ダンジョンで叫ぶのは間違っているだろうか   作:マザハール

20 / 25
今回はリリが登場します!



第二十話 サポーター

<回想>

 

 あるところに一人の男がいました。

 その男は剣技に優れ、魔術に長け、強力なスゥームの持ち主でした。

 男は世界中を渡り歩き、様々な強者と戦い、打ち勝ってきました。

 屈強な戦士、高名なメイジ、強力なモンスター、そしてドラゴンでさえ、彼を殺すことができませんでした。

 しかし、男が求めたものは勝利ではありませんでした。

 男は死後の世界を信じていました。

 男は死後、ソブンガルデへ行くことを強く願っていました。

 

 男は死を望んでいました。

 

 *

 

「うあああ!?」

 

 今日もベルの悲鳴で目を覚ます。

 未だに慣れないのか、ヘスティアに抱きつかれて顔を真っ赤にしている。

 

「おはよう、ベル」

 

「お、おはようございます…じゃなくて、助けて…!」

 

 ベルを無視して、朝食を作る。

 今日は焼いたパンに、目玉焼き、野菜のスープだ。

 まだ起きないヘスティアをおいて先に朝食を済ませ、準備を始める。

 先にベルが準備を終わらせる。

 エルディンが準備するのを待っているが、早く行きたい気持ちで若干落ち着きがない。

 

「ベル、待ってる必要はないぞ。先に行くがいい」

 

「そ、そうですか? じゃあ行ってきます!」

 

 エルディンが気を利かせると、ベルは誤魔化すように笑った後、先に出て行った。

 

「まったく。新しい装備で嬉しいのは分かるが、もう少し落ち着きを持てないものか」

 

 そう言いつつも、エルディンの顔には笑みが浮かんでいる。

 エルディンは初めてオオカミの鎧を着た時のことを思い出す。

 父と同じ装備を使うという喜びと、同胞団の一員としての誇りで胸が高鳴ったものだ。

 

「おはよー、エルディン君。…ベル君はもういないのか」

 

 ヘスティアがベッドから体を起こす。

 

「おはよう、ヘスティア。朝食を用意するか?」

 

「頼むよー」

 

 エルディンは作っておいた朝食を用意する。

 ヘスティアと二人きりになることはステイタス更新の時以外はほとんどない。

 エルディンは前からヘスティアに訊きたかったことを思い出す。

 

「…ヘスティア。少しいいか」

 

「なんだい、改まって?」

 

「前から訊きたかったんだが…」

 

 ヘスティアは彼が真剣な顔をしていることに気づき、エルディンと向き合う。

 エルディンは少し躊躇いがちに言葉を続けた。

 

「…この世界で…」

 

 *

 

 ベルはバベルの塔近くの広場にいた。

 先に出てきたが、エルディンが今日何をするか聞いていなかったため、待つことにしたのである。

 何の気もなしに待っていたベルに声がかけられる。

 

「お兄さん、お兄さん。白い髪のお兄さん」

 

「え?」

 

 声のした方に振り向くが、誰もいない。

 

「お兄さん、下、下ですよ」

 

 そこには身長およそ百Cの少女が立っていた。

 背中にはその体より二回りも大きなバックパックを背負っている。

 ベルはその子を見て昨日のいざこざを思い出す。

 冒険者の男に追われていた小人の女の子を助けたのだが、その子にそっくりなのだ。

 その場に居合わせたリューのおかげで男の方は退いたのだが、助けた女の子もいつのまにかいなくなっていた。

 

「き、君はっ?」

 

「初めまして、お兄さん。突然ですが、サポーターなんか探してたりはしませんか?」

 

 ベルは少女と話をする。

 要約すると一人で立ち尽くしてため、サポーターを探していると思い、売り込みに来たらしい。

 ちなみに、ベルとは初対面とのことだ。

 

「それで、お兄さん、どうですか? サポーターは入りませんか?」

 

「えーと、できればサポーターは欲しいなって思ってたんだけど…」

 

「どうかしました? リリに何か落ち度でも?」

 

「いや、そうじゃなくて…」

 

 ベルがどう説明しようか悩んでいると、

 

「ベル。何をしている?」

 

 後ろから突然声がかけられる。

 

「うわあ!?」

 

 ベルが飛び上がり、振り向く。

 後ろにエルディンが立っていた。

 

「びっ、びっくりした! エルディンさん! 驚かさないでください!」

 

「別にそんなつもりはなかった。後ろに立たれても気づかないお前が悪い。まだまだ修行が足りないな」

 

 エルディンがニヤリと笑う。

 

「あ、あの、お兄さん、こちらの方は?」

 

 少女が困惑して尋ねる。

 ベルは蚊帳の外になった少女に説明する。

 

「えっと、この人は僕のパーティの…」

 

「パーティではない」

 

「ちょっ、説明を遮らないでください」

 

 ベルが慌てるが、エルディンは無視する。

 

「それより、この小娘はなんだ?」

 

 エルディンが少女を睨む。

 その眼光に怯えて少女が後ずさる。

 

「えっと、この子は…そういえば、まだ名前も聞いていなかったね。僕はベル・クラネル。こちらは僕のパ…僕と同じ眷族のエルディンさん。君の名前は?」

 

「リリはリリルカ・アーデと言います。見てのとおり、サポーターをしております」

 

「エルディン・ホワイトメーンだ。…サポーターとはなんだ?」

 

 エルディンが尋ねる。

 

「サポーターとは、冒険者様の代わりに武器や回復薬などを持ったり、魔石やドロップアイテムを集める役割の人です。冒険者様が戦いに専念できるように補助を行うのがリリの仕事です」

 

「なるほど。それでベルがサポーターを探していると思い、話しかけたと」

 

「その通りです。…それで、いかがでしょうか?」

 

「えっと、エルディンさん、どうしましょうか?」

 

 ベルがエルディンな意見を訊こうとする。

 

「私に訊くな。お前が誘われているのだから、お前が判断するといい」

 

 ベルが判断するべきことなので、エルディンは突っぱねた。

 ベルは少し考えた後、答える。

 

「えっと、じゃあとりあえず今日だけリリルカさんにお願いしようかな?」

 

「はい、それではよろしくお願いします! それと、リリのことはリリで大丈夫ですよ。それじゃあ、早速行きましょう」

 

 そう言ってリリはバベルの方へ向かう。

 ベルが後を追いかけ、最後にエルディンがゆっくりと歩き始める。

 先頭を歩くリリは怪しげに笑みを浮かべるのだった。

 

 *

 

「はあああっ!!」

 

 ベルがナイフを振る。

 ナイフは後も簡単にキラーアントの首を切り裂く。

 そのままニ、三とキラーアント、パープルモスの群れを倒していく。

 

「ベル様! 後ろ!」

 

 リリの声にベルが振り向く。

 リリの近くで二体のキラーアントが生まれる。

 すぐに戻ろうとするが、後ろからキラーアントが飛びかかってくる。

 ベルは跳躍して避けるとともに、リリの近くのキラーアントに飛び蹴りを浴びせる。

 ベルの攻撃により、一体のキラーアントは壁に埋もれたまま、首が折れた。

 もう一体のキラーアントにも攻撃しようとすると、キラーアントに雷撃が飛んで、一瞬で灰になった。

 

「ありがとうございます! エルディンさん!」

 

 ベルは前方の敵に向き直り、突撃する。

 程なくして、モンスターの群れは一掃された。

 

「ベル様、お強い〜」

 

「リリルカさんのおかげでだいぶ動きやすいよ」

 

 そうして、リリのサポートのおかげもあり、あっという間に魔石が貯まる。

 

「なるほど、確かに便利なものだな」

 

 エルディンが感心する。

 リリの動きは手際も良く、きちんと周囲を見る目も持っている。

 

「そうですね! やっぱり、動きやすさが段違いですよ」

 

「ベルにもあれくらい周りを見る目が必要だ。単独の戦闘力は上がっているが、リリのことも意識して戦わなければな」

 

「う、うぐ…」

 

 痛いところを突かれてベルが口を噤む。

 

「そんなことありませんよ、エルディン様。ベル様はとてもお強いですよ」

 

 リリがフォローする。

 ベルはリリの褒め言葉に少し気分を良くしたが、同時に『ベル様』という呼び方にむず痒くなった。

 

「あ、あの、リリルカさん。その『ベル様』っていうはちょっと…?」

 

「いいえ、こればかりは譲れません。仮契約とはいえ、ベル様、エルディン様とリリは冒険者とサポーターの関係です。上下関係をはっきりするためにもサポーターは冒険者にへりくだらないといけないのです」

 

「いや、でも、リリルカさん…」

 

「それと、リリのことはリリとお呼びください。他の呼び方でもいいですがさん付けはだめです」

 

「そ、そんな呼び方ぐらいで…」

 

「いいですか、ベル様。サポーターとは聞こえがいいですが、要は荷物持ちです。命懸けで戦う冒険者様からすれば、安全なところから傍観している臆病者です」

 

「っ!? そんなこと…」

 

「ですから、冒険者と、サポーターを同格に見てはいけないのです。ベル様がお優しいのは会ったばかりのリリにもわかります。その気持ちだけでリリは嬉しいです。慣れないことを強要しますが、お願いします」

 

「…わかったよ、リリ」

 

 ベルはまだ納得がいかなかったが、呼び方を変える。

 

「エルディン様もそういうわけですから、リリのことはただの荷物持ちとして考えていただいて構いません」

 

「お前がそれを望むのならのならそうしよう、アーデ」

 

 エルディンが頷く。

 

「それにしても本当にベル様はお強いですね。まだ冒険者になって一ヶ月も経っていないのに、キラーアントを圧倒するなんて」

 

 再びリリが褒め始める。

 

「い、いやあ、それほどでも。エルディンさんの特訓のおかげですね」

 

「アーデ、あまりベルを褒めるな。まだまだ未熟な部分が多い。それに武器に頼っているところもある」

 

「確かに、その武器もすごいですね。どこで手に入れられたのですか?」

 

 リリの目が一瞬きらりと光る。

 

「これは神様…ヘスティア様が僕に贈ってくれた大切なナイフなんだ。不思議なくらい体に馴染むから僕も驚いているんだけど…」

 

【ヘスティアのナイフ】については、エルディンも興味を持っていた。ベルから借りて払ってみたが、形状や重心の位置など、扱いやすさは神掛かっているものの、肝心の切れ味は鈍過ぎてバターも切れないと言われそうなほどだ。

 とてもキラーアントを容易に切り裂くことができるようには思えない。

 何か秘密があるのだろうか。

 

「まあ、とにかく、ベル様のおかげでこんなにモンスターを倒せたのですし、魔石を取り出しましょう!」

 

 リリはそう言うと手際良く魔石を取り出していく。

 エルディンは後方から敵が来ないように見張りをする。

 ベルはリリの手際の良さに感心して後ろに気を配っていなかった。

 背後から突然パープルモスが現れる。

 

「うわっ!?」

 

 パープルモスはベルに対して鱗粉を飛ばす。

 ベルは咄嗟に避けて、反撃をする。

 ベルの一撃でパープルモスは灰となった。

 

「べ、ベル様! 大丈夫ですか?」

 

「う、うん。ちょっと鱗粉を吸ったけど…」

 

「とりあえず、無事で良かったです。早めに魔石を集めましょう」

 

 リリがバックパックからショートソードを取り出す。

 

「さあ、そちらの壁に埋まったモンスターはベル様がお願いします。こちらの剣の方が取り出しやすいですよ」

 

「ありがとう、リリ」

 

 そうして、ベルが魔石を取り出そうとする。

 リリは大量のモンスターから魔石を抜き取りつつ、エルディンの様子を見る。

 エルディンは後ろを向いており、こちらの様子を気にする素振りは全く無い。

 リリは魔石を取り出すのに苦戦しているベルに気付かれないように近づき、腰に収められたヘスティアのナイフを素早く抜き取る。

 

(ちょろいですね)

 

 リリはナイフを懐にしまうと何事もなかったかのように魔石の抜き取り作業に戻る。

 実は昨日のいざこざでベルの持っていたナイフの価値を知ったリリはベルに近づき、盗んでお金に変えようと画策していた。

 ベルの他に仲間がいたことは想定外だったが、リリを警戒する素振りがなかったため、あっさりと盗めてしまった。

 これで後は地上に出て、おさらばすればミッション完了である。

 

「ベル様、エルディン様、少し早いですが、今日は戻りましょう」

 

「え、どうして? まだ余裕があるけど…」

 

「今日はお試しということですし、それに先程ベル様が受けた攻撃は放っておくと、毒がが体に回ってしまいます」

 

「ええ、本当に!?」

 

「ええ、生憎解毒剤は持っていませんので一刻も早く地上に戻りましょう」

 

 リリの話を聞いて、ベルが青ざめる。

 ちらりとエルディンを見ると、腕組みをしてベルの方に顔を向けている。

 

「あの…エルディンさん。そういう訳なので、早いですが地上に戻りましょうか?」

 

「判断するのはお前だ、ベル。…だが、後で何故接近に気づかなかったか、説明してもらおうか」

 

「うう…」

 

 兜で表情は見えないが、声の調子で叱責するつもりなのはわかった。

 

「すまないな、アーデ。ベルが下手をうったせいで早めに戻ることになってしまって」

 

「リリは別に構いません。どのみち、お試し期間ですので」

 

「それでは地上に戻ろう。万が一のことを考えて、私が先導する」

 

「お願いします、エルディンさん」

 

 *

 

 エルディンが先頭に立っていたこともあり、帰り道に出会ったモンスターはことごとく灰にされていった。

 何もやることはなかったリリは、エルディンのことをベルに尋ねていた。

 

「ベル様、エルディン様はいったい何者なのですか?」

 

「エルディンさんは僕と同じファミリアで、僕の師匠みたいな人かな?」

 

「そうなのですか。上層に似つかわしくない実力なのですが、レベルは幾つなのですか?」

 

「えっと…」

 

「ベル、毒は大丈夫か? もうすぐ地上に出れるが、油断はするな」

 

 ベルの声を遮り、エルディンが言う。

 

「は、はい!」

 

 そうして、程なく地上に出た。

 日はまだ高い位置にあった。

 

「本日はありがとうございました。報酬ですが、本日の分は全てベル様達が収めてください」

 

「ええ、そんなの悪いよ! リリがタダ働きになっちゃうよ!」

 

「いいのです。これでベル様とエルディン様の信頼を得られるのなら安い物です」

 

「…アーデ、いくら何でも報酬が無いのは悪い。これをくれてやる」

 

 そう言ってエルディンはリリに小さな包みを渡す。

 

「適当な店で換金するといい」

 

「あ、ありがとうございます。…それでは、ベル様、ゆっくり考えてくださいね」

 

 そう言ってリリは離れていった。

 

「さて、ギルドに行って魔石を換金しようか」

 

「はい。…あの、エルディンさん。少し相談が…」

 

「アーデのことか?」

 

「はい。リリのことどう思いますか?」

 

「お前はどう思っているのだ?」

 

 エルディンは質問で返す。

 ベルが何を考えているかなんとなく察していた。

 

「そうですね。…ダンジョンの知識も豊富で、手際も良かったですし、できればこれからもお願いしたいのですが…」

 

「…何か思うところがあるのか?」

 

 ベルは少し沈黙した後、話し出す。

 

「なんというか、冒険者に対して快く思っていないように見えました。言葉に棘があるというか…」

 

「そうか。…言っておくが、決めるのはお前だ、ベル。アーデに何かあって、ベルがそれをなんとかしたいと思うなら仲間に引き入れるといい」

 

「…はい!」

 

「よろしい。…さて、私は夕飯の買い出しをしてくる。悪いが換金を頼む」

 

「わかりました!」

 

 そう言ってベルはギルドの方へ駆け出した。

 

(さて、行くとするか)

 

 エルディンはベルが見えなくなるのを確認した後、用事を済ませるべく大通りを進んだ。

 

 *

 

(いったい、どういうことでしょうか?)

 

 ノームの店を出たリリは表情を曇らせていた。

 ベルから盗んだナイフ。

 どう見ても値打ち物のはずだが、鑑定の結果はわずか三十ヴァリス。

 危険を冒してまで手に入れたのに、あまりにもリターンが少ない。

 なんならエルディンにもらった指輪の方が高く売れてしまった。

 

(仕方がありません。他に高く売れる店を探しましょう)

 

 裏路地を進んだリリは前方の二人組に気づく。

 片方は昨日会ったエルフの女性だった。

 さっとナイフを懐に隠し、通り過ぎようとする。

 

「…そこの小人、待ちなさい」

 

「ッツ!? …リ、リリに何か用ですか?」

 

「あなたが今隠したナイフ…少し見せていただけませんか? 友人の持っている物に似ているので確認させてください」

 

「リ、リュー?」

 

「な、何を言っているのですか? これはリリのナイフです」

 

「抜かせ、神聖文字(ヒエログリフ)が刻まれたナイフの持ち主など、私は一人しか知らない!」

 

 リリは硬直して動けなくなる。

 リューの威圧感はそれほどまでに強い。

 必死の悪あがきで逃走を試みる。

 

 エルフの女性、もといリューはリリに向かって何かを投げる。

 何かはリリの顔を掠め、壁に当たって爆散した。

 それはただのリンゴだった。

 

「なっ!?」

 

 どうやったらリンゴが爆散するのか。

 

「腹に力を込めた方がいい」

 

 リューはリリの脇腹に蹴りを入れる。

 リリはボールめいて大通りに吹っ飛んだ。

 

「うわっ!? リ、リリ!?」

 

【ヘスティアのナイフ】を探して大通りを走っていたベルは突然飛び出してきたリリに驚いた。

 

「ど、どうしたの?」

 

「ベル様…少し野犬に襲われまして…」

 

「クラネルさん!」

 

「えっ!? 今度はリューさん!?」

 

「その者を渡しなさい!」

 

「え、どうしたんですか、いきなり!?」

 

 リューはリリのフードを乱暴に取る。

 

「犬人?」

 

「えっと、何が何だか…そうだリューさん! 僕のナイフを見ませんでしたか!? どこかに落としてしまったんですけど!?」

 

「これのことですか?」

 

 *

 

 そこからは感極まったベルが思わずリューの手を取ったり、リューが【ヘスティアのナイフ】を見つけた経緯を説明したり、シルがリリに耳打ちをしたりして四人は別れた。

 

 しばらく留まっていたリューとシルも店に戻ろうとする。

 

「さて、私達も行こう。食べ物を粗末にしたことはミア母さんには内緒にしておくね」

 

「恩に着ます。…申し訳ないのですが、先に行っててもらえますか? すぐに追いつきますので」

 

「ええと…、あまり遅くならないでね」

 

 そう言ってシルを先に店に戻らせる。

 リューはシルを見届けた後、自分が出てきた路地に目を向ける。

 

「出てきなさい」

 

「…やはり、お前は相当な実力者のようだな」

 

「あなたは…ホワイトメーンさん?」

 

 路地から現れたのはエルディンだった。

 リューは少し驚くが、すぐに表情を変える。

 

「あなたこそ、私にわざと気づかせるようにしましたね。それまではまったく気づかなかった」

 

(この男、やはり侮れない)

 

 リューはエルディンに対して警戒心を強める。

 対してエルディンは、両手を挙げて敵意が無いことをアピールする。

 

「別にお前と敵対したい訳では無いのだがな。私は礼を言いたかっただけだ」

 

「お礼…ですか?」

 

「ベルのナイフを奪い返してくれただろう。迂闊にもベルがナイフを盗まれたから、私が盗人の後を追っていた」

 

「クラネルさんがナイフを盗まれたことに気づいていたのですか? …何故その場で捕らえなかったのですか?」

 

「失敗はいい経験になる。これでベルも少しは警戒心を持つようになるだろう」

 

「…あなたは厳しい人だ」

 

 リューは呆れたように答えた。

 

「これからもベルに何かあれば助けてやってくれ」

 

「あなたに言われなくてもそうします」

 

 そう言ってリューはその場を後にした。

 

「…さて、あの小娘、どう落とし前をつけようか」

 

 一人残ったエルディンの顔には、はっきりと苛立ちの表情が浮かんでいた。




ソブンガルデを求める者はノルドだけではありません。
ドヴァキンと似た境遇を持つ男の話。

スリスキルを極めたドヴァキンの目の前で盗みを働くとは…。
ドヴァキンはリリに何を感じたのか。
次回に続く。

ドヴァキンの強さってダンまちの世界だと、どれくらいのLv.だと思いますか?(ドヴァキンは全スキルを習得済みとします。)

  • Lv.8以上
  • Lv.7
  • Lv.6
  • Lv.5
  • Lv.4
  • Lv.3
  • Lv.2
  • Lv.1
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。