ダンジョンで叫ぶのは間違っているだろうか   作:マザハール

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特攻ベル君、追うドヴァキン。

今回から二人目の回想が入ります。


第九話 英雄

<回想>

 あるところに一人の戦士がいました。

 戦士はその地で有名な戦士団の一員でした。

 優れた剣の腕を持ち、落ち着いた性格であったため、仲間からの信頼も厚く、いずれは戦士団を率いる人物になるだろうと言われていました。

 

 しかし、彼には大きな悩みがありました。

 それは自身の病気についてでした。

 それは人を獣に変えるという、恐ろしい呪いの病気でした。

 彼は、自分が死後ソブンガルデへ行けるように、

 その呪いを解く方法を探していました。

 

 ある日、戦士は夢を見ました。

 それは彼と、彼には居ないはずの息子との、幸せな夢でした。

 夢の最後は狼に食べられそうになっている自分を、息子が助けてくれる。

 …そこで目が覚めました。

 不思議な夢だったため、戦士はその内容を日記に書きました。

 

 夢を見た数日後、戦士と仲間達は熊が出たとの報告を受け、街道を歩いていました。

 日が落ちていたこともあり、慎重に進んでいた一行は子供が熊と戦っているところを発見しました。

 すぐに駆けつけ、熊を倒した戦士は、少年を見て驚きました。

 

 金色の髪に青い目、頬には熊から受けた傷がついていて、少年の体の大きさには不釣り合いな、それもスカイフォージの鋼でできた剣を持っていました。

 その少年はまさに戦士が見た夢の中に出てきた息子にそっくりでした。

 戦士は少年に訊きます。

 

「名前は?」

 

 少年は答えます。

 

「僕はエルディン…。おじさんは?」

 

 少年に訊かれて、戦士も名乗りました。

 

「私は、コドラク・ホワイトメーン。

 よろしく、エルディン」

 

 後日、少年はコドラクの息子として迎えられ、エルディン・ホワイトメーンと名乗るようになりました。

 

 *

 

<ヘスティアファミリア ホーム>

 

「いったいどうして!? 

 どうしてベル君はこんな時間にダンジョンに!?」

 

 ヘスティアが取り乱す。

 エルディンはすぐにダンジョンへ行こうとするが、一旦冷静になると身に纏っている鎧と、余分な武器を外し始めた。

 装備を整える間、ヘスティアに説明する。

 

「…それで、エルディン君はベル君がダンジョンに

 行っていると思ったのかい?」

 

 説明を聞いたヘスティアが訊く。

 

「ああ。ベルは人一倍、強くなりたいという気持ちが強い。

 あのまま言われっぱなしで終わるとは思えない」

 

 そう言いながら、エルディンは若い頃の自分を思い出していた。

 己が何者かを知り、周りの期待に応えるため、ひたすら強さだけを求めた自分を。

 

(ベル、お前は俺のようにはなるな)

 

 鎧の下に来ている服だけになり、一振りの剣とダガーを持つ。

 

「行ってくる。

 万が一、ベルが戻るかもしれないから、ヘスティアはここに残ってくれ」

 

「わかった。…エルディン君、ベル君を頼むよ」

 

「承知した。必ず無事に帰ってくる」

 

 エルディンが出て行く。

 

「…二人とも、無事に帰ってきておくれよ」

 

 残されたヘスティアは

 二人の無事を祈るしかできなかった。

 

 *

 

<ダンジョン内部>

 

 ホームからひたすら走ったおかげで、すぐにダンジョンに着くことができた。

 鎧と重い武器を置いてきたのが功を奏した。

 目的がベルの発見であるため、エルディンも今回ばかりは極力戦闘を避け、ベルとの合流を最優先にする。

 

 エルディンは魔力を頭部に巡らせ、神経を研ぎ澄ませる。

 やがて、エルディンの視界に青白い光の線が現れた。

 エルディンは千里眼で現れた光の行き先を確認する。

 

(やはりか)

 

 光はダンジョンの奥へと続いていた。

 これでベルがダンジョンの中にいることが確定する。

 

 次にエルディンは魔力を全身に巡らせ、解き放つ。

 透明化魔法により、エルディンの体が見えなくなる。

 これならばモンスターに気づかれる心配はない。

 エルディンは光を辿って走りだした。

 

 深夜ということもあり、冒険者は一人もいない。

 何か痕跡があれば、それはベルのものと考えていい。

 全神経を研ぎ澄ませ、ベルの痕跡を探す。

 足跡、血痕、魔石…

 しかし、なかなか見つからない。

 さらに奥にいるようだ。

 壁からゴブリンが生まれるがエルディンは構わず駆け抜ける。

 

 エルディンは一度影に隠れ、千里眼を使う。

 光はダンジョンのさらに奥へ伸びる。

 再び透明化魔法を使う。

 

(ベル、どこにいる?)

 

 エルディンはひたすら走った。

 

 *

 

(強くなりたい)

 

 ベルはそう思いながら、がむしゃらに進む。

 酒場で聞こえた声。

 

『雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには

 釣り合わねえ!』

 

(ただ願うだけじゃダメだ! 

 あの人と並んで立つには、

 強くならなければならない!)

 

 ゴブリンが立ちはだかる。

 ベルは首を狙ってナイフを突きつける。

 命中。

 返り血がベルを濡らす。

 

(強くなりたい!!)

 

 モンスターに囲まれる。

 エルディンから言われたことを思い出す。

 背後からコボルトが飛びかかる。

 ベルは回転してそれを避け、そのままナイフを突き立てる。

 ナイフがコバルトの胸を貫く。

 前方からフロッグシューターが舌を伸ばす。

 左肩に当たる。

 ベルは構わず、舌を切り飛ばす。

 コボルトが二体、体当たりしてくるのが見える。

 ベルは跳んで回避する。

 二体は互いにぶつかり、怯む。

 その隙を狙って、首を斬りつける。

 そしてフロッグシューターに接近し、頭部にナイフを突き立てる。

 包囲網が解ける。

 

(こんなんじゃダメだ! 

 エルディンさんならもっと速い!)

 

 エルディンの動きを思い返す。

 彼の動きはもっと洗練されていた。

 

(アイズさんの隣に立ちたい! 

 エルディンさんに追いつきたい!)

 

 そうして進んできたベルはやっと立ち止まる。

 周りを見て自分がどこにいるか把握する。

 

「五…いや、六階層?」

 

 ベルが立っていたところは少し広い空間になっており、どうやら行き止まりのようだった。

 ベルは少し冷静になり、状況を確認する。

 道具も何も持たないまま、ナイフ一本でここまで来てしまった。

 殆どがモンスターの返り血だが、自分も所々出血している。

 こんな状態でこれ以上進むのは自殺行為だ。

 

(戻ろう。二人とも心配しているはずだ)

 

 そう思い、引き返そうとする。

 

 バキリ、と音がする。

 壁からモンスターが生まれる。

 全身が黒く、まさに影のような人型モンスター。

 長い腕に鋭い鉤爪が付いている。

 

「ウォーシャドウ!?」

 

 ベルは戦慄する。

 新米殺しとも呼ばれる、上層での強敵だ。

 二体のウォーシャドウが現れ、退路が絶たれてしまう。

 戦うしかない。

 ベルは覚悟を決め、武器を構えた。

 

 *

 

「…まだ奥か」

 

 エルディンは千里眼で通路を見てつぶやく。

 すでに六階層まで降りてきているが、まだベルを発見できていない。

 通路に落ちてる魔石の数を見るに、相当モンスターを倒したようだ。

 

(最悪、ベルを担いで帰ることになるな)

 

 そんなことを考えてると、わずかに音が響いていることに気が付いた。

 耳を澄ませる。

 金属同士がぶつかるような音。

 エルディンは音のする方へ向かう。

 音が近づくに連れ、それが刃がぶつかる音だとわかる。

 ベルが戦っている証拠だ。

 広い空間に出る。

 エルディンはベルを見つけた。

 黒いモンスターに囲われている。

 

(あれは…ウォーシャドウか)

 

 エルディンはベルが戦っているモンスターを分析する。

 今のベルには荷が重いと判断しすぐに加勢しようとするが、ベルの動きを見て

 エルディンは立ち止まった。

 

 囲まれている状態にもかかわらず、ベルは攻撃を仕掛ける。

 剣筋には一切の迷いが無い。

 ウォーシャドウを一撃で仕留める。

 すぐに回避、敵の攻撃を躱す。

 動きが洗練されていく。

 絶望的な状況にも関わらず、ベルの顔は希望を失っていなかった。

 

 エルディンは驚いた。

 人はこれほどまでに早く成長するものか。

 そして驚きとは別に、歓喜の感情が湧き上がる。

 

(素晴らしい)

 

 エルディンが笑う。

 

(これだ)

 

 エルディンの体が黒い影に包まれる。

 

(この少年こそが、俺の英雄だ!)

 

 *

 

「はあ、はあ、…」

 

 ベルは武器を構え直す。

 残るウォーシャドウはあと二体。

 ベルは自身の動きに驚いていた。

 敵の動きが見える。

 自分の攻撃が吸い込まれるように敵の急所に当たる。

 満身創痍のはずなのに、全く疲れを感じない。

 全てが自分の思い通りにいくような感覚だ。

 

(これなら勝てる)

 

 そう思った時、突然ウォーシャドウが灰になる。

 何が起こったのかわからなかったが、ウォーシャドウの灰が消えた時、その後ろにモンスターがいることに気がつく。

 

 それは人の形をしていた。

 しかし、体長が2M以上あり、肌が青白い。

 手や足に生えている爪は鋭く、背中には翼が生えている。

 それはまるで、ベルが好きな英雄譚に出てくる、強大な魔王のようだった。

 

 モンスターを見た瞬間、ベルの全身が恐怖で硬直する。

 歯がガタガタと音を立てる。

 手が震えて、ナイフを落としそうになる。

 

 ベルには、はっきりとわかった。

 こいつは間違いなく、あのミノタウロスよりも強い。

 自分はもう助からない。

 

 モンスターがゆっくりとベルに近づく。

 ベルの頭の中を、昔の記憶が駆け巡る。

 

(故郷。

 おじいちゃん。

 アイズさん。

 エルディンさん)

 

 モンスターの手がベルに伸びる。

 

(神様!)

 

 ヘスティアの顔を思い浮かべ、ベルは正気を取り戻す。

 そして伸びてくる手をナイフで切りつけた。

 モンスターから距離を取り、構える。

 

 モンスターとベルは互いに向かい合ったまま、動かなくなる。

 ベルははっきりとモンスターを見据える。

 何秒経ったかわからないほど睨み合った。

 やがてモンスターが、ゆっくりと背を向けてどこかへ去る。

 ベルの意識はそこで途切れた。

 

 *

 

<ホームへの帰り道>

 

 ベルが目を覚ますと、ダンジョンの外にいた。

 既に朝日が登りかけている。

 エルディンがベルを背負って歩いていた。

 

「目が覚めたか。体に異常はないか?」

 

 エルディンがベルに訊く。

 ベルは気を失う直前のことを思い出そうとするが、何も思い出せない。

 服はぼろぼろになってるが、体に痛みはなかった。

 

「大丈夫です。…あの」

 

「なんだ」

 

「…ごめんなさい」

 

 ベルが謝る。

 エルディンは少し沈黙し、ベルに問う。

 

「ベル。英雄に一番必要なものはなんだと思う?」

 

 ベルは突然の質問に戸惑うが、答える。

 

「強さです。…エルディンさんみたいな」

 

「違う」

 

 エルディンは否定する。

 ベルは思わず訊き返す。

 

「じゃあ、なんですか?」

 

「勇気だ」

 

 エルディンが答える。

 あまりにもありきたりな答えにベルは思わず笑いそうになる。

 だがエルディンは真剣に話を続ける。

 

「少し、私の話を聞け。

 …私の過去は少し話したな?」

 

「はい。エルディンさんがドラゴンを倒せる力を持っていたって話ですよね」

 

「ああ、そうだ。

 私はドラゴンの親玉を倒し、世界を救った。

 しかし、平和は続かなかったんだ」

 

「私のいたスカイリムでは内戦が起こっていてな。

 ドラゴンがいなくなった後、この戦いが激化したんだ。

 私は内戦を終わらせるため、片方の陣営についた」

 

「私が加わってから戦況はこちらが優勢になった。

 私一人で、砦を落とせるだけの力があったからな。

 しかし、私は力を持ちすぎた」

 

「ある日、作戦を終えて戻ると、味方から刃を向けられた。

 人々はドラゴンさえ倒す力を持つ私に、恐怖を感じ始めていたんだ。

 …そこから私の心は黒く染まっていった」

 

 そこでエルディンは話を一旦切る。

 ベルはエルディンの悲しげな横顔を見る。

 

「ベル。強さだけを求めると、人は人でなくなる。

 力を持ちすぎた英雄は、いずれ化け物になるんだ」

 

(俺のように)

 

「だから英雄に必要なものは、自分の弱さを受け入れ、それでも立ち向かえる勇気なんだ」

 

「勇気…」

 

 エルディンが語り終えるとベルは考え込む。

 ベルは、エルディンの言いたいことがなんとなくわかった気がした。

 

 *

 

<ヘスティアファミリア ホーム>

 

(いくらなんでも遅すぎる)

 

 ヘスティアは時間を見て焦る気持ちが大きくなる。

 エルディンが出て数時間、まだ二人は帰ってきていない。

 

「…やっぱり僕も探しに行こう!」

 

 痺れを切らして、ヘスティアが扉に向かう。

 開けようとした瞬間、扉が内側に開かれ、ヘスティアはもろに扉とぶつかり、転げ回る。

 

「い、痛い!」

 

「…何をやってる? ヘスティア」

 

 声を聞いて、ヘスティアは鼻を押さえながら顔を向ける。

 そこにはエルディンと、エルディンに背負われてるベルがいた。

 

「ベル君!? 大丈夫かい!? 怪我してるのかい!?」

 

 ヘスティアが矢継ぎに質問する。

 

「ベルは私が治療した。何も問題ない。

 ベッドで寝かせてやれ」

 

 エルディンはヘスティアに後を任せてソファに倒れ込む。

 ヘスティアはベルをベッドまで運ぶ。

 

「ベル君、いったい何があったんだい?」

 

 エルディンから説明を聞かされていたが、ベル君から直接聞きたくて、ヘスティアが問う。

 しかし、ベルは黙ったままだ。

 

「…わかったよ。何も聞かない。

 そのかわり、今日は僕を心配させた罰として、僕はベル君に抱きついて寝るからね!」

 

 ヘスティアが冗談を言う。

 

「…はい。…寝ましょう」

 

「へ?」

 

 そう言ってベルはヘスティアを巻き込んでベッドに倒れ込む。

 

「ちょっ、ベル君!? いきなりそんな…」

 

「神様…」

 

 慌てふためくヘスティアにベルが言う。

 

「僕、強くなりたいです」

 

「…うん」

 

(強くなる。

 エルディンさんの言う、本当の英雄になるために)

 

 ベルの言葉を聞き、エルディンは静かに笑った。




というわけで、二人目はコドラクの話となります。

補足① コドラクのフルネームについて、
ゲーム中ではコドラク・ホワイトメインですが、
同じく、ゲーム中にグレイメーン家があるので、
表記を統一する意味で、ホワイトメーンにしています。
(間違っているようだったら後で修正します)

skyrim側の短い小話はいくつか思い浮かぶのですが、
肝心の本編がなかなか進みません。
そのうち、skyrimのみの小話とか挟むかもしれません。

ドヴァキンの強さってダンまちの世界だと、どれくらいのLv.だと思いますか?(ドヴァキンは全スキルを習得済みとします。)

  • Lv.8以上
  • Lv.7
  • Lv.6
  • Lv.5
  • Lv.4
  • Lv.3
  • Lv.2
  • Lv.1
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