彼女(メリュ子)は百合ヶ丘のリリィ。   作:Celtmyth

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 原作からどこの描写を抜粋するか悩み、落ち込み、進めて、完成。
 そんな執筆活動の日々。


第伍話

 みんなが見守る中、結梨がCHARMにマギを送る。私にとっては何度も見た光景で、そしていつもマギクリスタルを壊すことで終わる。でも今回は私じゃなくて結梨で、マギクリスタルもヒビすら出来ることなく輝いた。

 

「CHARMってこうもなるんだね」

「お主のマギが規格外なだけじゃ。まぁもしかしたら、との不安はあったがの」

「ん?」

「いや、結梨が気にする事ではないぞ」

 

 私の呟きをミリアムに拾われたけど結梨が見つめてくるとすぐ誤魔化していた。まぁ私は何本もCHARMを壊しているから何も言えないのだけれども。

 

「ほんっ。北欧の田舎メーカーじゃなくてグランギニョルでしたら社割でワンランク上のが手に入りますのに」

「このグングニルは中古じゃがわし等工廠科が丹精込めてすべての部品を一から組み直しておる。新品よか扱いやすいぞい」

「あらそうっ」

 

 一人離れていた楓の皮肉、と言うより負け惜しみじみた台詞のように聞こえるのは、気のせいじゃないでしょうね。

 

「ねぇ梨璃、リリィはなんで戦うの?」

 

 ふと、結梨が純粋にその疑問をぶつけてきた。

 私は歴史も学んだからHUGEが出現した後の世界と悲劇は俯瞰、広い視点で理解している。そのHUGEと対抗できるのは目の前にあるグングニルを含む決戦兵器CHARMを扱えるとはリリィだけだから。

 

「えっ、えっと……。それは、HUGEからみんなを守るため……」

「……誰だって怯えて暮らしたくない。それだけよ」

 

 梨璃は答えてくれたけどどこか迷いがちで、そこへ夢結が小さく弱々しさ感じさせる声で答えた。すると結梨は唐突に夢結の顔に自分の顔を近づけた。

 

「くんくん……。夢結、悲しそう」

「そう? 表情が読めないとはよく言われるけど」

「なんだ、匂いでわかるのか?」

 

 私もそれは気になる。なんて思っていると結梨は他の皆の匂いを一人一人嗅いで、私と梨璃以外を回るとソファーに戻った。私、()臭いのかな?

 

「みんなも悲しい匂いがする」

「誰だって何かを背負って戦っているわ。そういうものかもね」

 

 でもそれは、結梨の言葉が正しいのならその背負ったものは『悲しみ』を含む何かだ。個人の事情はさすがに聞けないわね。すると結梨は隣の梨璃の匂いを嗅いでいた。

 

「梨璃はあんまり匂わないの」

「お気楽なのかな、私。あはは……」

「いいんですのよ、梨璃さんはいつまでもそのままでぇ。純真無垢さが梨璃さんの取柄ですものぉ」

 

 梨璃はみんなと違う事を言われて戸惑っていたが楓の割り込みでその空気が霧散した。でもそこまで食い気味はちょっと引くわね。

 私と同じように何人かが呆れた目で楓を見ていると再び夢結の匂いを嗅いだ結梨が彼女を動揺させていた。それにしても口寂しくなってきたわね。ちょっと一口……。

 

 

 

「わかった。結梨もヒュージと戦うよ」

 

 

 

「んくっ」

 

 そんなことをいきなり宣言されたから危うくお茶を噴き出してカップを落とす所だった。

 

「わわっ、大丈夫ですか!?」

「大丈夫……。うん、大丈夫」

「明らかに動揺してるぞ」

 

 二水と鶴紗に心配されて取り繕っていたけどさすがに誤魔化しきれなかった。ん、ちょっと気道に入っちゃったかしら。

 

「無理はしなくていいんだよ。まだ記憶が戻っていないんだし」

「うん、ちっともわからない。だからたくさん知りたいんだ」

 

 気持ちを整え直している間に梨璃と結梨がそんな感じにやり取りして、同時に私の気持ちは焦りを感じていた。

 結梨はCHARMを手に入れて戦う意志を強めた。でも私は? マギの量は膨大らしいけど、そのせいで大半のCHARMを壊してしまう。一応、そんな私でも『ちゃんと実戦で使えるCHARMを作ってあげるわ』と、百由は言ってくれたけどいつになるかわからない。その間にもし、万が一があったとしたら―――。

 

「……じれったいなぁ」

「何か言いました、メリュさん?」

「いや、空言だよ。……ところで騒がしいようだけど?」

「えっ、気づいてなかったんですか……。それならあちらを見ていただければ」

「あちら?」

 

 二水が見つめる先。そこにあったのは、いやいたのは制服姿ではなく可愛らしい服と猫耳を纏った雨嘉の姿だった。なんでそんな恰好を? と疑問は生まれたけどマジマジとその恰好を吟味する。

 

「……雨嘉」

「な、なに?」

「普段から物静かで綺麗な子だと思っていたけど、今は可愛くて素敵だよ。まるで青空の草原で花の園を見つけた感動のようだ」

「はぅ……っ!」

 

 素直な印象を詩的に例えて告げたら顔を真っ赤にして、その顔を隠してしゃがんでしまった。そんな風になるように言ったつもりはないんだけど。

 

「貴女は一つ褒めるのに口説かないと気が済まないのですか、チビッ子3号」

「??」

「この子自覚ないって顔してるよ」

「メリュ子さん。少しお話ししませんか?」

「神琳、なんか怖いよ……」

 

 呆れられたり、なんか敵意向けられたりしたけど特に気にはならなかった。

 

 

 

………………………………

 

 

………………………

 

 

………

 

 

 

 今年も戦技競技会の日を迎えられた訳だが、

 

「さぁて、本日のお客人は?」

「十五名が敷地内に侵入しています。また、ドローンが三機ほど」

「素性は?」

「偽造していますが、大半は国内外の政府系組織です。中にはCHARMメーカー、反政府組織や自然保護団体と思われるものも。まだ分析中ですが興味の対象はメリュジーヌ・ヴィヴィと一柳結梨で間違いないようです」

 

 予想通り、という事か。ただ二人を対象にしている割には人数とドローンの数が少ないようだが。

 

「こちらは何を探ります?」

「情報のルートを徹底的に。通信の量とその行き先じゃ」

「挑発行為があった場合は?」

「出歯亀が分を超えた場合の対処は諸君らに頼む」

「はい、メリュジーヌさんと結梨さんには指一本触れさせません」

 

 対応はこの位じゃろうな。しかし()()()()()()()の件もある。確証が得られるまで手が打てない状態の今、先手を打たれる訳にはいかないが……。

 

「――少しいいかな?」

「ん?」

 

 背後からの声に振り替えると、そこには片割れのメリュジーヌ君がいた。

 

 

 

 

 この人と対面するのは初めてね。それにしても、うーん。百由や夢結、梅の時から感じてるけど私は目上に対する敬意が湧かないな。それもどこか自分が別の存在って本能がそう言ってる気がするものだ。

 

「えっと、初めまして理事長代行。こうしてお会いできて光栄です」

「とって付けたような挨拶だね。敬語、苦手じゃないのかい?」

「ええ。まぁ、そうです」

「崩しても構わんよ。話したいことがあって来たのだろう? なら話しやすいほうが良かろう」

「そう言ってくれるなら言葉に甘えさせて貰うよ」

 

 周りにいる三人の視線は痛いけど、本人が許可を出してるんだから構わないよね。もしかしたら今回が最後かもしれないから。彼の隣に並ぶと、まず気になっていた事から聞いてみた。

 

「ところで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 まずこそばゆく感じていた事について尋ねると周りにいた三人の視線と、代行の一瞥を向けられた。肝が据わってるのか、はたまた僕について何か可能性を知っているのかな?

 

「勘がいい、ではないのだろう?」

「まぁね。ムズムズする感覚だったから視線かなって思ってたんだ。でも、自分が()()()()()()って思い始めてるよ」

「それは……」

「気にしてないよ。だからさ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 前から言おうと思っていた言葉をここで伝えた。さすがの代理も予想もしていなかった事だったみたいで改めて僕に視線を向けてくれた。

 

「随分と達観した頼み事だね。まだ何か起きている訳じゃないだろうに」

「最初から考えていた事だよ。僕が何なのかわからないけど、結梨より真っ当じゃないことは何となく予感している。でも守りたい物が守りやすいなら迷う必要はないじゃないか」

「それが自分を犠牲にしても?」

「ああ。梨璃たちには悪いけど、結梨を守れるなら僕はすべてを投げ出せる」

 

 笑顔で答えると呆れたような、憐みのような複雑な顔だった。

 

「少し気を悪くしちゃったね。でも勘違いしないでほしい。こんな事を言ってるけど僕は結梨を悲しませないって約束してるからね」

「矛盾しているね。それとも何か自信があるのかな?」

「自信、か。そんな言葉より本能が当てはまるかな」

 

 無意識に私は自分の胸に、その奥の心臓に手を添えた。百由との付き合いで私のマギはここから来てると感じてる。ただ百由には伝えてない。と言うか実験の後に気づいたことだから言いそびれただけなんだけど。

 

「この体に宿る膨大なマギはリリィの枠に納まらない、そんな予感がする。こう言うのをどんでん返しって言うんだっけ?」

「正確には強盗返(がんどうがえし)だね。舞台演目で場面が変わることだ」

「そうなんだ。代行は博識だね」

「知人からは江戸時代や明治時代の言葉を使っても伝わりにくいと言われたことはあるな」

「そうか。今度、図書館で調べてみるよ」

 

 なにか豆知識のような話になったね。いや、私の伝えたいことは言えたし、ここくらいがタイミングがいいのかな。そろそろ一番近い三人からの視線が痛いしね。

 

「少し話が逸れたけど、僕が貴方に伝えることは伝えたからこれ以上はないよ」

「そうか」

「聞いてくれてありがとう。それじゃあ僕は戻るね。CHARMがないから応援をしっかりやらないとね」

 

 会話の最後くらいは少しだけの礼を示さないと思い、頭を下げる。去る時も不格好にならないように丁寧に下がる。ある程度離れた所で背を向けて―――。

 

「一つ、聞かせてほしい」

 

 まるで見ていたかのようなタイミングで呼び止められ、足を止めた。

 

「なんだい?」

「君が何者かを知り、その上で生き残った未来があるのなら何を願う?」

 

 ……この人はいい人ね。そしてこの質問には言葉通りに受け止めて答えたほうがいいと、そう直感する。もし生きていけるなら、うん、そうね。

 

 

「生きていいなら妹のような結梨を守り、唯一の故郷と言える百合ヶ丘女学院(ここ)を守りたいかな」

 

 

「……そうか。すまないね、呼び止めて」

「気にしないでいいよ。僕の世界はここだけ。その世界の前で立ってくれてる人にそう言って貰えて嬉しいくらいだ」

「そう返してもらえるなら私も嬉しいよ」

「そう。それじゃあ今度こそ行くよ。あまり長く空けると梨璃が慌て始めるだろうからね」

「ああ、安心させてあげるといい」

 

 改めて結梨たちの所に向かって歩き出す。これからの事は後にして、今日はしっかり結梨たちの応援を頑張ろう。

 

 

 

 

 

 私と結梨に人型HUGEとして捕縛指令が下されたのは、この日から少し経った頃だった。

 

 

 

 

 

 

 




主人公の性格を説明すると、



原作におけるメリュジーヌ(※作者視点)

『物事の決定をハッキリとし、一切の迷いを挟まず謹厳実直である。しかしその真面目さから第三者を誠実に相手するせいで”天然たらし”な真似をする』

主人公の前世

『体元居正。自分自身が好きでなかったから他人のために尽くした人生。身を尽くしてそれが誰かのためになるのなら後悔はない』

本作におけるメリュジーヌ・ヴィヴィ

『同じ境遇の一柳結梨を守り、これまで共に過ごした一柳隊の皆と百合ヶ丘女学院のリリィたち、そしてここ百合ヶ丘女学院が全てである彼女はその為なら身を捧げる覚悟をしている。ただしそれは夢で見る竜の存在から、自分が人類とは逸脱していると達観している部分も含む』



という感じです。

BOUQUET編終わり後について(今後は溜めて投稿するので間隔は長くなります。

  • ラスバレ編に突入
  • FGOクロス多めのストーリー
  • こっちは休んで停滞している他の作品をする
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