ダンジョンで叫ぶのは間違っているだろうか   作:マザハール

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ベルとエルディンが対面します。


第四話 ベル・クラネル

<ホームへの帰路>

 日が沈み、薄暗くなった道を白髪の少年が駆けていた。

 普段よりも少し早いが、死にかけたこともあり、ダンジョンには戻らず、ホームへ向かっていた。

 

(神様、もう帰ってるかな?)

 

 そんな事を思いながら少年、ベル・クラネルは帰り道を走る。

 

 今日は本当にいろんなことがあった。

 ミノタウロスとの遭遇、そこからの逃走劇、そして運命の出会い…。

 アイズのことを考え、ベルの顔が真っ赤になる。

 

(かっこよかったなー)

 

 女神にも劣らない美貌もそうだが、その強さにベルは惹かれた。

 

 僕なんか、逃げるので精一杯だったもんな。早く強くなって、今度はあの人を守れる様になりたいな。

 

 と考えてたところで何か大事なことを忘れていることに気がつく。

 

「あああああぁぁ!!?」

 

 ベル自分がミノタウロスに追いかけられた理由を思い出して、

 つい声を上げる。

 

(ミノタウロスと戦ってる人が負けそうになっていたから、気を引こうと石を投げたんだった!)

 

 アイズのことで頭がいっぱいで、ベルはそのことをすっかり忘れていた。

 

(あのは無事だったんだろうか? 明日エイナさんに聴いてみよう)

 

 今から戻ると帰りが遅くなって、神様に心配かけてしまうため、

 安否が気になりつつもベルは家路を急いだ。

 

 *

 

「ただいま戻りました!」

 

「ベル君、おかえり! 今日は早かったね!」

 

 ベルが扉を開けると、ヘスティアはベルに飛びついた。

 抱きつかれたベルの顔が少し赤くなる。

 

「すいません、神様。実はモンスターに襲われて殺されかけちゃって…」

 

「ええ!? 大丈夫かい? 怪我はないかい?」

 

 ヘスティアがはベルの体をあちこち触り始める。

 ベルはヘスティア降ろすと、跪いて応えた。

 

「大丈夫ですよ。僕は神様を置いて死んだりなんかしません」

 

「ベル君…」

 

 ベルが言うとヘスティアが目を潤ませる。

 今にも抱きそうな勢いだ。

 しかし、ベルは目の端に映った人を見て驚愕し、

 ヘスティアから離れ、その人の方へ近づいた。

 

「へっ?」

 

 まさに抱きつく所を空振りしたヘスティアが声を上げる。

 

 ゴツッ

 

 ヘスティアが壁にぶつかる。

 しかしベルはそんなことはお構いなしに、目の前の人物に意識が持ってかれていた。

 2M近い体躯、金髪に白い肌と赤い目、体を覆う真っ黒な鎧。

 素顔は見ていなかったが、間違いない。

 ベルは確信した。

 

「お前は…」

 男もベルに気がつく。

 

「あなたはもしかして今日ミノタウロスと戦ってた人ですか!?」

 

 ベルとエルディンが対面した。

 

 *

 

<ホーム ベル君が来る少し前>

 

「戦いの中で死に、ソブンガルデに行きたい」

 

(そうだ。ここに来た理由は死に場所を探していたからだ。

 向こうの世界では俺に敵う者はいなかった。

 ミラークもアルドゥインもハルコンも、あの黒檀を纏った男にさえも俺は打ち勝った。

 誰も俺を倒し、ソブンガルデに送ってくれる者は居なかった。

 世界を救い、英雄として讃えられた俺は力を持ちすぎた結果、化け物として恐れられた。

 そして吸血鬼となり、正真正銘の化け物となった。

 俺は英雄を求めているのだ。

 俺を殺し、救ってくれる英雄を。

 全力で闘い、ソブンガルデへと送ってくれる英雄を)

 

 エルディンの答えに、ヘスティアは困った様に笑った。

 

「冒険したいのも、強い奴と戦いたいのもまあ分かるけど、まさか戦って死にたいとはねー」

 

 そして真剣な顔になる。

 

「それで君が救われるというのなら僕は止めない。

 でも、僕は家族として君がダンジョンから無事に帰ってくるのを待つよ」

 

 だから、とヘスティアは続ける。

 

「一人で勝手に死なないでくれ。待っている人がいる事を忘れてないでくれ」

 

(同じ様な事をセラーナにも言われたな。

 そういえばセラーナをスカイリムに置いてきてしまった。

 オラリオで死んだら彼女はなんと言うだろうか)

 

 セラーナのことを思い、エルディンは微笑んで応えた。

 

「安心しろ。私は簡単に死にはしない」

 

 その言葉を聴き、ヘスティアは微笑んだ。

 

 と、そこで入り口で物音がした。

 

 ヘスティアもそれに気付き、満面の笑みを浮かべ扉へ向かう。

 やがて、扉が開かれ、1人の少年が入ってきた。

 

「ただいま戻りました!」

 

「ベル君、おかえり! 遅かったじゃないか!」

 

 ヘスティアが少年に抱きついた。

 先程までの神らしい一面は消え、無邪気に振る舞っている。

 それはまるで恋する乙女のようだった。

 

(どうやら神々にも色恋沙汰に興じる感情がある様だな)

 

 その様子を見て、エルディンはそんなことを考える。

 

 エルディンはベルと呼ばれた少年に目を向ける。

 随分と若い。

 まだ十代半ばくらいだろう。

 白髪が目立つ。まるでウサギの様だ。

 

 ふと、ベルと目が合う。

 同じ赤い目にエルディンは親近感を抱いた。

 するとベルは驚いた顔をして近づいてきた。

 ヘスティアが奥の方で壁に追突する。

 近くに来たところでエルディンも気付いた。

 

「お前は…」

 

「あなたはもしかして今日ミノタウロスと戦ってた人ですか!?」

 

 遠目にしか見ていなかったが確かにミノタウロスの時の少年だ。

 

「無事だったんですね! 良かったあ」

 

 ベルが安堵の声を上げる。

 エルディンは自分を助けてくれたベルに感謝の言葉を述べる。

 

「おかげで命拾いした。お前も無事で何よりだ。

 あのモンスターを倒したのか?」

 

「間一髪のところをアイズ・ヴァレンシュタインさんに助けてもらっちゃいました」

 

 ベルはアイズのことを思い出して頬を赤らめる。

 エルディンはベルの反応を見て、怪訝に思うが、自己紹介をした。

 

「自己紹介がまだだったな。私はエルディン・ホワイトメーンだ」

 

 手を差し出しす。

 

「僕はベル・クラネルと言います」

 

 ベルが差し出された手に応える。

 

「痛たた…。君たち知り合いだったのかい?」

 

 頭をさすりながらヘスティアが尋ねる。

 ベルが事情を説明する。

 

「実は……」

 

 *

 

「まさか、ベル君がエルディン君とダンジョンで会ってたとはねー。

 ベル君、なかなか勇気があるじゃないか!」

 

 ヘスティアがベル説明を聴き、納得して笑った。

 

「でも、僕はただ逃げるしかできませんでした。それにホワイトメーンさんも、僕に気を取られたせいで、ミノタウロスの攻撃を受けちゃったんですし…」

 

 ベルが沈んだ顔をして言う。

 それに対してエルディンはフォローを入れる。

 

「お前が来なかったら、私はあの場でミノタウロスに殺されていた。

 お前の勇気ある行動が私を助けたのだ。なかなかできる事ではない。

 それを誇るべきだ」

 

 その言葉を聴き、ベルが表情を明るくする。

 

「そんな、命の恩人だなんて…。

 でも、ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです」

 

 一旦話が落ち着いた所で、ベルがエルディンに質問する。

 

「ところで、ホワイトメーンさんはどうしてここに?」

 

 そういえば、まだ説明をしていなかった。

 ヘスティア様が嬉しそうに答えた。

 

「それはね…。なんと、エルディン君は僕のファミリアに入ってくれるんだ!」

 

「……ええええ!?」

 

 一瞬間を置いてベルが驚きの声を上げた。

 

「そういう事だ。これからよろしく頼むぞ、ベル・クラネル」

 

「え、あ、はい。よろしくお願いします? 

 …というより、ホワイトメーンさんはまだファミリアに所属してなかったんですか!?」

 

 ベルの質問に対し、ヘスティアも気付いてに声を出す。

 

「言われてみれば…。エルディン君、もしかして恩恵を受けないでダンジョンに入ったのかい!?」

 

 エルディンがヘスティアの質問に対して答える。

 

「入った、というより無理矢理連れてこられたというのが正しいな。

 こちらに来た時にダンジョン内に飛ばされたんだ」

 

 ヘスティアが信じられないという顔をする。

 

「恩恵も受けずにダンジョンから生きて出られたなんて。

 しかもミノタウロスと戦って生きているなんて奇跡だよ。

 ダンジョンに置き去りにするなんて、そのシェオゴラスってのも酷い奴だな」

 

「同感だ」

 

 エルディンが苦笑して同意する。

 

 ベルにはなにがなんだか分からないため、エルディンとヘスティアに尋ねる。

 

「えっと、話についていけてないのですがが?」

 

 ヘスティアがエルディンを見て、無言でどうするかを問いかける。

 エルディンは少し考えたが、説明しておいた方が良いと判断し、吸血鬼である事は伏せて自分の素性を説明した。

 

 *

 

 説明し終えるとベルが難しい顔をする。

 

「まさか、ホワイトメーンさんが異世界から来た人だなんて」

 

 ヘスティアがフォローを入れる。

 

「僕も最初は信じられなかったけど、彼は嘘を言っていないよ」

 

「あ、いえ、信じられない訳じゃないです。ただ、話が急すぎて…」

 

「混乱するのも無理はない。だが、私の素性がどうであれ、同じファミリアに所属する以上は、共にダンジョンに行くことになる。

 すまないが、私の事を信頼してくれ。私もお前を信頼しよう」

 

 エルディンがそう言うと、ベルは笑って応える。

 

「分かりました。改めて、これからよろしくお願いします。

 …それと、僕の事はベルって呼んでください」

 

「それなら、私の事もエルディンと呼んでくれ。

 これから、よろしく頼む…ベル」

 

「よし、自己紹介も終わったし、夜ご飯にしよう! 

 今日はとっておきのものがあるんだ!」

 

 一通り、説明が済んだところでヘスティアが提案する。

 確かに空腹を感じていた。

 

 ヘスティアが指差した先には、揚げたパンの様な食べ物が大量に置かれていた。

 

「わあ! どうしたんですか、これ?」

 

 ベルが尋ねる。

 

「バイト先から賄いでじゃが丸君を貰ったんだ! 

 エルディンの歓迎会と洒落込もう! ベル君、今日は君を寝かせないぜ」

 

 ヘスティアが親指を立てて言う。

 

「私の歓迎会ではないのか?」

 

「ごめんごめん、つい。エルディン君も寝かせないぜ!」

 

 エルディンがツッコミを入れると、ヘスティアが笑って付け加えた。

 

「あの、エルディンさんは元の世界でドラゴンとか、いろんなモンスターと戦ったんですよね? その話、もっと聴かせてくれませんか!? 

 僕、英雄譚とか大好きで…」

 

「エルディン君のいた世界の話、僕にも聴かせてくれ!」

 

 ベルとヘスティアが目を輝かせながらエルディンにせがむ。

 

「そうだな。……では、私が初めてドラゴンと戦い、自分の宿命を知った時の話をしようか」

 

(英雄か)

 

 ベルの言葉に複雑な感情を抱きながら、エルディンは自分がドラゴンボーンだと知った時の話を語り始めた。

 




補足
ドヴァキンはミラーク→アルドゥイン→黒檀の戦士→ハルコン
の順番で倒しています。

訂正:ハルコンと黒檀の戦士が逆でした。
今後、話ができるかは分かりませんが…。

ドヴァキンの強さってダンまちの世界だと、どれくらいのLv.だと思いますか?(ドヴァキンは全スキルを習得済みとします。)

  • Lv.8以上
  • Lv.7
  • Lv.6
  • Lv.5
  • Lv.4
  • Lv.3
  • Lv.2
  • Lv.1
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