ダンジョンで叫ぶのは間違っているだろうか   作:マザハール

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ドヴァキンがロキファミリアと遭遇します。
長かったので分けました。


第七話 ロキファミリア①

<回想>

 

 月日は流れ、赤子は少年になっていました。

 少年の名前はエルディンといいました。

 名前はグレロッドが名付けたものでした。

 エルディンは自分を育ててくれる二人ことが大好きでした。

 さらに、エルディンは父親のことをとても尊敬していました。

 将来自分も立派な戦士になりたいと思い、エルディンは剣の稽古を父親から受けていました。

 エルディンは剣の筋が良く、父親はエルディンが強くなることを嬉しく思いました。

 

 しかし、幸せな日々は長く続きませんでした。

 ある日、砦の外へ出ていたエルディンと父親は林の中でスプリガンに襲われてしまいました。

 必死に戦いエルディンを逃がすことに成功した父親でしたが、ついにグレロッドのもとに帰ることはできませんでした。

 最愛の夫の突然の死にグレロッドは耐えきれず、心を壊してしまいました。

 そして夫を亡くした悲しみと怒りの矛先は、最愛の息子であるエルディンに向けられました…。

 

<ギルド>

 

 まだ日が陰る前だったが、ベルの体力が限界だったため、エルディンとベルは魔石を換金する為にギルドに戻っていた。

 中に入ると、エイナが二人に気づいて声を掛けてくる。

 

「ベル君、エルディンさん、お疲れ様。

 …ってベル君、随分と疲れてるみたいだけど、どうしたの?」

 

「はい…エルディンさんの指導が厳しくて…」

 

 ベルの表情は疲れきっており、声も小さい。

 

「エルディンさん、そんなに厳しくしたのですか?」

 

 エイナがエルディンに訊く。

 

「ベルには素質がある。私も指導しがいがあって、ついやり過ぎてしまった。

 だが安心してくれ。

 危なくなったら私が助ける」

 

 一人で七体を相手にした時はさすがに危なかったが、ベルはそれも切り抜けた。

 しかもエルディンのアドバイスをどんどん戦闘に反映させている。

 驚異的な成長速度だ。

 

「まあ、エルディンさんなら私も信頼できますので、怪我をしない範囲でお願いしますね」

 

「ああ、分かっている」

 

 エルディンが返事をすると、とエイナは軽く会釈をして仕事に戻っていった。

 

「ベル、換金してくるから魔石を渡してくれ」

 

 エルディンがそういうとベルは無言で魔石を渡してくる。

 エルディンはそれを受け取ると換金所に向かい、窓口で魔石を渡す。

 

(8000ヴァリスか。多いのか、これは?)

 

 まだこの街の通貨や物価についてよく知らないエルディンには、この額がどれくらいの物なのかよく分からなかった。

 

「エルディンさん、どうでしたか?」

 

 ベルが力の抜けた声で訊いてくる。

 

「8000ヴァリスだった」

 

「…はい? は…8000ヴァリス!?」

 

 いきなりベルの声が大きくなる。

 

「す、凄いですよ! エルディンさん! 

 こんな額、今まで稼げた事なんてありませんよ!」

 

 先程まであれだけ元気が無かったのに、なんとも現金なやつだ。

 エルディンは急に元気になったベルにそんな感想を抱く。

 

「これだけあれば、今日は神様に美味しいものご馳走できます! 

 エルディンさん、今日は一度ホームに戻って神様と一緒に

 豊穣の女主人に行きましょう!」

 

「待てベル、悪いが先にホームに帰っててくれ」

 

 嬉しそうにギルドを出ようとするベルをエルディンが呼び止める。

 

「どうかしたんですか?」

 

「やりたい事が幾つかあってな。用事を済ませたら直接店に行くから、君はヘスティアを誘って先に店へ向かってくれるか?」

 

「えっと…はい、わかりました!」

 

 ベルは少し不思議に思ったが、エルディンの言葉に頷くとギルドを出て行った。

 

(さて、ダンジョンに戻ろうか)

 

 少しして、エルディンはダンジョンに戻るべく、ギルドを後にした。

 

 *

 

 ベルは先程までの疲れも忘れ、ホームへの道を走っていた。

 

(まさか、こんなに稼げるなんて! 神様喜ぶかな?)

 

 初めての時よりは多少お金も稼げる様になったとは言え、まだまだヘスティアファミリアの台所事情は厳しかった。

 それがエルディンが入って1日でこんなに変わるとは思わなかった。

 

(エルディンさん、凄かったな。流石レベル5だ)

 

 エルディンの戦い方を見たベルの感想は凄いの一言だった。

 まずは魔法。一瞬で何体ものモンスターを灰にしていた。

 次に剣の腕。周りをモンスターに囲まれてもかすり傷一つ負わず、一撃でモンスターの急所を捉え、確実に仕留めていた。

 

(あんな風になりたいな)

 

 エルディンはアイズと共に、ベルにとっての目標になっていた。

 

「神様、ただいま!」

 

 ベルが部屋に入る。

 

「ベル君、エルディン君、おかえりー! …あれ? エルディン君は一緒じゃないのかい?」

 

 ヘスティアがベルを迎える。

 そこで、エルディンがいないことを疑問に思う。

 

「何か用事があるって言ってました」

 

「そうなんだ? 

 …何か目立つ様な事してないといいけど」

 

「エルディンさんはそんな人じゃないですよ。…それより見てください! 今日は8000ヴァリスも稼げたんですよ!」

 

「ええ!? 凄いじゃないか!?」

 

 ヘスティアが驚く。

 

「はい! …それで、もし良かったら今日豊穣の女主人って店の女の子にぜひ来てくれって誘われているんですけど、神様もどうですか?」

 

「…なんだって?」

 

 ベルが誘った途端、ヘスティアから笑顔が消えた。

 

「か、神様? どうかしましたか?」

 

「…なんでもない! ほら、先にステイタス更新をするよ!」

 

(神様、怒ってる?)

 

 明らかに不機嫌になったヘスティアにベルは困惑する。

 理由を考えてもわからないのでベルは素直に言うことを聞き、上着を脱いだ。

 

 *

 

「ええええええ!?」

 

 ステイタスを見て、ベルが驚きの声を上げる。

 今日のステイタス更新でアビリティが凄まじい成長を見せたのだ。

 

(まさか、こんなに成長するなんて…。間違いなく、あのスキルのせいだよね?)

 

 ベルの成長速度について、ヘスティアには心当たりがあった。

 ベルに黙っているが、昨日実はベルにスキルが発現していた。

 スキル名は憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

 相手を思う程強くなると言う事だったが、

 こんなに成長が早くなるとは、ヘスティアは予想していなかった。

 

(ベル君の成長は嬉しいけど、よりにもよって想いの対象があのヴァレン何某君だってのが気に入らないよ!)

 

 ヘスティアは複雑な心境になっていた。

 

「神様あの…それで、なんで僕、急にこんなに強くなったのかな〜なんて」

 

 ベルが無自覚なのは分かっているが、それでもヘスティアは嫉妬心を抑えられなかった。

 

「…知らないよ!」

 

 ヘスティアはそう言うとクローゼットからコートを取り、部屋を出て行こうとする。

 

「神様? どこに行くのですか?」

 

 ベルがヘスティアに問いかける。

 

「ば、バイト先の打ち上げだよ! 

 君はエルディン君と二人でその子が待っている店に行くと良いさ!」

 

 ヘスティアはそう言うと部屋を出て行く。

 

(……ベル君のバカ)

 

 ヘスティアは嫉妬心に任せて、通りを走った。

 

 *

 

「神様…どうしちゃったんだろう?」

 

 ベルは豊穣の女主人に向かいながら考える。

 

(何か怒らせる様な事しちゃったんだろうか?)

 

 思い返すが、わからない。

 

(僕が強くなれば神様にも楽させてあげられるし、良い事だと思うのに)

 

 ベルが考えているうちにお店に着く。

 外からも店内が賑わっていることが分かる。

 

 様子をうかがっていると、今朝会った女の子が気づいて近寄ってきた。

 

「冒険者さん! いらしてくれたんですね」

 

「はい! 約束しましたから」

 

「自己紹介がまだでしたね。私はシル・フローヴァです!」

 

「僕はベル・クラネルです」

 

「ベルさん、どうぞ中へ!」

 

 シルに案内されてカウンターに座る。

 周りを見てみると、冒険者ばかりだった。

 また、シルと同じ制服を着た猫人やエルフが忙しそうに働いている。皆、可愛い女の子だ。

 

「おや、あんたがシルの友達かい?」

 

 そう言ってカウンターの向かいから、大柄な女性が声をかけてくる。

 

「随分と可愛らしいねえ。本当に冒険者なのかい?」

 

「ほ、ほっといてください」

 

 気にしていることを言われて少し落ち込むベルの目の前に、

 大盛りのパスタが置かれる。

 

「何でも大喰らいって話じゃないか! 遠慮なく食べてっておくれ!」

 

「……」

 

 ベルはジトーっとシルを睨む。

 

「えへへ、ごめんなさい。

 でも、これで私のお給金は期待できそうです」

 

 ご飯の値段が気になり、メニューを見てベルが驚愕する。

 

(800ヴァリス!?)

 

 高い。

 今日はたくさんお金が入ったから良かったが、普段のベルではとても手が出せない。

 

 更に追加で色々料理を置かれ、お金の心配をしながらエルディンを待っていると、入り口が開かれた。

 

(エルディンさんかな?)

 

 そう思い、ベルが入り口を見ると、赤髪の神を先頭に大人数が入ってきた。

 金髪の小人に緑髪のエルフ、屈強な体格のドワーフ、双子のアマゾネス。

 そして、

 

「あ、アイズ・ヴァレンシュタインさん!?」

 

 憧れの人がそこにいた。

 

 *

 

(すっかり遅くなったな)

 

 エルディンは店までの道を急いでいた。

 あの後、再びダンジョンに戻り、能力の確認を行なっていた。

 これでおおよその感覚を掴むことができた。

 恩恵のおかげか、基本的な身体能力と、魔法の威力、範囲が広がっている。

 シャウトも、全体的に威力や効果が上昇している。

 クールタイムも短くなっており、一部の強力なものを除けば、かなりの短時間でシャウトが使える様になっていた。

 

 店までもう少しという所まで来たとき、ベルが勢いよく飛び出して、道の反対側へ走って行くのが見えた。

 少しして今朝会った店の従業員と、金髪の美少女が外に出てくる。

 

「何かあったのか?」

 

 エルディンは出てきた二人に問いかけると、二人がエルディンの方を向く。

 

「あ、貴方はベルさんの…」

 

 従業員がエルディンを見て気まずそうな顔をする。

 一方、金髪の少女は目を見開く。

 

「あなたは…もしかして昨日ミノタウロスに襲われていた人ですか?」

 

「なぜそれを…待て、お前はまさか…?」

 

 エルディンは彼女が言った言葉に驚いたが、すぐに彼女が何者か察した。

 

「…初めまして。アイズ…アイズ・ヴァレンシュタインです」

 

(やはりそうか。この小娘がベルの憧れか)

 

「初めまして。私はエルディン・ホワイトメーンと言う。

 お前が噂の【剣姫】か」

 

 エルディンも自己紹介する。

 

「私のこと…知ってるのですか?」

 

「【剣姫】を知らない人などいないだろう? 

 お前もロキファミリアもとても有名だ」

 

 エルディンが返答する。

 ベルと別れ、一人でダンジョンを探索した後、エルディンはギルドでエイナを捕まえて、オラリオの有名なファミリアについて色々話を聴いていたのだ。

 お陰でロキファミリアのことも、ある程度知っていた。

 

(そのせいで遅くなったのだが)

 

「あの…あの子と、あなたは一体?」

 

「ベルか? 私と彼は同じファミリアに所属している。

 昨日死にかけたところを彼に助けられた」

 

「そう…でしたか」

 

 アイズが俯く。

 

「あのー」

 

 従業員の子がおずおずと話しかけてくる。

 

「お店の前で立ち話も何ですし、お店に入ってはどうですか?」

 

「それもそうだな」

 

「私はシル・フローヴァです。シルとお呼びください」

 

「ではシル、案内してくれ」

 

「かしこまりました。…それと、ベルさんの分の代金もできれば払ってもらえますか?」

 

(…ベル。帰ったら色々話をさせてもらうぞ)

 

 エルディンはそう思いながら、アイズと共に店へ入った。

 

 *

 

 アイズとエルディンはカウンターに案内された。

 席に座るとアイズが早速、話しかける。

 

「あの、彼の事ですが…」

 

「まあ、待て。先に注文させてくれ。まずは酒だな」

 

 エルディンは話を遮り、メニューを見る。

 アイズはエルディンを観察する。

 濃い金色の髪に真っ白い肌と赤い目。

 頬に大きな傷がある。

 武器・防具は見たこともない金属で作られていて、とても頑丈そうだ。

 雰囲気からも、使っている装備からも、かなりの強者であることがはっきり分かる。

 

(もしかしたら、私よりも…)

 

 そう思うと、アイズはエルディンに興味が湧いた。

 しかし、これほど目立つ冒険者なのに、アイズはエルディンの噂を聞いたこともなかった。

 

(この人はいったい何者だろう?)

 

「お前も何か飲むか? 酒は飲めるか?」

 

 エルディンがアイズに注文を促す。

 

「…酒は禁止されてます。…オレンジジュースでお願いします」

 

 アイズは周りからお酒を飲むなと止められている。

 アイズ自身は覚えてないが、前に何かやってしまった様だ。

 エルディンが飲み物と食べ物を注文する。

 程なく注文した飲み物が置かれた。

 

「乾杯」

 

「…乾杯」

 

 乾杯に応じるとエルディンがお酒を飲み干す。

 かなり強いお酒だが、エルディンの顔に変化はない。

 エルディンはグラスを置き、同じものを頼むと、一息ついてアイズに話かけた。

 

「それで、ここで何があった? 君が関係してるのか?」

 

 アイズは、自分たちがミノタウロスを討ち漏らし、五階層まで逃してしまったこと、そのせいで彼を命の危険に晒してしまったこと、この店に彼がいる事も知らずに、ベートがその事を笑い話として披露し、彼を侮辱してしまった事を話した。

 

「…私達のせいで、あなたにも危険が及んでしまいました。

 …本当にごめんなさい」

 

 アイズが謝ると、エルディンは少し間を置いて話し出した。

 

「お前が謝ることではない。私もベルも、こうして死なずに済んだのだ。むしろ感謝する。私の仲間を救ってくれてありがとう」

 

 そう言って深々と頭を下げる。

 

「あの、元は私達のせいですので…それに彼を傷つけてしまいました…」

 

「それも気にするな。ベルはそんなことで逃げる男ではない。

 周りに何を言われようが、いつか必ず素晴らしい冒険者になる」

 

(あの子のこと、信頼しているんだ)

 

「なにせ、この私が指導しているのだ。

 強くなってもらわなければ私が困る」

 

(自信家なのかな?)

 

 エルディンの言葉にアイズはそんなことを思う。

 ふと、アイズはなぜエルディンが死にかけていたのか気になった。

 ミノタウロスに遅れを取る様には見えない。

 

「…気になったのですが、あなたはどうして死にかけてたのですか? 

 見た目からもあなたが強いことはわかります。

 …ミノタウロスにやられるとは思えないです」

 

 アイズの質問にエルディンは苦い顔をして答える。

 

「…あそこに行った時には、既に満身創痍でな。

 とても戦える状態ではなかったのだ」

 

(いったい、何と戦ってたんだろう?)

 

 アイズはますますエルディンのことが気になった。

 もしかしたら強くなるヒントがあるかもしれない。

 アイズはナイフでステーキを切っているエルディンに質問しようとした。

 

「…エルディンさん、よろしければ、あなたのレベルを…」

 

「あー! アイズが知らない男の人と喋ってるー!」

 

 アイズの声を遮って、そんな明るい声が響いた。




グレロッド闇落ち。

声の主はいったい誰なんだ?
次回に続く!

ドヴァキンの強さってダンまちの世界だと、どれくらいのLv.だと思いますか?(ドヴァキンは全スキルを習得済みとします。)

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  • Lv.6
  • Lv.5
  • Lv.4
  • Lv.3
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