ジャイロボールに夢見て   作:神田瑞樹

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34話

            Ⅰ

 1‐2と青道の一点ビハインドで迎えた9回の表。この回に少なくとも1点取らなければ回の裏を待たずして夏を終えてしまう青道の攻撃は4番の結城から。

 ここで一本打ってくれと球場中に詰めかけた青道ファンの願いを一身に浴びながら青道の主砲は打席に入り、静かにバットを立てる。鋭い眼光が見つめる先にいるのは依然として青道の前に立ち塞がる分厚い壁、成宮鳴。既に100球を優に超えた球数を投げているにもかかわらずこの9回にもマウンドに上がった稲実のエースは静かにプレイのコールを待っていた。

 

―――プレイッ

 

 最後の幕が上がる。

 ゆっくりと成宮がモーションに入るのに合わせて、結城もまた足を上げてタイミングを計った。一点を追いかけるこの状況において先頭打者の役目は極めて重要だ。先頭が出るかでないかでは得点に対する期待値、そしてベンチのムードも大きく変わる。

 初球、コースからやや外れたスライダーを見送ると結城は一度打席を外した。バッターボックスの外で軽く素振りを行ってから打席に戻り、バットのグリップを握りなおす。

 

「ふぅ」

 

 静かに漏れたその吐息が今の結城の心情を示していた。ここまで結城は成宮相手に3‐0と完全に抑え込まれ、主砲としての役割を果たせていない。チャンスの場面で一本打てていればと、後悔を抱いてしまうのも4番として当然のことだった。

 2球目、胸元への真っ直ぐに結城はバットを出した。過去の打席でタイミングを合わせていただけあって振り遅れることはなかったものの、芯を捉えきれず打球は綺麗にバックネットへと突き刺さった。これでカウントは1‐1。

 まだどちらが有利ということもなければ、不利ということもない。カウントが若いこと、ストレートにタイミングが合っていること、そして打順が下位に行くことを思えば追い込まれるのを覚悟してでも甘い球だけを待ち、長打を狙いにいくのも4番の選択肢としては十分にあり得た。しかしカウントが平行に戻った直後、結城は両手の位置を上へとずらしバットのグリップを余らせる。

 現在放送中のテレビ中継では青道の4番としては弱気な選択だと昔気質の解説者が苦言を呈したが、当然のことながらそんな外野の声など結城の耳には届かない。

 3球目、成宮が投じたのはストライクゾーン低めのフォークボール。しかしさすがの成宮も疲労は隠せないのか、序盤に比べれば随分と落差が小さくキレも悪い。届くと瞬間的に判断した結城は短く持ったバットを落ち切らない白球目がけて振りぬいた。

 鋭いスイングに弾き返されたボールは瞬く間にショートの頭を越え、前進してきたレフトの前に落ちる。成宮の表情が苦いものに変わるのを横目で確認しながら結城は1塁を大きく回ってストップ。ノーアウトランナー1塁、望んでやまなかった先頭打者の出塁に青道の応援席は一気にヒートアップ。心なしかブラスバンドの演奏は音量を上げ、可愛らしく踊るチア部員達の動きが大きくなる。

 押せ押せムードが球場に漂い始める中、続く5番の増子に青道ベンチが命じたのはバントだった。1点差である以上同点狙いでランナーを進めるのはセオリー通りとは言え、クリーンアップに送らせてまで下位打線に勝負を任せるというのは高校野球でも中々に珍しい。しかしそんな一見奇妙に思える采配を疑問に思う人間は球場にはいなかった。

 皆知っているのだ、次の打者が誰なのか。

 単純な成績だけで言えば青道一、打席数こそ少ないもののここまで最も多くの勝利打点を挙げてきた強打者。スタンドから流れ始める『Eye Of The Tiger』。誰もが一度は耳にしたことのある力強い楽曲に乗って彼は打席に立った。

 滝川・クリス・優。

 重い怪我を乗り越えて復帰した天才が遂に勝負の舞台に上がる。

 

         ◇

 

 9回の表1アウトランナー2塁。追いかける青道からすればここしかないというチャンスで打席を迎えたのは6番のクリス。ここまで成宮相手に2打数1安打の1四球と打線の中で最も成宮にあっており、更には大会を通じての得点圏打率も極めて高い。

 否が応でも高まる得点の期待。そんな盛り上がる青道の気勢に水を注すかのように守る稲実側は一度タイムを取った。先ほどランナーを進めたことで1塁は空いている。稲実側からすればここは危険の大きいクリスとの勝負を避け、守りやすい形にしてから次の7番打者勝負にした方が幾分かは勝算が高い。

 けれどマウンドの輪が解かれプレイが再開したとき、捕手である原田は立ち上がってはいなかった。いつものようにどっしりと腰を下ろしてミットを構えるその姿は、見ている者に勝負だということを知らしめるには十分だった。

 

―――おい、ましかっ!? 稲実、クリスで勝負かよっ!?

―――ここまでの打席を見ている限り成宮の分が悪いように思うけど……

―――やっぱこう、あるんじゃねぇのか? ほら、エースの意地とかさっ!

―――いやそれよりも逆転のランナーを出すことを嫌ったんだろ。ほら、青道のベンチ前を見ろよ。

―――うぉっ!? ありゃ御幸じゃねぇか! そういや青道にはまだあいつがいたんだったな!

―――あぁ。後攻めの稲実からすれば最悪同点まではOKの場面だ。ここでクリスを歩かせて御幸勝負っていう逆転のリスクは冒したくなかったんだろ。

 

 球場の至る所で稲実の意図が話し合われたが、どれが本当なのかは当人達に聞いてなければわからない。しかしただ一つハッキリとしているのは、成宮と原田のバッテリーは勝負を選んだということ。

 打席に入るクリスにしてみればその事実だけでよかった。

 

……感謝する、原田。

 

 こうして自分に贖罪の機会を与えてくれたことに。クリスはいつもと変わらぬルーティーンで土をならしバットを構えながら、前の回の丹波の言葉を思い出した。

 

……もっと仲間を頼れか……耳が痛いな。

 

 あれは空に対してだけではなく、自分にもまた向けられた言葉であることをクリスは理解していた。チームメイトをないがしろにした気はない。ただ山城空という輝きに魅せられるあまり、いつの間にか空と自分だけでこの決勝を闘っている気になってしまったのもまた事実だ。チームの要である捕手としてはあり得ぬ醜態。

 それを払拭するためにもここは打たなければならない。

 

……いや違う。

 

 そんな個人的なことはどうでもいい。

 チャンスメイクをしてくれた結城と増子のためにも、一緒に闘ってくれるチームメイトのためにも、そして何よりもこんな情けない先輩を慕ってくれるエースのためにも。

 

……絶対に打つ。

 

 内に秘めた炎が静かに燃え上がると共に全身の感覚が四方へと広がっていく。

いつもならばこういうチャンスの時、クリスは相手の配球を読んだバッティングをする。捕手という己の立場を活かして相手がどう攻めてくるのか、どんなコース、ボールを投げるのかをある程度決め打った上で打席に立つ。

 その読みの精度の高さが打者としてのクリスを支えているのだが、この場面ではあえてその読みを全て捨てた。理論的な読みを捨て、ただただ本能的な感覚に身を任せた。

 

……今なら。

 

 論理だった理由があったわけじゃない。

 だが“今の自分”にとってはこれが最善なのだと直感したのだ。

 主審からプレイのコールがかかると成宮が投球モーションに入る。甲子園でもクイックには定評があるだけあって、その動作には一切の無駄もなければ癖もない。球種を判別することは愚かまともにタイミングを合わせることさえ至難だというのに、

 

……外角にフォーク。

 

 リリースするよりも早くコースと球種の両方を見抜くとは一体どういう魔法か。クリスはバットをピクリとも動かさず予想通りアウトコースに沈んでいく変化球を見逃した。

 

―――ボール

 

 主審の低い声をどこか遠くに聞きながらクリスはバットを構えなおす。

 

―――静かだった。

 

 ブラスバンドによる演奏や声援など球場は数多の音で囲まれているというのにクリスがいる世界はどこまでも静かで、そしてどこまでも澄んでいた。

 2球目と3球目に成宮が投じたのはアウトコースへのスライダー。ボールゾーンからストライクゾーンへと入ってくるお手本の様なバックドアだったが、厳しいゾーンに入れようと内に大きく曲げてきた分だけコースはやや甘かった。

 打とうと思えば打てたかもしれない、けれどクリスがそのバットを動かすことはなかった。

 

―――ットライクツー!

 

 これでカウントは1‐2と投手有利。一度もバットを振ることなく追い込まれたことに青道ファンからは心配の声が飛んだが、とうのクリスの表情には何の変化もない。

 真剣な顔を崩すことなく3度バットを構えなおす。そんな余りにも平然としすぎる所作を不気味に思ったのか、稲実バッテリーは1球釣り玉も兼ねて高めにボールを外した。

が、やはりバットは微動だにもしない。

 2‐2の並行カウント、次が勝負球になることは誰もがわかっていた。この勝負の命運を占う5球目、成宮が綺麗なクイックモーションからボールを手放した瞬間、クリスの世界から色が消えた。

 

……チェンジアップ。

 

 それは青道打線が警戒しながらも結局誰一人として捉えきれなかった魔球だった。打者方向へややスクリュー気味に落ちていくチェンジ・オブ・ペース、7回に入ってから一度として投じていなかった変化球をバッテリーは決め球として選択した。

 この緊迫した場面で緩い球を要求した原田も豪気ならば、見事にその期待に応えた成宮は怪物としか言いようがない。それほどまでにそのチェンジアップは完璧だった。

 真ん中やや低め。

 追い込まれた打者心理からすればついついバットを出したくなる位置からボールゾーンへと沈んでいくブレーキングボール。球速、コース、高さ、全てにおいて完璧。

 例えあらかじめ来ることがわかっていてもストレートとの球速差から体がついていかない、ヒットどころかバットに当てることすら極めて難しい最高の1球。プロで活躍する一流のスラッガーでさえ、このチェンジアップに対処するのは至難の技だろう。まかり間違っても高校生が打てるようなボールではない。

 けれど、

 

「っつ!」

 

 かつて至宝とまで呼ばれた才能が、そんな道理を覆す。

 極限までに高まった集中が、奇跡を呼び起こす。

 

―――それは後にバッティングのお手本とさえ謳われるほどの美技だった。

 

 小さく上がった左足が下された先はバッターボックス前方の丁度ど真ん中。緩急に惑わされなかった上半身が弓のように後方へと引き絞られ、下半身は軸足に体重を乗せたまま決して開かない。沈むボールに対して伸びる両腕、伸びるバット。ややアッパー気味のレベルスイングがボールを捉える刹那、全身から集約された力がそのスイングを加速させた。

 快音を鳴らし大きく振りぬかれたバット。

 見た者を虜にするほどに美しいスイングから放たれた打球は、これまた見た者を虜にするほど美しいアーチを描いた。上空に高々と舞い上がった白球が向かう先はセンター最深部に悠然とそびえ立つバックスクリーン。打った瞬間にそうだとわかる当たりだというのに、誰もがその打球に目を奪われ息を呑んだ。それまで騒然としていた球場に訪れた一時の静寂。そんな中、クリスはバットを捨てゆっくりと1塁へ走り出す。

 そして長い滞空時間を経て打球がバックリーンに触れた瞬間、世界は音を取り戻した。

 

―――うぉ、うぉ、うぉおおおおおおお!!

―――ホームラン! クリスの逆転2ランホームラン!! 青道がこの土壇場にきて逆転しやがった!?

―――クリスせんぱぁぁぁぁい! 愛してまぁぁす! 

―――成宮が打たれたっ!? おいっ、すぐに稲実優勢にしていたネット記事を書き換えろっ! この勝負、本当にわからなくなったぞっ!?

―――な、なんか凄いバッティングだったな、こう、魂を揺さぶられるっていうか。

―――う、うん。野球ってすごいんだね。私、ビックリしちゃった。

―――なんという美しい放物線じゃ。ひょっひょっ、長生きはするもんじゃの。思わずあの小僧に王の姿を重ねてしまったわい。

 

 興奮冷めやらぬ神宮球場。

 ダイヤモンドを一周したクリスはホームで待っていた結城とタッチをかわし、ベンチへと戻る。そこで待っていたのは満面の笑みで自分を出迎える仲間達だった。

 手荒いという言葉も生ぬるい祝福の嵐に揉みくちゃになった後、クリスは呆然自失といった単語がよく似合う後輩に微笑んだ。

 

「これで勝ち投手の権利は得たな」

「クリス……先…輩…」

「少しはお前に釣り合う捕手になれたか?」

「俺には勿体ないくらい……最高の捕手ですよ」

 

 悪戯っぽく問いかけたクリスに空もつられて笑った。 

 9回の表、青道3‐2稲実。

 青道高校、土壇場で逆転。この後、逆転したことでそのまま打席に送り出された7番門田と8番白洲はややボールが荒れた成宮相手に粘りを見せたものの結果的には凡退。

 その結果3‐2と、同じ1点差ながらも立場を代えて最終回に突入することになる。

 稲実の攻撃は6番の平井から。

 立ち向かうのは青道のルーキーエース。

 山城空が最終回のマウンドに上がる。

 

 

           Ⅱ

 

―――幕が下りようとしていた。

 

 3週間にも及ぶ長きトーナメントの集大成。青道と稲実、西東京を代表する野球名門校同士が甲子園というたった一つの切符をかけて争い合う西東京大会決勝戦。

 試合開始から2時間弱、前評判に違わぬ投手戦となったこの試合も遂に最終回を迎えた。

 佳境を迎えたことでより一層激しさを増す応援合戦。リードする青道側はこのまま逃げ切ることを、追いかける稲実側は何とか追いつき、そして逆転することを祈って声が枯れるまで声援を送り続けた。

9回の裏、先頭打者として打席に立つのは稲実の6番平井。

相対するのは1年生ながらも最早青道の絶対的エースとして君臨する山城空。この最終回のマウンドにも空が上がると分かったとき、観客席からは驚きと称賛の声が上がった。しかしその一方で関係者からの反応は随分と冷ややかだった。

 

“どうして限界と思わしき投手を続投させるのか?”

 

 試合を中継するテレビやラジオの解説者達からはそんな批判交じりの疑問が飛ぶ。最後に何とか立て直したとはいえ空の投球に最早序盤ほどの力がないのは明らか。青道が登録している投手の数は全部で4人。実質投げられない3年の丹波を除いてもまだ2枚カードを残しているのだから、ここは捉えられ始めた空を無理に続投させるよりも継投で逃げ切るべきなのではないかと。

 確かに彼らの言うことは間違っていない。

 事実、青道の監督である片岡にも直前までその考えはあった。けれど空の瞳に宿る強い意志の炎が、何としても勝つという覚悟が、彼にエースの続投を決めさせた。

 酷使、無謀と思われても仕方のない采配だ。失敗すれば謗りは免れないだろう。だがそれらの批判を全てを覚悟した上で、片岡は山城空というエースの可能性にかけたのだ。

 

―――あと3つ。

 

 いかなる結果を迎えるにしろ、この試合最後になるであろうマウンド。いつものようにロージンを弄びながらそこに立つ空の胸は迫ったその時に大きく高鳴った。

 緊張は勿論ある、下位打線とは言え油断してはいけないのも重々承知している。だが不思議と不安や怖れといったネガティブな感情は全くない。

 

……ありがとうございます、クリス先輩。ありがとう、先輩達。

 

 胸中を占めるのは先輩達に対する感謝の念。この9回のマウンドに立たせてくれたチームメイトに心の底から感謝し、勝利という最高の結果で酬いることを誓って空は右腕を振るう。代名詞であるジャイロボールにはもう殆ど力は残っていなかった。

球速こそ何とか未だ140キロを維持しているものの浮き上がるようなノビはなく、コントロールもアバウト。面白いように三振の山を築き上げた序盤とは打って変わって中々空振りは奪えず、強い当たりがファールゾーンにちらほらと飛んでいく。一歩間違えればたちまちスタンドイン。そんな薄氷の上にいるにもかかわらず、その腕の振りが緩むことはなかった。

 2シームジャイロ、チェンジアップ、そして4シームジャイロ。

持ちうる球種を全て使ってのコンビネーション。クリスの出したサインを信じ、バックの仲間を信じて空はただただ全力で右腕を振り続けた。

そして、遂にその時が訪れる。

 

 

―――テレビをご覧の皆様。聞こえるでしょうか、この歓声がっ! 感じますでしょうか、この熱気が! 

 

 解説者席に響くはここまで試合を実況してきた男性アナウンサーの声。球場の熱にあてられたのか、興奮を隠そうともしない熱い叫びが電波に乗って関東中のテレビに届けられていた。

 

―――この試合を見て未だ予選だといったい誰が思うでしょう! 全国高校野球選手権西東京大会決勝、青道対稲城実業っ! 長きにわたって甲子園の切符を争う名門同士の対決は互いに一歩も引かない接戦でした!

 

 どうせなら甲子園の決勝で見たかった。喉の奥から上がってきそうになるその言葉をアナウンサーは寸前の所で飲み込んだ。半開きになった口を固く結び、2つの赤いランプが灯ったスコアボードを確認する。

 

―――青道1点リードで迎えた最終回も遂に2アウト。2アウトランナー1塁、カウント2‐2! 打者成宮鳴、投手山城空っ! 次が最後の一球になるのかっ!?

 

 

 360度から降り注ぐ歓声、悲鳴、祈り。

 数えきれないほど多くの人間の想いに囲まれながら、空はプレートに足をかけ最後のサインを確認する。1塁には同点のランナーがいたがそんなものは目に入らなかった。真っ直ぐな瞳が見つめるのはホームベースの先に構えられたミットと、限界まで短く持ったバットを構える好敵手。

一つ年上の、ライバル。

 

……尊敬するぜ、成宮“先輩”。

 

 同じ投手相手にこんな気持ちを抱くのは初めてだった。純粋な投手としての能力なら決して劣っているとは思わない。けれど“チームのエース”としては間違いなく負けていた。

 そのことを素直に認め、理解し、空は左足を大きく踏み出す。

 この試合131球目となるボール。

山城空を支え続けたジャイロボールが今、その右腕から放たれた。

 

「らぁっ!」

「っつ!?」

 

 140キロの真っ直ぐが成宮の胸元へと奔る。

 それに対して振るわれたバットのタイミングはおよそ完璧だった。恐らくは真っ直ぐ一本に絞っていたのだろう、追い込まれているにもかかわらず一切迷いのないスイングが白球へ振り下ろされる。

 キィイインと、金属バット特有の甲高い高音がグラウンドに響いた。

 球場に詰めかけた誰もが一斉に上空を見上げる。

 雲一つない青空に高々と舞い上がった白い点。数万にも及ぶ注目を集めた白球は重力に従って静かに落ちていき――――確かに、キャッチャーミットの中に収まった。

 ボールの入ったミットをクリスが掲げる。

 主審は無言で頷き右手を上げた。

 

―――アウトっ! ゲームセット!

 

 それが結末。

 青道の優勝が決まった瞬間だった。

 




はい、ようやく長かった決勝に決着がつきました。

青道が優勝して終わるというのは当初からのプロット通りですが、正直に言うとクリスに逆転2ランを打たせる気はありませんでした。(プロットではクリスの後の門田と白洲が上級生の意地を見せて逆転という内容でした)

いささか安易な展開になったかなぁという気はしますが、その分クリス先輩の活躍を描けて個人的には満足です。

完結まであと一話、最後まで頑張りたいと思います!

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