ダンジョンで叫ぶのは間違っているだろうか   作:マザハール

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今回は回想ではありません。

倒れたエルディン。
シルバーバックに追い詰められたベル。
ベルを呼ぶヘスティアの声。
そして、ロキが囁いた言葉とはいったい?
怪物祭編完結です。


第十五話 怪物祭③

<回想? >

 

 元素の間に様々な種族の若者が集まり、アークメイジの昔話を聴いていた。

 アークメイジの話が終わると、皆次々に質問を始める。

 

「ドラゴンボーンはどんな人でしたか!?」

「帝国を裏切った後、ドラゴンボーンは何をしていたんですか!?」

「先生はドラゴンを見たことがありますか!?」

 

 質問の応酬にジェイ・ザルゴはうんざりしはじめた。

 

「ドラゴンボーンは【黒檀の戦士】に殺されたというのは本当ですか?」

 

 そんな中、一人のノルドの質問に、ジェイ・ザルゴの髭がピンと立ち、咳払いををする。

 皆が静まり返るのを確認して、ジェイ・ザルゴは質問に答えた。

 

「ああ、ドラゴンボーンは【黒檀の戦士】との決闘に敗れ、殺された。それは間違いない。

 …我が友、エルディンはもうこの世にいないのだ」

 

 ジェイ・ザルゴの悲しげな表情を見て、誰も言葉を出せない。

 

「さて、今日の話はおしまいだ。

 皆も日々研鑽を重ねて、立派な魔術師になるのだぞ」

 

 そう言って、ジェイ・ザルゴは元素の間を出る。

 

 アークメイジの部屋に入り、机に座る。

 机には分厚い紙の束が置いてあり、近くの本棚にはジェイ・ザルゴが執筆した書籍が置かれている。

 

『カジートにも解る魔術の全て ジェイ・ザルゴ』

『脳筋ノルドのための変性魔法 ジェイ・ザルゴ』

『盗賊必見! 幻惑魔法のススメ ジェイ・ザルゴ』

『主婦待望! 家事に使える付呪 ジェイ・ザルゴ』

 

 そして、近くの椅子には黒髪の綺麗な女性が微笑みを浮かべて座っていた。

 

(…!?)

 

 ジェイ・ザルゴは思わず二度見する。

 

「セラーナ! 久しぶりじゃないか!」

 

「久しぶりですわ。

 アークメイジになったようですわね」

 

「何もいいことはないよ。

 学長といえば聞こえがいいが、実際は事務・雑務・政治事ばかりだ。

 ファラルダ先生が譲りたくなるわけだ」

 

 ジェイ・ザルゴは渋い顔をする。

 

「ところで、何か用か? 

 エルディンがいないようだが?」

 

「そう、そのエルディン様のことであなたに会いに来たのですわ。

 あの方はここに来ませんでしたか? 

 旅の途中で突然消えてしまいまして…」

 

「なるほど、それでジェイ・ザルゴを訪ねてきたのか。

 …残念だが、ここには来ていないぞ」

 

 ジェイ・ザルゴが答えると、セラーナは項垂れる。

 

「そうですか…」

 

「おおかた、デイドラ王の誰かが拉致したんじゃないか? 

 心配せずとも、そのうち戻ってくるだろう」

 

 エルディンはいつもそうだ。

 

「そうだといいのですが…」

 

 ジェイ・ザルゴはセラーナに訊きたいことがあったため、質問する。

 

「…ところで、セラーナ。

 吸血鬼の治療について、エルディンにはまだ…?」

 

「ごめんなさい。

 まだ隠しておりますわ。

 …もう少しお待ちいただけませんか?」

 

 セラーナが困ったように笑う。

 

「今はもう少し、あの方と旅を続けたいですわ。

 そして、気が済みましたら吸血鬼の呪いを治療して、共に老いる道を歩みますわ」

 

(まったく。エルディンもとんでもない娘に惚れたものだな)

 

 ジェイ・ザルゴは行方知らずの友人の行先を憂いて、自慢の髭を撫でた。

 

 *

 

<ダイダロス通り>

 

「ベル君!!」

 

 ヘスティアの声がして、シルバーバックが止まる。

 ベルも目を開け、声のした方を向く。

 

(ああ、よかった。

 エルディンさんが来てくれたのか)

 

 そう思って見るとヘスティア一人しかいない。

 

(どうして!?)

 

 シルバーバックがヘスティアの方へ走り出す。

 

「へ? …うわわ!?」

 

 ヘスティアが慌てる。

 ベルは痛む体を無理やり動かし、走り出す。

 シルバーバックを追い抜き、ヘスティアを抱えると跳んで回避する。

 シルバーバックは標的を見失い、そのまま壁に激突する。

 周囲に塵が蔓延する。

 

「あ、危なかった…。

 助かったよベル君」

 

 ヘスティアが汗を拭う。

 

「どうして…どうして戻ってきたんですか!? 

 どうしてエルディンさんを連れて来なかったんですか!?」

 

 ベルは思わず声を荒げる。

 ヘスティアはそんなベルに笑顔で答える。

 

「馬鹿だなあ、ベル君は。

 …僕が君を置いて逃げるわけないだろ?」

 

「ッッ!?」

 

 ベルの目が潤む。

 

「約束したじゃないか。

 僕と君はずっと一緒さ」

 

 ヘスティアがベルの頬に手を当てる。

 

「…でもこのままじゃ二人ともやられちゃいます! 

 エルディンさんもいないのに一体どうしたら…」

 

 ベルが泣き始める。

 

「そんなの決まっている。

 君があのモンスターを倒せばいいんだ!」

 

 ヘスティアの言葉に、ベルは目を見開くが、すぐに項垂れる。

 

「…無理です。僕にはあのモンスターを倒せません」

 

 *

 

 周囲に舞っていた塵が薄くなり始めた。

 シルバーバックが二人を見つける。

 

「ルオオオ!!」

 

 シルバーバックの方向に、ベルが顔を上げる。

 

(とにかく今は神様を連れて逃げなければ!)

 

 しかし、先程のように手を引いて逃げていたらまたすぐに追いつかれてしまう。

 考えた末、ベルはこの方法しかないと決心する。

 

「神様…失礼します!」

 

 ベルはそう言うと、ヘスティアをお姫様抱っこする。

 

「へ?」

 

 突然のことにヘスティアは思考停止する。

 

 ベルはヘスティアを抱えたまま逃げ始める。

 シルバーバックが後ろを追ってくる。

 

「すまない、ベル君。僕はこんな状況なのに、心から幸せを感じてしまっている…!」

 

「もう、何言ってるんですか神様!?」

 

 訳の分からないことを言うヘスティアを抱えてベルは走り続けた。

 

「ベル君、そこを曲がって!」

 

「! …はい!」

 

 神様に言われて、右に曲がると、小さな広場に出る。

 しかし、その先の道に入ると、行き止まりだった。

 

「っ! …そんな」

 

 ベルが絶望する。

 

「いや、好都合だ。

 ここであのモンスターを迎え撃つ!」

 

 ヘスティアは地面に下ろしてもらうと、抱えていた包みを開け始める。

 

「…僕の攻撃は奴に通用しません。

 それに武器だって…」

 

「武器ならあるさ! 

 …いいかい。今から君のステイタスを更新する。

 これで奴を倒す力が手に入るはずさ。

 そしてこれを使うんだ!」

 

 そう言ってヘスティアはベルに漆黒のナイフを渡す。

 ベルがそのナイフを手に取ると、ナイフはベルに呼応するように光り始める。

 

「…エルディン君が言ってたよ。

 必ずベル君を英雄に育てるって。

 君が憧れる彼が君のことをそう言ったんだ。

 君のことを信じてるんだよ」

 

(エルディンさんがそんなことを?)

 

「それに僕だって君のことを信じてる。

 君は必ず奴を倒せる。僕が君を勝たせてみせる」

 

 ベルは涙が出てきた。

 それは先程までの恐怖や悔しさの涙ではない。

 

「僕を信じてくれ」

 

 *

 

「グルル…」

 

「来ました…!」

 

 ステイタスの更新が完了する間際、シルバーバックが現れる。

 

「さあ、行ってこい、ベル君!」

 

「はいっ、行ってきます!」

 

 ベルが【ヘスティア・ナイフ】を持ってシルバーバックに接近する。

 

 …思い出せ。

 エイナさんが言っていた。

 モンスターの急所。

 魔石。

 どんなモンスターでも、心臓部となる魔石を砕かれたら死に至る。

 

 ベルはシルバーバックの胸に狙いを定める。

 シルバーバックが腕を振るう。

 もう完全に動きは見切った。

 回避し、その動きに連動して一太刀入れる。

 ベルのナイフを粉々に砕いた腕があっさりと切れる。

 

「すごい、このナイフ!」

 

「ナイフだけじゃない! 君自身が強くなっているんだ!」

 

 ヘスティアが歓喜する。

 このままいける。

 ベルはシルバーバックの懐に入り込む。

 

(エルディンさんによく踏み込みが浅いと言われた。

 恐怖で躊躇して踏み込みが浅くなると)

 

 ベルは恐怖を乗り越え、さらに半歩踏み込む。

【ヘスティア・ナイフ】がシルバーバックの胸を貫き、魔石に届いた。

 

 *

 

(体が重い)

 

 エルディンは夕焼けに染まる道を気怠げに歩いていた。

 結局、レフィーヤに回復魔法をかけたところで魔力が尽きてしまい、いわゆる精神疲弊(マインドダウン)を起こしてしまった。

 その後数秒間、意識が無くなったが、無意識のうちに【魔力変換】を行ったらしく、生命力を糧に精神が回復し、目を覚ましたのだ。

 おかげで、生命力を消費した体が疲労を訴えている。

 

 ちなみに目を覚ました時、レフィーヤが顔を真っ赤にしながら膝枕をしており、動けるようになってからも、しばらく寝かされていた。

 

 先ほどやっと解放されて、ホームに帰ろうとしたところでシルの財布を預かっていたことを思い出し、豊穣の女主人へ向かっていた。

 

 道中、今後の身の振り方について考える。

 まず優先するべきはロキファミリアとの関係構築だ。

 ロキに言われた言葉を思い返す。

 

「明日の夕方、ウチのホームを訪れてや。

 歓迎するで、【ドラゴンボーン】…」

 

 ロキはエルディンの正体を知っている。

 おそらく、デイドラ王の誰かが接触したのだろう。

 ヘスティアが口を滑らせた可能性も否定できないが。

 

(ロキはどこまで知っている? 

 仮にデイドラ王が接触したなら、何を話す? 

 そして、ロキは私が異分子だと知ったらどうする?)

 

 考えるが、頭が回らない。

 わざわざ招待するということはすぐに殺すことはしないだろう。

 最悪、全員返り討ちにしてしまえばいい。

 

 回らない頭で思考に耽っているうちに店の前にたどり着く。

 中に入ると、リューとシルがこちらに気がつく。

 

「エルディンさん!?」

 

 シルが慌てて寄ってくる。

 

「すまなかった。

 お前の財布を預かっていたんだが、色々あって…」

 

「そんなことより、大変なんです! 

 ヘスティア様が倒れてしまって!」

 

「…何があった?」

 

 エルディンは事情を聴くと、ヘスティアとベルがいる部屋へ向かった。

 

 *

 

「ベル。大丈夫か?」

 

「あ、エルディンさん…」

 

 エルディンは部屋の前でベルが座り込んでるのを確認する。

 

「僕は大丈夫です。

 神様は…」

 

 その時、ドゴッ! と部屋の中で音がする。

 

 エルディンはすぐさま部屋に入る。

 

「どうした、ヘスティア!?」

 

 部屋の中には、ベッドから転げ落ちて倒れているヘスティアがいた。

 

「…何している?」

 

「立ち上がろうと思ったんだけど、足に力が入らなくて…」

 

「神様、いったい今日まで何してたんですか?」

 

 そこからは三人それぞれが今日あったことを話した。

 エルディンは、ベルがシルバーバックを倒した話を聞いた時は褒め称えたが、自分が来るまでの時間稼ぎに命をかけたことをヘスティアから聞いた時はこっぴどくベルを叱った。

 

 エルディンはロキファミリアと共闘して、謎のモンスターと戦ったことを話した。

 そして明日、ロキファミリアの本拠地に呼ばれたことを明かした。

 一応ヘスティアに口を滑らせていないか確認したが、レベルはバレてしまったけど、ドラゴンボーンの名とエルディンの正体については神に誓って言っていないとのことだった。

 

 そして三人は今後の方針について話した。

 エルディンはロキの対処。

 ヘスティアは明日からのバイトについて。

 そして、ベルが明日からのダンジョン探索について話した時、エルディンが発した言葉に二人は愕然とした。

 

「…ベル、明日以降、

 お前とのパーティを解消する」

 

 




ジェイ・ザルゴは大成したよ。

ちなみに書籍の内容は
一冊目は魔法全般に関する見解書。
ジェイ・ザルゴの魔術師としての集大成。
二冊目は戦争における変性魔法の重要性を説いた本。
三冊目は一人の幻惑使いの盗賊(ドヴァキン)の成功から
幻惑術の有用性を考察した本。
四冊目は付呪の基礎をまとめた本。
この本により、付呪がスカイリムの一般家庭に浸透した。

となっております。

ドヴァキン精神疲弊するの早くね?
と思ったかもしれません。
日光と、ウルガ、ライトニングテンペストのせいです。

補足①ドーンガードのストーリーについて
ドヴァキンはドーンガード側を選んで、
ハルコンと戦いました。
中盤、ソウルケルンに入る為に、
セラーナから血を分けてもらって吸血鬼になります。
本来であれば吸血鬼の治療をしなければストーリーが
進行しませんが、この物語では治療無しでストーリーが
進んだと改変しております。
つまりドヴァキンは治療をしたことがありません。

補足②黒檀の戦士について
第四話の後書きで間違えてしまったのですが、
ハルコンの前に黒檀の戦士を倒しています。

あと、ドヴァキンのレベルについて
ミラーク、アルドゥイン、黒檀の戦士、ハルコンの四人を
倒したのが偉業達成とみなされて、Lv.5になったのでは?
と後付けで思いつきましたが今更ですね。

ドヴァキンの強さってダンまちの世界だと、どれくらいのLv.だと思いますか?(ドヴァキンは全スキルを習得済みとします。)

  • Lv.8以上
  • Lv.7
  • Lv.6
  • Lv.5
  • Lv.4
  • Lv.3
  • Lv.2
  • Lv.1
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