ダンジョンで叫ぶのは間違っているだろうか   作:マザハール

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回想その二です!
皆さん予想している通り、黒檀の戦士の回想になります。

リリと二人でダンジョンに潜るエルディン。
エルディンはリリに何を思うのか。


第二十一話 気まぐれ

<回想>

 

 男の噂はタムリエル中に広がっていました。

 その風貌から男はいつしか【黒檀の戦士】と呼ばれるようになりました。

 男は周りからどう呼ばれようと気にしませんでしたが、噂のおかげで【黒檀の戦士】に挑む者が現れ、退屈しない日々を送っていました。

 

 ある時、【黒檀の戦士】はスカイリムで二つの噂を耳にしました。

世界を喰らう者(アルドゥイン)】の復活と【竜の血脈(ドラゴンボーン)】の覚醒の噂でした。

【黒檀の戦士】は彼らを探して、スカイリムで旅を続けました。

 

 数年の旅を経て、【黒檀の戦士】はついに【竜の血脈(ドラゴンボーン)】を見つけ出しました。

 彼はサルモールの部隊を一人で相手にし、見事に壊滅させていました。

【黒檀の戦士】は歓喜しました。

 ついに自分をソブンガルデに送ってくれる人に出会えたと思いました。

【黒檀の戦士】は大量の死体の中、悲しげに佇む【竜の血脈(ドラゴンボーン)】、エルディン・ホワイトメーンに決闘を申し込みました。

 激闘の末、【黒檀の戦士】と【竜の血脈(ドラゴンボーン)】の決闘は【黒檀の戦士】が勝利しました。

 しかし、【黒檀の戦士】はエルディンが消耗していることを見抜き、致命傷を負って倒れたエルディンに再度決闘の約束を取り付け、去っていきました。

 一人倒れたエルディンは笑い始めました。

 

 死体が溢れる戦場で、たった一人狂ったように笑い続けました。

 

 *

 

「やめてくれ! ナルフィは死にたくない! レイダにまだお別れを言っていない!」

 

 ボロ布を着た物乞いがエルディンに命乞いをする。

 目には恐怖が浮かんでいる。

 エルディンは短剣を振りかざす。

 止めようと思っても腕が勝手に動く。

 そのまま物乞いの首を掻っ切る。

 血が地面に流れる。

 物乞いは動かなくなる…

 

「来るなあぁ!! 化け物めえぇ!!」

 

 サルモールの高官が叫ぶ。

 恐慌状態になり、歯をガチガチと鳴らしている。

 怪我をして、碌に動けない状態でも必死に逃げようとする。

 エルディンは火炎魔法を放つ。

 肉の焼ける臭いと断末魔が響く。

 サルモールの高官は動かなくなる…

 

「やめろ! …セラーナ、何してる!? この化け物を止めろ!!」

 

 ハルコンが叫ぶ。

 自分の娘に助けを求めている。

 エルディンは弓を引き絞る。

 放たれた矢はハルコンの胸に突き刺さる。

 ハルコンが光に灼かれる

 ハルコンは動かなくなる…

 

 斬り殺す、焼き殺す、射殺す、喰い殺す…

 

 気付けばエルディンの足元は無数の死体で溢れていた。

 兵士、山賊、民…全てエルディンが殺してきた者達だ。

 死体から流れる血がエルディンの方へ流れてくる。

 まるでそれは濁流だ。

 死の川がエルディンを飲み込もうとする。

 エルディンはゆっくり沈んでいく。

 抵抗できない。

 血に飲み込まれる。

 やがて視界が暗転した。

 

 *

 

「…夢?」

 

 エルディンは目を覚ます。

 頬に手を当てると指先が濡れた。

 そっと身体を起こし、隠し部屋を抜ける。

 教会の椅子に座る。

 まだ涙が溢れてくる。

 

(俺が夢だと? …馬鹿馬鹿しい。ヴァーミルナに魅入られたか)

 

 可笑しくなってしまい、エルディンは自嘲する。

 昔ドーンスターで起こった事件で、かのデイドラ王に唆され、マーラの使徒を殺してしまったことがあった。

 今の夢の中には彼の死体もあった。

 

(何故、このような夢を…)

 

 吸血鬼になって数十年経ち、過去の出来事を夢で見ることは無くなった。

 最近見る夢と言えば、あの碌でもない【狂神(マッドゴッド)】からの呼び出しくらいである。

 

 エルディンは原因を考える。

 三つ原因が浮かぶ。

 

 一つ目はヘスティアやベルと出会い、戻ってくることのないと思っていた日常を過ごし、エルディン自身が急速に人間味を取り戻していることだ。それによって、らしくもない感傷に浸ってしまったのかもしれない。

 

 二つ目は昨日出会った、リリルカ・アーデという少女。

 あの少女が何を秘めているのかは分からないが、エルディンは少女の瞳が気に食わなかった。

 世界を恨んでいるかのような瞳。

 何かを諦めたような冷めた瞳。

 あの瞳は自身の過去を思い出させる。

 世界に絶望し、死を望み、幾多の戦場に身を投じていたエルディンも同じ目をしていた。

 

 三つ目は…

 

 そこまで考えてエルディンは思考を中断する。

 

(くだらない。今更後悔など…)

 

 エルディンは空を見上げる。

 天井から漏れる月明かりが涙を光らせた。

 

 *

 

 リリと正式にパーティを組むことにしたとの報告を、エルディンは前日にベルから聞かされていた。

 エルディンはそうなることを予想しており、気をつけるように忠告だけして、特に口出しはしなかった。

 

 エルディンは今日はダンジョンに臨む気分にならず、家で留守番をすることにした。

 ベルは今日も早朝に出掛けていった。

 少し遅めにヘスティアが起きる。

 バイト先が厳しいらしく、行きたくないと駄々をこねていたが、もちろんそんなことは許さず、無理やり外へ放り出した。

 

 そうして一人、手持ち無沙汰になったエルディンは前から欲しかった物を作ろうと思い、シェオゴラスから貰った宝箱を開ける。

 宝箱から取り出したのは木材、釘、布、ノコギリやハンマーなどの工具だ。

 切断、研磨、組み立て、彫り込み…

 手際よく作業を行う。

 そうして最初に作ったのはスカイリムでは誰もが知っている器具だ。

 テーブルと似た形状で、盤面には五角形と曲線の模様、五つの特徴的なシンボルが彫られており、水晶が置かれている。

 

 付呪台である。

 

 付呪は今や、スカイリムでは一般家庭にまで浸透している魔法の技術だ。

 武器や防具、装飾品に付呪をすることで、武器であれば属性攻撃を行うことができるようになり、防具であれば各耐性や能力を底上げすることができる。

 付呪には魂が込められた魂石が必要になるが、エルディンには一つ試したいことがあった。

 それは魂石の代わりにモンスターの魔石を代用できないかということだ。

 宝箱から魂石を取り出すことは可能だが、魔石が代用できれば供給面において、かなり都合がいい。

 

 まず、適当な指輪を台に置く。

 次にエルディンは袋から魔石を取り出す。

 まずは確認用に、上層で手に入れた魔石を台に置き、両手を付く。

 魔力を操作して、指輪に込める。

 台が模様に沿って輝き始め、魔石が崩れ始める。

 指輪に魔力を封じ込めると、魔石は灰となった。

 

(成功だ)

 

 エルディンは試みが上手くいき、喜んだのも束の間、指輪を手にして顔を曇らせる。

 

(これでは使い物にならないな)

 

 指輪には炎耐性の付呪を込めたが、完成したそれは極小魂石で作成したものにも劣るほど効果が低かった。

 その後も三回試したが、中層以降に出現するモンスターの魔石を使用しても中魂石程度しか効果が得られなかった。

 

(実用レベルの付呪をするには深層のモンスターの魔石が必要か)

 

 エルディンはそう結論付ける。

 魔石での付呪は一旦諦めて、魂石で衣服の付呪を始める。

 怪物祭(モンスターフィリア)での騒動の教訓を活かし、私服でも最低限の戦闘を可能とするために、魔力消費軽減と防御上昇、武器の攻撃力上昇など、戦闘向けの付呪を行った。

 

 次にエルディンはもう一つ作りたかった家具を作り始める。

 板を重ね、接着剤で貼り合わせる。

 布を上から貼り、ビスで留める。

 そうしてできた複数の板を組み立て、形を作る。

 そうして数時間後、それは完成した。

 

(我ながらいい出来だ)

 

 エルディンは完成したそれを満足げに眺める。

 時間と素材が余っていたため、その後も家具を作り続け、その日は過ぎていった。

 

 *

 

「ただいま帰りました!」

 

「おかえり、ベル。遅かったな」

 

「すいません、実はリリと一緒にご飯に行ってました」

 

「…そうか。上手くやれているか?」

 

「はい! 今日はたくさんお金が入りましたから神様にも…神様は?」

 

 ベルは部屋にヘスティアがいないことに気付く。

 

「ああ、そういえばまだ帰ってきてないな」

 

「バイトはもう終わってるはずですけど…何かあったんですかね?」

 

「まあ、そのうち帰ってくるだろう。…さて、少し早いが私は寝かせてもらう」

 

 そう言ってエルディンはソファから立ち上がる。

 

「あ、はいおやすみな…さ…い?」

 

 ベルはエルディンが向かった先を見てそれに気付く。

 

「え、ええ?」

 

 ベルが見た物、それは部屋の隅にひっそりと置かれた真っ黒な棺だった。

 ベルは見間違いかと思って目を擦るが、やはり棺がある。

 ベルが絶句しているのを尻目にエルディンが棺の蓋を開け、中に入ろうとする。

 

「あ、あの、エルディンさん、それはいったい?」

 

「見ての通り、棺だ」

 

「いや、僕が聞きたいのはなんで棺がここにあって、エルディンさんが中に入ろうとしているのかってことです!」

 

「もちろん寝るためだ。今日暇だったから一日掛けて作ったんだが、なかなか良い寝心地だぞ」

 

「いや、普通棺で寝る人はいませんよ!?」

 

「何を言ってる、ベル? 棺は『眠る』為のものだろう?」

 

「それ、意味違ってますよね!? 永眠ってことですよね!?」

 

 エルディンの冗談にベルが突っ込む。

 

「実際寝心地は良いし、場所も取らない、防音性も良好。かなり便利だぞ? 今度ベルの物も用意しようか?」

 

「…遠慮しておきます」

 

「そうか、それは残念だ。…ではおやすみ」

 

 エルディンはそう言うと、棺の蓋を閉めてしまう。

 

(もしかして、エルディンさんって…)

 

 今更ながら憧れの人がかなりの変人かもしれないと気付くベルであった。

 

 *

 

(よく眠れたな)

 

 棺の蓋が開けられ、中からエルディンが出てくる。

 昨日のように夢を見ることもなく、よく眠ることができた。

 起き上がったエルディンは部屋の中が酒臭いことに気付く。

 

「うう…」

 

 ベッドの上でヘスティアが呻いている。

 状況から察するに、昨日遅くまでお酒を飲み、二日酔いになっているのだろう。

 エルディンはまるでゴミを見るかのような目をヘスティアに向ける。

 

「おはようございます。エルディンさん。…神様、大丈夫ですか?」

 

「な、何があったか思い出せない…。ミアハと飲んでいたらローブを来た知らない男が飲み比べを仕掛けてきたのは覚えているんだけど…うう、頭痛い…」

 

(その男に心当たりがありすぎるな)

 

「放っておけ、ベル。何があったか知らんが、自業自得だ」

 

「うー、エルディンがゴミを見るような目で僕を見ている気がするよ」

 

 ヘスティアは本当に辛そうに頭を抱えている。

 

「エルディンさん、すいませんが今日は神様の看病をしますのでダンジョン探索はお休みします」

 

「そうか、アーデには私から伝えようか?」

 

「そうしてもらえると、助かります」

 

「わかった。ヘスティアを頼むぞ」

 

 エルディンは朝食と準備を済ませる。

 

「では、行ってくる」

 

「はい、行ってらっしゃい!」

 

「気をつけるんだよー、エルディン君…うぷ」

 

 二人に見送られて、エルディンはホームを出ていった。

 

 *

 

「…と言うわけだ」

 

「そうでしたか、そういうことであれば仕方がありませんね」

 

 バベルの塔の前でエルディンはリリにベルが休みであることを伝える。

 エルディンは少し考えると、リリに提案する。

 

「…アーデ、悪いが今日一日、私のサポーターをやってくれないか?」

 

「エルディン様のですか?」

 

「ああ、ベルから聞いたが、昨日は相当稼げたみたいだな。私も金が必要になりそうだからな。効率を考えればサポーターがいた方がいい。頼めるか?」

 

「リリは構いませんが…いったいどの層まで行くおつもりですか?」

 

「そうだな…十五階層辺りだろうか?」

 

 エルディンの回答にリリが慌てる。

 

「そ、そんなに深くまで潜るのですか? リリは戦闘ができませんのでエルディン様一人で戦うことになってしまいますが…」

 

「心配ない。私一人で全て蹴散らす」

 

「気になっていたのですが、エルディンはいったいレベルは幾つなのですか?」

 

「Lv.5だ」

 

「なっ!?」

 

 レベルを聞いて、リリが驚く。

 

「そういうことだ。お前一人守って戦うことぐらい、何も問題ない」

 

「わ、わかりました。では、よろしくお願いします」

 

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

 

 そうしてエルディンとリリはダンジョンへと向かう。

 

(まさか、Lv.5だったとは。もしかしてリリのことを疑って?)

 

 リリは、エルディンのことを少し警戒する。

 

「そうだ、せっかくだ。武器とアイテムを預かってくれないか」

 

 エルディンは身に付けていた装備とアイテムをリリに預ける。

 その行動にはリリのことを疑う様子はない。

 

(考え過ぎでしょうか?)

 

 リリはエルディンに対し、よくわからない人という感想を抱きつつ、渡された物を預かった。

 

 *

 

(我ながら気まぐれが過ぎるな)

 

 エルディンは襲いかかってくるモンスターを退治しながらため息をつく。

 現在、二人は十二階層まで到達していた。

 エルディンは剣、あるいは魔法でモンスターを灰にする。

 リリのもとにモンスターが到達することは無い。

 

 リリをダンジョンに誘ったのは本当に気まぐれだった。

 エルディンはリリと必要以上に関わる気はなかった。

 しかし、何故かリリのことを放っておけなくなってしまった。

 ベル、レフィーヤ、アイズ。

 彼らと関わって、エルディンの心境にも何かの変化が起こっている。

 

「エルディン様、本当にお強いですね! 流石はLv.5!」

 

 リリがエルディンを褒める。

 

「褒めても何も出ないぞ。アーデの方こそ、冷静さがあるな」

 

「そんなこと…リリは所詮サポーターですから」

 

 リリが俯きがちに言う。

 

「…お前は何故そこまで自分を否定する?」

 

「え?」

 

「お前の瞳を見れば、どんな人生を送ってきたかなど、容易に想像できる。ベルのナイフを盗んで売ろうとしたのも、何か理由があるんだろう」

 

「き、気づいていたのですか!?」

 

「当然だ。あのような素人丸出しの方法で、私を欺けると思ったのか。お前を初めて見た時からずっと疑っていた」

 

 リリは黙ってしまう。

 

(さて、どうしたものか)

 

 エルディンが思案していると、悲鳴が響き渡る。

 他の冒険者が一斉に走ってくるのが見える。

 

「何事だ?」

 

「奴が出た! 逃げろ!」

 

 冒険者はそれだけ言って逃げていく。

 エルディン達に向かってモンスターが近づいてくる。

 全長は4Mほどもあり、エルディンもよく知る顔つきに赤い体表、四本足で大地を踏みしめている。

 

「インファントドラゴン!?」

 

「下がっていろ、アーデ」

 

 リリが驚く。

 この階層で出現するモンスターの中では桁違いの強さを誇り、普段この辺りを探索するレベルのパーティでは全滅を免れないほどに危険な希少種だ。

 もし、リリが他のパーティで出会っていたなら死んでいたかもしれない。

 

「ドラゴン…これがドラゴンだと?」

 

 しかし、今回リリがパーティを組んでいるのは、Lv.5の第一級冒険者。それもリリは知る由もないが、ドラゴンを殺すことに関しては誰よりも優れたドラゴンスレイヤーである。

 エルディンは息を吸い、インファントドラゴンに向かって叫ぶ。

 

「【Joor(定命) Zah(有限) Frul(一時)】!!」

 

 エルディンが【ドラゴンレンド】のシャウトを叫ぶ。

 シャウトを受けたインファントドラゴンは大きく仰け反り、完全に動きが止まる。

 

「スカイリムのドラゴンの方が何倍も、何百倍も美しいな」

 

 エルディンはインファントドラゴンの首に一太刀浴びせる。

 それだけでインファントドラゴンは動かなくなる。

 そして、リリの目の前で不思議なことが起こり始める。

 地に伏したインファントドラゴンは灰にならず、燃え出す。

 炎によって輝いた光が、やがてエルディンに吸い込まれ始める。

 インファントドラゴンの体が完全に崩れ、エルディンに吸い込まれた。

 

「…まさか、ここのドラゴンも吸収できるとはな」

 

 エルディンも少し驚く。

 どうやら魂を吸収したわけではないようだが、力が漲るのを感じる。

 エルディンの持つスキル【竜の血脈(ドラゴンボーン)】の影響だろう。

 

「エルディン様! 大丈夫ですか!?」

 

 リリが駆け寄ってくる。

 

「ああ、何も問題ない」

 

「本当ですか? …今の現象はいったい?」

 

「私のスキルによるものだ。気にする必要はない」

 

 リリはまだ心配そうにしている。

 

「さあ、せっかくの希少種の魔石だ。きっちり持ってくれ」

 

 エルディンはリリに魔石を回収させると、さらに下の階層へと進んでいった。

 

 *

 

 結局、十五階層でしばらくモンスターを討伐して過ごし、地上に戻ってきた。

 その間、二人の間に会話は一切なかった。

 ギルドに訪れリリが換金をしている間、エイナと話をする。

 

「エルディンさん。最近、ベル君と一緒にダンジョンに行ってないみたいですね」

 

「私がいると、ベルの成長の妨げになるからな」

 

「そうですけど、少し心配で。…あのサポーター、ソーマファミリア所属なのですが、ソーマファミリアは少しきな臭いといいますか、あまり良い噂がなくてですね」

 

 エイナが小声で話す。

 

「ああ、そのようだな。しかし、彼女とパーティを組むと決めたのは他ならぬベル自身だ。私が口出すことではない」

 

「し、しかし、アドバイザーとしては見過ごせないと言いますか…」

 

「エイナ、よほどベルのことが心配のようだな?」

 

 エルディンの言葉にエイナが慌てる。

 

「そ、それは、ア、アドバイザーとして当然のことで決して他意はありませんから…」

 

「安心しろ、いざとなったら私が何とかする」

 

「…わかりました。ベル君達のこと、お願いしますね」

 

 そう言ってエイナは離れていく。

 

 しばらくしてリリが戻ってくる。

 ギルドから出て、人の少ない通りで立ち止まる。

 

「今日の稼ぎはどうだった?」

 

「すごいです、エルディン様! 今日だけで三十万ヴァリス近くも稼げてますよ!」

 

「ふむ、なかなかだな。さて、報酬だが…」

 

 エルディンは袋を開けて、半分ほどの硬貨を別の袋に移すと、残りの硬貨をリリに渡す。

 

「半分お前にやろう」

 

「…え?」

 

 リリが、驚いて口を開ける。

 

「い、いや、頂けませんよ!? 今日だって全部エルディン様がモンスターを倒していたのに…」

 

「私が良いと言っているのだ。異論反論は一切聞かん」

 

 そのままリリに押し付ける。

 リリは遠慮がちに袋を受け取る。

 

「あ、あの…」

 

「なんだ?」

 

「リリに何もしないのですか? リリはベル様のナイフを盗もうとしたのですよ?」

 

「ナイフは結果的にベルのもとへ戻ってきたからこれ以上言うつもりはない。ベルにとってもいい経験だろう」

 

「…」

 

「今回は見逃してやる。だが、二度目はないと思え。これは警告だ」

 

「は、はい」

 

「…はっきり言うが、私はお前のその絶望したような瞳が気に食わない。昔の自分を見ている気分になる」

 

「それって…」

 

「さて、今日は助かった。明日からもベルのこと、頼むぞ」

 

 そうしてエルディンは離れていく。

 リリはエルディンの後ろ姿をただ見つめることしかできなかった。




黒檀の戦士と戦い、エルディンはついにソブンガルデに行けると喜びを感じました。次回は黒檀の戦士と再戦することになります。

なんだかんだリリを放っておけないあたり、ドヴァキンも甘い性格をしています。

ドヴァキンの強さってダンまちの世界だと、どれくらいのLv.だと思いますか?(ドヴァキンは全スキルを習得済みとします。)

  • Lv.8以上
  • Lv.7
  • Lv.6
  • Lv.5
  • Lv.4
  • Lv.3
  • Lv.2
  • Lv.1
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