ダンジョンで叫ぶのは間違っているだろうか   作:マザハール

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結果的にリリを助けることになったエルディンは予定通り、十八階層に到達していた。
しかし、そこで怪しい集団と行動するアイズを見かけ、さらにアイズを探すベート達と会う。
二十四階層へ行くつもりだったエルディンはベート達のパーティに参加し、アイズを追いかけるのだった。


第二十四話 厄介事①

<回想>

 

 暗い。

 狭い。

 冷たい。

 

 いったい、どれほどの時が流れたのでしょうか? 

 今、世界はどうなっているのでしょうか? 

 

(私はいつまでここにいればいいのでしょうか?)

 

 何度目か分からない目覚め。

 今回はどれくらい眠っていたのでしょうか。

 私の世界は相変わらず暗く冷たい。

 唯一分かるのは背中にある重く、硬い感触。

 私がここに閉じ込められている理由。

 全ての始まり。

 

(もういっそのこと、眠りから覚めなければいいのに)

 

 そのように思ってしまうほど気が遠くなる時間。

 また睡魔が襲ってきた。

 今度こそ、目覚めないようにと祈りながら目を瞑る。

 

 突然、世界が揺れ始める。

 耳を覆いたくなるほどの轟音が響く。

 振動が大きくなり、体が上へ昇る感覚を覚える。

 やがて、振動と轟音が鳴り止むと、目の前に光が広がった。

 突然のことに目を閉じてしまい、体がよろける。

 倒れそうになると何者かが、私の体を支えた。

 光に眩みそうになりながらゆっくりと目を開けると…

 

 …漆黒の鎧を着た男が私の身体を抱きとめていた。

 

 *

 

 十八階層。

 エルディンはリヴィラの街に到着していた。

 数日前のモンスター襲撃の影響により、辺りに瓦礫が散見されるが、街としての機能は復旧したようだ。

 

 まずは拠点を確保するため、宿屋を探す。

 エルディンが向かったのは以前殺人のあった宿屋だ。

 予想通り、客は入っていない。

 宿主のヴィリーがこちらに気づく。

 

「あ、あんたは…」

 

「随分と暇をしているようだな」

 

「まったくだよ。これもあの事件のせいだ」

 

 ヴィリーが毒づく。

 あまり目立ちたくないエルディンとしては、客が少ないことは好都合だ。

 

「しばらく滞在したい。部屋を借りれるか?」

 

 エルディンは懐から金貨の入った小袋を出す。

 

「ああ、奥の部屋を使ってくれ」

 

 ヴィリーは奥の部屋を指差す。

 エルディンは不要な荷物を置き、ヴィリーに外出することを伝えると、リヴィラの街を回ってみることにした。

 

 以前訪れた時は殺人の容疑を掛けられ、その後モンスターの襲撃があったため、碌に街を探索できなかった。

 ロキファミリアの遠征に向けての準備もあるため、あまり時間があるわけではないが、数日滞在する可能性を考えればある程度知っておいて損はない。

 

(ここの商品は法外な値段と聞いていたが、噂通りだな)

 

 並んでいる道具屋、薬屋、武器屋の商品を見て、エルディンは呆れる。

 だが、一歩街の外に出ればモンスターがうろつく中層である。

 どれだけ高い金額だろうが、必要になったら買わざるをえない。

 

(あまりお世話になりたくはないな)

 

 一通り店を確認した後、エルディンは情報収集も兼ねて酒場行こうと考える。

 それらしい看板を探しながら通りを歩いていると、裏路地から数名の冒険者が出てきた。

 エルディンの知らない冒険者ばかりだったが、その中に意外な人物を発見する。

 

(アイズか?)

 

 ロキファミリア以外の冒険者と彼女が一緒いることに違和感を覚えるが、隣にいる犬人と親しげに話をしている様子から、顔見知りであることがわかる。

 

 距離が離れているため、会話の内容はわからなかったが、『二十四階層』、

『食糧庫』という言葉が辛うじて聞き取れた。

 

(顔見知りとは言え、他ファミリアの仕事に首を突っ込むのも野暮だろう)

 

 そう考えるが、明らかに厄介事の匂いがする。

 エルディンは彼女達が出てきた裏路地に入ると、少し先に酒場があるのを見つけた。

 エルディンはアイズと怪しげな集団の情報を収集すべく、発見した酒場へと歩みを進めた。

 

 *

 

 酒場に入ると店内は閑散としていた。

 先程出てきた集団で客は全てだったようだ。

 店主と話をするため、カウンターに座る。

 

「…注文は?」

 

「そうだな。…ハチミツ酒を頼む」

 

 エルディンはこの酒場の主人らしきドワーフに頼む。

 久々に血を飲んだせいか、身体が熱を帯びている。

 何故だか無性に酒を飲みたい気分だった。

 

 店主からグラスを渡された時、大人数の冒険者が店に入ってきた。

 この時間に酒場に入ってくるところから察するに、リヴィラの住人だろう。

 様子を観察していると、一人がエルディンに気がつく。

 すると、その冒険者は驚いた顔をしたかと思うと、エルディンに近づいてきた。

 

「おい、あんた!」

 

 冒険者がエルディンに声を掛けてくる。

 エルディンにそのつもりはなかったが、相手には睨んでいた様に見えたのかもしれない。

 

(面倒事は避けたいのだがな)

 

 エルディンは溜息を吐くと迎撃の態勢を取る。

 しかし、予想に反して冒険者は気さくな雰囲気で声をかけてきた。

 

「あんた、この間モンスターの襲撃があった時、ロキファミリアの連中と一緒に戦ってた奴だよな!?」

 

「…ああ、そうだが…」

 

 あまりの陽気さにエルディンは一瞬固まるが、なんとか答える。

 

「やっぱりな! この街で、お前のこと噂になってるぜ! 叫び声でモンスターを吹っ飛ばしたって!」

 

 別の冒険者が言う。

 

「あんた、エルディン…さんだったよな? あんたのおかげで、俺達も助かった。よかったら、一杯奢らせてくれ!」

 

 冒険者が言うと、他の冒険者が盛り上がる。

 ふと、エルディンの頭の中を昔の記憶が駆け巡る。

 

 …

 

『…信じられない…お前は、ドラゴンボーンだ』

 

『その利き腕の強さには信頼を置いていいわ…物語や伝説以上だもの』

 

『ドラゴンボーン万歳!』

 

 …

 

 それはまだエルディンが純粋な賞賛を受けていた頃の記憶だ。

 恐怖の対象として見られることには慣れてしまったエルディンは複雑な気持ちになるが、無下にするのも気が引ける。

 

「…せっかくだ。生き残れたことに乾杯しようではないか」

 

 エルディンの言葉に歓声が上がる。

 不思議とエルディンは悪い気分にはならなかった。

 そうして、小さな宴会が始まった。

 

 *

 

 宴会もお開きになり、エルディンはヴィリーの宿に戻ろうとしていた。

 酔ってはいないがダンジョンに行く気分でもなくなり、どうしたものかと考えていると、前方からまた顔見知りを見つける。

 一人は灰色の髪をした狼人の青年で、一人は山吹色の髪をしたエルフの少女。

 ロキファミリアのレフィーヤ・ウィリディスにベート・ローガだ。

 少し離れた場所には見知らぬエルフの少女が、二人の様子を見ている。

 二人は眼帯の男と話をしている。

 どうやら何か聞き込みをしているようだ。

 

 エルディンが近づくと、ベートがこちらに気付く。

 

「てめえは…」

 

「奇遇だな、ベート・ローガ。今から下層にでも行くのか?」

 

「気安く話しかけるんじゃねえ、てめえには関係ねえよ」

 

 ベートが吐き捨てるように言う。

 

「だ、だめですよ、ベートさん! …ごめんなさい、エルディンさん」

 

 レフィーヤがベートを抑え、エルディンに謝る。

 

「気にするな、レフィーヤ。…それにしても先程アイズも見かけたが、流石はロキファミリアだな。最大派閥のファミリアともなると、他派閥との交流が多いのか?」

 

 エルディンは見知らぬエルフの少女を見ながら言う。

 すると、その言葉にベートとレフィーヤが同時に反応する。

 

「アイズを見たのか?」

 

「アイズさんを見たのですか!?」

 

 二人の問いに、エルディンは答える。

 

「ああ。怪しい集団とリヴィラの街から出て行くのを見た。盗賊らしき犬人の少女と親しげに話していたな」

 

「盗賊らしき犬人の少女…もしかして、ルルネさん?」

 

 レフィーヤにはその特徴の人物に心当たりがあった。

 つい先日、リヴィラの事件で知り合ったばかりだ。

 

「そいつら、どこに行くか言っていなかったか?」

 

 ベートが苛立たしげに問い詰める。

 

「断片的にだが、二十四階層、食糧庫という言葉が聞こえた。…最近その辺りではモンスターの異常発生が確認されているらしいな」

 

 エルディンは宴会中に、酒屋の主人にアイズのいた集団のことを、冒険者達に二十四階層の現状を聞いていた。

 レフィーヤが事情を説明すると、エルディンはアイズ達の目的を推察する。

 

「おそらく、その集団は今起こっている二十四階層の異変について調査を任されたのだろう。そして、助っ人としてアイスが参加している…と言ったところではないか?」

 

「ちっ、やっぱりそういうことか。…おい、早く行くぞ」

 

 ベートは舌打ちすると、広場の方へ向かい、レフィーヤが慌ててついて行く。

 

(やはり、只事ではなかったか。どうしたものか)

 

 エルディンは三人の様子が気になり、その後を追う。

 二人はエルフの少女の前で立ち止まり、レフィーヤが気まずそうにしていると、ベートが口を開く。

 

「詳しい話は知らねえが、要はてめえは仲間を見捨てて、おめおめ生き残っちまったってわけだ。ざまぁーねえな」

 

 突然のことに、レフィーヤは唖然とし、エルディンは眉を吊り上げる。

 

「なんでまだ冒険者なんてやってんだよ、てめえ。そのままくたばっちまえば良かったじゃねえか」

 

 ベートがさらに言葉を続け、せせら笑う。

 

「ベートさんっ!!」

 

 あまりにも酷い言葉にレフィーヤは憤り、声を上げる。

 対して、エルフ少女は静かに自嘲する。

 

 そのまま二言、三言やりとりをして、ベートは先に行ってしまった。

 残された二人は気まずそうにしている。

 エルディンは二人を残して、ベートを追いかける。

 

「てめえ、まだいたのか」

 

「お前は相変わらずだな」

 

 エルディンの言葉に、ベートは舌打ちする。

 初めて酒場で出会って以降、ベートはどうもエルディンが苦手だった。

 なぜか分からないが、この男に対しては挑発や皮肉を言う気持ちが弱まってしまう。

 

「まあいい。…ところで、アイズを探すのなら私も手伝ってやろう」

 

 ベートが何も言い返してこないと分かると、エルディンが同行を提案する。

 

「…なんだと?」

 

「私はロキファミリアと同盟を結んでいる身だ。その眷属が何か厄介事に巻き込まれているなら手助けするのが道理だろう」

 

(アイズには借りもあるしな)

 

 エルディンもベルも、アイズには何度も助けてもらっている。

 少しくらいは返しておかないと気が済まない。

 

「…勝手にしろ」

 

 ベートはしばらく沈黙したが、エルディンの同行を認めたのだった。

 

 *

 

「…という訳だ。私もアイズの捜索に同行させてもらう」

 

 エルディンが説明を終えると、レフィーヤは遠慮がちに三人の顔を見回す。

 エルディンはレフィーヤのことを置き、もう一人のエルフの少女に話しかける。

 

「自己紹介が遅れたな。私はエルディン・ホワイトメーンと言う。ヘスティアファミリア所属だ。今はロキファミリアと個人的に同盟を結んでいる。…よろしく」

 

「…フィルヴィス・シャリアだ」

 

 エルディンの自己紹介に対し、フィルヴィスは名前だけを名乗る。

 そのまま沈黙が流れ、レフィーヤが気まずそうに声を上げる。

 

「フ、フィルヴィスさん、もう少し何か言うことがあっても…」

 

「気をつけろよ、鎧野郎。このエルフとパーティを組むと、呪いで死んじまうかも知れねえぜ」

 

「ちょっと、ベートさん!?」

 

 エルディンを挑発する様に口を挟んだベートに、レフィーヤ慌てて声を張り上げる。

 

「ほう、それはどう言う意味だ?」

 

 エルディンはベートの言葉の意味を尋ねる。

 

「いいのだ、ウィリディス。この男はどうやら私の噂を知らないようだ。パーティを組むのなら、私のことを知っておくべきだ」

 

 そうしてフィルヴィスは自分の過去と、周囲から何と呼ばれているかを打ち明けた。

 エルディンはフィルヴィスの話を黙って聴く。

 

「…と言う訳だ。私の素性を知って怖気付いたのなら…」

 

「自分と関わらないほうがいい、か? 私も随分と甘く見られたものだな」

 

 フィルヴィスの言葉を遮って、エルディンが言う。

 

「私が死ぬだと? …望むところだ。お前の言う死妖精(バンシー)の呪いとやらで死ねるのであれば、とうの昔に死ねている」

 

 一息ついて、エルディンはフィルヴィスをまっすぐ見つめる。

 

「フィルヴィス・シャリア、お前の過去は分かった。お前がそのようになるのも理解できる。…私も似たような経験があるからな」

 

 エルディンは過去を思い出す。

 かつてとある国のために戦い、その国に裏切られて仲間を失ったことを、自分の素性を悟られないようにして語る。

 

「私も過去に大勢の仲間を失った。その中には私を庇って死んだ者もいた。…大切な人を目の前で失ったときは、狂うほど自分を呪った」

 

 フィルヴィスは驚いた顔をしつつも、黙ってエルディンの話を聴く。

 

「だが、彼らの犠牲の上に我々は生きている。そして生き残った者には死んでいった者の遺志を継ぐ義務がある。…私もお前も、生き残った意味を知るのは何年も先になるかもしれない。悔やむのも悲しむのも、絶望するのも構わない。…だが、決して死のうとはするな。その時が来るまで生き続けろ」

 

「…それでも、私は…」

 

 エルディンが語り終えると、フィルヴィスは少し沈黙し、小さな声で言葉を発する。

 

「私は、自分を許せない。…仲間を見捨てて、一人生き残った自分を…」

 

「…今すぐ答えを出す必要はない。私も己を許すのに何年も掛かったからな」

 

 エルディンが優しく微笑む。

 

「…くだらねえ話は終わったか? とっとと行くぞ」

 

 ベートが沈黙を破り、先へ進む。

 エルディンが、ベートに続いて歩き出す。

 ベートがエルディンに悪態をつく。

 

「けっ、お優しいことだな」

 

「自覚はある。…そういうお前は随分大人しく聴いていたな」

 

 エルディンが言い返すと、ベートは押し黙る。

 エルディンの言葉にベートは思うところがあった。

 己の心境を悟られまいと、ベートはそっぽを向く。

 

 やがて、レフィーヤとフィルヴィスが追いつき、四人となったパーティは、エルディンとベートが前衛、フィルヴィスとレフィーヤが後衛を担い、ダンジョンを進み始めた。

 

 *

 

「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!」

 

 美しい呪文の旋律が響き渡る。

 魔法が来ることを察したエルディンは引きつけていたモンスターの群れを盾で殴り飛ばし、魔法の射線上から退避する。

 

「【アルクス・レイ】!」

 

 レフィーヤの魔法により召喚された光の矢が、射線上にいた二十を超えるモンスターを消滅させる。

 魔法が通った後には数多のモンスターの灰と魔石が残る。

 

「そうか、お前はウィーシェの森の出身か。同胞の中でも魔力に秀でた里の者達…あの魔法の出力、道理で」

 

「い、いえ、私はこれくらいしか取り柄がないので…」

 

 フィルヴィスが納得するように褒めると、レフィーヤが照れたように謙遜する。

 エルディンが加わったパーティはより一層行進速度を速め、既に二十四階層へと到達していた。

 

 途中何度かあったモンスターとの戦闘は、ほぼエルディンとベートによって殲滅され、レフィーヤの出番は無かったが、ここに来て件のモンスター大量発生の現場に出くわした。

 道中、アイズ達の物であろう放置された魔石やドロップアイテムを追いかけていたが、現在は正規ルートを外れ、迂回ルートを辿っている。

 

「無駄口を叩くな。来るぞ」

 

 下らなそうな声でベートがモンスターの襲来を告げる。

 ベートが前に出るのを確認し、エルディンは後ろからチェインライトニングを放つ。

 紫電の閃光が連鎖し、複数の巨大蜂(デッドリーホーネット)をまとめて撃墜する。

 ベートが突撃し、ニM(メドル)を超える『ホブゴブリン』の太った醜い巨軀を、上段蹴りで文字通り粉砕した。

 ベートの周囲にモンスターが群がり始めるが、エルディンが追いつきベートの背後に回った蜥蜴人(リザードマン)を斬り伏せる。

 そのまま二人は向かい合わせでモンスターと対峙し、包囲網を突破する。

 

「けっ、余計な手出しするんじゃねえ」

 

「ならば、私に横取りされる前に敵を倒すことだな」

 

 ベートが文句を言うが、エルディンは意に介さない。

 

「…あの男は何者なのだ?」

 

 フィルヴィスはエルディンの戦闘力を目の当たりにして、心底驚いていた。

 

「私も詳しくは知らないのですが…Lv.5でアイズさんとも互角に渡り合えるほどの実力を持っているのは確かです」

 

 レフィーヤがフィルヴィスの呟きに答える。

 

 ベートとエルディンの連携により、進行速度を落とさず進む中、レフィーヤが通り過ぎようとした壁からバキリと音がして、大量の蜥蜴人(リザードマン)毒茸(ダーク・ファンガス)が産まれた。

 

「ウィリディス、下がれ!」

 

 産まれたばかりのモンスターに囲みれる中、フィルヴィスがレフィーヤの名を呼ぶ。

 短剣を抜剣し、モンスターを切り倒す。

 たちまちモンスターに狙われるフィルヴィスたが、手数の多い攻撃でモンスターの急所を的確に突く。

 

 敵の数を減らしたフィルヴィスは短杖(ワンド)を引き抜き詠唱する。

 

「【一掃せよ、破邪の聖杖(いかずち)】!」

 

 残る敵に応戦しながら詠唱し、三体の毒茸(ダーク・ファンガス)短杖(ワンド)を向けた。

 

「【ディオ・テュルソス】!」

 

 鋭い稲光と共に駆け抜ける雷が毒胞子ごと毒茸(ダーク・ファンガス)を焼き尽くした。

 

「す、すごい」

 

 その場に立ち尽くしていたレフィーヤが思わず呟く。

 そしてそれと同時に劣等感を感じる。

 

「てめーもアレくらいできるようになればな」

 

 近寄ってきたベートが追い打ちをかける。

 フィルヴィスが擁護するが、ベートの口撃は止まらない。

 

 ベートの言葉はいつも的確にそれぞれの者が抱える傷口を抉ってくる。

 だが、レフィーヤはそれが紛れもない事実だと分かっている。

 今のままでは駄目なことも、変わらなければいけないことも。

 

「ベート、それくらいにしてやれ。…大丈夫だ、レフィーヤ」

 

 それまで黙っていたエルディンがベートを諌める。

 

「お前は強く成長する。お前は自分が弱いことを理解し、変わろうとしている。その気持ちがあれば、強くなれる」

 

「…ありがとうございます、エルディンさん」

 

 レフィーヤが顔を上げると、ベートは先に進んでいた。

 レフィーヤも後を追おうと歩き始めると、微かな魔力を感じた。

 

 振り返るが、レフィーヤの後ろにはエルディンしかいない。

 

「ああ、どうかしたのか?」

 

 後を追ってこないレフィーヤ達を不審に思い、ベートが振り向く。

 

「どうかしたのか?」

 

 フィルヴィスもレフィーヤの様子が気になり、問いかける。

 

「え、あの、…何でもないです」

 

 レフィーヤが答える。

 エルディンは地面に向けて呪文を放つ。

 

「何でもない、気にするな」

 

 ルーンが張られたことを確認して、エルディンは何事もなかったかのように歩き始める。

 

「何もねえんだったら行くぞ。食糧庫(パントリー)まで、もう少しもねえ」

 

 ベートが再び歩き出す。

 その後ろをエルディン、フィルヴィスが続く。

 レフィーヤは先程感じた違和感が気になりつつも、三人の後を追った。

 

 四人が見えなくなった後、通路から影が現れる。

 紫の外套を纏った影は通路に向かって手を伸ばす。

 掌から衝撃波が放たれると、エルディンが張っていた魔法陣が爆炎を起こす。

 爆炎が収まると、影は何事もなかったかのように四人を追跡した。




今回からポンコツお姫様の回想です。

ドヴァキンがどんどん説教臭くなっていく。
次回は戦闘シーンマシマシになる予定です。

ドヴァキンの強さってダンまちの世界だと、どれくらいのLv.だと思いますか?(ドヴァキンは全スキルを習得済みとします。)

  • Lv.8以上
  • Lv.7
  • Lv.6
  • Lv.5
  • Lv.4
  • Lv.3
  • Lv.2
  • Lv.1
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