ダンジョンで叫ぶのは間違っているだろうか   作:マザハール

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怪物祭のその②です。
ジェイ・ザルゴの話もありますよ!


第十四話 怪物祭②

<回想>

 

「ジェイ・ザルゴは大成するよ。それは間違いない」

 

 これがジェイ・ザルゴの口癖だった。

 あの頃のジェイ・ザルゴは高慢だった。

 自分が一番だと思い込んでいた。

 だが、エルディンにはどうしても勝てなかった。

 いつも彼はジェイ・ザルゴの先を行った。

 

 ある時ジェイ・ザルゴは一つの魔法を発明した。

 それは【炎のマント】の改造版で、アンデッドに反応すると大爆発を起こすものだ。

 だが、一度試したところジェイ・ザルゴの自慢の髭がちりぢりになってしまった。

 もう少し試したいが、自分ではやりたくないと困っていた時に、エルディンが声をかけてきた。

 ジェイ・ザルゴはこの時、酷いことを考えた。

 これをエルディンに使わせて、彼が怪我でもすれば魔法の効果も確認できて、彼が治療している間に、ジェイ・ザルゴが彼を追い越せるのではないかと。

 依頼をすると、エルディンは快く引き受けてくれた。

 

 それから一ヶ月エルディンは大学に来なかった。

 ジェイ・ザルゴはだんだん心配になった。

 もしかしたらどこかで死んでしまったのではと。

 それからさらに一ヶ月経った時、エルディンが戻ってきた。

 服のあちこちが真っ黒焦げになっていて、皆驚いた。

 ジェイ・ザルゴは改良型【炎のマント】を使ったのだとすぐにわかった。

 だが、彼は笑いながらジェイ・ザルゴに言った。

 

「とてもすごい威力だった! 

 ジェイ・ザルゴは絶対に大成するよ」

 

 彼はとてもいい奴だった。

 ジェイ・ザルゴは自分の愚かさに気がついた。

 そして、エルディンのことを認め、この時、二人の間に確かな友情が芽生えたんだ。

 

 …何? そこからどうやってエルディンがアークメイジになったかだって? 

 

 …ジェイ・ザルゴはもう疲れた。今日の話はおしまい。

 

 *

 

 モンスターがレフィーヤに近づく。

 触手に捕まったティオネが必死に呼びかけるが、レフィーヤは動けない。

 ティオナが大双刃(ウルガ)を振るうが、触手は次々と伸びてくる。

 巨大な口がレフィーヤの目の前に迫る。

 

 エルディンは触手の攻撃を避けながらレフィーヤとの距離を測る。

 

(まだ、間に合う)

 

「【Su(空気)】!」

 

 エルディンが【激しき力】のシャウトを叫ぶ。

 エルディンの体に風が纏われる。

 居合の構えを取る。

 

「【Wuld(旋風) Nah(暴風) Kest(大嵐)】!!」

 

 エルディンが【旋風の疾走】のシャウトを叫ぶ。

 エルディンが雷の如く疾走する。

 瞬く間にモンスターに追いつく。

 その勢いのまま、剣を振るう。

【旋風の疾走】と【激しき力】により加速した剣がモンスターの頭部を捉える。

 

 *

 

(嫌だ)

 

 レフィーヤが思った。

 目の前にモンスターの巨大な口が迫ってくる。

 

(やっぱり私には無理だ。

 このままではまた…)

 

 風が駆け抜ける。

 金と銀の光が走り抜ける。

 

(…あの人に助けられる)

 

 目の前にレフィーヤの憧れの人が現れた。

 

 *

 

 モンスターの頭部が切り落とされる。

 モンスターが悲痛な叫び声を上げる。

 エルディンとアイズの刃がモンスターに届くのはほぼ同時だった。

 

「アイズ!」

 

 ティオネを拘束していた触手が解かれる。

 ティオネを阻んでいた触手もその場で崩れ落ちた。

 

(間一髪だった)

 

 アイズは攻撃が間に合ったことに安堵する。

 地面から現れたモンスターに危機感を感じ、魔法を酷使して飛んできたのだ。

 あと一瞬遅かったら、レフィーヤの命はなかったかもしれない。

 

(一体どうやって?)

 

 そして、アイズは目の前に現れたエルディンに驚いていた。

 アイズがモンスターにたどり着いた時には、エルディンは数十M(メドル)先にいた。

 しかし、アイズがレイピアを振るった時には、エルディンが目の前で剣を振るっており、僅かではあるがアイズより先にエルディンの剣がモンスターに届いていた。

 これは自分を上回る速度でエルディンが動いたということだ。

 

(本当にこの人は一体何者?)

 

「アイズ、エルディンさん! 

 レフィーヤを…」

 

 ティオネたちが近寄ろうとするが、再び地面が揺れ、食人花が三体出現する。

 

「ちょっと、まだくるの!?」

 

 ティオネが呻く。

 

「アイズ、レフィーヤの治療は私に任せろ。

 ここはお前達に譲ってやる」

 

 エルディンはそう言うと、レフィーヤのもとに向かう。

 アイズは新たに現れた食人花に近づき、レイピアを振おうとする。

 

 バキリ

 

 不穏な音がして、アイズの持っていたレイピアが砕ける。

 さらに運の悪いことに、魔力のダガー、魔力の大双刃(ウルガ)の効果が切れ、消滅する。

 

「!」 「なっ!?」 「ちょっ!?」

 

 突然の出来事に三人が言葉を失った。

 

 *

 

「げほっ、げほっ」

 

 レフィーヤはなんとか体を起こそうとする。

 腹がズキズキと痛む。

 喉が焼けるようだ。

 今にも気を失ってしまいそうになる。

 

(また助けられた。

 いつもそうだ。

 もう嫌だ。

 自分には無理だ。

 あの人に追いつくなんてできない)

 

「…もう無理です」

 

 弱音が声に出てしまう。

 

「しっかししろ! レフィーヤ・ウィルディス!」

 

 エルディンが、レフィーヤの名を呼ぶ。

 レフィーヤの体を暖かい光が包む。

 

「このまま逃げるのか!? 

 お前の助けを待つ仲間がいるのに裏切るのか!?」

 

 エルディンが怒鳴る。

 今度は頭から魔力が流れ込む。

 

(そんなことわかってる)

 

 レフィーヤは体の痛みが和らぐのを感じた。

 不思議と心の底から闘志が湧く。

 

(仲間を見捨てて、逃げるなんてできない!)

 

 体を起こし、アイズ達を見る。

 アイズが食人花に捕まっているのが見える。

 立ち上がり、息を吸う。

 そして声を張り上げる。

 

(私があの人を救うんだ!)

 

 *

 

「【ウィーシェの名のもとに願う】!」

 

 レフィーヤが詠唱を始めるのを見て、エルディンは笑った。

 彼女に、ベルと似た何かを感じていた。

 少しだけ後押しをしたが、彼女は自らの力で己の弱さに立ち向かった。

 

(いつだって、人が成長する姿は素晴らしいものだ)

 

 食人花がレフィーヤの魔力に反応して向かってくる。

 エルディンはレフィーヤの前に立ち、武器を構える。

 あとはレフィーヤが詠唱を終えるまで、足止めする必要がある。

 

「はいはいっと!」

 

「大人しくしてろッ!!」

 

「ッッ!」

 

 アイズ、ティオネ、ティオナが食人花を足止めする。

 エルディンは【アイスジャベリン】を連発して三人を援護する。

 目の前の地面から触手が飛び出してくる。

 

「【Iiz()】!」

 

 攻撃を予測していたエルディンが【氷晶】のシャウトを叫ぶと触手が凍りつく。

 エルディンは両手に魔力を集中させつつ、後ろに退避する。

 レフィーヤが詠唱を終える。

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」

 

 吹雪が吹き荒れる。

 吹雪に巻き込まれた触手が、食人花が、凍っていく。

 吹雪が止む頃には、食人花は氷の彫刻と化していた。

 

「良くやった。レフィーヤ・ウィリディス」

 

 先程の怒鳴り声とは違い、驚くほど優しい声でエルディンが称賛する。

 

 レフィーヤの横に出ると、魔力を解放する。

 エルディンの両手から雷が放たれる。

 

 巨大な雷の奔流が、氷漬けになった食人花の一体を砕いていく。

 そのまま雷を放出し続け、食人花を薙ぎ払う。

 エルディンが【ライトニングテンペスト】を打ち終えると食人花は跡形もなく崩れ去っていた。

 

 *

 

「ありがとう、レフィーヤ!」

 

 ティオネが近づいてきてレフィーヤに言う。

 

「レフィーヤかっこよかったよ! 

 リヴェリアみたいだった!」

 

 ティオネがレフィーヤに抱きつきながら言う。

 レフィーヤはティオナに抱きつかれたまま、その場にへたり込む。

 

「エルディン君もありがとう! 何あの魔法!? 

 ものすごい威力だね! 

 また、あの大双刃(ウルガ)も使わせてね!」

 

 ティオナがエルディンを見て笑う。

 

「…できればもう勘弁してほしいな」

 

「えー!?」

 

 エルディンが拒否し、ティオナが残念がる。

 

「まだ、仕事が残っとるでー。

 アイズたんはあと一体のモンスターを追ってや。

 ティオナ達は地下の確認を頼む。

 レフィーヤは傷が痛むなら、無理せんと待っといてな」

 

 どこからか現れたロキが指示を飛ばす。

 

「エルディン。今回はほんまに助かったわ。

 レフィーヤのこともありがとうな」

 

 ロキがエルディンに礼を言う。

 

「気にするな。困った時はお互い様だ」

 

 ロキは少し考える素振りを見せると、突然エルディンの耳元に顔を寄せる。

 

「…」

 

「…なんだと!? なぜお前がそれを!?」

 

 いきなり顔を寄せられて怪訝に思ったエルディンだったが、ロキが囁いた言葉に驚愕して、思わず訊き返した。

 

「…ほな、ウチはアイズたんを追いかけるから、

 すまんが、レフィーヤのこと頼むわ」

 

 そう言ってロキは離れていく。

 

「どうかしました?」

 

「なんでもない。…レフィーヤ、

 少し大人しくしていろ」

 

 そう言うと、エルディンはレフィーヤに手を近づける。

 

「え、あ、あの、何する気ですか!? 

 できれば体を触ったりするのは…」

 

 レフィーヤが慌てる。

 

「何を誤解している? 

 回復魔法をかけてやるから、じっとしていろ」

 

 そう言ってエルディンはレフィーヤの頭に手をかざし、治癒の呪文を唱える。

 レフィーヤは体の傷が治り、体の痛みがなくなっていくのを感じる。

 

「…す、すごい。

 こんな高度な回復魔法をどうやって…」

 

「…」

 

 レフィーヤはエルディンの反応がないことを変に思い、エルディンの顔を見る。

 突然、エルディンが倒れ込む。

 レフィーヤは慌ててエルディンを支えるが、エルディンは全く動かない。

 

「エルディンさん? どうしたんですか!? 

 エルディンさん!?」

 

 レフィーヤの声が瓦礫の散らばる街に響いた。

 

 *

 

<ダイダロス通り>

 

 ベルはシルバーバックとの鬼ごっこを続ける。

 死ぬ気でシルバーバックを引きつけるベルは、自分がまだ生きていることに驚いていた。

 

(攻撃が見える)

 

 巨大な腕が薙ぎ払われる。

 ベルは体勢を低くする。

 頑丈な鎖が頭上を通る。

 すぐさま、その場を離脱する。

 その瞬間、拳が地面にめり込む。

 

「こっちだ!」

 

 ベルは距離を取ると再び逃げる。

 

 攻撃範囲こそ広いが、エルディンの【幻影】に比べたら、はるかに遅い。

 まだ2日しか修行をしていないが、確実にベルの攻撃を見切る力は上達していた。

 

(このまま時間を稼げば、きっとエルディンさんが助けに来る)

 

 ベルの心に希望が湧いてくる。

 シルバーバックが跳躍する。

 ベルは真横に飛ぶ。

 シルバーバックが着地した場所が大きく陥没する。

 ベルはシルバーバックに注意しつつ、着地する。

 

「うわ!?」

 

 しかし、運が悪かった。

 着地した場所には、油が漏れ出しており、ベルは体勢を大きく崩された。

 その瞬間を、シルバーバックが見逃すはずもない。

 勢いよく腕が振われる。

 ベルは勢いよく吹き飛ばされ、壁に体を打ちつける。

 

「かはっ!?」

 

 攻撃を受けた瞬間、咄嗟に後ろに飛んで、衝撃を逃したおかげで致命傷にはならなかったが、先程までの動きができる状態ではなくなった。

 よろよろと立ち上がる。

 シルバーバックがゆっくり近づいてくる。

 

「神様、ちゃんと逃げられたかな?」

 

 ベルがヘスティアの心配をする。

 

(神様さえ助かってくれればそれでいい。

 きっとエルディンさんなら神様を助けてくれる)

 

 死ぬのは怖いが、大切な人を守って死ねることをベルは誇りに思った。

 

(エルディンさん、神様をよろしくお願いします)

 

 シルバーバックが手を振りかざす。

 ベルが目を瞑る。

 

「…ベル君!!」

 

 ベルを呼ぶヘスティアの声が響いた。

 

<おまけ>

 

 シェオゴラス

「なんと!? 新しい世界を見つけたぞ!? 

 この世界をチーズまみれにしてやろう! 

 せっかくだから、他の奴らも誘うか!」

 

 ハルメアス・モラ

「新しい世界…私に知らないものがあるのは許されぬぞ」

 

 モラグ・バル

「神が地上にいるだと!? 

 いいだろう! 犯し尽くしててやる!」

 

 サングイン

「おう、オラリオには俺の知らない酒があるのか? 

 是非とも飲んでみたいものだ!」

 

 ハーシーン

「ダンジョンの中で行われる狩り…楽しみだ」

 

 アズラ

「シェオゴラス…また面白いことを始めましたね」

 

 ノクターナル

「あの世界に私のナイチンゲールを送るの? 

 …見守らなくちゃ」

 

 クラヴィカス・ヴァイル

「血による契約…そういうのもあるのか」

 

 他の奴ら

「シェオゴラスがまたおかしなこと言ってるよ」

 

 メエールンズ・デイゴン

「なんか、シェオゴラスが騒がしいな…。

 まあいい、次のタムリエル侵攻はいつだ!」

 

 こんなやりとりがあったかもしれないというお話。




ジェイ・ザルゴのクエストにはそんな思惑があったという回想でした。

怪物祭編は長くなってしまい、まさかの三分割。
ドヴァキンは強い人物も好きですが、ベルやレフィーヤのように、弱くても成長を見せてくれる人物はもっと好きです。

ふと気になったのですが、皆さんの中にスカイリム全く知らないけど読んでるよ!
という方はいるのでしょうか?
よければコメントで教えてくださいね。

ドヴァキンの強さってダンまちの世界だと、どれくらいのLv.だと思いますか?(ドヴァキンは全スキルを習得済みとします。)

  • Lv.8以上
  • Lv.7
  • Lv.6
  • Lv.5
  • Lv.4
  • Lv.3
  • Lv.2
  • Lv.1
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