の集中力だけでコアを破損させるだけのマギが注がれる訳じゃない」
「つまり?」
「ヴィヴィちゃんのマギ、もしくはレアスキルが規格外の可能性がある。レアスキルは未確認のものかもしれない」
「なかなか面白い話だね。ちなみに百由はどんな効果だって思う?」
「そうねぇ……。マギを一気に増大する『フェイズトランセンデンス』にしては効果が大きく枯渇の状態にはなってないけど。それに似た何かだね」
「ふむ……」
リリィにはレアスキルがあるのは知っているけど、どんな物があるかはまだ知らないから百由の説明以上の想像は出来ない。枯渇する感覚はなかったし、寧ろ胸の奥が燃えるような、炎があるような感覚だった。
「まぁこれじゃあ既存のCHARMは使えないでしょうね。とは言え一から作るとしても検査と実験を繰り返さないとダメね」
「それは残念、と言えばいいのかい?」
「そうねぇ。それはヴィヴィちゃん次第ね。その素質でヒュージと戦うのも、逆に戦わないのも、ね」
……今まで読んだり聞いたりした事からリリィとは戦う使命を背負っていると思ったけど、自分の意志は尊重してくれるみたいだ。
それはそうと。
「わかったよ、百由。あと今さらだけど実は名前を決めたんだ」
「おや、やっと決めたんだね。なんて名前にしたんだい?」
「―――■■■■■■」
………………………
………………
………
『聞いて2人とも! 学園への編入が決まって、学内を自由に歩けるようになったよ!』
そう梨璃から言われ、ゆりも百合ヶ丘の制服を着て病室から出られるようになった。私からすれば百由に検査の為と連れられた以外は本を読んで知識を蓄えていたので外出を我慢していたとは思っていなかった。
とは言え、梨璃にとっては待ちに待った事のようで、これから自分のレギオン『一柳隊』のメンバーを改めて紹介したいと言ってきた。その際、梨璃がリーダーかを尋ねたらその通りだったが、半ばなし崩しの部分があったらしい。
そんな話があって、そして顔合わせの時が来たわけだが、
「ご無沙汰してましたお姉様~!」
まず梨璃が当たり障りのない内容にすると言っていたのだけど、黒髪の少女と対面したすぐにそんな事を言って駆け寄った。
「彼女が梨璃のシュッツエンゲルみたいね」
「梨璃のお姉さん?」
「そうよ」
私たちはその様子を、カフェテラスの影から覗いていた。身長は私が小さいからゆりの顔は私の上にある。と言うかちょっと私の頭に顎を乗せている。
「ずっと私たちについていてくれたから、久々に会えて感極まったのよ。まぁ、私たちの紹介は抜けてるかもだけど……ってあれ?」
話していると頭の重さがなくなっていた。振り返ればゆりの姿はなく、もう一度梨璃たちの方を見ればいつの間にか梨璃のシュッツエンゲルの隣に座っていた。
「すばしっこいね」
そう言えば梨璃もどこかすばしっこいなと思ったが、ゆりが行ってしまったなら私も行かないわけにはいかないか。
「――先に行くのはちょっとヒドいじゃないか」
「ん?」
「あら」
「あ」
意識はしてなかったけど足音を殺し、正面に近い所で声を掛けた。それで椅子に並んで座る3人……いつのまにか増えて10人が私に気付いてこっちを向く。
「貴女も一緒だったのね」
「編入が決まったから梨璃がレギオンメンバーに紹介すると言って一緒に。でも貴女を見てその事は頭から飛んでしまったようだけどね」
「あっ、あはははは……」
「それだけ夢結に会いたかったんだな」
「ふむ、改めて見るとちびっ子どもよりちびっ子ですわね」
「でも綺麗な子……」
図星だったようで梨璃は誤魔化すように笑う。とは言え彼女と付き合い、その性格は理解したつもりだ。愚直なほどに素直で真っ直ぐ、迷惑を掛けながらも誰かの為に動く、そんな少女だ。加えて目の前の何人かが梨璃と私に言葉を口にする。なかなか愉快なメンバーなのかもしれない。
「こっちこっち」
「隣、座れないよ」
「じゃあここ」
ゆりが促している場所は自分の膝の上だった。だから素直にそこへ腰を下ろした。
(((躊躇うことなく座った……!)))
「うん、やっぱりちょうどいい」
「そうかい?」
視線を感じるけど気にせずゆりに身を任せる。頭を撫でてくるが不快じゃないからそのままだ。
「んで。この子たちの名前はわかったんですの?」
「ああ。それがまだ記憶が戻ってなくて」
「それじゃあ、今までなんて呼んでたんだ?」
「ふえっ!?」
そこまで驚くことなのかな? 僕はともかく、ゆりって名前はそう変な物じゃないと思うけど。
「言ってご覧なさい、梨璃」
催促してきたのは隣の、ゆゆと呼ばれた梨璃の
ん? ゆゆとりり。ゆゆ、りり……。と言う事は。
「ゆり」
「っぶ!?」
「はぁ!?」
ああ、やっぱりそうか。ゆゆと梨璃の名前を合わせた訳か。
「わたし、ゆり。りりが言ってた」
「そっ、それは。本名を思い出すまでの、世を忍ぶ仮の名で……」
「会う度にゆりちゃん、ゆりちゃん呼んでたのに?」
「それぇ、わたしが付けた夢結様と梨璃さんのカップルネームじゃないですか!」
「ああ、それは……」
カップルネームって、恋人同士かな? ただ周りの反応は好感触の様だった。
「ちなみに貴女は? まさかとは思うけど……」
「ああ、安心して。僕も記憶はないけどなんて呼ばれてかは覚えてたからね。最も名前、ファーストネームの気がしなかったから改めて名前を決めて、覚えていた名前をラストネームにする事にしたよ」
「そう。確かに日本人って顔立ちじゃないわね」
「教えていただけますか? たった今、一柳結梨ちゃんでレギオンに登録したので」
「僕も一緒でいいのかい?」
冗談のつもりで返すと僕を抱きしめるゆりの腕の力が増した。この子にとっては意地悪だったかな?
さて、これで3度目になるかな。でも今回は由来から言ってみようか。
「じゃあ改めて。―――覚えていたのはヴィヴィ。湖の乙女『ヴィヴィアン』と半竜の美女『ヴィーヴル』が由来、らしい。その上でファーストネームは水の精霊と竜乙女、この2つを備えた空想上の存在から貰うことにした」
ここまで説明して一呼吸。
「メリュジーヌ・ヴィヴィ。少し長いからメリューやメリュ子とでも呼んでくれ」
ただ、不思議なことにヴィヴィよりこのメリュジーヌって名前の方がしっくりくるんだよね。
ここで名前が登場。ちょっと強引だったかも。
ちなみにメリュ子×結梨だとやっぱりメリュ子が姉。
BOUQUET編終わり後について(今後は溜めて投稿するので間隔は長くなります。
-
ラスバレ編に突入
-
FGOクロス多めのストーリー
-
こっちは休んで停滞している他の作品をする