ダンジョンで叫ぶのは間違っているだろうか   作:マザハール

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コドラク編最後です。
ヘスティアがベル君のために頑張ります。
そして、今回はあのキャラが登場します。


第十二話 パーティ

<回想>

 

 コドラクは夢を見ていました。

 夢の中で、コドラクは深い霧の中を彷徨っていました。

 時折、咆哮が鳴り響き、巨大な黒い影が上空を飛んでいるのが見えました。

 後ろには一匹の狼がコドラクを追ってきます。

 狼は一定の距離を保ち、コドラクが歩みを止めるのを待ち構えているかのようでした。

 コドラクは霧の中を歩き続けました。

 

 何日、何ヶ月、何年…

 どれ程の時間が経ったかわかりませんでした。

 しかし、コドラクは諦めずに歩き続けました。

 そしてある時、突然霧が晴れました。

 黒いドラゴンが地に降り立つのが見えました。

 それと同時に、今まで距離を保ってた狼がコドラクに襲いかかりました。

 コドラクは狼の攻撃を避け、一人と一匹の睨み合いが続きました。

 再び、狼が襲いかかります。

 コドラクも立ち向かいますが、地面に押さえつけられてしまいました。

 狼がコドラクの首元に噛みつこうとした時、狼の体に氷の柱が突き刺さりました。

 狼が怯み、コドラクは狼の下から抜け出します。

 そして狼に一人の戦士が走り寄り、剣を突き立てました。

 狼は倒れ、消えてしまいました。

 コドラクには自分を助けてくれた戦士が誰か、すぐにわかりました。

 

「…信じていたよ。お前が儂を救ってくれると」

 

「待っていてくれ。私もいつか必ず、あなた達のもとへ…」

 

 そう言ってエルディンは消えました。

 

「あなたが、あの子を育ててくれたのですね」

 

 コドラクに声がかけられました。

 声のした方を見ると、コドラクもよく知る男の姿がそこにありました。

 

「そうか、お前がエルディンの父であったな」

 

「あの子には話していませんが、私もあの子の本当の父ではありません。

 …エルディンを育てていただき、ありがとうございました」

 

「礼を言うのは儂の方だ。あの子と会わせてくれてありがとう」

 

 コドラクは英気を養うために勇気の間へと続く道を歩き出しました。

 

「勇気の間に入れたら、束の間の休息としよう」

 

 …いつか、息子と共に戦えることを信じて。

 

 *

 

 夜。

 とある場所。

 そこでは大勢の神々が集まり、騒いでいた。

 今夜はガネーシャファミリア主催のパーティだ。

 近々行われる怪物祭(モンスターフィリア)に対し、宣伝と関係ファミリアへの協力のお願いも兼ねているらしい。

 それぞれ神々が談笑をしている中に、ヘスティアの姿もあった。

 テーブルに並べられた料理を見て、目を輝かせている。

 めぼしい料理を食べつつ、日持ちする料理をタッパーに入れて持ち帰ろうとするヘスティアに声がかけられる。

 

「あんた、何やってんのよ?」

 

「むぐ? …ヘファイストス!」

 

 ヘスティアは声の主の正体に気づき、駆け寄る。

 

「良かった! 君に会いたかったんだよ!」

 

「なによ、お金なら貸さないわよ?」

 

 ヘファイストスはヘスティアの反応に嫌な予感がして、話題を変える。

 

「そういえば、あんたの所にも、二人目の眷族ができたらしいわね。

 昨日会ったわよ」

 

「あ、ああ。エルディン君から聞いたよ。…何か言ってなかったかい?」

 

 ヘスティアが冷や汗を垂らしながら尋ねる。

 

「少し話をしたわ。彼、記憶が曖昧なんだってね」

 

「…そ、そうなんだよ! 路頭に迷ってたところを僕が助けてさあ」

 

 ヘスティアが引き攣った笑みを浮かべる。

 どうやったのかわからないが、本当にヘファイストスは騙されているようだ。

 

「…その話、私にも聞かせてくれるかしら?」

 

 そう言ってヘスティアの前に現れた女神を見てヘスティアの顔がさらに引き攣る。

 

「フ、フレイヤ? どうしてここに?」

 

「偶然そこで会ったから一緒に回ってたのよ」

 

 ヘファイストスが答える。

 

「こんばんは、ヘスティア。噂では二人目の眷族ができたらしいじゃない?」

 

「うっ…どこからその情報を?」

 

「さあ、どこかしらね。

 …どんな子達なのかしら?」

 

「一人とは昨日会ったわ。見るからに屈強な戦士って感じね。もう一人は白髪で赤目の少年だったかしら?」

 

 ヘファイストスが代わりに答える。

 

「…そう」

 

 フレイヤが何か考え込む様子を見せた。

 

 *

 

「おーい、ファイたん、フレイヤ、ドチビー!」

 

 そんな三人を呼ぶ声がした。

 

 三人のもとへ駆け寄ってきたのはロキだった。

 今夜は珍しく、ドレスを着ている。

 

「何しに来たんだよ、ロキ?」

 

「なんや、用が無かったら来たらあかんのか?」

 

 喧嘩腰になるヘスティアにロキも負けじと挑発する。

 

「せっかくのパーティやっていうのに、ドレスもまともに着れないドチビを笑いに来たって訳や」

 

 ロキがヘスティアの格好を見て笑う。

 

「ふん、これは傑作だ! 

 人を笑うために自ら笑い物になるなんてね! 

 …なんだいその平たい胸は!?」

 

 ヘスティアの言葉がロキにクリーンヒットする。

 ロキはたちまち涙目になり、ヘスティアに掴み掛かろうとするが、目的を思い出して、踏みとどまる。

 

「…ま、まあいいわ。

 ドチビに聞きたいことがあったんや。

 お前んとこにエルディンっておるよな?」

 

 またもや出てくるエルディンの名にヘスティアの気が引き締まる。

 

「君もかい? どうしてそのことを知っているんだい?」

 

「どうしてもなにも…

 そいつにウチのベートが絡んで返り討ちにされてしもうてな。

 しかも、その後の酒飲み勝負でうちの団員の半数を潰してしもたんや」

 

「え!? 貴方とのところの団員を?」

 

「…噂は本当だったのね」

 

 ヘファイストスが驚き、フレイヤが呟いた。

 

(な、何やってるんだい!? エルディン君!?)

 

 ヘスティアが焦る。

 

「ウチの団員が絡んだ訳やから、文句を言うつもりはないんやけど。

 …あいつ、何者や?」

 

「ベートって、あの凶狼(ヴァナルガンド)でしょ? 

 彼って確か、Lv.5じゃなかったかしら?」

 

 ヘファイストスが追い討ちをかける。

 これはもう隠せない。

 

「…僕もエルディン君の過去を詳しく知らないんだけど、実はエルディン君、Lv.5なんだ」

 

 ヘスティアはエルディンのLv.を打ち明けた。

 

「「な!?」」

 

「…!」

 

 三人とも、驚きの表情を浮かべる。

 

「しー! …これはここだけの秘密にしておいてくれないかい? 

 エルディンのことについては僕が責任を持って見守るからさ」

 

 ヘスティアが頭を下げる。

 

「…しゃーない。

 ドチビがそこまで言うなら任せるわ」

 

「なるほど。それであれだけの風格があったのね」

 

 ロキとヘファイストスがそれぞれの反応を見せる。

 

「…さて、私はお暇させてもらおうかしら。

 三人とも、また会いましょう?」

 

 フレイヤが突然別れを告げる。

 そして、そのまま三人から離れていく。

 

「なんや、あいつ。急に?」

 

「…そうだ、ロキ。

 僕も君に聞きたいことがあったんだ。…」

 

 その後、ヘスティアはアイズ・ヴァレンシュタインについてロキにいくつか質問をした。

 アイズに伴侶がいないことを知り、ヘスティアが舌打ちをし、腹いせにロキを挑発し、そのまま取っ組み合いに発展していった。

 

「思ったより、収穫があったわね」

 

 少し離れたところで、フレイヤが笑みを浮かべた。

 

 *

 

 取っ組み合いの結果、ロキが逃げたことで勝負がついた。

 ロキもいなくなり、ヘスティアとヘファイストスの二人きりになる。

 

「それで、結局私に何か用だったの?」

 

 ヘファイストスがヘスティアに尋ねる。

 

「そうだった! 君に頼みがあるんだ!」

 

 ヘスティアがヘファイストスに向きなおる。

 頼みという言葉に、ヘファイストスの目が変わる。

 

「さっきも言ったけどお金は貸さないわよ」

 

「そ、そんなことじゃないよ!」

 

 ヘファイストスの態度の変化にヘスティアは先程とは違った冷や汗をかき始める。

 

「ええ、そうよね。あんたが私にそんな頼み事する訳ないわよね。というか、それ以前に頼み事ができる立場なのかしら?」

 

 ヘファイストスの言葉にヘスティアは怯む。

 今まで散々彼女に世話になりっぱなしだったため、これ以上、頼むのは流石のヘスティアも気が引けた。

 しかし、そんなヘスティアを見て、ヘファイストスもつい気を許してしまう。

 

「…それで、私に頼み事って何かしら?」

 

 ヘファイストスの言葉に、ヘスティアは顔を明るくし、すぐに真剣な顔をしてヘファイストスに頼み込んだ。

 

「ベル君に…僕のファミリアの子に

 武器を作って欲しいんだ!」

 

 *

 

「ぐええ!!」

 

 ベルが吹き飛ばされ、石畳を転がる。

 

「七秒ってところか?」

 

 エルディンがすぐさま回復魔法をかける。

 ヘスティアがパーティに出かけてから二日経った。

 この二日間、朝はエルディンの特訓を受け、昼からダンジョンに潜るという状態が続いた。

 

 幻影との立ち合いは既に何回かやったが、ほんの僅かしか、生存時間が伸びていない。

 反撃をしてもいいということになり、倒してやろうという心意気で挑戦するが、未だに十秒も耐えきれなかった。

 

「くそ、またやられた!」

 

 魔法により回復したベルが悔しがる。

 

「まだまだだな。まず避ける時だが、最小限の動きで避けろ。

 無駄に大きく避けると、次の行動が遅れる。

 それに…」

 

 エルディンが悪い点を次々指摘していく。

 口では厳しめの評価をしているが、実のところ、大いに満足していた。

 

 ベルには言っていないが、シャウトで出てくるエルディンの幻影はエルディンと同等の強さを持っている。

 つまりはLv.5と立ち合いをしている訳である。

 普通であれば一瞬と持たないところをベルは七秒も持たせているのだ。

 

「今日はここまでだ。

 この後はダンジョンに行くぞ」

 

「はい!」

 

 特訓ばかりではベルの気力が持たないし、お金も稼がなければならない。

 エルディンとベルは昼食を挟み、ダンジョンに向かった。

 

 *

 

「今日もなかなかの稼ぎでしたね!」

 

 ベルが上機嫌に言う。

 

「そうだな。これなら食卓も豊かになるな」

 

 エルディンも笑みを浮かべている。

 エルディンが加わったこともあり、昼からダンジョンに潜っても、

 ベルが一人でダンジョンに潜っていた時より多くのヴァリスを稼げていた。

 

「おや、ベルではないか?」

 

 そんな声がベルに掛けられる。

 

「あ、ミアハ様! こんばんは!」

 

 ベルが声の主に気付き、挨拶をする。

 そこにいたのは長髪で顔の整った男神だった。

 

「元気そうだな。む、そちらは?」

 

「この人は僕と同じファミリアの

 エルディンさんです」

 

「エルディン・ホワイトメーンと言う」

 

 エルディンが会釈する。

 

「初めまして。私はミアハだ。

 私のファミリアは道具屋をやっていてね。

 自分で言うのもなんだが、かなりの極貧だ。

 どうか贔屓に頼むよ」

 

(ヘスティア以外にも苦労している神がいるのだな)

 

 エルディンは心の中でそんなことを思う。

 

「そうだ、ミアハ様。

 ヘスティア様の居場所を知りませんか? 

 パーティから帰ってきてないのですが?」

 

 ベルがミアハに尋ねる。

 ベルはパーティに出かけていった日から一向に帰ってこないヘスティアを心配していたのだ。

 

「ヘスティアの居場所? 

 …すまない、私はパーティに行っていないから分からないな」

 

 ミアハが答える。

 

「そうですか…」

 

「すまないな。もし見かけたら

 君が心配していたと伝えておこう」

 

「いえそんな、ミヤハ様が謝ることじゃ…」

 

「そうだ、ベル。これをやろう」

 

 そう言って、ミアハは青い液体の入った小瓶を渡す。

 

「それって、回復薬じゃ!? 

 そんなものもらえませんって!」

 

「同じ零細ファミリアのよしみだ。

 受け取ってくれ」

 

 ミアハに勧められるまま、ベルが回復薬を受け取る。

 

「流石に無償では受け取れない。

 これを受け取ってくれ」

 

 それまで黙っていたエルディンがヴァリスの入った袋を渡す。

 

「いや、いいってことだ」

 

「では、今度あなたのファミリアにお邪魔させてくれ。

 薬というものに興味があるのだ」

 

 そう言って、ミアハに袋を渡す。

 エルディンはこの世界の薬について知れるいい機会だと判断した。

 

「…わかった。今度うちに招待しよう。

 では、私はこれで」

 

「ありがとうございます! ミアハ様!」

 

 *

 

 ミアハと別れて、二人はホームに向かっていた。

 

 ふと、ベルがある店の前で立ち止まる。

 そこはヘファイストスファミリアの武器が売っている店で、ショーウィンドウには剣をはじめとして、高価な武器が飾られている。

 

「どうした?」

 

 エルディンが問いかける。

 

「い、いえ」

 

 ベルは慌てて取り繕うが、エルディンはベルの心境を見抜いた。

 

「武器が欲しいのか?」

 

「…は、はい。やっぱり憧れますよね」

 

 ベルが恥ずかしそうに笑う。

 その気持ちはエルディンにもよくわかった。

 同胞団に入りたての頃は、コドラクの着ている狼の鎧に憧れたものだ。

 

「私も造れなくはないが…」

 

「え!? エルディンさん、武器も造れるのですか!?」

 

 ベルが驚く。

 

「ああ。この武器も、防具も全て自分で造ったものだ。

 だが、この世界の金属のことは分からないし、鍛冶場も簡単に借りられるわけではないから難しいな」

 

「そうですか」

 

 ベルはエルディンが使っている武器もかっこいいと思っていたので、もし造ってもらえたらと期待したのだが、エルディンの言葉を聞いて残念がる。

 

「まあ、そう落ち込むな。

 明日は休みにするから、先程聞いた怪物祭(モンスターフィリア)とやらに行ってみようか」

 

 ベルとエルディンはダンジョンから戻る時、謎の木箱が運ばれているのを目撃した。

 そこで聞いた話では、明日何かの祭りが開催されるらしいのだ。

 

「…はい! 行きましょう!」

 

 ベルは気を取り直して、明日を楽しみに思った。

 

 その店の奥で、ヘスティアが土下座をしていることを二人は知る由もなかった。

 

 *

 

 ロキは自室に篭り、酒を飲んでいた。

 昨日のパーティで、ヘスティアから受けた屈辱からやけ酒をしていたのだ。

 

「あのドチビ! 今度会ったらただじゃすまさんで!」

 

 徳利を強めにテーブルに置く。

 情報を聞き出すつもりだったのに、Lv.以外に碌な話は聞けず、喧嘩にも負けて散々だった。

 

「…それにしても、あのドチビ。

 自分が何を抱え込んでるのか、分かっとるんかな?」

 

 ふと冷静になったロキがつぶやく。

 下界に降りてから神の力は使えないが、それでもロキは人の腹の底や、真意、オーラを見抜くことに長けていた。

 

 ロキがエルディンを見て感じたものはどす黒さ、血生臭さ、そして身体中に蠢く何百もの何か…。

 

(何も起こらんといいけどな)

 

 空になった徳利を見つめ、酒を追加するため、戸棚に向かう。

 

 そして机に戻ってきたロキは驚愕する。

 机の対面に男が座っていた。

 黒いローブを着た、ロキの知らない男が、先程までロキの飲んでいた徳利を覗き込んでいた。

 

「なんだぁ、空じゃねえか。

 …おい、早くその酒を寄越せ」

 

「…何者や。自分」

 

 ロキが警戒する。

 この男がやばい存在であると見抜く。

 

「おい、酒もないのに話せってか。

 まずは乾杯からだろう?」

 

 男は文句を言う。

 ロキは男が自分に危害を加える気は無いと判断し、お猪口をもう一つ用意し、男に酒を注いだ。

 

「さあ、乾杯! 

 …おお、初めての味だな。

 実にうまい」

 

「…それで、あんたは誰や? 

 何が目的や?」

 

 ロキが再び質問する。

 

「俺はサム・グエヴェンって言うんだ。

 …いいだろう。

 こんなにうまい酒をくれたんだ。

 話してやろう。俺たちのことも、お前の知りたがっているエルディンのこともな…」

 

 そうしてロキがサム・グエヴェンと名乗る男から聴いた話のは驚愕の内容であった。




コドラクは無事にソブンガルデへと辿り着けました。
ドヴァキンはここから二人の父が待つソブンガルデに行きたいと強く願うようになります。
次の回想はみんな大好きあのキャラが!?

ついにデイドラの王子たちが動き出しました。
次回は怪物祭です。

skyrim anniversary edition発売するらしいですね!
発売から10年経った今アップグレードが入るなんて
さすがは神ゲーですね。
日本語版が出たらもう一回やり直そうかなぁ。

ドヴァキンの強さってダンまちの世界だと、どれくらいのLv.だと思いますか?(ドヴァキンは全スキルを習得済みとします。)

  • Lv.8以上
  • Lv.7
  • Lv.6
  • Lv.5
  • Lv.4
  • Lv.3
  • Lv.2
  • Lv.1
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