ダンジョンで叫ぶのは間違っているだろうか   作:マザハール

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今回はあのデイドラ王が登場します。


第五話 恩恵

<ヘスティアファミリア・ホーム>

 

 自己紹介の後、ご飯を食べながらエルディンの昔話をした。

 ベルは興奮した様に目を輝かせてエルディンの話を聴いていた。

 エルディンの後はベルがアイズ・ヴァレンシュタインに助けられた時の話をした。

 顔を赤くしながら話すベルに対してヘスティアがむくれていたが、ベルは気が付いていなかった。

 

 そして今、エルディンは一旦礼拝堂に上がって、ベルがステイタス更新を終えるのを待っていた。

 レベルについてはギルドに申告する義務があるが、ステイタスは基本的に他の冒険者には秘密にする様だ。

 あの部屋にいてはどうしても聞こえてしまう。

 

(そもそも、別の世界の存在である俺に恩恵(ファルナ)が刻めるのだろうか)

 

 恩恵(ファルナ)を受けないとダンジョンに行けないし、行ったところですぐ死ぬのは目に見えている。

 エルディンは少し不安になりながらも、ベルが呼びに来るのを待っていた。

 

 しばらくすると、ベルが呼びにきた。

 

「神様が呼んでますよ」

 

「ああ、分かった。ステイタスは上がったか?」

 

「敏捷が少し上がりました! ミノタウロスに追いかけられたせいでしょうか?」

 

「なるほど。逃げ切った事が、経験値に上乗せされたのかもしれないな」

 

 実際のところ、どの様な経験がステイタスやレベルアップに反映されるのかは神にも分からないらしい。

 

「それじゃあ、行ってくる。少し待っていてくれ」

 

「はい! 楽しみですね」

 

 *

 

 階段を降りて部屋に入った。

 ベッドの上のヘスティアが手招きしている。

 

「さあ、いよいよ君に恩恵(ファルナ)を授けるよ! とりあえず上を脱いでくれ!」

 

 確か、背中に神の血(イコル)を付けるんだったな。

 俺は素直に従い、上着を脱いだ。

 

 エルディンの上半身を見て、ヘスティアが感想を述べる。

 

「うわ! すごい身体だね! 一体なにがあったらそんな体になるんだい?」

 

「今まで散々死線を潜り抜けてきたからな。

 まあ、最近は回復魔法のおかげで目立つ様な傷は付かなくなった」

 

 エルディンの身体には無数の切り傷や抉られた跡、火傷の跡が残っていた。これらの傷はエルディンがまだ同胞団のひよっこだった頃についた物だ。

 

(あれから何十年経っただろうか?)

 

 少しだけ子供の頃が懐かしくなる。

 

「まさに戦士って感じだね。これは期待できそうだよ。

 …じゃあ、ベッドに横になってくれ!」

 

 エルディンがうつ伏せに寝るとヘスティアが背中に馬乗りになってきた。

 自分の指に針を刺し、血を出すと声をかけてきた。

 

「準備は良いかい?」

 

 エルディンが頷くと、ヘスティアは指を背中に付けて、背筋をなぞった。

 

 *

 

 激しい痛みが全身を襲う。

 まるで背中に付けられた炎が体中に広がる様だ。

 

「があああ!!」

 

 たまらず体が飛び跳ねる。

 

「エル….君、どうし…だい!?」

 

 背中に乗っていたヘスティアが跳ね飛ばされる。

 何か言っている様だが、エルディンには聞こえない。

 血液が沸騰するかのような感覚に襲われる。

 すると、怒った様な耳をつんざく声が聞こえてきた。

 

「なんだこの血は! あのクソ女、何をしやがった!」

 

 エルディンの視界に幻覚が広がる。

 どこもかしこも荒廃した建物が建ち並んでいる。

 一体の、まるで悪魔の様なフォルムのデイドラが現れる。

 

「くそ、せっかくの俺のおもちゃが! あの女、絶対に犯して殺してやる!」

 

 モラグ・バル。快楽殺人や拷問、強姦などを司るデイドラの王子の一人。

 吸血鬼誕生に関わるデイドラで、悪しきデイドラの一体とされている。

 

 モラグ・バルは悔しそうに顔を歪めている。

 エルディンには何がどうなっているのか分からない。

 

「あの女の血のせいでお前の中にあった俺の血が浄化されたのだ! 

 一体どうしてくれる! シェオゴラスめ、騙しやがったな!」

 

 少しずつ視界がぼやけてくる。

 

「いいだろう。今は殺さん。だがいつか、必ずお前を俺の領域に連れてきて、永遠に拷問をしてやるからな!」

 

 *

 

 そして視界が元に戻る。

 全身の痛みがまるでなかったかの様に引いている。

 それどころか、喉の渇きが無くなって、

 今までにないくらい全身に力が漲るのが分かる。

 

「だ、大丈夫かい?」

 

「……くくく……はははははは!!」

 

 エルディンが笑う。

 

(こんなに素晴らしい感覚は初めてだ!)

 

「エ、エルディン君? 大丈夫かい?」

 

 ヘスティアが再度問いかける。

 

「くくく…。ああ、大丈夫だ。少し興奮してしまった」

 

「本当に大丈夫かい? とても苦しそうだったよ? 

 あんな風になるなんて初めてだ」

 

「おそらくもう大丈夫だ。後で説明するから続きを頼む」

 

 ヘスティアはまだ心配だったが、やがて再びエルディンの背中に馬乗りになった。

 

恩恵(ファルナ)は授けたから、後はステイタスを確認…って

 えええええええ!!!?」

 

 ヘスティアが絶叫する。

 

「ヘスティア、あまり大声を出さないでくれ。一体どうした?」

 

「どうしたもこうしたもないよ! 君のステイタスだけど、異常すぎる!」

 

 ヘスティアが背中から降り、一枚の紙を渡してくる。

 エルディンは起き上がってそこに書かれているステイタスを確認した。

 

 [エルディン・ホワイトメーン]

 Lv.5

 力:A 878

 耐久:B 740

 器用:C 654

 敏捷:C 652

 魔力:A 894

 

 [発展アビリティ]

<鍛治><付呪><錬金術>

 

 [スキル]

<竜の血脈(ドラゴンボーン)>

 アカトシュに祝福された竜殺しの証。 

 ・ありとあらゆるシャウトを使用できる。

 ・竜系モンスターとの戦闘時、能力が大幅に上昇する。

 ・竜系モンスターにとどめを刺した時、経験値を大幅に獲得する。

<三道極地(スキルマスター)>

 戦士・魔法・影の全ての道を極めた証。

 装備している武器・防具により、アビリティに補正がかかる。

<吸血鬼の王(ノーライフキング)>

 吸血鬼の血を持つ証。

 ・夜の間、力・敏捷・魔力が向上する。

 ・毒、疫病に対して耐性を得る。

 ・日光を浴びている間、全ステイタスが低下する。

 ・吸血鬼の王に変身する。変身時はレベルが1上昇する。

 

 [魔法]

<攻撃魔法>

 相手に直接ダメージを与える魔法

 ・破壊魔法は炎、氷、雷の属性魔法を放つ。

 チャージにより威力、範囲、効果が変動。

 ・召喚魔法は剣、短剣、弓、両手斧を召喚する。

 威力はアビリティに依存。

<回復魔法>

 自身や周囲を回復する魔法。また、アンデッドに対する浄化魔法。

 ・回復、守護、神聖魔法。チャージにより範囲、効果が変動。

<変幻魔法>

 自身・周囲に物理的・精神的な影響を与える補助魔法。

 ・変性魔法は魔法の鎧、念動力、麻痺、探知魔法。

 鎧、麻痺はチャージにより効果が変動。

 ・幻惑魔法は鎮静、高揚、恐怖、錯乱、透明化魔法。チャージにより範囲が変動。

 

 エルディンはステイタスを確認して笑みを浮かべる。

 恩恵(ファルナ)は無事受けられた。

 タムリエルでの経験が、そのまま反映されているかのようだ。

 それに何故か、吸血鬼の血によるスキルが付いている。

 モラグ・バルの血は完全には浄化されなかったということか。

 なんとも好都合だ。

 

「あーもう、笑っている場合じゃない! こんなの他の神に知られたら、

 絶対に僕が何かズルをしたって疑われるよ!」

 

 ヘスティアが頭を抱えて文句を言う。

 

「このステイタスはそんなにおかしいのか? 

 もっと高いレベルを有している者もいるだろう?」

 

 エルディンは気になって尋ねた。

 

「レベル5の冒険者なんて、オラリオに数えるほどしかいないんだよ。

 さらに問題なのは、君が今日初めて恩恵(ファルナ)を受けたのに、いきなりレベル5になっているということだ。どんな子供でも最初はレベル1からスタートするし、アビリティも0が普通だ」

 

 ヘスティアが説明する。

 今日恩恵(ファルナ)を受けたエルディンが、いきなりオラリオでトップクラスの強さを持つのは異常なことだ。

 

「私はタムリエルで散々経験を積んでいるし、多くの試練を乗り越えてきた。それがステイタスに反映されているという事か?」

 

「分からない。それにスキルまで発現している。

 今まで聞いたこともないものばかりだ。

 エルディン君が最初に名乗っていた【ドラゴンボーン】というのもある」

 

 今日冒険者になったばかりだとすると、都合が悪い訳だ。

 

 エルディンは考える。

 

「なにか誤魔化す方法はないか?」

 

「……君が言っていたアカトシュという神。君はオラリオの外にあるアカトシュファミリアから改宗したということにしよう」

 

 ヘスティアが提案する。

 

「改宗?」

 

「眷属がファミリアから別のファミリアに移籍する事を改宗と言うんだ。改宗すると、ステイタスをそのまま引き継ぐ事になる」

 

「なるほど。オラリオの外にもファミリアがあるのだな。

 そこから来たとすれば怪しまれにくいというこという事か」

 

「ああ。でも、他の冒険者やギルドはそれで誤魔化せるかもしれないけど、神には通じない。他の神には極力関わらないようにするしかない」

 

("嘘"を見分ける……か)

 

 エルディンは一つ策を思いついた。

 明日にでも試してみよう。

 

「ところで、恩恵(ファルナ)を授けた時、物凄い苦しんでいたけどあれは何だったんだい?」

 

 そういえば説明を忘れていた。

 エルディンは神の血(イコル)によって、自身の身体に流れている吸血鬼の血が浄化された事について説明した。

 

「なるほどねー。デイドラって奴はどいつもこいつも碌でもない奴なんだな」

 

「全くもってその通りだ。……そろそろベルを連れて来よう。

 私の嘘の設定について彼にも教える必要がある」

 

 *

 

「エルディンさん、どうでしたか!? 

 なにか騒いでたみたいですけど?」

 

 戻ってきて早々、ベルが聞く。

 

「レベル5だった」

 

 エルディンが何気なく答えた。

 

「…はい?」

 

「レベル5だった」

 

「……ええええええ!?」

 

 ベルが叫んだ。

 

(主神に似てうるさい奴だ)

 

「大声を出さないでくれ。騒がしい奴だ」

 

「いや、え、だって、レベル5ですよ! アイズさんと同じレベル5ですよ! 何でそんなに冷静なんですか!?」

 

「ベ〜ル〜く〜ん!? 何でそこでヴァレン何某君の名前が出てくるのかな〜!?」

 

「ヘスティア。それは突っ込むところか?」

 

 エルディンはベルに嘘の設定について説明した。

 

「ベルは嘘が苦手そうだが、うまくやってくれ。

 まあ、何か質問されても知りませんって答えていれば大丈夫だろう」

 

「た、確かに嘘は苦手ですが。…頑張ります」

 

 ベルは苦笑いしながら答えた。

 

「さあ、ベル君もエルディン君も明日ダンジョンに行くんだからそろそろ寝ようか!」

 

「そうだな。…ところで、ベッドが一つ、ソファが一つしか無いが、

 私はどこで寝れば良いのだ?」

 

 エルディンが尋ねると、ヘスティアが笑顔のまま固まった。

 

「…えっと、僕が床で寝ますからエルディンさんがソファを使ってください」

 

「いや、ベル君にそんな事させる訳にはいかない。

 僕が忘れてたんだから、僕が床で寝るよ」

 

「神様にそんな事させる訳にはいきません! 

 僕は大丈夫ですから」

 

「いや、僕が……」

 

「いえ、僕が……」

 

 二人が言い合っている。

 別に床でも問題ないが、エルディンにちょっとした悪戯心が湧く。

 

「ヘスティアとベルが二人でベッドを使うのはどうだ? 

 そうすれば皆快適に寝れる」

 

「エルディンさん、一体何を!?」

 

「エルディン君、なんて素晴らしいアイデアだ! 

 さあ、ベル君、僕と一緒にベッドに行こう!」

 

「いや、神様と一緒になんて恐れ多いですって…」

 

 ベルが顔を赤くしていろいろ言っていたが、

 結局ベルとヘスティアが一緒に寝る事になった。

 エルディンもソファで横になる。

 

「では、明日から頑張ろう。おやすみ」

 

「エルディン君、おやすみ!」

 

「神様、くっつきすぎですって…」

 

 *

 

 ヘスティアとベルがぐっすり寝ている事を確認してから、

 エルディンは部屋を抜け出す。

 月明かりが屋根の隙間から差し込んでいる。

 エルディンは長椅子に座ると、誰もいない教壇に向かって声をかける。

 

「さて、どういう事か説明をしてくれるか?」

 

「おや、お気に召さなかったかね?」

 

 シェオゴラスが教壇に胡座をかいて座っていた。

 

「お前は良くやっているぞ。今のところはな。

 死にもしなかったし、これで無事ダンジョンに入れる訳だ。

 何か褒美をくれてやろう。…スキーヴァーの脳みそなんてどうだ!」

 

「それはいい。…質問しても良いか?」

 

「いいぞ、私は今最低に最高な気分だ! 何でも訊くがいい! 

 ちなみに、今日の儂の献立は…」

 

 エルディンはシェオゴラスの声を遮り、質問する。

 

「この一連の騒動には、お前の他に誰が関わっている?」

 

 エルディンの質問にシェオゴラスは目を細める。

 

「ほう? どういう意味かね?」

 

「言葉通りの意味だ。俺が恩恵(ファルナ)を受けた時、モラグ・バルが現れた。奴はお前に騙されたと言っていたぞ。

 他には、ハルメアス・モラ辺りも関わっているのだろう? 

 俺がこの世界の言語を理解できるのは、奴の仕業ではないか?」

 

「ちっぽけ小さな定命の者が仕掛けに気付く時というのは実に愉快だな。……実に腹立たしい」

 

 シェオゴラスがニヤリと笑う。

 

(やはりそういう事だったか。

 シェオゴラスがこの世界の説明をする時、"我々"と言っていた。

 まさか、デイドラの王子達が結託していたとは)

 

 シェオゴラスが続ける。

 

「その通りだ。最初に儂がこの世界を見つけ、計画を立てた。

 この世界を狂気に染めてやろうとな。

 そこで、モラに話を持ちかけてこの世界を調べさせ、バルの監視が届く、都合の良い駒として貴様を選んだ」

 

「まさかお前らが結託するとはな」

 

「貴様が無事にダンジョンから出られたところまでは、我々の計画通りだった。だが、まさか神の血(イコル)によってバルの手元から解き放たれるとは思わなかったぞ。あの時の奴の顔は傑作だった!」

 

「……お前はこの事態を予想していたんじゃないか? 

 あまり悔しそうじゃないな。むしろ嬉しそうだ」

 

「…さて、どうだかな。…そろそろ儂は魚フライを食べる必要があるからお暇させてもらおう」

 

 シェオゴラスはぐらかすかのように立ち上がる。

 

(この爺さんには何か別の思惑があるのだろうか?)

 

 エルディンはシェオゴラスの思惑を読もうとするが、すぐに諦める。

 狂気のデイドラの王子の心を探るなど、無謀なことだ。

 

「そうだ、忘れておった! 褒美はあのオンボロの部屋に置いておいたぞ。戻ったら確認するといい。きっと儂を崇めたくなるぞ」

 

 消える間際、シェオゴラスがそんな事を言った。

 

(本当に褒美を用意しているとは…一体なんだろうか?)

 

 *

 

 部屋に戻ると相変わらず二人はぐっすりと眠っていた。

 室内を見渡すと、小さな宝箱があった。

 宝箱を開けると中は真っ暗だ。

 宝箱の下に紙切れがある事に気が付く。

 

 お前がこちらの世界で集めた物を取り出せる宝箱だ。

 好きに使うといい。

 スキーヴァーの脳みそじゃなくてすまんな。

 シェオゴラス

 

 試しに金のインゴットを思い浮かべて手を入れると、金のインゴットが握られていた。

 

 確かにこれは便利だ。

 ありがたく使わせてもらおう。

 

「……せっかく起きたしな。どれほど強くなったのか確認でもしようか」

 

 エルディンは武器と防具を用意すると、腕試しの為にダンジョンへ向かった。




モラグ・バル(威圧)
シェオゴラスのハイテンションぶりが表現できない…。

質問を頂いたので補足します。
召喚魔法について、精霊やドレモラ召喚はできない設定です。
オラリオにはマジカもなく、完全に世界が違うため、
弱いデイドラがは干渉できません。
(シェオ爺達が異常なだけです。)

ドヴァキンの強さってダンまちの世界だと、どれくらいのLv.だと思いますか?(ドヴァキンは全スキルを習得済みとします。)

  • Lv.8以上
  • Lv.7
  • Lv.6
  • Lv.5
  • Lv.4
  • Lv.3
  • Lv.2
  • Lv.1
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