ダンジョンで叫ぶのは間違っているだろうか   作:マザハール

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ドヴァキンがファミリアに入ります。


第三話 ファミリア

<オラリオ とある裏路地>

 日が傾き始め、そこかしこから料理のにおいがし始めた。きつかった日差しも幾らかマシになってきた。

 

 あれから数時間、街を行き交う人の話し声を聴き、エルディンはこの世界の事をある程度知る事ができた。

 

 この街はオラリオと呼ばれていること。ここにいる神達は大昔に地上に降りてきており、人間と共存していること。あのダンジョンは神が降りてくる以前から存在しており、蓋をする様に塔が建てられていること。神々はあのダンジョンを攻略するために下界の者を集めてファミリアを作り、恩恵を授けてダンジョンに送り込んでいることなどだ。

 だが、情報を集め始めてからエルディンは気になっていたことがある。

 

(この世界の言語は私の知らないものだ。なぜ、理解できる?)

 

 話している単語もエルディンには聞き覚えのないものばかりだし、看板の文字も初めて見る文字が使われている。しかし、まるで今までこの言語を使って生活していたかのように理解できていた。

 

(シェオゴラスの仕業か? しかし……)

 

 エルディンは考え込むが、途中で思考を中断する。

 

 とりあえず今はどこかのファミリアに入団し、恩恵を受ける事が最優先である。ファミリアにさえ所属してしまえば、堂々とダンジョンへ行けるようになるからだ。

 しかし、もう夕日も翳っている。今からファミリアを探すのは難しい。オラリオの通貨も持ち合わせていないため、宿を取ることも出来ない。

 

(今日も野宿か。本当ならば今頃暖かいベッドの中だったのだがな)

 

 エルディンがそんなことを考えていると、

 

「そこのボロ布を纏った君! ちょっといいかい?」

 

 とエルディンを呼び止める声がした。声のした方向を見るとエルディンに指を突きつけていた。

 長い黒髪を左右に一本ずつ纏めてリボンで縛っており、顔は幼いが誰もが見惚れるであろう美少女だった。面積の少ない白い服を着ており、背丈の割に豊満な胸が強調されている。

 

「何か困りごとかい? 僕で良かったら相談に乗るぜ?」

 

 親指を立てながら少女が言った。親切心は有難いが、子供にどうにかできる問題ではない。エルディンは少女に対して話しかける。

 

「……いや、大丈夫だ。お嬢ちゃんも早く家に……」

 

 と、言いかけて途中で気がつく。

 

 少女の目は、まるで全てを見透かすかのようにエルディンを写す。見た目は幼いが明らかに人とは違う、神秘的な雰囲気を出している。

 

「まさか……あなたは神と呼ばれるものか?」

 

 俺が問いかけると少女は嬉しそうに答える。

 

「気づいてくれるなんてびっくりだよ! その通り、僕は正真正銘の神様だよ!」

 

 エルディンは心底驚いた。まさかこのような少女が神であるとは。

 

「僕の名前はヘスティア! 君は? 冒険者君かい?」

 

 少女が自己紹介をする。

 

「エルディン・ホワイトメーンだ。先程オラリオに到着したはいいが、先立つものがなくてな。どこかのファミリアに入ろうにも、今から探すわけにも行かず、野宿できるところを探していた」

 

 エルディン事情を説明する。

 

「ええ!? そうなのかい!? 強そうな雰囲気だから、てっきりもう何処かのファミリアに入っているかと思ったよ」

 

 ヘスティアが驚く。左右のツインテールがぴょこぴょこ動く。

 

(面白い神だな)

 

 エルディンはヘスティアに対し、失礼な感想を抱く。

 

「じゃあ、君さえ良ければだけどさ。僕のファミリアに入ってくれないかい? 実はまだ一人しか眷族の子がいなくてさ。その子だけでダンジョンに行かせるのが心配なんだ」

 

 先ほどよりも少し小さな声で、ヘスティアが言う。

 

(まさに渡に船だ)

 

 エルディンはヘスティアの誘いを受けようと思い、跪いた。

 

「女神ヘスティア。私でよければ、是非あなたのファミリアに入れてくれ。あなたの剣となり、盾となろう」

 

「い、いいのかい? 自分で言うのもなんだけど、僕のファミリアは弱小でホームもボロボロだし、苦労するかもしれないよ?」

 

 ヘスティアがおずおずと言った。

 

「構わん。ここで出会ったのも何かの縁だ。私のような得体の知れない者を受け入れてくれて感謝する」

 

 エルディンが答えると、ヘスティアが笑顔を見せた。

 

「わかった! じゃあ早速だけど僕のホームへ案内するぜ。そこで君のこと聴かせてくれ」

 

「承知した」

 

 エルディンは立ち上り、半ばスキップ気味のヘスティアを追いかけた。

 

 *

 

「ここが僕のホームだよ!」

 

 街路に灯が灯る中、エルディンを連れたヘスティアはホームに到着した。

 

 こんなにボロい教会をホームだと言われて、どんな反応をするのか不安に思っていたヘスティアだったが、廃墟や洞窟で寝泊まりすることも多かったエルディンにとっては、屋根や壁があるだけ十分だった。

 

 中に入り地下に降りると、エルディンは身に纏っていたボロ布を脱いで椅子に置いた。

 

 ヘスティアはエルディンの纏っている装備を見て、目を見張る。

 

(布の隙間から見えていたけど、やっぱりすごい装備だ。しかも、何本武器を持ってるんだ?)

 

 フルフェイスの重装鎧も、ここまで沢山の武器を装備しているのも、オラリオでは珍しい。

 素顔が気になり始めたので、ヘスティアは質問を始めた。

 

「じゃあ、改めて君のことを教えてほしい。まずは顔を見せてくれるかな?」

 

「これは失敬」

 

 エルディンはそう言うと、ヘルムを取り始める。

 

 エルディンの素顔を見て、想像してたより若いとヘスティアは思った。おそらく二十代の前半だろう。濃い金色の長髪で、髪の一部を編み込んでいる。高い鼻とはっきりした顔立ちで、かなりのハンサムだ。

 しかし、左目には目を跨ぐ様に黒い刺青が描かれており、右頬に大きな傷跡がある。

 何よりも目立つのが雪の様に白い肌と、赤い目だ。まるで、血の様に赤く恐ろしい目がヘスティアを見ている。

 

 最初見た時から不思議なものを感じていたが、その顔を見てヘスティアは直感する。

 

(この子は他の子供達とは違う。微かに神威に近いものを感じる。

 だが、それだけじゃなく、まるでモンスターの様な……)

 

「どうした、ヘスティア?」

 

 エルディンが怪訝そうな目をする。

 

 ヘスティアは慌てて反応する。

 

「ああ、いや。なんか珍しい刺青だなーって思ってさ。それにしてもなかなか男前じゃないか! ……それじゃあ、改めて自己紹介をしてくれるかい?」

 

 *

 

 エルディンはヘスティアに自分の事を話した。もちろん"異世界から来た"なんて言えるわけもないため、道中で適当な設定を考えて嘘をついた。出身はスカイリムという雪国であること、以前はアカトシュという神に仕えていたこと、【ドラゴンボーン】という二つ名で呼ばれていること、あちこち旅をした末、オラリオにたどり着いた事など、少し真実を織り交ぜた設定を考えていた。

 

 自己紹介を聞いて、ヘスティアが腕を組みながら考え込む。やがて深呼吸をし、話を切り出した。

 

「今話してくれた事だけど、ほとんど嘘だよね? アカトシュって神の事も二つ名の事も。まさかこんなに堂々と嘘を付かれるとは思わなかったよ」

 

 顔に出さなかったがエルディンは驚いた。適当に考えたとはいえ、すぐにバレる様な嘘ではないし、話術には自信があった。

 頭の中で原因を考える。エルディンは一つの答えにたどり着いた。

 

「神に嘘は通じない。子供達が嘘をついているかどうか僕達には分かるんだ」

 

「まさか、思考が読まれてしまうとは。恐れ入った」

 

 エルディンが嘘を認める。これ以上嘘をついても意味はない。

 

 ヘスティアが、エルディンの言葉に訂正を入れる。

 

「思考を読む、とはちょっと違うかな。あくまで嘘をついているかどうかが分かるだけで、どんな嘘をついているかまでは分からない」

 

 ヘスティアが続ける。

 

「君の言葉には嘘がない。だけど、何か大きなことを隠してる気がする。君が眷属になるって事は僕の家族になるって事だ。僕は家族として君の事を知っておきたい。可能な範囲でいい。本当の君を教えてくれないか?」

 

 ヘスティアが真っ直ぐにエルディンを見つめる。包み込む様な暖かい目。何故か、エルディンはヘスティアに全てを話す気になった。

 

「すまない。包み隠さず全て話そう。突拍子もない話になるが、聴いてくれ」

 

 そうしてエルディンはオラリオに来た経緯、そして自分の過去を話し始めた。

 

 *

 

「……というわけでオラリオに飛ばされてきた訳だ」

 

 エルディンの話はヘスティアからすれば本当に突拍子もなかった。まさか異世界から来たなんて言うとは予想していなかった。それだけでなく、かつて世界を救った英雄で、今は吸血鬼という化け物となっていて、今まで数えきれない程の人間やモンスターを殺してきたと言う。にわかには信じ難いが、エルディンは一切嘘をついていなかった。

 

「ヘスティア? 大丈夫か?」

 

 エルディンが問いかける。ヘスティアは正直に応えた。

 

「君が嘘を言っていないのは分かるけど、いきなりすぎて、すぐには信じられないなー。まさか異世界から来たなんて」

 

「無理もない。逆の立場であれば、私もすぐには信じられないだろう」

 

「君の言うドラゴンボーンも、スカイリムも九大神も、吸血鬼だって聞いたこともないよ。血を吸う人型のモンスターなんて……」

 

 ヘスティアの言葉に、エルディンはほんの僅かに寂しそうな顔を見せる。その顔をを見てヘスティアははっとする。

 

(何を困惑してるんだ僕は! エルディン君は僕を信じて話してくれたんだ。ここは神として彼を導かないと!)

 

 ヘスティアが自分の両頬を叩き気合を入れる。

 

「話はわかったよ。……事情があるとはいえ、君の様な素性がわからない子が入れるファミリアは少ないだろうね」

 

 ここで一旦言葉を切り、深呼吸して続ける。

 

「……でもいいよ! 君を僕のファミリアに迎え入れるよ」

 

 エルディンが驚いて顔を上げる。

 

「先程の話を聴いて、本当に私を受け入れると言うのか。化け物である私を?」

 

 ヘスティアが答える。

 

「僕には君がそんな危険な奴に見えない。きっと根は良い奴だと思う。それに、僕には君が救いを求めている様に見える。僕は神様だ。もし子供達が助けを求めているなら、僕は手を差し伸べるよ」

 

「このオラリオには様々な事情を抱えた人がいる。夢を持つ者、欲望に囚われる者、モンスターを憎む者……。僕達神にだって碌でもない奴がいる。それでもこの場所は全て受け入れて成り立っている。だから君の事もきっと受け入れてくれるはずさ」

 

 ヘスティアが問いかける。

 

「君はオラリオで何をしたい? この世界に、ダンジョンに、僕達神に何を求めるんだい?」

 

 ヘスティアの問いにエルディンは少し考え込み、やがて答えた。

 

「私は……俺はこの世界を冒険したい。ダンジョンを進み、強敵を打ち倒し、手柄を立て、称賛を受け、歴史に名を刻み……」

 

 そこで一旦区切り、最後にこう締め括った。

 

「戦いの中で死に、ソブンガルデへ行きたい」




というわけでヘスティアファミリアに入ります。

ドヴァキンの強さってダンまちの世界だと、どれくらいのLv.だと思いますか?(ドヴァキンは全スキルを習得済みとします。)

  • Lv.8以上
  • Lv.7
  • Lv.6
  • Lv.5
  • Lv.4
  • Lv.3
  • Lv.2
  • Lv.1
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